第32回摂津盃観戦報告

 2000.8.16、園田、1870m

盆の園田開催、恒例のハンデ重賞、摂津盃。真夏の、それも古馬重賞ということもあり、例年少頭数だが一線級が鎬を削るのが通例。
しかし今年は古馬トップ三強がいずれも姿を見せず、若干寂しい顔ぶれ。すなわち上半期の両輪、ワシュウジョージとトライバルサンダーは5月の兵庫大賞典以後レースから遠ざかり、また、王者エイランボーイも7月はじめのサマーカップで戦列復帰するも、最大目標は10月のタバツバキ、ここは重賞ゆえの厳しい流れとハンデ戦の重斤を嫌ったか、前開催の平場オープンに回り、お目見えはなし。同様に不休のフクパーク記念馬、4歳タカライデンもエイランと同じローテーションでここはパス。
「オモロないなあ」しかししかし即断するなかれ。

代わって一躍スポットライトを浴びることになったのは6歳シャインマンリー。「それってタッカーのアラブ優駿で3着になっただけのド平オープン馬やろ、ワシュウジョージの年子の兄貴の。大したことないやん!」ところがどっこい、オープン二線級でマキオリンポーらと火花を散らした5歳初秋、その後半年休養の後、今春復帰、休養明け2走目4月のS1戦(大賞典への試走)で進境著しいところを見せつける。先行してからの最後の脚の粘りと斬れが休養前とは大違いでヨシゼンの2着。大賞典はさすがにサンダー、ワシュウには大きく着差を開けられたが、マイクリス、ヨシゼンとの際どい3着争いで道中2番手から4着死守。三強と当たることなく過ごしたその後は、5月末のスプリングカップ以降、地力の違いを見せつける3連勝。殊に前走の姫路千八は、体調上向きのヨシゼンをも問題としない逃げ楽勝。初の重賞戴冠に一気。もう"愚兄賢弟"とは言わせない。
ケイエスヨシゼンも登場。大賞典後はiモード掲示板に引退(=実質廃馬)のデマカキコが流れたり、6月福山の山陽杯を登録しつつも回避、その実は身体ボロボロと報じられたりと、マイナスムード一色だったが、7月姫路で復帰、マンリーには千切られたが2着死守で最低限の格好はつける。当然目標は摂津盃、そろそろハンデも軽くなり、距離は短いながらも体調良化と本人がやる気になりさえすれば・・・兵庫所属馬史上重賞最多勝利(12勝)と、悲願の獲得賞金2億円をめざし、参陣。
一昨年の二冠馬、タッカースカレーにとっても勝負どころ。六甲盃でサンバコールに屈し、5歳以降は重賞獲りの好機を悉く逃す(殊に昨年摂津盃、白鷺賞、今春播磨賞)が、三強不在のここは是が非でも。播磨賞以来となった7月姫路開催のS1千五戦、ド本命でアドミラルにハナ差負けるあたり、やっぱりヤバいか?いい加減ピリッとしないと太さんと曾和親分が泣くで・・・
以上が有力3頭。まあこれに昨年当レースの2着馬(「万馬券の片棒を担いだ(by 吉田アナ)」)にして、昨秋S1平場で差しの猛威を振るった、但し新春賞でコケて休養、明けてイマイチのマキオリンボーを含めて3.5強か。「やっぱりメンバーぬるい!」そうですか、トホホ・・・

前日の日本海特別、ノア激勝の興奮醒めやらぬ、そして益田遠征の疲れが心持ち残るところ、さあ灼熱の園田へ。天候本日も晴天なり。
競馬場に乗り込む前に、"リーダー"前田さんとともに元町WINSB館の場外に寄り道。リーダーは下原の出走レース全てにせっせと単勝買い。競馬場には正午過ぎ頃に到着。
すでにパドックにはまりおちゃんちーちゃんをはじめとする"だんまく隊"の皆様が横断幕を装着済み。張り出した幕の数、実に7枚!ブラボ〜!!園田系の皆さん、既に相当数の方が集結。
しかしまあ、とにかく暑い!パドックで真面目に下見しようものならホンマにアタマがクラクラしてくる。ここで気分悪くなっては元も子もないので、スタンドに腰掛けて、だらけモード、体力温存策に出る。前日益田で一緒だったKKKさん、ディープさんもご来園。東海のおーたさんもお見えになっている。
スタンドに腰掛けてのだらけ中に、つい最近"EOS55withAPO70-200mmのオトコ"になった、環さんが声をかけて下さる。件のカメラ購入に一枚噛んだワシとしては、環さんが「カメラごっつええわ〜!」と、満足げにこの盆の彼の遠征、MRO金賞@金沢とくろゆり賞@笠松の話、そしてカメラの操作感とその戦果を語って下さるのには、聴いているこちらも嬉しい気分になる。
この間、第6レースで"リーダーのお気に入り"下原騎手が発馬後即落馬をやらかし、場内を騒然とさせる。次の7Rは乗り替わったが、無事に摂津盃には騎乗の模様。

メイン前の9Rのパドック終了後、摂津盃のパドック待ちに入る。前の柵には横断幕。このあたりに皆さん集結。さすが盆開催、通常よりカメラ多し。
さて摂津盃出走馬、前述の4頭を含め、内枠より順に、サンユウラピート(52k)、マキオリンボー(55.5k)、タッカースカレー(57.5k)、アローパッション(52k)、イチノタイトル(52k)、シンセイマックス(52k)、ケイエスヨシゼン(57.5k)、シャインマンリー(58k)、以上8頭。(()内は負担重量)。いかにも適当な感じのハンデ付けながらもそれなりに妥当なところが笑える。因みに摂津盃、アラブ系にて施行は今年今回で最後となるらしい。またしてもアラブの領分が浸食されていく・・・
馬体重発表。夏場ながらも、どういうわけかプラス体重の馬が大半。殊にヨシゼンの+7kでの505kと、マキオリンボーの+5kが個人的には気に入らない。マキオはもっとスカッとして出てきて欲しかった。
そしていよいよパドックに各馬登場。
本命大外シャインマンリー。明るい栗毛のすらっとした馬体。かつては頼りない印象だったが格も上がると見栄えも違ってくる。スッキリした仕上げに文句はない。栄誉のトップハンデ、堂々本命。
タッカースカレーは相変わらずのデカさ。馬体重変わらずの527k。「タッカーもハンデなかなか下がらないなあ」と環さんは言うが、これしきのハンデは順当と思うワシ。この程度のハンデで勝ちきれないアンタ(タッカーね)が悪い。しかし今日のタッカー、いつもの印象以上にキリッとした馬体。ボテボテ感が消えている(中継中『キンキ』の黒田氏も同様の旨を述べる)。
マキオリンボーは唯一頭二人曳き。とはいえ適度な気合いでカリカリのピーキーさは無い。前述の通り個人的にはマイナス体重を望んだが。ともあれ休養明け消化2戦はいずれも不発、道中動きが重い。昨秋の末脚の爆発力復活に期待。頼むぞ三野っち!
アローパッションはS1で勝ち負けまでは辛いもののしばしば連対圏に紛れ込む差し脚が見物。「小粒だがピリリと辛い」を地でいくようなコンパクトな馬体。イムラッド産駒なのね。水玉メンコでお茶目にアピール。
サンユウラピートは前々走サマーカップでの、カリカリその実は馬っ気ドピュンとは打って変わってじんわりとした気合い、逆に言えば平凡。栗毛の毛艶は良好、ホマレブルショワの栗毛、パワーレイクと同じ。
シンセイマックスも栗毛好仕上げ。彼はトチノミネフジ産駒か。イチノタイトルはタイヨウペガサスの仔。若干暑さでキン○マ下がり気味。
そしてケイエスヨシゼン。頭絡はメンコの下、今日もメンコを取って素顔でレースを走る模様。馬体重は500kを越えたが、馬体の張りはかなり良い。そして毛艶と気合い、冬の頃の最悪の状態とは比較にならぬ程持ち直している。山ちゃんからも「ヨシゼンエエがな」のお墨付きが下りる。ワシの目からちょっと気になったのは右前の、肩の出。かなりギクシャク、硬くはないか?しかしあとで某くん(匿名)に訊くと「もう最近はいつもあんなもんですよ」とノープロブレムの見解。踏み込みは強く深め、好感。今日は一度周回で止まりかけたものの、しっかり歩いて相当復調振りをアピール。カンカンが57.5kと、ようやく下がってきた。チャンスといえばチャンス。

本馬場入場。環さんと並んでゴール前で待ち受けるワシ。ヨシゼンが姿を見せるや暫し膠着、程なく岩田は1コーナーへ馬を導く。タッカーあたりはそのまま四角方向へダク。
この時ちょっとアクシデント。シンセイマックスがG板前で鞍上下原を振り落とす。下原手綱を掴んで地面に着地するも、6Rに続いて2度も馬から落とされる。何ちゅう日や。
タッカーもマンリーも軽快なキャンター。ヨシゼンは岩田に手綱を抑えられ、クビをひん曲げての返し馬。まあヨシゼンらしい返し馬といえばそれまでか。

ワシの馬券、本線はヨシゼン−マキオの差し差し馬券。これに堅くマンリーを当てて。更にお楽しみはアローとシンセイマックスの泥棒差し、結局5頭ボックスで張り目に強弱をつけて。タッカーだけは勘弁してくれ。

いよいよレース発走。場内に吉田アナの前説が流れ、重賞ファンファーレが鳴ると、古馬の少頭数、二角一八七の発走地点であっさりゲート入りが済んであっけなくスタート!
リアルタイムインプレッション
大外から永島マンリー好発でスッと前へ、ところがこれを制して下原シンセイマックスが押して押して何が何でもの構えでハナを奪う。一方太タッカーは何だかなあの立ち後れ、後手踏み後方から。ヨシゼンは無事発馬。といった塩梅ではじめの3、4コーナーから直線へ、先頭シンセイこれを見て2番手マンリーがっちりの隊列で馬たちがやってくる。晴天続きでバッサバサの良馬場、おまけに最近砂の補充があったのか、深い内埒沿いを嫌って各馬インを大きく空けてのコース取り。
こうなると探すはヨシゼン。マンリーから離れずの好位追走、不調時に比したらかなり前付け。「よしよしヨシゼンええ感じやないか!」思わずワシの口をついて出る独り言。シンセイが隊列のアタマを押さえて更に2番手マンリーが余裕の位置取り、馬場状態も相まってペースは見るからにスロー。

1周目G板通過(36KB)
1周目G板前通過
2番手マンリー3番手外ヨシゼン内マキオ

2コーナーから向こう流しへ、先頭シンセイは変わらぬがぼちぼちレースが動き出す予兆。ここまでヨシゼン好位キープも、隊列のペースが上がったのか、例によって岩田の手綱が早くも動く。一方マンリーは馬なり。「よしヨシゼンその位置キープや、行けるんとちゃうか?」また独りごつワシ。
着順表示盤の向こうを過ぎるといよいよマンリー満を持して進出の気配、それにしても下原シンセイの抵抗は頑強、三分三厘でもまだ粘っている模様、この辺りヨシゼンは食らい付いてこれているのか、ちょっと怪しく見えた。4コーナーを回るあたりで「大外にタッカー」との実況、押し上げてきたのか・・・
いよいよ勝負、最後の直線。抜け出すマンリー、後方に一歩先んじる。そしてそして馬場の五分どころ、外から2頭目迫り来る1頭、やっぱりヨシゼン!!逃げ込むマンリーを明らかに上回る脚勢でマンリーに急迫、遂に馬体が合って、追う側の勢い、ほんの少お〜し抜けたかどうか、ホンマどうなのか!?内マンリー外ヨシゼン、びっちり叩き合って鼻面並べたまま怒濤の入線、さあどっちだ!!
ヨシゼンvsマンリーG直前(43KB)
死闘ヨシゼンvsマンリー
ゴール前5m弱
ヨシゼンvsマンリーG通過(44KB)
両者ゴール板通過直後
さあどっちだ!?

ヨシゼンの追い込む姿を前に、ワシ、カメラ構えながらも「よっしゃヨシゼン来い!」。ゴール直前覗き込んだカメラのファインダーの中、映るのは馬場ど真ん中を駆ける両雄のどアップ、一か八かのシャッター2発リリース。
まさに火花散るゴール前、ワシの隣でカメラ構えた環さんも、隣のまりおちゃん(今日は"生目"にばっちりレースを焼き付けて)も、ひろちゃんもワシも、立ち会った皆さんは興奮と感動に完璧にあてられる。やっくんファンのちーちゃんまでもが「岩田」ではなく「ヨシゼン凄い〜!」よく見ればちーちゃんも環さんもワシも二の腕に鳥肌。
当然1、2着は写真判定に。暫し話題は「どっちが出たか」に。追い込んだ勢いもあり、印象としてはヨシゼンが抜けたかといった見立てが大勢。程なくジャンボトロン(園田の馬場内大型ビジョンです)にゴール前のリプレイが。確かにヨシゼンが一旦アタマ弱抜けかけたが、内でマンリーがしぶとく持ちこたえている。最後は両馬の首の上げ下げのリズムが同じになって、共にグイッと馬体が伸びきったところがゴール板。正直わからぬ。この状況、吉田アナの、
「〜ケイエスヨシゼンが並んで交わす僅かにハ・ナ・の〜!いやまたこれが並んで・・・」
というゴール前の実況捲し立てがそれを実によく伝えている。このフレーズは絶品やったなあ。
程なく結果が――「同着」
それほど長い写真判定の時間でもなかったので、「どうも胡散臭い」と正直思ったものの、後で決勝線の判定写真を山ちゃんやリーダーやひろちゃんたちと見てみたところ、判定写真のノーマルサイズ(キャビネサイズくらいだったっけ?)では、「どっちか」などと到底判断できない状態。馬の鼻面原寸大相当に写真を拡大したとしても、恐らく数センチあるかないかの極僅差だろう。ちょいと心情的に甘いやも知れぬが、個人的には「同着、ノープロブレム」。本線の馬券は獲れなかったらしい山ちゃんも「素晴らしいレースやったがな」とレースには賛辞。

以下、中継の録画よりレース模様の補足
スタート時下原は何が何でもの決意露わなハナ奪取。タッカースカレーは出遅れというよりは二の脚がまったくつかなかった状態。ヨシゼンも好発。2枠からの三野マキオリンボーはそのままイン。道中先頭シンセイ2番手マンリー。マンリーの後ろ外やや掛かり気味のヨシゼンと同じく内マキオ、両頭併走でびっちり直前のマンリーマーク。その後ろ上川アローパッション、タッカーは結局この外、さらに後ろ米田イチノタイトル殿赤木サンユウラピート。一角のコーナリングで内を掬ってサンユウが2頭抜く。向こう流しでタッカーは外をスルスル上昇、ヨシゼンとマキオは鞍上の手綱に叱咤されての食らい付き。下原見せ鞭しばき鞭駆使のハナ死守もマンリー馬なり先頭で三分三厘ご苦労さん。そして直線、大外2番手前列にまで押し上げたタッカーだが伸び切れず5着。アローが密かに集団ど真ん中を差し込みタッカーは蹴落とし渋く4着。マキオはインから追いすがるも内の砂が深いとあってはそれ以上の追撃は酷な3着。そしてマンリーvsヨシゼン。追いつかれた時点でマンリーの永島、右鞭連打で外のヨシゼンに馬体を併せに。最後は右鞭ビシバシand左手で手綱しごきの永島と、ヨシゼンの首根っこに体を預けた岩田、両騎人馬一体のバトル。それにしてもヨシゼンは終始舌越しでベロブルンブルン。

兵庫で重賞1着同着は昭和37年金盃以来だそうで。とまれ、勝者2頭ということで、口取りと表彰式が2頭分2回。大変な現場に立ち会うこととなった。先にシャインマンリー後でケイエスヨシゼン。
シャインマンリー、口取り(45KB)
口取り一番手、シャインマンリー
太郎ちゃんもオメデトウ!
ケイエスヨシゼン、口取り(39KB)
続いて口取り、ケイエスヨシゼン
「ガルルッ!」

内容がどうしてもヨシゼンメインになってしまったが、シャインマンリー、ヨシゼンより0.5kとはいえ余計にハンデ背負っての同着勝利。誇っていいと思う。ホントに強くなったということを結果に出せたわけであり、先行からの最後の粘り、彼らしさは存分に発揮できたのでは。重賞初勝利、おめでとう、そして太郎ちゃん、ホントおめでとう。
そしてヨシゼン、同着とはいえ、これで重賞通算12賞。ハツタダイドウの記録を破り兵庫新記録。彼自身5年連続の重賞制覇。そして獲得総賞金2億まであと350万円弱。それにしてもデッドヒート中のヨシゼンに対する声援は凄かった。ワシを含め、熱烈なヨシゼンファンでなくとも相当数の方々が「ヨシゼン!」だったのでは?やっぱり兵庫にとって、アラブ競馬界にとって、ヨシゼンって特別な馬なんだな、と改めて実感。マンリーはちょっと敵役みたいになってしまったが、それは許してね。

表彰式連チャンとその後の吉田アナの解説演説を見届けて、"だんまく隊"の方々は幕の撤収、ワシはカメラの片づけ。興奮を胸に競馬場を後にし、その後は園田系大宴会へ――

最後に振り返ると、タッカー後手踏みシンセイハナで事前に予想された展開が大きく狂い、馬場状態も相まってかなりのスローペース、ヨシゼンにしてみれば追走が容易に、他馬が音を上げるパワー勝負は彼の領分、そして57.5kのうまいハンデ、更に現行三強の不在。競馬の神様が、絶妙の塩梅でこの劇的な結果に導いてくれたのでは?こんなカワイコぶった感慨がてらいもなく書けてしまうような、そんな素晴らしいレースだったな。

ともあれ、「競馬の神様、写真の神様、アリガト〜!」

おまけ:ケイエスヨシゼンvsシャインマンリー、壁紙用画像(800×600pixel、137KB、重たくてスミマセン・・・)

2000.8.22 記

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