ニホンカイキャロル号引退式

 2000.4.16、益田競馬場

年頭から春にかけて、益田の主役は間違いなくニホンカイキャロルだったといえる。
他にもニホンカイプリウスの活躍、まほろば賞の開催、といった事柄もあるのだが、平地競走日本新記録というそれの偉大さと話題性(NHKがサンデースポーツで採り上げ、全国一般紙でも報じられた程)、文句の付けようがないところである。
その日本新記録、1月開催にてタイ記録に持ち込み、3月にあっけなく新記録樹立。さらに1勝加算したという次第。しめて通算74戦46勝。「50は勝つか」という声もあったのだが、4月に入り、引退発表。今季からの繁殖入りを考えてということは想像に難くなく、納得。
と、ここで個人的に問題発生。実は、
「ワシ、"生"キャロル見たことないんです。」
そもそもは3月26日のまほろば賞に行かなかった事が痛恨。まほろば自体もともかく、調騎会チャリティーオークションありの、最終のA級(オープン)戦でキャロルをはじめ益田最強クラスは登場しの、極めつけは、キャロル、ユーノス、マリノ、プリウスの母ちゃん、ニホンカイローレルが誘導馬として登場しのと、目玉てんこ盛り。後悔先に立たず。
が、引退報道から程なく、4月16日に引退式を行うという情報が耳に入る。これがキャロルin益田を拝む最後のチャンス、行かねば!4月16日は当初、アキフジvsパッピー、ダイキチの福山桜花賞のつもりだったのだが、予定変更、今年二度目の益田へ・・・

前回1月4日の日本海特別の時は新幹線→山口線の当日移動で午後益田入りだったため、益田を1日堪能できなかったが、今回は1日満喫するため、そして旅費節約のため、経路を変更。大阪発米子行きの夜行急行「だいせん」にて、尼崎23:22→米子翌朝5:50、各停に乗換→松江6:25、暫し休憩、7:39発快速石見ライナー→益田11:20着。ただの気動車特急車両(エーデル型ね)の座席での夜間移動はちょっときつい。おまけに山陰線の快速(半ば鈍行)が遅いんだ、時間は経てどちっとも益田に近づかない。益田駅前から路線バスで競馬場最寄りの停留所まで。(運賃後払いの路線バスで最寄り停留所で下車すると運賃徴収されず、バス停前に立っている係のおっちゃんにバスの整理券渡せばOKという仕組み)そこから歩いて5分弱、競馬場に到着。第1レースが12時発走なのでその直前に競馬場入りという次第。これで益田競馬を丸1日楽しめる。
(実はバス乗車前に、益田駅前場外「ギャロップ益田」に立ち寄って記念馬券を購入したのだ。この「ギャロップ益田」が競馬場に負けず劣らずカルチャーショックな代物なのだが、これについては割愛)

天気予報は昼から晴天と告げていたが、その通りの好天。山陰線での往路の道中、雨が降ったりしてイヤな感じだったが、助かった。
お目当てのキャロルの引退式は8R終了後。出馬表を見るとそのほかにも、メイン10RはA級最上位クラス戦、役者が登場、最終B級戦にはまほろば賞を勝ったノアが出走と、見どころ満載のメニュー。ワシにんまり。
まあお目当ての引退式までには間があるのでぼちぼちと馬券。益田の連勝馬券は4Rまでは枠連、5R以降は枠単、連と単の併売はない。というわけで前半戦は馬券の難易度は必然的に低い、配当も然り。よって常識的な買い方としては、軸馬定めてどれにつけるかの見定めが鍵。概ねオッズが低いのでいかに買い目を絞るかが勝負。なのだが、ワシ、この勝負に悉く負ける。とりあえず予想紙の軸馬=ワシの軸馬は確実に連に絡むのだが、ヒモがあかん。じりじりと財布が軽くなってくる。6Rになってようやくガチガチの枠単を1本取るも、恥ずかしいばかりの配当で赤字収支には焼け石に水。トホホ・・・しかしながら益田競馬、なんか居心地いいんだよな、ポカポカ陽気のせいもあるが。
スタンドで"九州の首領"Tienさんにお会いする。はるばる車(アルトWorks!)でいらしたとのこと。競馬の後はとんぼ返りで深夜2時から夜勤入りだそうで、ホントご苦労様です。8Rのパドック後からぼちぼち撮影準備に取りかかる。するとこの8R、いきなり枠単万馬券。

波乱のレースが終わり、いよいよ引退式に。スタンド裏側でパドックと装鞍所を眺めていると、パドックに紺地に黄数字のゼッケン(これは重賞のゼッケンの筈)をつけた鹿毛馬がただ1頭、おもむろに周回を始める。段取りからしてこれがキャロルに相違ないのだが、如何せん実物を目撃したことがないので情けないことに半信半疑。
それがやはりどうやら今日の主役、キャロルであると判明。当たり前なのだが。一見何の変哲もない普通の鹿毛馬。そして彼女を曳く厩務員さんは、益田時代のユーノスとプリウスを手がけていらした方と見受けられる。
暫くしてパドックにもう1頭、キャロルの二回りも小さい貧相な鹿毛黄色メンコの馬が登場。これがニホンカイ姉妹の末の妹、4歳ニホンカイノア。落ち着いている姉とは対照的にチャカチャカのピョンピョン、しきりに立ち上がる。
やがて騎手が二人登場、キャロルには彼女の馬生後半のパートナー宮本騎手、ノアにはリーディング沖野騎手。実はノア、落ち着かず騎乗がままならず、装鞍所にて騎乗。そして2頭は本場場へ。

キャロル姉妹本馬場入場(55KB)
キャロルとノア、本場場に登場

内馬場から姉妹2頭が馬場に姿を現す。先頭はキャロル、続いてノア、一列に。ここで場内放送で、実況の女性のナレーションが始まる。日本最多勝記録を樹立したニホンカイキャロル、本日引退、そのプロフィール、デビューからの足跡、勝利をおさめた競走をはじめとしたその戦績、そして弟妹のことなど、ラストランのパートナーは末妹ニホンカイノア・・・・
ナレーションの中、コースに入る2頭、並足からキャンターにうつり、正面スタンド、ゴール板前から1、2コーナーへ。向こう流しから加速してラストランの併せ馬に入る。キャロルは外、内にノア。めでたく無事にラストラン終了。
ノアはいつの間にか退場し、キャロルは宮本jkを乗せたまま厩務員さんに口を取られ、馬場内で留まる。その間スタンドでは関係者の皆さんのセレモニー。スタンド柵際にあるお立ち台(実はこのお立ち台、1月の日本海特別の日にはまだ存在せず。もっともお立ち台といってもブロック並べた上に人工芝張った板を据えただけのつつましいものなのだが)に、岡崎初美オーナー、生産者の赤石さん、大賀繁春調教師の三人が並び、感謝状などが読み上げられる。そして最後に主催者(益田市)から、引退記念のレイがオーナーに贈呈される。ほとんどの重賞でレイが授与されない益田にあって、これは最大級の顕彰の証に他ならぬと、とても好ましく感じられた。
引退式の最後は、その贈呈された記念のレイをキャロルの肩に掛け、馬場内で口取り撮影。レイを掛けられ、関係者が綱を取り、写真撮影がされる中、キャロルの身じろぎもせず大人しく立っている姿が印象的だった。またその佇まいに、弟ユーノスとプリウスに相通じるものがあるなと、ひとり納得するワシであった。
これで彼女は繁殖入り。今年誰を種付けするのかが注目である。ローレル母ちゃんに負けずに大物を続々と生んで下さいな。
ラストラン(45KB)
キャロル、ラストラン
記念撮影(55KB)
口取り撮影
記念のレイも誇らしく

引退セレモニーも無事終了。その余韻の中の9R、これが8Rに続いて万馬券、結局この日、引退式前後のレース2鞍が万券、他は全て三桁配当という、何とも両極端な馬券戦線なのであった。つまり中穴がないわけで、中途半端な買い目じゃ絶対アウト!
10RがメインのA級、黒松特別。ローレルヒロ、キャプテンシー、シリウスファイター他全8頭。ローレルヒロはいつ見てもいい馬体。プリウス佐賀転出後の今、益田には敵無し。このレースもアタマ鉄板は間違いないところ。続く人気は福山からこの冬転厩で前走勝利のトミノゴールド。この人気の原因はワシ地元民じゃないので不明。シリウス、キャプテンシーはこの次位。シリウスは11歳ながらいい感じ。毛艶はイマイチだがこの馬の雰囲気が好き。キャプテンは焦れ込み気味。口を割って天を仰いで馬場に入場、鞍上沖野、返し馬を断念。馬券はヒロからシリウス、キャプテンへの2点。慣れぬ枠単でもアタマ鉄板のレースなら予想は楽。
レースはスパイダーガールがハナでシリウス2、3番手、ヒロは好位からじっくりと、キャプテンは後方。三分三厘でヒロが鋭く先頭へ、余裕。交わされたシリウス、直線踏ん張り2着死守。これで枠単配当400円、2頭の実績からすれば実に美味しい配当だったと言える。ヒロやっぱり抜けている。このまま盆の日本海特別まで突っ走るか?

さらに見物が続く。最終レースB級戦。まほろば賞勝ち馬、ノア(これが非常にややこしいのだが、キャロルの妹、ニホンカイノアとは別馬、こっちはただのノア)が4歳ながらこの古馬混合B級に登場。まほろば賞を見ていないので、ワシにとって生ノア目撃は初めて。実はここまで、ノアの評価、ワシの中では高くなかったのだ。(それがまほろばキャンセルの最大要因なのだが)というのも「ハロン」3月号の益田4歳有力馬紹介の項に掲載のノアの写真、これが悪すぎたのだ。
ところが彼への低評価、パドックで実物を目にした途端、180度転換する。明るい栗毛の毛艶、「ハロン」の写真と違って非常によろしいではないですか!適度に活気もあって、周回の姿もよい。まあ概ねの印象としては、馬体はまだ子供っぽい。馬体重460k程あるが、体の幅が狭くそれ程あるように全く見せない。何より顔つき、鼻筋がまだスッと直線的に通っておらず、仔馬のよう。これはミーハーなハナシだが、むちゃむちゃ可愛い。おまけにたてがみとしっぽは金髪混じり。美少年系。そして返し馬、重心は低いが首をあまり使わない、それでいて猛烈なピッチ走法。いかにも中距離までのスピード馬といった印象。
レースは予想通りノアがハナ、見た目かなりのハイペースで飛ばすも一、二角までは他馬に絡まれ単騎逃げではない。ところが向こう流しでは既に後続をぶっちぎり、結局そのまま大差勝利。素質の片鱗を窺わせるに充分な勝ちっぷり。楠賞は(益田4歳トップのもう1頭、イッテンヨカイチの動向もあるが)参戦見込み「?」ながら(二四の距離適性が問題)、6月の福山、瀬戸内賞は出走ほぼ確定だろう、好勝負の予感ひしひし。

ノア、パドック(44KB)
ノア、パドック
可愛い・・・でも速いよ

ということで全レース終了。11レース施行で1R発走が12時、最終発走が何と17時。帰りの列車、17:48益田発車、時間的にかなりタイトになってしまったが、Tienさんの車で駅まで送っていただき、余裕でセーフ。Tienさんにはいろいろとブツも頂き、感謝。
帰路は特急山口線の「おき」で小郡まで、小郡から「ひかりRailStar」(サイレンスカーの指定が取れてラッキー)と楽をする。
とまあ、内容の濃い益田遠征であった。益田、ええでえ〜。

最後にオチが・・・帰宅してカメラ片付けようとして、フィルムをまだ取り出していなかったのでカメラの裏蓋開けたところ(何かいつもと違ってプロセス一つ忘れている気がしたのだが)、
「ゲッ!まだフィルム巻き戻してないやんか!!」
おかげでフィルムが光かぶって、全滅は免れたが後ろ4枚がパー。よってノアのレース写真が吹っ飛んでしまった。トホホ・・・と、自らの情けなバナシをあえて記し、今後の戒めとしておしまい。(三方ヶ原の戦いで武田信玄にぼろ負けして逃げ帰った直後の姿を描かせて生涯の戒めとした徳川家康の故事に倣って、何のこっちゃ)

2000.4.21 記

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