第78回名古屋杯観戦報告

 2000.5.3、名古屋、1900m

東海・北陸地方は関西からも比較的近く、殊に名古屋、金沢は相当のアラブ在籍頭数を維持しており、また強豪を擁しているということで、本来ならばもっと訪れるべきエリアであるのだが、どういうわけか私的には縁が薄い状態が続いている。
さて、今回の名古屋杯(春)[※1]、当初見込まれていた通り、イケノエメラルドvsブラウンダンディの、"東海頂点対決"が実現。同日地元園田では、サラ系GIII、兵庫チャンピオンシップであったのだが、アラブな人な名古屋なのであった。
ここでも旅費をケチり、JR東海道線、新快速で米原まで、各駅停車で関ヶ原を越え、大垣から新快速で名古屋着。名鉄バスセンターから無料送迎バスで一路競馬場へ。名古屋駅からまっすぐ南下。倉庫と運送会社ばかりの界隈を抜けて、あっさり競馬場着。

当日は天候、晴れ、カラッとした好天。但し強風。スタンドを西風が砂塵を伴い吹き抜ける。連休中ということもあり、場内はかなりの混雑振り。敷地面積は狭くもなく広大でもない中程度か。スタンドのベンチが長椅子なのだがピッチが狭いのがやや不満。
場内にはカメラ者の方が意外に多い。「4/30は金沢、5/3は名古屋杯」と予告していたディープ氏に投票所で遭遇。予定通り4/30は金沢のアラブグランプリに行かれていたらしい。「ダスティー、むっちゃズブい馬ですよ、あんなんだとは思わなかった。」とは彼の弁。
お目当ての名古屋杯、パドック待ちをしていると、ワシの横の二人連れ、"東海の好漢"おーたさんと"ミスター「バカヤロコノヤロ・ミャー!」"すけさん。お二方ともお初ではないのだが面識はそれ程はないので、神妙に名乗って話しかけると、何の何のすぐに打ち解け、楽しく話をさせていただいた。

さて、その名古屋杯、注目は冒頭に記した通り、イケノエメラルドvsブラウンダンディの、まさに"東海頂点対決"。両者の対戦、昨年6月のアラブ王冠以来、実にほぼ1年振り。その時はイケノの9馬身差圧勝だったらしい。
それ以降イケノは、卓越したスピードと素質で"天才少女"に相応しい進撃を続け、冬毛ボーボーの毛艶のまま今年2月のサラ混合重賞グランドミックスをも制し、3月佐賀のセイユウ賞に挑んだ。結果的にこの遠征の疲れがたたり、本日の名古屋杯は実のところ体調は万全ではないとのこと。
一方のブラウンダンディ、一時はイケノエメラルドに大きく水をあけられた形だったが、昨年12月以降、当地の一線級で7連勝中。その中には1月4日の名古屋杯(冬)[※1]と4月7日のアラブチャンピオン賞勝ちも含まれ、現在充実一途。
1月4日の名古屋杯に2日先んじた1月2日のアラブギフ大賞典(笠松)ではイケノが勝利しており、1月の時点で東海の二強はこの2頭だと注目してはいたのだが、ようやく直接対決が実現。

パドックに各馬登場。とりあえず注目点はイケノエメラルドの毛艶。相変わらず冬毛ではないですか。季節も良くなってきているのにも関わらず解消された様子はない。こういう馬なのか?とも思ったのだが、地元のおーたさんも「良くならない」と言われていたので、完調であればこんなことはないのだろう。もっと気合いを表に出す、鶴首チャカチャカを見込んでいたのだが、思いの外普通の周回。
二強のもう一方、ブラウンダンディはといえば、こちらは最近の充実振りがイヤでも解る好仕上げ。鹿毛の胴体はよく光り、伸びやかな周回。「地位が人を創る」とはよく言うが、仮に馬においてもそれがあるのであれば、今日のブラウンはまさにそれ。4歳春当時、若葉賞、楠賞出走に園田に来ていた彼については、特にこれといった印象も残っていない(強いて挙げれば、東海からのもう1頭、タカラフレンドの方が評価が高かったのだが、個人的にはブラウンの方に好感を持ったくらい)のだが、今日のブラウンの気配には、重賞ウィナー、そしてこの地の代表としての余裕と風格が漂っている。馬格自体も楠賞当時は45、60キロ程度の馬体重だったのが現在では480キロ台。実際大きくなっている。
イケノの先を歩く、一昨年の全日本アラブクイーンカップの覇者、8歳熟女サンデンビスタも腹周りに冬毛。これも休養明け2戦目、歳も歳であるし、さほど良化はしていない模様。過去の実績ほど本日走るかは甚だ疑問。
イケノ、サンデンの毛艶が一息な一方、気配良好な馬は他にゴロゴロ。かつては名古屋牡馬筆頭を張った、ローテーションも毛艶だけなら言うことない出来。栗毛の皮膚が瑞々しい。
近走3連勝で好調6歳牡馬ブレーンワークも好馬体。見た目だけなら、かつて園田で快速を誇り、佐賀、中津在籍を経て今は名古屋の「お懐かし」レイクスキーだって負けてはいない。(おーたさん曰く「レイクスキー、やはり1900は長いです。」)
周回中最も雄大に見せたのが5歳牡馬、上山OBで素質を期待されている(らしい)アズマダイドウ。腹周りは多少ゆるい作りながら、重心の低い、首をぐいっと前に突き出した歩様。黒鹿毛、青メンコに蛍光ピンクのシャドーロール。
各馬本馬場に登場。ようやくイケノエメラルドに気合いが乗り出す。
ブラウンダンディ、パドック(54KB)
ブラウンダンディ、パドック
悠々と
イケノエメラルド、パドック(51KB)
イケノエメラルド、パドック
いまだ冬毛が・・・

オッズは、単勝はブラウン1番人気、イケノ2番人気。連単はイケノ頭ブラウンヒモの方が当初人気していたのだが、結局ブラウン頭イケノヒモに逆転される。予想紙にもある通り、イケノエメラルドは陣営自体が馬の能力、素質頼み。ブラウンは充実振り明白。それを反映したオッズ推移。

1周目(41KB)
1周目正面スタンド前
先頭サンデン(2番)直後イケノ(3番)、外ローテーション(黄帽)4番手ブレーン(緑帽)

名古屋千九のスタート地点は、2コーナーを立ち上がってバックストレッチに入ったところ。ここから馬場を1周と半分。
ゲートオープン。内2枠からサンデンビスタが仕掛けてハナ。隣3枠イケノエメラルドも負けじと前へ。さらに外5枠ローテーションもハナにこだわる。逃げ馬ゆえ、前が欲しい。この3頭が1周目バックストレッチを競らず譲らず逃げ併走。
やがてイケノは少し控え、サンデンの直後内。ということで正面スタンド前、先頭はサンデンビスタ内。2番手外目ローテーション、サンデンの直後インにイケノエメラルド。この3頭を見ながら、4番手ブレーンワーク5番手アズマダイドウ。そしてこれらを前にして、6番手にブラウンダンディ、がっちり余裕の追走。これ以降は後方縦列。レイクスキーはケツ2か殿。
2周目三分三厘、最内サンデンとローテーションは後退。(サンデンはこの三角で"パッチン"食らったらしい、審議のランプがこれに点灯)代わってブレーンワークとアズマダイドウ進出、そしていよいよ外からブラウン。
最後の直線勝負。四角を先頭で回ってきたのは内よりイケノ、ブレーン、アズマ、ブラウン。この4頭、一線。
ここで最内でイケノが脱落、一瞬ブレーンワーク先頭だが、大外からブラウンダンディ、余力充分でストライドを伸ばし、熱戦に断!優勝のゴール。2着ブレーンワーク3着アズマダイドウ、イケノエメラルドは結局これに続く4着。逃げバテローテーションとサンデンビスタはそれぞれ7、8着。

ブラウン、ゴール前(42KB)
ブラウンダンディ、ゴール前
内ブレーンワークを問題にせず

ブラウンダンディはこれで名古屋杯冬・春連覇、連勝も8に伸ばす。
それはともかく、結局のところブラウンダンディの強さだけが印象に残ったレース。口取り撮影にウィナに現れた姿も、何とも涼しい、平然とした面持ちで、息はとっくに戻っていた。大したもんだ。斬れ、スピード、突出したものを持っているとは思われないものの、レースセンスと地力総体のレベルの高さで君臨といった感。これからもどしどし勝ち続けて、10月園田のタマツバキにいらして下さいな。とは言うものの、東海地区、今後秋までアラブ系古馬重賞、適当なものないんだな(笠松オールカマーやアラブスプリンターカップじゃあイマイチやしなあ)。好調期間が長すぎるのも気にはなるところだが、かの地のエース、どうぞご無事で秋までお過ごしの程を。(ちなみにブラウンダンディの厩務員さん、女性、それもまだ若いおねーちゃんなのだが、同時にサラのブラウンシャトレーも手掛けてらっしゃる大した方なのだそうで。これはディープさんのご教授。)
イケノエメラルド、今日は敗れてしまったが何とか復調してもらいたい。秋には大仕事が待っている。
ブレーンワークやアズマダイドウといったいわば東海の上り馬、キャラはいいと実感。ただ今回は、個人的に二強対決にしか目が行かなかったので、彼らについては観察不足で残念。

名古屋杯の後は園田の兵庫チャンピオンシップの放映(広域場間場外ですね)。名古屋の馬場内大型ビジョンに園田の模様が映り、場内に吉田アナの声が流れる。これをおーたさん、すけさん、ディープさんと観戦。すけさんともども「平松う!」コール。しかしマッキー惨敗。しかしまあ、すけさんの、かの有名な「みゃ〜!」が聞けて、良かったですわ(笑)

と、何だかんだの名古屋デー。帰路はディープさんと無料バスで金山駅まで。(復路の無料バスに名古屋駅前行きがないのです。しかし名古屋と金山では利便的に遜色ないので心配ご無用)駅前で別れて本日の競馬、無事終了。

※1:名古屋杯は現在、正月と春の年2回施行されている。春が名古屋1900m、冬が中京2300m(今年の施行において)

2000.5.7 記

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