第26回金杯観戦報告

 2000.8.13、福山、1600m

ワシのお盆の重賞観戦第一弾は金杯@福山。「灼熱のミレニアム決戦」(『福山エース』風)を昨年に続き今年も見届けるべく、一路福山へ。
今年7度目の福山行きは道連れがひとり。すなわち"園田系のホープ"ブリザードセイバー(ブリセイ)くん。福山に興味をお持ちのようだったので、金杯いかが?と誘ってみたら、行きますということで同行成立。青春18切符を使って(ワシ的には18切符が1日分捌けて願ったり)、往復旅費2300円也で鈍行GOGO。
指定席に入りたいというワシの我が儘で、チボリ号より一つ早い乗り継ぎパターン、西明石6:47発→岡山8:52、乗換9:10発→福山9:55着にて。ファンバスの始発で競馬場着。

ところが指定席、既に売り切れ。地元の方に聞くと、9時半の時点で売場に行列、10時の開門と同時に売り切れとのこと。暑さ逃れ、考えることは誰しも同じ。早起きさせたブリセイくんには申し訳なかったが、しょうがないので一般席観戦。到着早々尾道ラーメンを二人でかき込む。旨さは申し分ないが吹き出した汗を冷房で退かせることが出来ず、参る。場内で見知った顔発見。関西在住の某くん(本人の希望で敢えて匿名)。とりあえず3人で競馬。
前日に台風接近の予兆があった天候だが、台風は逸れてくれ、結局ドッカン晴天。時折ちぎれ雲が飛んできては過ぎゆくが、つかの間の翳りしかもたらしてはくれない。パドック→返し馬→レース観戦、と、クソ真面目に競馬に取り組む3人。返し馬を観察しにコース前に出る度に陽差しがピーカンになるところが恨めしい。ワシはのっけの1レース、12倍を的中で福山での先輩としての面子を保つが、その後はさしたる成果もなく、収支トントンのままメインへ。ブリセイくんは苦戦気味も、話題となっていた連敗記録をストップさせ、さらに勝利を上積み。焼きソバもレースの間にしっかり押さえる。
メインのパドックでFUKUさんにお会いする。そのFUKUさんの紹介で、『のんびり福山競馬』主催、地元の"福山競馬万歳"さんと、その掲示板の常連さん奥川さんに面通し。福山地元ネット系の方々の"顔"が初めて見えてきた感。(おさるさんは別格よ!)

メイン前の第8レースはC2級5組のマイル戦、ここにあのユートエクセランが登場。前々走2着で連勝は止まったが前走勝利でまだ勢いはキープ。本日も他馬にちょっと道中絡まれながらも競った馬を逆に潰して逃げ快勝。

※レースのみに興味のある方はここからお読み下さい
そしていよいよ福山真夏の大一番、金杯。ファン投票により選出された有力馬が距離千六に覇を競う。
とは言うものの、今年の金杯に関しては、出走に漕ぎ着けるまでがサバイバル。
すなわち、昨秋以降、地元勢には無敗で政権樹立したアキフジクラウンは佐賀帰り後の福山桜花賞でパッピーケイオーに敗れ、また気温の上昇とともに調子を落とし休養入り(桜花賞後骨折したとの情報もあり、現在は放牧中)。アキフジ同様昨秋から常に上位定着して桜花賞を制したパッピーも6月山陽杯の時点で疲労蓄積、2着に敗れそれ以降連休。次位モナクダイキチも桜花賞後いち早く休養入り――
といった具合に、昨年度後半から今春までの三強が揃って頓挫。コンスタントに出走を要求される福山戦線でのトップ維持の難しさが現れる形となった。
上記3頭に代わって台頭したのは、山陽杯でパッピーを破って優勝したワールドアイ。その後の夏2走も1着2着と堅実にまとめ"暫定王者"の文字がチラホラと。そして快足ミヤノウイナー。明け4歳時にタッカースカレーを破った素質馬がようやくA1定着。夏場のオープンは一律距離千六という条件を味方に、逃げ連勝中。
あとは混戦模様。実際のところ、どの馬もここまで出走がかさんで疲労の色は隠せない。盆開催を過ぎれば福山競馬は一ヶ月の夏休み。最後の力を振り絞り、灼熱のマイルに激闘の火花を散らす。

そして今年のファン投票の結果はこの通り(ここをクリックすると別ウィンドウに表示されます)。これを承けて、得票上位6頭に選考馬を加え、以下の通り出走馬が決定される。
・ワールドアイ (投票2位)
・ピアドハンター (投票3位)
・マルサンダイオー (投票4位)
・アサリュウキング (投票5位)
・マツノホープ (投票7位)
・ミヤノウイナー (投票8位、選考馬)
・ムサシボウナナ (投票17位、選考馬)
・コモスキー (投票?位、選考馬)
・トモシロヒット (投票対象外、選考馬)
(なお、投票6位のステイブルラインは登録するも取り止め。)
投票上位馬ということでピアドハンターやアサリュウキングが出走するというあたりがいかにもファン投票、昔の実績と知名度がモノを言う。三強を欠き、一見ちょっと小粒な面々か。
出走馬中、本命視され、注目をうけるのは、ワールドアイでもミヤノウイナーでも、マツノホープやマルサンでもなく、実はこの馬、トモシロヒット。
6月以降B級から4連勝。いずれも逃げ切り。圧巻は前走、初のA級昇級で臨んだA3マイル戦、タイム1分44秒6!すなわちアサリュウセンプーのレコードにコンマ4に迫る時計。ただ1頭突っ走り、他馬を2秒8ぶっちぎる(2着馬の時計は1分47秒4、これは常識的なタイム)。これで一躍脚光を浴び、ファン投票実施時には投票対象馬一覧表に掲載されていなかった(つまり投票対象外)ところを、大抜擢。一足飛びに重賞の大舞台。(このあたり今年冬の頃のトライバルサンダーに状況似てるかな)

さてパドックに出走9頭が登場。
1番マツノホープは栗毛の馬体をスカッと見せる。いつもながら皮膚の薄そうなイイ毛艶。肩をちょっと潜らせるような歩様は癖か?常にA1で掲示板圏内に来るも、斬れ脚が持続しないという脚質故かどうしても勝ちきれない。自在性には長けているのだか。さてどう乗る?鋤田先生。
2番マルサンダイオーは陣営が折り合いの悪さに業を煮やしたか、今日はメンコ着用(レースでも)で登場。3走前の山陽杯ではパドックメンコさえ不着用だったが、いつからのことか?正直メンコ似合わない。数字は馬体重-2kだが腹回りがワシのイメージよりもぼてぼてした印象。
そして3番トモシロヒット。馬体重500k超の栗毛の雄大な馬体。そして特筆すべきはその体型。背が高く胴が詰まった、見るからにスプリンタータイプ。この千六は絶好。ブリブリの馬体。ただしパドック気配はガチャガチャそわそわ、かなり落ち着きがない。某くん曰く「入場時から耳きょろきょろさせてましたよ」、さてこの気性、どうか?
4番はピアドハンター。てんまや賞(7/9)で目撃した時から比して、毛色の黒さが戻り、気合い的には最近で記憶する中では一番。と好評価したのも束の間、程なく馬っ気爆発。何だかなあ・・・因みに青鹿毛の彼、イチモツも黒い(下ネタ失礼)。
5番ワールドアイ。初夏以降絶好調。夏負けを心配したが全く杞憂に終わった。黒鹿毛の毛艶と張り、気合い乗り、踏み込み、全て素晴らしい。500k超で胴に身の入った真っ黒なその馬体は「黒い重戦車」と呼ぶに相応しい。因みにこのワールドとトモシロヒット、ピアドハンターは同厩(高本友芳厩舎)、出走9頭中実に1/3を占めた。
6番ムサシボウナナ。前走は真夏の牝馬決戦ビーナス賞、その勝者。さすがにここに入ると劣勢か。馬自体は毛艶良好、栗毛の牝馬然とした線の細さ。顔立ちと相まってかなり可愛い。
7番兵庫でもお馴染みコモスキー。上位が手薄になった影響でインチキ臭くA級入りしてしまったが、前2走A3、A2を連勝。登り馬として恥ずかしくない成績。ただし今日は予想紙も報じている通り、動きが硬い。歩様のみならず、全身の身のこなしが。
8番アサリュウキング、10歳馬。近走良積なしもファン投票堂々5位。なお彼はこのレースにて引退。自身過去3回2着した(5、8、9歳時)思い出のレースにてコースとファンに別れを告げる。勝負になりそうもない馬の出走の是非、そう言うなかれ。馬体自体は特に変わりもない。
9番大外ミヤノウイナー、逃げ同型の超新星トモシロヒットに対し、快足オープン馬の先輩としてどう対するか。予想各紙が歩様硬化を強調。それを読んでしまった上ので感想ではあるが、確かに肩の出が硬い。単なるコズみか疲労蓄積か?

やがて各馬本馬場へ入場。トモシロヒットが入場してキャンターに下ろすときにちょっと暴れる。マツノホープ、ワールドアイあたりは非常にいい返し馬。アサリュウキングの返し馬を見てアサリュウとは初対面の某くん「品のあるスッキリしたいい馬ですね」、うんうん。
そしてトモシロヒット。上に飛び跳ねるような重心の高い、そして頸を左にひん向けた軽いキャンター。「あんな口向きで大丈夫か?気に入らないっすねえ」と某くん。FUKUさんにもトモシロのチャカチャカぶりを訊くも「前はあんなんだったかなあ?」と、どうも日頃はそうでもないらしい。最後にミヤノウイナー、ごく軽く流す。
トモシロヒット、(38KB)
トモシロヒット、返し馬
「瀬戸内の爆速王はワシじゃけ〜」
ミヤノウイナー(40KB)
ミヤノウイナー、返し馬
「ちょい待たんかい!」

で、ワシの予想、中心はワールドアイ、これから本線がマツノホープ、お楽しみ馬券。トモシロヒットはやはり気配のうるささが気になるので押さえまで。それとトモシロ−マツノのタテ目。無茶馬券はアサリュウから100円総流し。

定刻となり、いよいよレース発走、向こう流し中程、千六のゲートが開く。
各馬綺麗な発馬から、やはり黒川トモシロヒット内3枠から労せずハナへ。二の脚もついてぐんぐん飛ばす。負けじと大外ミヤノウイナー、鞍上久保河内が押して押して前へ、トモシロのハナを叩きたかったのだろうが、それは叶わず外目離れず2番手。この前二騎を見て、インベタ鋤田マツノホープ、続いて岡田ムサシボウナナ、嬉ワールドアイは自在性をフルに発揮、先団の競り合いからは身を退いてこの中団、ゴチャゴチャせぬ場所を占める。石井ピアドハンターは脚質と正反対の後手踏み後方。片桐アサリュウがついていけず道中殿は止むなし。
正面スタンド通過時には、先頭内トモシロ、1/2馬身差で外ミヤノウイナー、両者手綱がっちりで勝負は1、2コーナーから向こう流しへ。
向こう正面半ば、レースが動く。ワールドアイがぼちぼち進出開始、内ではマツノホープ、鋤田が押っつけ押っつけ。各馬前へ前へ。しかししかし、トモシロヒット、後方をあざ笑うかのように三角手前で馬なり加速、事も無げに差を広げ、3コーナー通過時で既に後方をぶっちぎる。ミヤノウイナーは向こう正面半ばでどうもトモシロのペースについていけなくなったのか、久保河内の手綱が激しく動くも追走は三角手前まで、あとは抵抗空しく置いてけぼり。
最後の直線、当然トモシロの大差ぶっちぎり。鞍上黒川、ゴール前30m程で、客席に向かって左手を突き上げ、ガッツポーズを通り越し、鞭を振り回しオラオラ状態。そして優勝のゴール入線時に再度スタンドに向かってガッツポーズ。叩き出したタイム、1分45秒2!前走のタイムには及ばぬが、やはり爆速。フロックでも何物でもない、正真正銘のスピード王者。
トモシロの圧勝劇はひとまず置いて、熾烈を極めたのが2着争い。インのマツノホープは結局四角辺りで降参、トモシロにはちぎられたがミヤノウイナーが鞍上にしばかれながら粘る、そして押っ取り刀でワールドアイが来る。最後の直線、内へミヤノウイナー、その外にワールドが併せる、さらにその外、牝馬ムサシボウナナの食らい付き。結果ワールドが2着に届き、3着ミヤノ、4着ナナ、着差それぞれクビ、クビ。
ワールドアイの入線タイム、1分47秒2、当日の馬場にすれば過不足ない時計。このタイム域で、現行A級勢力は今回も地力相応の争いをしたということだろう。しかしこの既存勢力の遙か大差2秒先に、楽勝のトモシロヒットがいる――この事実、彼のスピード能力、絶対値の違いについての何よりの証左かと。

レース後黒川騎手はトモシロヒットをウィニングランへ導く。スタンド半ばの表彰台の前を通過すると、なかなかに盛大な、しかしいかにも身内的な祝福の歓声が起こる。これに応えて黒川騎手、またまた派手に鞭を天に振るう。

トモシロヒット、ウィニングラン(40KB)
トモシロヒット、ウィニングラン
鞍上黒川会心の笑顔

いやはや恐れ入ったりトモシロヒット。時計の裏付けはサスガに伊達じゃない。某くんがレースの3コーナーで既に吐いた言葉「やっぱり馬券は素直に買わなきゃ駄目だな」ではないが、あのタイムを見せつけられては黙るしかない。4歳のミスターカミサマに続き、福山オープン勢に、また1頭、華も兼ね備えた強力馬が登場!である。
他の馬はこんなところ。4着ムサシボウナナは大健闘だろうが、それ以外の順位の変動は、この面子では不思議じゃない。ワールドアイ、暫定王者格、ご苦労さん、かな。2着死守はまあ及第点か。

こうした鮮烈な競馬を観戦しおせて、帰路は再び鈍行の旅。全行程を着座できてラッキーではあった。その道中某くんのiモードにて、金沢MRO金賞、マッキーローレルwith平松っちゃんが優勝と知る。取り敢えず喜び、園田系人間として一応振る舞う。三ノ宮で2人と別れ、ご苦労さん。関西からの福山アラブ観戦の環(「たまき」じゃなくて「わ」です)が、草の根的ながらも芽吹いてきたようで、今日はちょっと嬉しい気分でありました、はい。

さて、やや気は早いが10月のタマツバキ記念を睨んだハナシを。
このスケジュール、福山勢にとって不利なのは、この後一月の夏休み明けが9月中旬。タマツバキまでに恐らく一走しか機会がなかろう。まあ金杯をはじめこの初夏から盆までの結果からして、福山代表は余程のこと(パッピーが秋開催初回で復活、一大デモ敢行とか、福山陣営が裏技使うか)がない限り、トモシロヒットで決まりかと。体調はくれぐれもキープを。
タマツバキは園田、距離一八七。トモシロ自身は明らかに短い距離向き、千六からの270mの距離延長をどう乗り切るか。しかしそのスピードは、全国随一であるとは疑いない。
こうなると、注目はハナ争い。トライバルサンダーの首に鈴をつけに行けるのは、トモシロヒット、キミしかいない。これは凄いモノが見られそう。だからサンダー、お願いだからクイーンカップじゃなくこっち(タマツバキ)に来てくれよ。

追伸:今回の観戦記にレースの画像がない理由、それはね、
「ゴール写真の肝心な2枚だけ、ピンぼけやっちゅうの!」いつまで経っても写真下手っぴな、駄目なワシ、トホホ・・・

2000.8.19 記

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