第22回とちぎアラブ大賞典観戦報告

 2000.12.29、宇都宮、2000m

はじめに
2000年アラブ界最後の大一番、とちぎアラブ大賞典。同日大井競馬場では東京大賞典が行われるのだが、アラブな人は一も二もなく宇都宮行きなのであった。おっと、これも同日、園田競馬場では園田3歳優駿。これを観戦すると兵庫のアラブ系重賞は皆勤になるのだが、そちらは園田系の方々にお任せして、ワシはとちぎアラブ大賞典。
前日に実家に帰省したため、この日は早朝名古屋駅から新幹線乗車。7:07発ひかり乗車で8:56東京着。上野に移動して9:45発快速ラビット号に。これに揺られることおよそ1時間半、11:16に宇都宮駅に着。駅前から11:30発の無料送迎バスで競馬場へ。正午前には競馬場に到着。
この日は入場者に抽選で200名にホマスタのQUOカードをプレゼントとのことで楽しみにしていたのだが、そんなものの影も形もない。受付で訊くと「抽選券もう配り終わってしまった」とのこと、ガックシ。
場内で程なく、京都在住の環さんを発見。今日が宇都宮初体験。ワシの使った一本後のひかりで東京へ、そこから東北新幹線に乗車したとのこと。ツィードのコートにカメラをたすき掛けで腰にはウェストポーチの重装備、ぱっと見冬季軍装みたいであった。因みに環さん、件のホマスタのQUOカード、抽選当たりでGet。"大御所"Okuさんもご来場。クルマにて。このレースの後さらに北を目指すとのこと。
山形シチーさん、ディープさんも合流。山形さん、ディープさんとワシらが並んでいる方に向いて「うわ〜アラブ臭いな〜」と茶化す。そういうアナタが一番臭うっちゅうの!
天気は晴れ、午後になっても幸いにあまり翳らず、覚悟していたよりは寒くはない。馬場状態は良、かなりバサバサ。内ラチ沿いの砂を深くしてある模様。

※とちぎアラブ大賞典についてはここからです。
さて、とちぎアラブ大賞典。北関東でも近年アラブ競馬縮小化は急激に進み、昨年のホマスタの大活躍もその流れを大きく変えるには至らず、結局今回の大賞典が最後のとちぎアラブ大賞典、そして宇都宮競馬における最後のアラブ系重賞である。
注目は勿論、ホマレスターライツvsイーシーキングの宇都宮最終決戦!
片やホマレスターライツ。ご存じ"北関東の怪物"。昨年の活躍は今更記すまでもあるまい。今年は東日本地区の"顔"として、セイユウ賞、タマツバキ記念の古馬全国交流2重賞に遠征するも、結果は3着4着と良積を出せず、地元で不可避となったサラ挑戦にも未勝利。物足りない戦績のままこの日を迎える。
片やイーシーキング。3、4歳時の出世はホマスタに後れをとったが一気に台頭。しかし王冠、大賞典はホマスタ激走の前にともに2着で4歳を終える。が、5歳の今年は躍進。地元アラブ戦には負けなし。そしてサラB1戦楽勝の後、11/23、遂にサラ重賞天馬杯を制す。元々晩成タイプとも思われていた、父トチノミネフジ譲りの実力が一気に開花。また父同様短距離でのスピードが出色。
両者の直接対決、この1年で僅かに二度。5/4の若葉賞と、つい20日前の12/10の日刊スポーツ杯、いずれもイーシーの勝利。ただいずれもホマスタの方が斤量を2.5kと3.5k背負ってのこと。今日はホマスタ57.5kにイーシー57k、ほとんど差のない斤量になった。ということで、言い訳無しの決戦のお膳立ては整った。
そしてその出走馬は内枠より以下の通り。()内は斤量。
ホマレスターライツ(57.5k)、シゲタカセンプー(53k)、ニシカワダイヤ(53k)、エルシドプライト(53k)、トキノオーカン(53k)、キングソプラノ(52k)、ニューキンカ(53k)、サカノブルショワ(55k)、イーシーキング(57k)、ボールドムテキ(53k)。

パドック、そして発走まで
出走馬がパドックに姿を現す。この季節柄しょうがないのか、概ねどの馬も毛艶が悪い。ここで栃さんが登場。
まずもって1番のホマスタ。何とホマスタまでもが冬毛。当然艶は悪い。昨年の王冠の覇気のなさ、昨年の大賞典の太め残りと、確かにホマスタは遠征時より地元で見たときの方が見劣る傾向があり、昨年は「ホマスタが本気で馬を作るのは遠征の時だけ」と、それが関係者のコメントだとまことしやかに流れたくらいだが、今年の現状、そこまでの余裕があるとは思われず。ただし身のこなしはスッチャスッチャと鶴首で小走り気味で、日向を通ると走り出そうとする、彼のいつものそれ。今日は脚元にバンテージもレガースも着けていない。
対する9番イーシーキング。毛艶、張りといった外観の仕上がり具合はこの馬が一番。というよりこの馬しか外観良好な馬がいない。ホマスタの身のこなしが"動"であるならばこちらはあくまで"静"。ゆったりとした周回で無駄な動きを一切しない。どっしりとした腹袋で胸前もトモもがっしりとした体型。馬体重490kだが、もっとあるように見える堂々たる馬体。若干トモの踏み込みは浅いやもしれぬ。左前脚にバンテージを巻いているが、これは天馬杯の時も同様であったようだ(『アオケイ』掲載の写真で確認)。
と、この2頭を見ればそれでパドックは終了なのであるが・・・気の毒な万年三番手のサカノブルショワ、ゆったりとした周回だが艶がこれもイマイチ。ニューキンカはホマスタの2歳上の半姉、父がニューサラトガと異なっているが、それにしても弟のホマスタとは全く似ていない。クビの付く角度といい重心といい全体的に姿勢の高い体型。栗毛だが毛艶悪し。トモの送りがぎこちない。格下だが展開のカギを握ると思われるのは彼女。
各馬本馬場に登場。ゴール板前から駆け出して4コーナーあたりまで流す馬が多い。そしてその4コーナー付近で発走まで待機。

ホマレスターライツ(44KB)
ホマレスターライツ、本馬場入場
毛艶悪いです。

その間、場内モニターで大賞典の参考レースのVTRが放映される。サカノブルショワ久々の勝利(11/30)なども流れるが、何といっても注目は日刊スポーツ杯、その最後の直線シーン。結局イーシーが逃げてホマスタがそれを四角捉えたというのがそこまでの展開、これは実地で観戦した栃さんの御教授。そこから先のVTR、内イーシー外ホマスタの、クビの上げ下げの大接戦、抜きつ抜かれつを二、三度繰り返して、最後はイーシーがハナ差出ての勝利。これが斤量イーシー56.5kに対しホマスタ60k、却って「ホマスタ負けてなお強し」を印象づける結果となった。
「あれなあイーシー結局逃げちゃって直線追いつかれてなんだよなあ。距離千八だから押し切れたけど今回二千でまた逃げさせられるとなるとなあ・・・逃げて四角追いつかれて抜かれるっていう、去年と同じ結果になりそうなんだよな。ここは何とか2、3番手で進めてホマスタを待ちたいでしょう。」「そうなるとニューキンカが逃げてくれるかどうか、レースを大きく左右するなあ。」と、この前走をも踏まえての栃さんの見立て。
さて馬券購入。イーシーの単勝勝負の方が多い。ホマスタ−イーシーの枠連馬連、ともに1.1〜1.2倍あたり。連単の発売がないのでどうしょうもない。ワシはこのために銀行から預金を下ろして、一点勝負。しかし利ざやはほとんどなし。

そして決戦なり
いよいよレース発走、北関東最後の頂点決戦、向こう場面2コーナー寄り、距離二千のゲートオープン。
最内枠で鈴木ホマスタが出遅れ、3馬身程度か。ハナを取ったのは平澤ニューキンカ、難なく単騎先頭に、差がなく加藤イーシー、無難な発馬から2番手、併せて内に柴嵜トキノオーカン、イーシーめがけて外から内田サカノブルショワ、このあたりまでが先団を形成。
そして1周目のホームストレッチ。先頭はニューキンカ、そのペースは見るからにスロー。これと1馬身差の2番手にイーシー、3番手内トキノオーカン外サカノブルショワ、直後エルシドプライト、ホマスタはこの後ろ外目6、7番手あたり、内ニシカワダイヤと追走。隊列はだいたい1馬身間隔、さほど差がない縦隊。

1周目(34KB)
1周目スタンド前
先頭ニューキンカ2番手イーシーキング3番手外サカノブルショワ

1、2コーナーで1頭故障発生か、ズルズル後退で競走中止、これはキングソプラノ。構わずレースは進行。イーシーは2周目三角までニューキンカの直後2番手で我慢。そしていよいよホマスタ、徐々に位置取りを上げ、三角サカノブルショワと同列3、4番手から一気に来る。これを受けてイーシー、ニューキンカを切って捨てて満を持して先頭に、内ラチ沿いに張り付いていく。そして4コーナー、外にホマスタが併せて来る。いよいよ最後の直線勝負!
と思いきや、直線を向いて追い出すなり、ホマスタが外にヨレる。正さん、追えども追えどもホマスタが外へスウェーしていき、併せ馬にはならない。それでも必死に取り付き食らい付こうとするホマスタ&正さん、しかし両頭並んだのは結局4コーナーだけ。
一方イーシー、砂がやや深いインコースをものともせず快走、最後は鞍上加藤騎手、やや手綱を抑える余裕まで見せて、完勝のVゴール。ゴール板通過後、ガッツポーズが出た。

イーシーキング、ゴール前(42KB)
イーシーキング、Vゴール
余裕の走り

ホマスタは2着、着差1馬身。3着は指定席のサカノブルショワ、ホマスタに遅れること6馬身。
勝ちタイム2分14秒9、馬場状態の違いこそあれど、デイオウルフの勝った王冠のタイム、2分13秒2よりもかなり遅く、ニューキンカの作ったペースが超スローだったことが窺われる。

闘い終わって
イーシーの単勝を取って喜ぶ方々。ワシは当然の的中。その中にあってブツブツ文句の山形シチーさん。「あれ?的中じゃないんですか?」と聞くと「だってホマスタの単勝だもん。何だよホマスタ、直線、ヨレまくって最後漕いでも漕いでも進まない船みたいなんだもんなあ・・・」。それはそれは。
口取り撮影、表彰式と行事は進行。ワシは表彰式前、加藤和博騎手からイーシーの写真にサインをGet。yamachanさんとしんやまさんも来場していたようで、ここで気付いた。くもぎりまるさんは関係者待遇でコース際で撮影。栃さんやディープさん、環さんらとその様子を見る。「あの馬ホンマ無駄な動き全然しないし賢そうな顔してるんだよね。」と、感心して漏らすワシ。その"ムスコ"への賛辞を満足気に訊いてくれる栃さんであった。「やっぱりニューキンカが行ってくれて大分楽だったと思うよ。」と彼。「しかし道中ムチャムチャスローだったでしょう、よく我慢できたよね。」とワシ。とにもかくにも結論は「それにしても強いわ。」。
とちぎアラブ大賞典の後は東京大賞典の場外発売、これがこの日のメインレース扱い。場内がそれに注目の中、ワシは入場門の外でイーシーの厩舎への帰りを"出待ち"(これってタカラヅカ用語?)。待つこと暫し、担当する厩務員のオバチャンに曳かれたイーシーが現れる。「おめでとうございます!」と一声掛けて写真を撮る。ここで厩務員のオバチャン「ありがとう!」と返してくれた。

帰厩するイーシーキング(41KB)
帰厩するイーシーキングと厩務員さん
あくまでも静かに

場内に戻ると東京大賞典の発走直前。その盛り上がりは個人的には他人事。適当に過ごす。そして最終レースを待たずして、環さんは急ぎ帰京。他の皆さんはワシも含め早々にファンバスに乗り込む。
帰りがけに宇都宮駅前で皆さんと餃子宴会。この後ディープさんは宇都宮泊、他の東京方面へ帰る皆さんはともに在来線の快速に乗車。途中人身事故で足止めを食ったりなどして、どうにかこうにかの上野着なのであった。

最後に
これをもってとちぎ競馬のアラブ系競走は事実上その歴史に幕。その最後も最後崖っぷちに、2頭もの全国屈指の強豪が現れたのは何とも皮肉。
今後、勝者のイーシーキングは残留してサラに挑戦していくとのこと。既に一度結果も出しており、その成果の期待は大きい。が、その挑戦の一方で、アラブ系の他地区交流競走に、是非とも登場してほしい。「金沢あたりに早めに移籍した方がいいような気も・・・」というのも、ディープさんならずとも個人的には本心。
敗れたホマスタ、明けて1月30日の、荒尾で開催される全日本セイユウ賞へのエントリーが決まっている。そしてこれを最後に移籍の模様(福山と言われている)。というわけで、宇都宮で両者が相見えるのは今回が最後であり、そういったことからも"最終決戦"であったわけだ。セイユウ賞、今のホマスタの地力は正直言って?だが、最後のホマスタ騎乗となろう正さんをもう一度、男にしてあげてほしい。ともかく、"北関東の怪物"の通り名に恥じぬパフォーマンスを。

最後に、アラブ斜陽の厳しい時代、以後別々の道を歩む、この2頭の名馬の今後に、幸多からんことを切に願う。

2001.1.8 記

兵庫発アラブ現場主義ホームに戻る