第39回フクパーク記念観戦報告

 2000.4.19、園田、1870m

2000年園田・姫路競馬、サラ導入2年目、初のサラ4歳戦線。それに伴い重賞競走の施行条件に大幅な変更あり。サラ系重賞体系の設定。要するに従来のアラブ系重賞切り崩し、サラへの変更。アラブ系4歳三冠競走、菊水賞、楠賞、六甲盃のうち、菊水賞と六甲盃はサラ系に移行。アラブ系三冠は、補助馬限定を解除したフクパーク記念と姫路秋の姫山菊花賞をこれに充当し、楠賞と併せ"新"アラブ系三冠を形成することとなった。"アラブのメッカ"の伝統の重み、何ですか?それ。である。
そのアラブ一冠のレースだが、昨年の菊水賞は1着賞金900万円、今年のフクパーク、従前の4歳補助馬限定から三冠の一つに組み入れられたとはいえ、1着賞金昨年のフクパークそれのまま据え置きの500万円。サンテレビの中継、先週の菊水賞は3時から4時半までの時間拡大(これが重賞デーの常)のところ、フクパーク通常通り3時半から4時半のまま。勝利騎手インタビュー、重賞においては吉田アナの担当が慣例であるもこの日はレポーターの姉ちゃん。
これが現状のアラブ系に対する主催者側の態度。ここでは以上事実を列挙するのみに止めておく。これらに逐一言及していくと、一向に"観戦記執筆モード"に入れないので、ご容赦。

さてフクパーク記念、4歳主役の姿が、ない。――
ハッコーディオス、1月の若駒賞を斤量57kで勝ちデビュー以来の連勝を8に伸ばすも、この後疲れが出て骨膜炎発症。恢復はフクパークには間に合わず、戦わずして三冠の権利を逸す。なおハッコー、先週末追い切りかけたらしい。次開催を一度使い、可能であれば(中一週になろうが)楠賞を目指すとのこと。
ハッコーの次位の1頭と目されたシヨオジヨオも知らぬ間に戦線離脱。結果、4歳2番手筆頭、3歳重賞市川賞でハッコーの2着、トライアルのクリスタル賞勝利のタカライデンが、不動の中心に"押し出されて"位置づけられることになった。
レースは7頭立てと春の三冠戦にしては寂しい限り。(もっともクリスタル賞に至っては5頭立て。)2番手候補はタカライデンとは別路線でここに乗り込んだ、捲り追い込みのランダムオーク、以下トライアルそれぞれ2着3着のツバサイッセイ、ヒュガチカラ、以下・・・うっ!
「うっ!」というのは、実力馬を脅かすような2番手以下の集団がない=あまりに層が薄すぎる、ということ。トライアルにも本番にも頭数が集まらないのも現状では止むなし、か。サラ入厩=アラブ頭数の減少が世代のレベル総体にまともに反映した形。
とまあ、景気のつかない勢力分析もいい加減にして、それでもレースを見届けにいざ園田なのである。

当日の天気予報は曇りのち雨。その雨がいつ降り出すか、気が気でない。予報は更新されるにつれ雨の降り出しが後送りになってきてはいるが、何とか保ってくれと祈りつつ。
競馬場には1時半過ぎに到着。予告通り、パドックには「切味抜群 赤木高太郎」の横断幕が。桜花賞デーの阪神に続き2度目の登場。(この日の赤木横断幕をめぐる顛末は、まりおちゃんのページ、『けいば〜ず』中の「アカギINウィナーズサークル」にてレポートされております。)パドック横を歩いていると、電光掲示板か、はたまた横断幕かを眺める、幕のオーナー、ケーズにいさんを発見。本日の園田組、にいさんをはじめ、環さん(仕事休暇!)、まりお&ちーちゃんの"ひめけい"現場組、はるばる広島から大盛りさん一家という面々。さらにアラブファンさんの姿も。園田組、何だかんだで現場度高い!後れてエチゼンさんも登場。カメラ者の数はまあそこそこといったところか。

前売りオッズは、タカライデンからでしょうがない状況。タカライデン−ランダムオークの組が1.8倍前後を上下、タカライデン−ツバサイッセイで2倍台後半のオッズ。どうしようもないので、馬券は完全に遊ぶ。3月下旬の補助馬限定特別(昨年までのフクパークが担った性格のレース、要はフクパークのなれの果て)を渋太く逃げ粘って勝った、政宏エビスジョンソンから総流し。いくら補助馬No.1で成長中とはいえ、ここでは足らんだろう。無茶馬券。根拠はここ2年の菊水賞、連続して補助馬が連絡みのジンクスと、大物食いの政サマの一発。

天気も何とか保ち、フクパークのパドック周回が始まる。ここでワシに声を掛ける御仁が、"大御所"Okuさんだ。「主役不在なのにご苦労様です。」とワシ。「別にええねん」さすがです。パドックの柵沿いに、ちーちゃん、まりおちゃん、ワシと並んで待っていると、まりおちゃんとワシの間に半ば無理矢理オジイが割って入った。それでまりおちゃん、ムッ!と、一瞬表情が曇る。(それを見逃さぬワシ)
タカライデン、実物は初めて見るが、思った以上に細身でコンパクトな馬体、それをさらに絞り込んできている。時折鶴首になって気合い充分。子供っぽさをまだ漂わせるのルックスなのに悠然とした人気に相応しい周回振りという、不思議な印象。
ランダムオーク、芦毛のイムラッド産駒だが毛色はまだ黒褐色、ぴかぴか艶々、馬体張りも絶好。馬体重-9kと、これもタカライデンにも増して絞って登場。(中継では直前初めて併せ馬やって絞りすぎたとコメントあり)ただ仕上げの見た目はタカライデンも凌ぐともいえる。大盛りさん絶賛。胴が短く詰まった体型。
ツバサイッセイは馬体の張りも栗毛の毛艶もよく、二人曳きなれどじんわりした周回。ヒュガチカラは青鹿毛、深いブリンカー、484kの馬体重以上に雄大に見せる。
周回の半ば過ぎ、パドックに馬の嘶き声が響く。よりによってワシの軸、エビスジョンソンが焦れ込み、そして馬ッ気、膠着、あちゃちゃである。
タカライデン、パドック(45KB)
タカライデン、パドック
時折鶴首に
ランダムオーク、パドック(55KB)
ランダムオーク、パドック
これで芦毛、究極の仕上げか

馬券はパドック前に購入してしまっているので後はどうにでもなれ。しょうがないのでレース展開など思い描く。タカライデンの逃げは間違いないところ。ツバサイッセイはタカライデンマークで好位を取るだろう、ランダムオークは前半後方で平松っちゃんが2周目半ば、早めに捲り上がる筈。問題はその捲り脚が直線まで衰えないか否か、ツバサイッセイの岩田が平松に先に脚を使わせて、ランダムの脚が鈍るようならばこれを直線再度差して2着はものにする余地はあろう。タカライデンは、止まらんやろうなあ・・・エビスジョンソン、渋太くひっそりと粘らんかなあ、昨年の補助馬リスペクトさながらに(単なる個人的願望)・・・

いよいよレース発走。二角ポケットから1周半少し。ゲートオープン、各馬一斉にっ!というところ、1頭出遅れ、何とタカライデン。場内騒然。(ビデオで確認すると、出遅れというよりは発馬後の二完歩目が弱く後手を踏んだ形のような。赤木jk自身はレース後出遅れを認めているが)
いきなりのイレギュラーのなか、ハナを奪ったのは永島シンエイヤマト、3コーナーの坂目指してどんどん加速、後ろとの差を広げる。2番手内から政宏エビスジョンソン、集団の先頭といった位置取り、3番手谷川ハッタリンボー、4番手岩田ツバサイッセイ。後手踏みのタカライデン、慌てず騒がず向こう流しで馬なりで前へ、三角ではツバサイッセイを外から交わし、これに代わって4番手に、結果ツバサはタカライデンマークの5番手、最内に田中ヒュガチカラ、最後方平松ランダムオーク、予想通り道中単騎追走。
正面スタンド前から1コーナーにかけては逃げのシンエイヤマト、殿ランダムオーク以外の5頭はほぼ一団。タカライデンこの一団の外目、赤木のGoサインを待つのみか。

1周目(44KB)
1周目正面スタンド前
2番手エビスジョンソン、タカライデンは3番手外目

2周目向こう流し、着順掲示板の向こう側を通過する辺り、ランダムオーク発進、平松十八番の捲り早仕掛け炸裂、一気に先団に取り付いたのが三角坂の手前。ここではタカライデンも発進、気合いを少し入れるとほぼ馬なりで加速。三分三厘ではシンエイヤマトはガクンと失速、これを交わしてタカライデンがいよいよ先頭に、その直後にはランダムの姿、ツバサはランダムに交わされその後ろ。エビスジョンソンは内をズブズブ。
そして最後の直線、馬場の内をタカライデンがまっしぐら、ランダムは馬場の三分どころから追いすがる。その外ツバサ、ツバサは結局脚色が前2頭を上回ることなくそのまま。タカライデンのリードは残り50mくらいまではランダムを振り切るに充分なものに思われたのだが、最後の2、30mでランダムが渾身の猛追。(リアルタイムで目撃したその目には)ソラを使いかけた様にも見えたタカライデンと馬体が重なる。タカライデンからすれば一瞬ヒヤリだが、何とか持ちこたえて一冠のV!
その差クビ。2着ランダムオーク、3着ツバサイッセイ。現場のリアルタイムでは、直線半ばまで全くタカライデン余裕の態勢に見えたも関わらず、ゴールに近づくにつれランダムオークが見込み以上に差を詰めてきていていたのには驚かされた。タカライデンの勝利を確信して彼にカメラのピント合わせて動きを追っていた、そのファインダーの視野の中を、シャッターをリリースした直後にランダムの馬体が横切ったのには、不意を食らった。ラッキーにも写真はランダムに被されていないタカライデンの姿をGetできたが。やれやれ。

タカライデン、ゴール前(44KB)
タカライデン、ゴール直前
外から迫るランダムオーク

タカライデン、何と言われようと一冠奪取。スタート後手踏みは誤算なれど、重賞の舞台で好位からの競馬ができ、勝利を収められたのだから結果オーライ。この経験が次の全日本アラブ優駿で生きる可能性も少なくなかろう。あとは全日本までの中間、疲れを取って無事に大舞台に臨んで欲しい。線が細い馬なので激走の反動がやや心配。
2着ランダムオーク、最高の走りだったのではないだろうか。早め捲りで最後方から追いついてG直前更に末脚を繰り出す。体型と血統(父イムラッド)から距離延長で前走までの脚が使えるかを懸念する声もあったが、これだけ走れば文句ないだろう。全日本の二四、果たしてどうか?
3着ツバサイッセイ、タカライデンとは確かにトライアルで勝負付け、済んでるよなあ、と、改めて実感。遅いデビューで未知の可能性も考えられたのだが・・・
レース後、Oku氏が「このレースおよそ全日本に直結しそうにないなあ。」「去年までの補助馬のフクパークと比べてもレベル高ないで。」と辛口の批評。この層の薄さにして、アラブの名門の気位だけで他地区馬なめてかかると兵庫にとってはとんでもない結果になることも考えられなくもなかろう。もっともこうした状況にに兵庫の競馬を持っていった側の自業自得なのだが。

次はいよいよ晴れ舞台、全日本アラブ優駿楠賞、タカライデンの二冠はあるか?ランダムオークがもうひと化けできるか。他地区は強いのでは?期待と楽しみは膨らむ。そして何より、
「ハッコーディオス、待ってるぞ!」

最後は何はともあれ、
「みんな頑張れ!!」(ハナキオーくん風)

2000.4.21 記

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