第39回楠賞 全日本アラブ優駿観戦報告

 2000.5.17、園田、2400m

歯切れの悪いツカミ

従来ならば、一年のうちで園田が最も華やぎ、主催者側もPRに力を注ぐ、全日本アラブ優駿であるのだが、いまや園田はサラ時代。主催者側のPRの重点はもっぱら5月3日の兵庫チャンピオンシップに置かれ、アラブ優駿の扱いはこれまでとは雲泥の差。サンテレビの中継も1時間(従来は重賞は1時間半)、1着賞金もドカッと下がって1500万円・・・
といったお寒い状況なのだが、主催者側の扱いとレース自体の面白さ、そしてその持つ格とは別物。全国アラブ4歳の頂点決戦を見届けるべく、朝から園田へGO!なのであった。
関西地方はここ数日ばかり、非常に不安定な天候が続いており、天気予報は雨で昼間のうちだけ運がよければ曇り、雷もあるかも、といったイヤな感じ。予想紙上でも、前夜の雨を見越し馬場は重もしくは不良と掲載。ところが前夜に雨が降らず、幸いにも当日は陽も射すまずまずの好天、馬場はかなりバサバサの良。内埒沿いの逃げ残りも外目の差し追い込みも決まっており、馬場の内外の軽重に格段の差はないような感じではある。

御来園の方々

競馬場には2R直前に到着。さすが全日本、地元そして全国各地から見知った方々が御来園。
九州在住の"さまにべっぴん"さんにまずばったり。ここ数日全国巡りらしく、前日は足利の尊氏賞(ホマスタ4着、クゥーッ!)を観戦。ホマスタ4番手追走のままだったらしい。パドックの焦れ込みが佐賀以上にきつかったとのこと。そして"九州の首領"Tienさん。フェリーで大阪から上陸。今晩以降のレジャーと帰路の旅程はコウザンハヤヒデ次第だそうな。
3Rのパドックを眺めると、岩田幕、そこにまりおちゃん、ちーちゃんのひめけい現場組。太幕も張ってある。いずれも二代目、おニュー幕。これに「切味抜群」赤木幕が加わる予定なのだが、ケーズにいさんは到着が遅れているよう。広島から大盛りさん一家も。例によってアラブファンくんも当然姿あり。
そして昼過ぎ、"同志"スピードハナキオーさんがスーツ姿で現れる。仕事絡みの出張だからね。ハナキーくんと同行はナ○ダシくん。遅れて社長、善福寺さんも現れる。ケーズにいさんも到着。環さん、今日はひとり。メッシュのフィッシングジャケット(ポケット多いから使い勝手いいんだよね)でやる気満々。パドック付近でやすしにいさんとも。 ゴール板前には福山在住おさるさん。楠賞はもう何年も皆勤。そして山根先生と栃さんがともに姿を現す。エチゼンさんも当然来園。フクパークのタカライデンのポストカードを戴き感謝。上山勢、くもぎりまるさんとコルトさん。そして"大御所"Okuさんと江戸平多さん。超弩級カメラのお二人。土壇場で断念表明していた宇田山さんが「意地の」到着。

メーンレースまで

メインのアラブ優駿を前に、7Rと8RはA2特別、7Rは紫ラメの悪趣味メンコのホームランオー、まりおちゃんがメンコ写真をGet。8Rはシルクスピードにピカイチ。シルクスピードのG前を撮影しようとしたところ、「カ、カメラがいうこときけへんやんか!」むっちゃ焦るワシ。何とか問題解決で事無きを得る。
さて今年のアラブ優駿、金沢のハヤテサンダー(マーキュリサンダーの全弟)が直前辞退し、地方招待馬5頭、地元馬7頭の出走。すなわち、道営から牝馬ミチノクセンプー、山形上山より3歳王者アオイリュウセイ、福山ダービー1、2着の、牝馬アレクシアとヤマノダイオー、九州荒尾の10戦全勝コウザンハヤヒデ。地元は一冠目フクパーク記念の1、2着、タカライデンとランダムオーク、森澤軍団から間に合ったボールドヤングに上山OBアキタオーカン、牝馬だてらに差しでのし上がったシゲルロータイプ、田中道夫親子が送り込むバトルサンダー、補欠から滑り込んだアラブドラゴン、以上12頭。結局ハッコーディオスは再度脚部不安が出たらしく放牧へ。フクパークのみならず楠賞をも戦わずしてその栄冠を断念。
9Rのパドックが終わったところで我々、アラブ優駿のパドック待ちにはいる。するとパドックに福山の騎手2人、入場時に一礼。これに感心するまりおちゃんちーちゃん、「え!あのオトコマエ誰?」「あれが嬉や」とワシ。「うわームッチャオトコマエ!(おさるさん、どう思う?)」まりちー必殺のミーハー面食いモード。ここでまりおちゃん「ウ・レ・シさ〜ん!」と黄色い声援。こちらを向いて苦笑の嬉jk。5m隣の環さん、呆れて「なんで嬉やねん」。嬉jkへの声援だけでは不公平なので、ワシ「ワタナベ!」。ここでとうまゆきひろさんと初の面通し。そうこうしているうちに9Rも終わり、皆さん続々とパドックに集結。そして出走各馬がいよいよ登場。

パドック、そして返し馬

1番福山DB馬アレクシアは想像通り若干焦れ込み。「おさるさん、焦れ込みこれならマシな方かな?」「う〜ん、でも発汗が・・・」なるほど栗毛の腹周りにぐっしょりその跡が・・・「キンキ」紙上では「馬体仕上がる」とあるが、地元「福山エース」が事前に伝えるところによると、中間ダービー激走の反動で体調崩れたらしい。主戦藤本三郎がよりによって騎乗停止で件の嬉は代打。続いて登場の2番福山DB2着のヤマノダイオーは、堂々として素晴らしい馬っ振り。毛艶はダービー以上、今日はイヤイヤをする素振りも見せず、ゆったりとした周回。ワシの周りからもヤマノダイオー見た目良しの声があがる。ワシもヤマノに心奪われる、出来は12頭中1番の印象。
4番ランダムオークはフクパークと同様のパンパンの仕上げ。パドックの外目を周回。調子落ちはなさそう。しかしやはりフクパーク時が最高か。5番ミチノクセンプー、牝馬ながらなかなかの支持(最終的に単勝5番人気)。園田入厩後太さんが調教を付け、好感触と報じられてもいる。しかし周回は若干落ち着きがない。「父ファストセンプウじゃあ絶対二四なんて保たないって」とハナキーくんの血統評価。
7番は本命地元期待のタカライデン。435kとフクパークから−2k、更に馬体重が落ちた。ギリギリの体。周回自体はフクパーク時と同様鶴首の気合じんわりなのだが、今回のほうが若干カリカリで余裕がないか。血統的にはトラックマンサイドも長距離向きと太鼓判。ハナキーくんも「エルシドに遡る父カミガモライデンの底力に母父トライバルセンプーのスピードと完成度、期待できるよねえ」と好評価。額に垂れるタテガミの前髪がやたら長く、近藤正臣みたいである。8番荒尾から10戦10勝コウザンハヤヒデ。黒鹿毛の馬体が光り、459kの馬体重以上に雄大に見せる。9R前に他地区馬の参考レースのVTRが流れたが、コウザンの前走、格下相手とはいえ千五で2秒9ブっち切る様はハンパじゃない。
9番上山のアオイリュウセイ。いかにも強いホーエイヒロボーイ産駒といった馬体。すなわちぼってりとした腹袋とがっしりした首差し。殊に首周りの太さと胸前の厚さは圧巻。ホーエチャンピオンに何となく似ている。参考レースのVTRの走るフォームはエイランボーイさながら。ややもすると太目とも映るがお初なので何とも言えない。周回時の首が高いのがちょっと気になる。上山時代のアキタオーカンを全く問題にしなかったということもあり、タカライデン、ランダムオークに次ぐ支持を集めている。
タカライデン、パドック(42KB)
タカライデン、パドック
前髪長いぞ
アオイリュウセイ(41KB)
追走アオイリュウセイ
やはり掛かり気味

パドックから各馬本馬場に。ランダムオークとタカライデンがともにそれぞれゴール板前で膠着。アレクシアは首を上げ口向き悪く落ち着きのない様子。ヤマノダイオーは伸びやかに。ところがケーズにいさんの返し馬の見立て、「ヤマノダイオーの走り、首高すぎる、あれ2400保たんで」う〜ん。一方コウザンハヤヒデに対してケーズにいさんは「これ絶対長距離OK」。タカライデンはダクで通過。「赤木左手綱引っ張って馬御すのに必死やろ、厳しいんとちゃうか」と、これもケーズ兄い。アオイリュウセイはブリブリの馬体そのままにズドドドッとキャンター。
ワシの馬券、軸は概ねタカライデン、ヒモにパドック最高のヤマノダイオー、ホーエイヒロボーイの底力のアオイリュウセイの2点を厚く、そしてランダムオーク。プラス、ヤマノ−アオイの上山丼と、以上名の挙がった馬に、アレクシアから薄く流し。万が一必死の食らい付き走法が再度実を結ぶことを考慮して。全体的に上山と福山贔屓の買い目。コウザンはスピードと気配は認めるものの、やはりトライバルセンプーで千五までしか経験なしという点から、個人的に先入観を払拭できず、結局消し。

一年一度の決戦

いよいよスタート、今年は恐らくアラブ系競走での使用はこれ一回きりであろう、四角の二四のスタート地点からゲートが開く。
各馬一斉にスタート!というところ、「おおっと、タカライデンがちょっと躓いたような格好で今日もまた後方から」という吉田アナの実況に場内騒然(後でビデオ見直すとタカライデン、発馬で完全に腰砕け)。
予想通り西村コウザンハヤヒデが先手を取り8番枠からグーンと内に切れ込んでいく。連れて11番岩田ボールドヤングも内へ。これが2番手。赤木タカライデンは後手踏みも程なく進出、直線G板前では既に3番手にリカバー。他の好位を取りたい各馬も連れてあたふたと。一見余裕のない慌しいペースに映り、一度目の直線を通過。「もっとゆっくり行きゃあええて」とワシ。横でアラブファンくん「心配せんでもすぐにスローになりますよ」。その言葉通り、先頭コウザンの位置どりが定まると各馬の鞍上手綱を押さえてガクーンとブレーキ。馬は押並べて口を割って掛かる素振り。中でもタカライデン、発馬後手踏みからの3番手進出に脚を使ったからか、特に掛かりっ振りが目に付く。
1周目の1、2コーナー、隊列は完全に縦長。コウザンを先頭に中団馬群まではほぼ1馬身間隔、後方3番手永島差しのシゲルロータイプ、その後ろ平松ランダムオーク、最後方毅アラブドラゴンの各間隔はぽつんぽつん。1周目の3コーナー坂の下り、タカライデンが押さえられずに口を割り、掛かってボールドヤングを交わして2番手に。

2周目(42KB)
2周目正面スタンド前
先頭コウザンハヤヒデ(8番)、直後タカライデン(7番)、内ボールドヤング(桃帽)

そして各馬再度ホームストレッチに。先頭はコウザンハヤヒデ、掛かりもせず鞍上は手綱をがっちり押さえて人馬一体。後方をじっくり引き付けての溜め逃げ。2番手タカライデン、やはり掛かり気味。目前のコウザンを捉えに行きかね、いまは我慢といった状況。タカライデンの内が岩田ボールドヤング。ここから後ろの集団、4番手渡辺ヤマノダイオー、恐らく狙った通りの先団好位。その外前野アオイリュウセイ。内田中バトルサンダーその直後嬉アレクシア、口を割りながらも食らい付いていけるか?坂下ミチノクセンプー太アキタオーカンと続き、ここまで馬群。後方追走はシゲルロータイプとランダムオーク、アラブドラゴン。
レースが動くのは案の定2周目二角、やはりこの人馬、平松ランダムオークの「これしかない!」捲り発進。先のシゲルを交わし、先団馬群の外へ一気に、それが三角坂前。こうなると先団も動きが俄然激しくなる。各馬いよいよ進出、といきたいところだが、どの馬も手綱が動いて既にアップアップ。アオイリュウセイはランダムに寄られたあたりで何と一旦後退。4番手死守ヤマノダイオーもついていくのがやっと。
こうした後方の様子を尻目にコウザンはまだまだ余裕の手応え、まだ手綱がっちり。三分三厘、赤木の左鞭一発、タカライデンが勝負に。本気でコウザンを捉えにかかる。そして勝負は最後の直線へ。
直線入口、コウザンの外にタカライデンが馬体を併せに、コウザン満を持して追い出しに。これで2頭が一気に加速。後続と瞬く間に差が開き、マッチレースの様相。後ろではインベタで岩田ボールドが粘りランダムがいよいよやって来るが勝ち負けからはもう圏外。
必死で追うタカライデン、しかしコウザンハヤヒデ、一度は合いかけた馬体を再度突き放し逃げる逃げる、まだ逃げる。追うタカライデンの脚色も結局コウザンと一緒になり、コウザンハヤヒデ、完封のVゴール。鞍上西村、下から振り上げた鞭をそのまま天に突き上げ4歳日本一のガッツポーズ。
こうしてダイジェスト的に記すとコウザンハヤヒデの逃げ切りがさも予定調和、当然のような感じになってしまうのだが、ワシの見込みと感情の移ろいは、というと・・・三分三厘、コウザンがなかなかタれないのを見て「おいなかなか渋太いな」、とは思ったものの、直線入口タカライデンとコウザンの馬体が一瞬合いかけた時には「タカライデン差し切るはず」。当然構えたカメラの焦点はタカライデン。ところがゴールに近づいてくる二騎の馬体が全く入れ替わらない。「おいおい交わせんのか!?」→「えっ!!粘るのか粘るのか?!」→「うぉ〜!!すげ〜!!凄いぞ!!」カメラのピントはギリギリまでタカライデン、ゴール寸前、観念して咄嗟にコウザンにカメラを向けたがやはりうまくは行かず・・・参った。そして恐れ入った。

4歳日本一(47KB)
コウザンハヤヒデ
4歳日本一のゴール

さて3着は先に平松ランダムに捲らせた永島シゲルロータイプがランダムを再度差して蹴落とし入線、しかし2着タカライデンに遅れること5馬身。ランダムは結局4着。これに6馬身遅れて5着ボールドヤング。結局戦前の、総体としては他地区馬上位の見込みに反して、コウザン以外は掲示板を地元馬が占めることになった。6着一旦後退してまた盛り返したアオイリュウセイ、3番手評価もここまで。7着力尽きのヤマノダイオー、8着アレクシア(振り返るとこの5、6、7、8着争いはまた味わいがある、実直な兵庫OPホールドと上山、福山勢の力関係が窺われて)。アキタオーカン、ミチノクセンプーが9、10着。

感動の光景

コウザンハヤヒデ、そして西村騎手がだた一騎、馬場を1周してスタンド前にウィニングランに戻ってくる。西村jk、鞍上で右手を挙げて仁王立ち。するとスタンドから、誰がし始めたともなく、万雷の拍手が巻き起こる。その喝采の音量が、コウザンの凱旋の歩みに併せて4コーナー寄りからゴール前へと、あたかもウェーブのように押し寄せる。そしてその拍手に何度も何度も手を振りかざし応える西村騎手。コウザンハヤヒデも首をキッと誇らしげに高くもたげ、人馬とも、何とも颯爽とした、そして毅然とした姿。ゴールの瞬間の衝撃も凄まじかったが、このウィニングランの拍手と光景には比喩ではなく本当に鳥肌が立ち、背筋に電気が走った。グッと。
表彰式を前に、優勝のレイを懸けたコウザンが記念撮影のため馬場に現れる。ここでもお客さん祝福の嵐。おまけに口取り撮影の後、エチゼンさんが「こっち向いてくれませんか」と声を掛けると、ホントにスタンド側に馬を向けてくれたではないか。またこれで感激。
続く表彰式も祝福と感動の雨霰。式が終わるとお客さんの握手とサイン攻めに、西村栄喜騎手、最後の一人にまで丁寧に応じてくれてまた好感度。ちーちゃんまりおちゃん、もうメロメロ、大盛りさんも「うわむっちゃかっこええ!!」の連呼。
コウザンハヤヒデ、ウィニングラン(39KB)
コウザンハヤヒデwith西村jkウィニングラン
馬も毅然と
コウザンハヤヒデ、口取り(37KB)
コウザンハヤヒデ、口取り
栄光のレイ


こうして興奮と感動に包まれた今年のアラブ優駿が終わる。表彰式後も皆さんそれぞれその余韻を反芻するかのように回顧談義。「いやーよかったよねえ、これでまた秋が楽しみになるよ」と栃さんと。ハナキーくんは実にいい感じで感動に酔っている。「兵庫チャンピオンシップの時かて川原勝ってもあんな拍手起きひんかったよ」と環さん。

コウザンハヤヒデ、荒尾所属といえども強い馬はやはり強かった。ケーズにいさんの見立て通り、距離は充分保った。道中スローで他馬に軽く見られたか絡まれず楽ができたという見方もあろうが、只の気性勝ち短距離逃げ馬には溜め逃げは無理なわけで。今後のレースでの活躍が楽しみになってきた。リタイヤ中のハッコーディオスとの対決、そして"九州の逃げ大王"フクヨシオーとの顔合わせは是非。

レース後は、善福寺さん、山ちゃん、ケーズにいさん、ハナキオーさん、まりおちゃん、ちーちゃん、環さん、小林くん、アラブファンくん、そしてFrom金沢のきたさん、遅れて登場のひろちゃんとで、園田駅前のがんこでオフ会。飲み足りぬ、喋り足りぬハナキーくんのために白木屋で二次会。こうして特別な一日が終わるのであった。

最後に

はやり筆足らず、あの感動はちっとも伝えられない。「筆が心を越えられない」といいましょうか。で、結局最後はベタにキザに、こうなるのかな。

◆ この日この場に居合わすことができたことを誇りに思う。 ◆

2000.5.21 記

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