環ちゃんとユーちゃんの
アラブ"びょ〜き"展望 〜 楠賞2001編



ユーちゃん(以下ユ) 今回の『アラブびょーき展望』は、アラブ競走観戦記執筆サイトの同志、『競馬美食倶楽部』主宰の環(たまき)さんをお迎えしてお送りします。実は彼、楠賞は'93年のダイメイゴッツの勝った年以来8年連続現地観戦皆勤で、なおかつこの間馬券的には8戦7勝と相性は抜群、まさに今回のゲストとして適任なんですね。
 まいど(低音でね)環です。のっけからプレッシャーかけるような紹介しないでよぉ。何はともあれシルシに行きましょう。
 ◎テツオー、○ボールド、▲ダイリン、△ソレユケ、×ジョージサンキュウ
 ◎ボールド、○テツオー、▲ダイリン、△ソレユケ、×エムエスファントム
っと、一見似通ってるけど決定的に異なる予想ですね。まあ、ここは何はともあれ、クールテツオーから触れるべきでしょう。堂々本命打った環ちゃん、見解はいかに?
 テツオーにはまず負ける要素が見当たらない。クリスタル賞、フクパーク記念の再現みたいなレースになりそう。ツルギベンサーが来ていれば逃げ争いがあってこの馬のペースが乱されるかもと思ってたけど、来なかったからテツオーの楽逃げ必至。しかもこの馬、楽に逃げておいて、最後の直線で後続を一気に突き放せるのが強み。追いかけた馬は脚を使ってしまって逆に脱落してしまうのが判っているから、後ろの馬は追いたくても追いかけられないんじゃないかな。こうなるとますますテツオー優位は動かし難くなる。
 まあ順当にシルシ打てはこの馬に本命いくし、これまでの走りからも現状での地力上位は明白。それを百の承知で、ワシはここで不安点を。別にワシ、アンチテッちゃんじゃないけれど。
一つは四月十八日のフクパーク以来、中6週も空いた臨戦過程。3歳初夏のこの時期、それもアラブが実戦を数こなせていないというのはあまり好ましくないんじゃないかと。そして血統面。全兄がイセイチフブキにマルイシヒーローということを考えると、この若い時期から二四の長丁場が合うとは考えにくい。そしてもう一点はレースにいったときの気性面。ここ前数走、直線追い出されてからヨれるんだよね。激しいというか幼いというか。圧勝だったら問題ないやろけど、混戦になったときにちょっと心配。
 だからってホンマにボールドに本命打つんですか?ユーさん、あんたって人は・・・ここはどう考えてもテツオーでしょ。
 ボールドはご承知のように、ワシ、今年一月の時点で「楠賞勝つのはこの馬」って宣言しちゃったから、本命にしなきゃシメシがつかんでしょう。それはともかく、推奨点はここ前4走、いずれも厳しい叩き合いをやってきたことで培われたであろう勝負根性。レースセンスも確か。そして所属は園田最強森澤軍団。勿論不安材料も。この馬、発馬がいつも絶好で、そのまま掛かり気味に行っちゃうという・・・この気の良さが勝負根性にもなってるんやろけど、距離考えたら心配。理想としては道中前に馬置いて先団キープ、2周目三角坂下から前に食らい付いていってあわよくばって感じかな。一昨年のホマスタの戦法のような。そして何より、あのオカノヒリュウの初年度産駒、父が踏めなかった楠賞の舞台で、"三代目飛龍"が翔ぶのぢゃ!
 「翔ぶのぢゃ!」って・・・お説はともかく、このレース、テツオー以下の2番手集団、「今回は先行して抜け出し粘り込む」タイプの馬が多いように思うし、地力的にも遜色ないような。これらの馬全体とその展開を考慮しないと予想は見えてこないんじゃないかなあ。ユーさんの言うボールドの勝ちパターンだって、多くの馬が実践したい手やん。
 あちゃ痛いなあ。でもごもっともです。そのあたりをお願いします。
 前述した脚質的にも、2着争いはかなりごちゃつきそうな感じ、殊に園田勢は完全に横一線。しかし安定度から言えばボールドとソレユケがアタマ一つ抜け出てるかな。フクパークの時みたいに赤木が勝ちに行けばソレユケが直線で差すし、ボールドが2着狙いに行けば競り合いでボールドかなと思う。ボールドは福姫交流でユノワンサイドを破っているので、その点から考えても先行馬群の中ではこの馬が強いと思う。 ということでこれを対抗に。
そして今回のメンバーで唯一捲れるのがダイリンフラワ。先行馬群がみんな「早めに抜け出そう」とせめぎ合うとこの馬の餌食になるのでは。一発に期待するならこの馬。ただ牝馬で距離二四ということだけが気がかり。
直線勝負という点ならジョージサンキュウ。'98年(タッカースカレーが勝った年)の2着争いみたいに(マイクリスが早めに仕掛けて脚が上がったサンバコールを捉えて2着)直線に賭けると面白いかも。永島騎手の大胆な騎乗に期待。
 実際ボールドとソレユケは対戦成績も全く五分で実力拮抗。ワシはボールド本命打ってるけど、好位で巧く立ち回れそうな点からも、テツオー順当勝ちの際の2着候補の筆頭はソレユケでいいと思う。ただ平松っちゃんが早仕掛けするようだとちょっと心配やけれど。ユノワンサイドはなあ、煮え切らぬ馬が福山ダービーで煮え切っちゃって登場なわけで、どうも勝ち負けする姿を想像しにくい、「何となく」は走りそうだが。
ダイリンフラワは今回いかにも単穴といった感じの脚質の馬やね。金沢の牝馬というと、アイカンセンプーが思い浮かんでイメージ悪いという声もあるけど、ディープさん曰く「アイカンセンプーとは比較にならない」そうで、かなり強いらしい。ジョージサンキュウはねえ、ここ2戦仕掛け遅らせて味のある競馬してるけど、如何せん3着4着ばかりやん。ここでいきなり連入とは考えにくい。地元の差し馬やったら、太さんを鞍上に迎えたホクセツジョージが不気味。元来が大型素質馬、近走の停滞感を打破できるか。
 えっ!ホクセツジョージ太っさんですか。これで差し馬勢の力関係少し変わりそうやね。そりゃそうと何か他に展開の可能性あります?
 そうやね、テツオーに競るやもしれぬ逃げ馬について少々。先行各馬が「早めに抜け出そう」と焦るのとは逆に、あまりに警戒して仕掛けが遅れた場合、前残りの目はないとも言えぬやろ。
その点では牝馬ホマレエリートとエムエスファントムに注目してる。2頭のうち、牡馬ということと、アラブダービー観た辻本くんも「距離延びて面白そう」と評したエムエスにワシは×を打った次第。
 うーん・・・テッちゃんの逃げ脚に太刀打ちできる相手がいるとは思われないけどなあ。
 では最後に、お互いまとめてみましょか。
 とにもかくにも今回は「2着狙い」に徹した馬が2着になると思う。騎手としては勝ちに行きたいところだろうけど、勝ちに行くと2着は拾えなさそう。難しいレースになりそうやね。
 そうとも思われるし、距離二四はどの馬にも初体験、「2着狙い」という鞍上の目論見が通用しない面もある。殊に2周目向こう流しより先、底力のない馬は間違いなく脱落する。各騎手の腹づもりを読むのもともかく、出走馬の力量を正確に判断することが鍵やろね。それが交流競走を予想する醍醐味なわけでさ。まあ、何はともあれ・・・
二人 観るべし!楠賞全日本アラブ優駿

構成・文:ユーノすけ


※『アラビアンエース』楠賞号(2001.6.6発行)に掲載。
  環さんの予想コメントを下地にユーノすけが対談形式に再構成したもの。