2000年度、瀬戸内賞観戦報告

 2000.6.4、福山、1600m

西日本各地の4歳中央補助馬(この「中央補助馬」ってやつ、ワシ実のところ、どういうものかイマイチよう解っておらぬのですが、どなたかご教授いただけませんか?←[6/8補足:馬主会が競走馬の購入代金の一部を補助した馬がいわゆる普通の「補助馬」、で「中央補助馬」はその補助金をJRA出した馬、ってやつとのこと。3号馬さんはじめ、ご教授感謝])が福山に集い1着賞金500万円を争う交流重賞、瀬戸内賞。過去3回の勝者は古い順に、ニホンカイユーノス、チュウオーロッサ、パワーレイク。いずれも全国に名を知られることとなるスターホース。「"マルJ"限定」なれど、なかなかに侮りがたいレースなのである。

そして今年の瀬戸内賞、地元福山をはじめ、兵庫、高知、益田の4地区の所属馬が登場とあいなあった。
中でもお目当ては、3月26日、益田史上最高賞金レースとして話題を呼んだ4歳中央補助馬交流特別、まほろば賞を制した益田のノア。5月5日にはイッテンヨカイチとの益田4歳頂上決戦、益田さつき賞でライバルのヨカイチを5馬身ち切って快勝し、益田4歳最強をアピールし、勇躍福山入り。
高知からは5月5日の高知アラブ三冠の第一関門、マンペイ記念の1、2着、アポロスイセイとエムエスベッカー。いずれも快足自慢。マンペイ記念では、逃げたかったエムエスを、「楽に逃がしたくなかった」と、アポロが逃げてそのまま押し切り、あわてて追走のエムエス、そして有力チーチーキングの方が先にバテるという展開だったとのこと。タイムも破格。(このあたりのマンペイ情報は、ともろうさんの掲示板より得ました。)そのアポロスイセイ、まほろば賞ではノアを意識しすぎて無理逃げしすぎたらしく、今回は抑えるのか、それともマンペイ圧勝に味をしめてやっぱり行くのか、要注目。陣営は控えたいらしい(『福山エース』より)が、そうなるかどうか?
兵庫からは2頭。フクパーク記念4着馬(とはいうものの7頭立てだが)、ヒュガチカラと、まほろば賞に出走したミヤジベスト。特にヒュガチカラはフクパーク4着が効いているのか、『福山エース』と『キンキ』では気持ち悪いくらい重い印が並んでいる。(『福山特報』のみは低評価。)「いくら何でもそりゃやりすぎやろ」と、兵庫の人間としてはかなり恥ずかしい。
残る5頭は地元福山勢。とりあえず筆頭は、逃げ快速のモナクマリン。マツノホープの全弟。ここまで重賞路線に乗り続けているだけに地元勢中では実績上位。前走完璧な逃げ勝利でここへ弾みをつけて臨んでくるとのこと。因みに『福山エース』の見出しでは「音速の貴公子」!おまえはセナか!地元次位はモリヒロシャープ、その他ドンプール、メカリジョージ、ホウワセンプー、以上フルゲート10頭。

というわけで、以上の、楠賞には姿を見せなかったスター候補生たちを見届けんと、福山へGo!という次第。臨時快速姫路から「チボリ号」。福山には10時20分着。当然1レースに余裕で間に合う。梅雨直前の時期なれど、天候は花曇りから晴れへ、まずまず好天。
お目当ては当然瀬戸内賞なわけであるのだが、いざ行ってみると、この日は非常に見所満載な1日であったのである。そのあたりは以下瀬戸内賞レポートと併せて・・・

競馬場に到着し、ゴール板前のベンチに早くも高知のもりもさんの姿が。始発で来て新幹線を使ったら10時前に着いてしまったとのこと。勿論高知2頭の見届け役。4レース前の正午前にOkuさんが到着。そこで予想紙に目を通した氏が開口一番――
見物その1:4R、C2−20組、1250m
「おいユートエクセランこんなところに出とるで!」「え、それって何すか?」疎いワシに「去年の荒尾記念本命で2着に負けたダイメイゴッツ産駒やで」そうですか、では見てきましょうとばかりにパドックに足を運ぶワシにOkuさんのアドバイス「まあ馬格のエエ馬やわ、こんなクラスにおるような器じゃないことは一目瞭然」。実際目にしてその言葉に偽りなし。薄い皮膚に隆々とした筋肉、510k超の黒鹿毛。ここでディープさん来場。「ユートエクセランに間に合うように来ました。」サスガとしか言いようがない。
さてその4レース、件のユートくん、2枠から飛び出しハナ、道中余裕の逃げでそのまま直線、2番手が多少迫ったところで若干気合いを入れられそのまま楽勝のゴール。タイムは当日の一二五の平均よりコンマ7、8秒は速い。「まあこのままB級上位までは一気とちゃうか、そうでないと困るし。」と、最後はOkuさんのコメントで締め。ちょっと拾いもののレースだったな。

続く5レースでは兵庫のヒュガチカラに同行の田中まなぶぅが、対抗評価の馬に騎乗、一歩も退かぬ先行争いを演じたが結局着外。続く6レースでは同じく兵庫のミヤジベスト帯同の永島太郎ちゃんが登場。無印で口向き最悪、おまけに1枠という、他地区騎手には非常にシビアな条件の下、それを2着に持ってきてちょっとサスガ。しかしおかげで馬券を外したワシにとっては予想外の迷惑。
昼過ぎに本日のオフ会幹事、香川のともろうさん到着。今日はカブにて来福。
見物その2:7R、C2−3組、1600m
ここに春先のクイーンカップの勝者にして、その時下したアレクシアが後に福山ダービーを制したことから「幻のダービー馬」と一部で呼ばれるイクノシンプウが登場。同レース出走馬中、唯一の4歳馬。ワシ、目にするのはこれがお初。パドック周回では最初から最後まで首を左に向け、ちょっと気性難かなと思わせたが、返し馬では落ち着いている。レースは何の苦もなくハナを奪い、道中全く折り合って、一糸乱れぬ走りっぷり。鞍上岡崎、最後まで手綱余裕のままの逃げ楽勝、タイムも優秀(これ、この後ちょっとネタになりますから。種明かしは瀬戸内賞のくだりで)。どうも冗談でなくホンマに強いような感じである。こうなってくると、銀杯がますます楽しみになってきたぞ。

こんな具合でメインまでの時間が流れる。馬券戦線、的中レースの方が多いのだが低配当のため、なぜか赤字が膨らんでくる。メインを控えた8レース後のパドック前のベンチでおさるさん発見。仕事開け不眠のまま今来場らしい。
イクノシンプウ(36KB)
イクノシンプウ
「幻のダービー馬」
ノア、パドック(57KB)
ノア、パドック
パツキンが眩しい

そしていよいよメインレースの瀬戸内賞、出走各馬がパドックに登場。以下気になった馬。
まずは何といっても注目のノア。当然単勝1番人気。3枠3番。447kと馬体重-10だが、その数字以上に相変わらず細く見せる馬体。毛艶が思ったより良くなく、有り体に言えば、馬券を買いたくなる馬体ではない。ただしたてがみと尾っぽが金髪で綺麗、パドックメンコ(レースでは取る)着用で素顔は確認できず。
高知の2頭、エムエスベッカー、アポロスイセイはそれぞれ8番9番でお隣どうし。いずれも毛艶は悪くないが、馬格がある分、エムエスの方が見栄えがする。アポロは期待していたよりは平凡(レース後ともろうさんが「今日のアポロスイセイはマンペイの時と違って全然ちっちゃく見えた。」と仰っていた。)。
5枠5番にモナクマリン。馬体重410kそこそこの軽い馬だが、見た目はそれを感じさせない。ただし首差しが細くて体の幅がない。毛艶とか胴回りとかが、全兄マツノホープと少し似ているかな、と。好気配。
マリンと共に地元期待のモリヒロシャープは7番。先行激化の展開が予想されてか、好位からじっくりレースを進められることが見込まれて、マリンを差し置いて単勝2番人気。馬自体は、さほど垢抜けているという印象ではない。顔もちょっと三枚目系。
1枠1番に兵庫のヒュガチカラ。例によって黒い馬体に深めのブリンカー。馬格がそこそこあり毛色が毛色だけに、人気の下がるような見た目ではない。4歳にしてはじんわりとした気合い。フクパーク4着、そして冒頭に記したとおり予想紙の重い印のお陰で単勝モナクマリンに次ぎ4番人気。
各馬本馬場入場。返し馬、ノアは鞍上岡田大の手綱がっちりで、気性勝ちな面をのぞかせる。高知の2頭は揃って入場、内外離れて併走返し馬。「おい今日どっちが先手取る?」と密談でもしてるのか?と、皆さんでネタにする。
ノア、マリン、アポロ、エムエスの比較的力上位4頭が先行するのは明らかなのだが道中のペースがどうか?ガンガン争うのかすんなり位置取り決まるのか?いずれにせよ、ノアのセンスをかなり見込んでいるワシである。で、馬券の予想、やはりノアから流し。高知2頭とマリン、あと、全然信用していないがヒュガチカラへ、馬券に絡まれた場合に持っていないと非常にイヤなので。頭ノアの連単と保険で連複。タテ目はなし。

1周目(36KB)
1周目スタンド前
先頭モナクマリン2番手アポロスイセイ

さてレース発走。福山千六は向こう正面中程、ここから1周半。注目のスタート!
外枠勢の発馬がよい、当然高知2騎は前に。控えるだの何だの言っていた花本アポロスイセイが結局徹底先行で暫しハナ。モナクマリン、ノアも当然前へ。程なくマリンが先頭に立ち、2番手アポロ、3番手外ノア内エムエスの順、4頭3、4馬身圏内の差で1周目の正面直線を通過していく。このように隊列は定まったものの、油断したらライバルに先に行かれるといったムードで、発馬以降道中は火の出るような超ハイペース、肉眼で眺めているだけでもそれと知れる程。目撃しているワシとしてもこの4頭の動向に目は釘付け。他の6頭は先行4頭から離れて縦長。後方各馬に関しては、この隊列の形態しか印象にない(後日NARのデータで確認したところ、5番手モリヒロシャープその後ろはドンプール、ヒュガチカラ、メカリジョージ、ミヤジベストの順で1コーナー通過)。
そして鍵となる2周目1、2コーナー。相変わらずの、糸を張りつめたかのようなぎりぎりの逃げ比べが延々続く中、3番手ノアが自力勝負に。ハイペース持続で逃げる先頭マリンを無理から捉えに動く。余りに強引。しかしノア、捲りを打つとて前が止まらぬ故一気に決着はつけられず、先行激化の火に油。結果ますます消耗戦の様相。向こう流しでまずアポロスイセイが音を上げる。変わってノアとエムエスベッカーが2番手に、進出ではなく脱落せず生き残っていると言った方が正解か。先頭は依然モナクマリン。
このまま四角を回り最後の直線にやってくる。粘るマリンも2番手ノアも既に脚はもうバタバタ、しかし後方追走勢にこれを交わす勢いのある馬もおらず、逃げるも追うもバテバテ状態。最後はモナクマリンがそのままゴールにたどり着き、地元福山勢瀬戸内賞初のV。ノアは強引な早仕掛けが仇となったか、結局最後は脚をなくし2着まで。3着エムエスペッカー、4着中断以降から唯一掲示板に載ったモリヒロシャープ、5着アポロスイセイ。ボコボコの殴り合いのような先行争いを続けた4頭が結果全て掲示板確保。
余りに正面切っての逃げ勝負、無謀と言おうか愚直と言おうか。しかしそのケレン味のなさが、4歳春駒の清々しさに相応でなかなか良かったかな、と。
モナクマリン、ゴール(40KB)
モナクマリン、優勝のゴール
モナクマリン、口取り(45KB)
モナクマリン、優勝口取り

タイムは1分49秒4。因みに先に触れた7レースのイクノシンプウの勝ちタイム、1分48秒3。イクノのタイムはかなりの好タイムらしいのだが、それにしてもこの差はやはり超ハイペース後半バタバタのなせる業かと。(追記:おさるさん情報、この2レースのタイム比較に関して、もっと凄い事実が。翌日のレースダイジェストにて両レースのテンの1000mのタイム比較を取ったところ、マリンの方がイクノより10秒くらい速いそうな。それで結果タイムがあれ。恐るべき超ハイペース全馬バテ。)
まあ、何れにせよ、モナクマリンはこれが初重賞制覇。群雄割拠状態の福山4歳戦線にまた新たに重賞ホースが誕生。イクノシンプウともども、銀杯が更に楽しみとなる結果となった。
ノアは残念。しかしまだ素質と才能だけで走っている感が強い現状であの走り。自力は相当と見てよいのでは。ここから心身共に成長して一皮剥けるか、「永遠の少年」さながらに一生こんな感じでいくのか、今後も注目。ミーハー的関心は非常にそそられるのだよなあ・・・高知両馬は見せ場充分だったと思う。今後も「突っ走りコンビ」で、頑張ってね。
というわけで、一大スペクタクルの如きレース、いやはや堪能させていただきました。

見物その4:10R、薄暑特別、B1、1600m
園田森澤厩舎から4月に福山転厩のコモスキーが登場、これが移籍3戦目。園田時代の森澤青メンコから、黒地に緑フチのメンコに変わってややイメチェン?先行抜け出しで勝利して、これが彼の福山初白星。目指せA級(=オープン)。
これにて本日のレース、終了。この後福山駅前のビヤホールでオフ会。ともろうさん、もりもさん、ディープさん、FUKUさん、そしてワシ。在来の鈍行で帰るため早退して帰路に。

来週は園田・福山交流、山陽杯、1週空けて25日は銀杯。「福山強化月間」だな、こりゃ。

2000.6.7 記

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