第26回とちぎアラブ王冠観戦報告

 2000.11.4、宇都宮、2000m

発端
11月26日に全日本アラブグランプリを控え、出走が見込まれる4歳有力馬のうち、兵庫と福山以外については、この秋ほとんど実際目にしていないことに気付く(荒尾記念も九州アラブグランプリも金沢のアラブ大賞典もパスしてしまっているし)。「これじゃあちょっと予習不足やなあ・・・」と思っていたところ、気になり出したのが宇都宮のとちぎアラブ王冠。かの地の4歳No.1デイオウルフは同世代に敵なしらしいし、どうやらこのレース自体が今年で最後のようで。「行こっかなあ」と軽い気持ちで往路のサンライズの座席を検索すると、僅かながらも残席あり(サンライズは下りよりも上り列車の方が売れるの早いようだ)、堪らずチケットを押さえてしまい、これにて宇都宮行き確定なり。というのが今回の遠征の発端なのだが、実のところ、10月5日の兵庫アラブQCに御来園していた江戸平多さんの、別れ際のオコトバ「とちぎアラブ王冠で待ってるからね。」に誑されたというのが最大の要因か。

前日の文化の日はド平場ひめけいに午後から出掛け、リーダー前田っち、まりちーちゃんとテキトーに競馬をして、その晩に出発。深夜0:12に三ノ宮からサンライズに乗車。ノビノビ座席の上段、下段より揺れる気がする。なお、ノビノビ座席の床のマット、どうやらホットカーペットになっていて適度な暖かさ。暖房で喉が渇くこともなくこれは良好。東京着が早朝7:08、上野に移動し7:36発の東北本線各停に乗り込み、車中で駅弁の深川めしをパクつき(各停ロングシートで飯食うのはあまり気分じゃないけど)、9:21に宇都宮着。9:30駅前発の競馬場行き無料バスの始発に乗って、10時頃競馬場に到着。

久々の宇都宮競馬場
入場券を買って入ろうとすると、不意にワシを呼ぶ声。顔を上げると声の主はディープさん。確かバスには乗車していなかったはず。事情を聞くと「昨日から宇都宮、で、イーシーキングのサラB1戦を見届けて、昨晩は宇都宮の友人宅に泊まり。今朝はそこから自転車で来ました。」とのこと。以前ご本人からこのレースには行くと伺ってはいたが、こんなに呆気なく合流できるとは。ということで一緒に入場。すると入場者に"ベラミロード東京盃優勝記念QUOカード"を配っていて(先着二千名)、これをGetでき、ラッキー。「これ目当てで早く来たんですよ。」とディープさん。細かいところまで事前にチェックが入っていてサスガ。
天気は晴れ、この時季にしては暖かく快適な陽気。馬場状態は前日は不良だったが朝の時点で既に稍重。ここに来る度思うのだが、宇都宮の馬場の砂って黒いなあ。それに深そう。コースの幅員が広い。

1レース開始前に、前日のレースのリプレイが放映されるので、二人してパドック前のベンチに陣取り、パドックの掲示盤に組み込まれている大型ビジョンで、イーシーのレースのビデオを観る。イーシー、最内1番枠からゆったり発馬でスッと内2、3番手につける。道中は逃げ馬を前に見つつ、2周目向こう流しでインから事も無げに先団を抜き去り余裕の勝利。「道中控えて、イン割って一気に進出、ホンマ進境著しいんやねえ。」と感心するワシ。ディープさん「つい最近馬場の内側砂の補充あって重いんですけど、それでも楽に抜けてますからねえ。」と補足。「場内の地元のオッサンも『ホマスタより今はこっちの方が強いだろ』って言ってましたよ。」。年末の頂点決戦が実に楽しみになってきたぞ。

そうこうしているうちにこの日の競馬が始まる。当日の番組、メイン以外はサラ下級条件戦ばかりで興味ほとんど湧かず。やる気なし。ただ1、2レースはアラ・サラ混合の3歳戦なので、ちょっと遊ぼうかなという気に。1レースの10号馬が父ミスターヨシゼンのアラブで単穴評価だったので単・複購入。ところがレース、4コーナーの千四スタート地点を発馬して、各馬スタンド前を通過していくのに、10号馬の姿なし。何とスタート直後に落馬。「アホか!」いきなりメゲて、メインまで馬券なんてどうでもよくなる。
という塩梅で、競馬場にいつつも全くやる気なしの状況。そこで昼どき、ディープさんが「外に餃子食べに行きましょうよ、自転車に乗せていきますから。」ということになり、ママチャリ二ケツで一路餃子屋へ。往復と餃子屋滞在で1時間半程度時間を消化する。
競馬場に戻ると、yamachanさんの姿が。「お久しぶりです。」「はるばる来たんだ」「へい」といった挨拶。好天だった空模様が午後になると雲の固まりがやって来て陽を遮りだす。そそのせいか気温が頭打ちに。ちょっと肌寒く、そして暗い。

※とちぎアラブ王冠についてはここからです。
パドック、そして発走まで
何だかんだで、ようやくメイン、とちぎアラブ王冠のパドックを迎える。出走馬が入場してくる。宇都宮競馬場、場内の面積はやたら(無駄に)だだっ広いくせに、パドックがムチャムチャ狭い。出走馬11頭(フルゲートは12頭)の各馬の周回の間隔、ギチギチ。パッピーケイオー(パドックで走る馬として有名?)あたりじゃここを回るの、危険。
登場した馬のうち、際立つのはやはりこの地の世代最強、10番デイオウルフ。他馬とは風格から完成度から出来から何からがあまりにも違いすぎる。鹿毛の皮膚の艶も張りも文句なく、脚の踏み込みも良好、適度に活気を見せる周回。均整のとれた馬格でちょっと首のつく角度が立っている(やや首が高い)体型は、いかにもトライバルセンプーの素質馬といった感じ(コウザンハヤヒデやトライバル・マーキュリ両サンダーなどを想起して下さい)。「何やこんなん他と全然比較にならんやん!」とワシ。「まあ仕方ないですね。」とディープさん。それにしてもこの馬、その馬体に流星黒メンコの精悍な顔つきも相まって、非常にGoodLooking。見栄だけなら全日本の舞台に出しても一歩も引けを取らなかろう。
まあこのデイオウルフは別格として、これに次いでよく見えたのが、お隣高崎の4歳No.1、8番ダイナマイトスター。腹回りはややぼってりしているが鹿毛の毛艶は良好で、気合いをいい感じで表に出していて好感。『アオケイ』では本紙がポツンと対抗印、ソコソコ人気か?この馬がよく見えるとディープさんに振ると、「でもいくら高崎4歳No.1って言っても宇都宮とレベルが違いますからねえ、私は高崎勢要らないと思ってます。」そうなのか。
5番オートライ。中村憲厩舎、中本さん生産、鞍上は鈴木騎手、と、ホマスタと同じ。というのもこの馬の母ボールドフロルアはホマスタの姉、つまりはこの馬ホマスタの姪。しかしホマスタには全く似ていない。栗毛で綺麗な毛艶。ちょっと狙ってみたい。ディープさん曰く「でもこの馬逃げ馬ですね、デイオウルフとの兼ね合い問題ですね。」。シルシはソコソコ。
1番牝馬ハナノシオリが2番人気か。前走古馬オープンをイーシーの4着に追い込み、評価を上げているらしいが、見た目は特にどうとは・・・毛艶が悪いのは冬毛っぽいからか、それとも栗毛に金の刺し毛?
3番これも差し牝馬キタノカオリにもシルシ。一目見て「うわっ!ちっこい。」。馬体重確認すると360k!ニホンカイノア並みにちっこい。
7番ミラージュラインには"Mr.ピンクマン"内田利雄が騎乗、シルシはなかなか。しかし周回中何度も膠着し、歩くスピードが全然乗らずでパドックを何度もショートカット。やる気が感じられない。
以上が『アオケイ』でシルシを貰っている馬。それ以外でなら、2番イチカツシーザーと4番ノギノハヤカゼが、見た目だけならなかなか。6番ソレミタカはチャカチャカ、9番ノギノフラワーは尾花栗毛だが艶が良くない。11番ニシネイットーはぼってりした体格、大外を周回。イチカツとニシネは悪くはないが、高崎勢でダイナマイトスターからさらに格落ちとあっては狙いの範疇には入れ難い。

本馬場入場、各馬いずれもゆっくりとダクを踏んでスタンド前に顔見せ。しかし馬場を1周返し馬をしたのはデイオウルフとミラージュラインのみ。
ここで江戸平多さんとくもぎりまるさんが、例によって関係者待遇で登場。前日のダービーグランプリ@盛岡からのハシゴとのこと。「ホントに来たんだ。」と江戸さん。「へえ、オコトバ通りに結局・・・」とワシ。
予想、デイオウルフの軸はどないもこなも不動として、相手はパドック気配からダイナマイトスター、これが本線。プラス、オートライ、申し訳程度にハナノ、キタノへ。ディープさんは、デイオウルフの単勝に大口投資。購入直前(締め切り5分前)で1.5倍、買ってから直後に確認したら1.4倍。どこまで下がるかが問題。

そしてレース
いよいよ発走。宇都宮二千は向こう正面やや二角寄り、ここから1周半。発走に際し、場内実況で「26回目を迎えたとちぎアラブ王冠、今年が最後です。」と前置き。「一応断り入りましたね、何もなくフェードアウトかとも思いましたが。」とディープさん。
そして発馬、デイオウルフが当然の如くポンとハナに立つ、が、その時点で実況さん、しつこく「さあ最後のとちぎアラブ王冠です」云々と説き続ける。そうこうしているうちに先頭デイオウルフ、既に3コーナーに差し掛かっている。2番手と3馬身差程度。
ここでお断りを。宇都宮競馬場、馬場内ビジョンがなく、にもかかわらず1周1200mで直線は200mという、つまりはかなり太った楕円形のコースなので、向こう正面が非常に遠く、スタンドから向こう流しの馬の姿が、肉眼ではほとんど確認できません。よってレースの状況、ほとんど把握できず、レースの模様、まともに報告できません。あしからず。以下レース展開の記述中、リアルタイムでの記憶以外に拠った部分は()で括って記します。
デイオウルフを先頭に、後続は間隔の詰まった、ほとんど1列縦隊でスタンド前に。この時点でデイオウルフと後ろとの差は2馬身程、溜め逃げの様相。(2番手は外からニシネイットー内オートライ、その後ろもほぼ一団)。比較的淡々とした流れで1、2コーナーから向こう流しへ。

1周目(36KB)
1周目スタンド前
先頭デイオウルフ2番手外ニシネイットー内オートライ

向こう流しでは、着順掲示盤に点滅する、先頭から3番手までの通過順表示によると、2番手がニシネイットーからハナノシオリに代わる(先頭は相変わらずデイオウルフだが、後続の順位の変動が激しい模様)。デイオウルフ溜め逃げのまま、三分三厘から4コーナー、そして最後の直線に。
デイオウルフ、道中とほとんど変わらぬリードをキープして直線を走る。ち切りはしないが他馬に並ばれる局面の全くないまま、結局順当に優勝のゴール、2着との着差は2馬身。しかし着差以上の余裕の勝利。
が、2着争いは直線を向いて以降ムチャムチャ。2番手に上がった対抗格ハナノシオリが伸びず、馬場外目を差し込んだのがイチカツシーザー、連れてノギノハヤカゼ、「何じゃあれ?」と思ううちに、結局2着イチカツ3着ノギノハヤカゼ4着ソレミタカ、ハナノシオリはこの後5着。ワシの推したダイナマイトスターに至っては道中どこに位置したか結局一度も確認できぬまま、結果は7着だった模様(NARのレース結果の道中通過順によれば、中団ママだったようで)。つまりは「どこにもおらへん」。オートライは9着・・・
この2、3、4着にはちょっと参った。いずれも『アオケイ』無印の馬やないか!ムカッである。「こんな新聞やめてまえ!恥ずかしないんか!」と訳のわからぬ悪態をつくワシ。yamachanさんと、お連れの南関メイン(ホームは浦和でしたっけ?)のしんやまさん(お初です)に笑われる始末。
デイオウルフ、最後の直線(37KB)
デイオウルフ、最後の直線
全く砂を被らず
デイオウルフ、ウィニングラン(45KB)
デイオウルフ、ウィニングラン
鞍上平澤jkニカッ!

優勝デイオウルフ、鞍上平澤騎手に促され、馬場を1周してスタンド前再度ウィニングランで通過。ここで実況さん「場内の皆様、最後のとちぎアラブ王冠優勝馬デイオウルフがスタンド前をウィニングランです。ありがとうデイオウルフ、さようならアラブ、ありがとう・・・」云々。これがいわゆるかの"富士山大爆発!"でしょうか?それはともかく、平澤騎手(ベテラン、ゴールデンジョッキー!でっす。お歳は45くらいですが見た目かなりじっちゃんですね、失礼!)、派手なアピールはなかったがニカッと笑顔でなかなかいい光景。デイオウルフ自身は余裕しゃくしゃくといったところ。

こんなわけで、アタマがド本命であるにもかかわらず、払い戻しは枠連5020円、馬連4250円と、まさにヒモ荒れ。因みにデイオウルフは単勝、複勝ともに110円。ディープさんガッカリ。2着イチカツ3着ノギノの複勝はそれぞれ720円と440円!一体どれだけ票数売れてたん?というばかりの配当。

表彰式を前に、ディープさんは大井のナイター(この日が今年のトゥインクル最終日だそうで)に連闘かけるべく先に競馬場を後にされる。ワシはこの後、「ひょっとしたらデイオウルフの帰厩する姿見られるやも。」と期待して(宇都宮って厩舎の大半が外厩なのでお馬さんは公道通って出勤するのです)、入場門の外で待つ。ここにyamachanさんとしんやまさんが現れ、しんやまさんがyamachanともども、クルマで送ってくれるとのこと。
「デイオウルフ待ってるんですよね」「じゃあもう5分くらい待とうか」といった感じで待っていると、最終R終了後程なく、入場門前の公道の反対側、駐車場の中を歩いて帰厩していく彼が通過。黒メンコはつけたまま。慌てて写真を撮って、「気が済みましたです、お世話になりますです」と、しんやまさんのMini(Miniって初めて乗ったんですが、むっちゃスパルタンなクルマやね)で宇都宮駅まで。感謝です。

帰路は快速ラビット号で上野まで。東京19:14発のひかり自由席で帰還、と、例によって準日帰り、無事完了。

帰厩するデイオウルフ(30KB)
帰路に就くデイオウルフ

おわりに
デイオウルフ、ここは当然の如くの順当勝ち。しかし着差が着差だけに「もっと離して楽勝するかと思った」との声が皆さんから挙がったのも事実。そういう脚質、個性なのか?
この観戦記執筆時点で、全日本アラブグランプリの他地区出走馬が既に発表され、その中にデイオウルフの名もあり、これにてアラブグランプリ参戦確定状態。この日のレースも含め、日頃の相手が相手だけに、"ヌルい"レースしか経験できていないきらいが多分にあるのは否めないが、集団のアタマを取ってじっくり逃げ・先行する戦法と、レース運びのセンスはナカナカなのでは?ちょうど兵庫のタカライデンあたりと類似した脚質のような気がするが・・・ともあれ、その馬格と雰囲気は、他の全日本参戦馬の中に混じっても一歩も引けを取らぬであろう。同じトライバルセンプー産駒の逃げ馬として、"ポストコウザンハヤヒデ"の座、虎視眈々だったりして。
「では福山で、デイオウルフwith平澤則雄御一行様――」

2000.11.10 記

兵庫発アラブ現場主義ホームに戻る