2000年兵庫4歳世代事情 〜 全日本アラブグランプリに向けて



サラブレッド導入のあおりを受けて、その層が薄くなったきらいが否めぬ現兵庫4歳世代。
但しその中にあって、3歳から4歳初頭にかけて、アラ・サラ合わせた全在籍同世代馬中、最強と目されたのが市川賞馬ハッコーディオス。限りなく三冠馬に近いと見込まれたものの、三冠戦線スタート目前の今春初頭に頓挫。10月末の現在ようやく復帰間近とのことで、4歳の大半を棒に振る。
このハッコーディオスに代わって兵庫4歳勢を牽引することになったのが、次位タカライデン。トライアル勝利から歩を進め、一冠目フクパーク記念を奪取。続く楠賞全日本アラブ優駿に本命で臨むも、荒尾コウザンハヤヒデの逃げ切り劇勝の前に2着完敗で涙を呑む。
ここまでの春戦線、従来ならば第二集団とでもいった実力馬の層が形成されるところなのだが、サラ導入の影響がてきめんに出た形で、役者が決定的に不足。3歳時3番手あたりを張ったシヨオジヨオは、ハッコーと同様4歳春初頭に姿を消し、ランダムオーク1頭が打倒タカライデンに気を吐きフクパーク2着。フクパークのトライアル2着で台頭したツバサイッセイも、そのトライアルすらタカライデンに完敗と、本番で力及ぶべくもなく3着敗退で、楠賞を前に休養入り。楠賞は2着タカライデン以下、3着シゲルロータイプ4着ランダムオーク5着ボールドヤング、と、1着コウザンハヤヒデ以外は地元兵庫が掲示板を占め、ホストの面目はどうにか保った形だが。
タカライデンはその後古馬オープンに編入され、不休で月一走のローテーションで使われ秋を迎えるが、他の春の一線級の面々、この後休養入り、もしくは古馬条件戦編入も振るわず。これらに代わる夏の強力な上り馬も多くは現れず、層の薄さは秋になっても解消されぬ現状。
こういった中、10月下旬に三冠最終関門、姫山菊花賞が行われ、タカライデンが不動の本命で二冠達成の勝利。2着ニシノリュウジン3着リジョウガバナーは一応夏の上り馬だがタカライデンの牙城を崩すには到底至らず、これを承け、全日本アラブグランプリの兵庫代表は間違いなくタカライデン。

タカライデン、ゴール直前(43KB)


さて、その兵庫代表タカライデンについて。
戦法としては、自在性はソコソコ備えるが逃げもしくは先行して早め先頭で押し切るのが勝ちパターンか。ただ逃げた場合も、後続を離しての逃げではなく集団の先頭として溜め逃げの傾向が強く、生粋のスピード逃げ馬ではなかろうかと。
長距離レースにおいては、楠賞の二四、姫山の二千での経験と実績があるが、父カミガモライデンという血統から期待されるほどの長距離適性があるかは疑問。デビュー以来休養らしい休養をとったことがなく、そこに起因する疲れがいつ顕在化するかという心配を、老婆心ながらも抱かせる。
これは特に夏以降の古馬オープンでの走りにおいて気になったのだが、先行早め押し切りを進上とする割には、勝負所の2周目三分三厘での、他馬を突き放す一気のパワーと脚がイマイチ不足気味。ということで、勝負所で各馬が一斉に寄せてきて決め脚勝負、或いは強力逃げ馬が止まらぬようなレースに本番なるとすると、苦しいのではという危惧がある。早めに前を捉えて吸収し、自身のリードを稼いで直線持ちこたえるレースをしたいところ。平均ペースであれば渋太さと地力が生きるのではないか。
しかしこの馬、兵庫二冠馬で楠賞2着の割には、他地区はおろか地元ファンの評価も上がらぬという、やや気の毒な状況を甘受しているような・・・そうは言えども、エイランボーイをはじめとした、兵庫の古馬オープンの蒼々たる面々と走ってきたその戦績、3着を外したことのない堅実性、サラ化著しく弱体化したと言われるものの、何だかんだで交流競走で示される兵庫のレベルの高さ、いたずらに軽視しすぎるのは危険では?と、最後は彼をアピールさせていただこう。


※電設の男@ともろうさん編纂、作成の、全日本アラブグランプリ特設HP【All Japan Arab Grand Prix2000】中、「各地の動向、兵庫編」に寄稿した文章。
掲載の画像は姫山菊花賞、1着入線直前のタカライデン。この画像も併せて提供。