第19回奥の細道大賞典観戦報告
2001.11.20、上山、2300m
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はじめに〜山形へ、今回の同行者はお嬢さん
今年のワシのアラブ巡りにおいて、上山の古馬重賞観戦は最重要事項の一つとなっている。これまでA1級(及び)オープン古馬重賞三つ(仙台七夕まつり賞、日本海記念、かかしまつり賞)は無事観戦でき、皆勤となっている。これについては、大好きなペルターブレーブの存在というのが非常に大きいわけであるが、ペルター不在の仙台七夕まつり賞も観戦し、「関心はペルターオンリーではないぞ」といった感じで、「我ながらようやってるな」とは思うところである。
そして迎えた今回、上山の年度総決算重賞、奥の細道大賞典。平日火曜日開催なれど、ここまできたら行くしかないわけで、二月前から航空券を手配し(JASのウルトラ割得きっぷにて)、決戦の当日に乗り込むべく、備えていた次第。
昨年のかかしまつり賞の時、寝坊して飛行機に搭乗できなかったおマヌケをしでかしているワシであるので、前日の晩は徹夜を敢行。福山3歳牝馬特別の観戦記をしたためつつ、夜を過ごす。これを3時半頃にアップし、身支度を整える。そして住処を出たのは5時過ぎ。外はまだ真っ暗。西明石から各停で三ノ宮まで出て、駅前から伊丹空港までは6時20分発のリムジンバスにて。リムジンバスとは名ばかりの、座席のピッチが鬼ほど狭い、極古の観光バス。乗車時間40分弱の間に、膝がワナワナとイカレてくる。
搭乗する便は8時発。早々に手続きを済ませ、今回の山形行きの同行者を待つ。7時40分を過ぎたあたりで、その御仁、ひょっこり登場。大阪在住のラティラーちゃん。兵庫の永島太郎騎手ファンにして芦毛馬ファン。ペルターブレーブ、そして冨樫騎手の今年の活躍を耳にするにつけ、どうしても実物を観てみたくなったようで。「んなら上山行くか?」などと、軽い気持ちで話を振ったところ、「じゃあ行こうかなあ。」とのこと。「さあどうするの。」と思ったのだが、ホントに来てしまうという。このお嬢さんも相当キてますねぇ。
搭乗時間になり、機内に乗り込む。二人の座席は離れているのでここで一旦お別れ。そして8時、定刻にテイクオフ。北向きに離陸して左(西方)に旋回し、グンと高度を取る。眼下には空港にほど近い園田競馬場の姿もくっきりと。馬場には馬の姿も見えたような。この日の日本列島は広い範囲で快晴のようで、飛行中ずっと、雲に遮られることなく、地上の景色が確認された。
9時過ぎに山形空港に到着。当地の天気は快晴。素晴らしい天気。サスガに山形、若干空気はひんやりとしているものの、この時季の東北にしては格段に暖かい陽気である。
山形駅前までは空港バスで移動。駅前着は10時15分くらい。ちょっと時間を潰して、11時に駅前のバスプールから出るファンバスに乗車して、競馬場へ。ということで競馬場には11時半頃に辿り着く。上山競馬のファンバスは入場門の間近に(10m手前くらい)に乗りつけるので、これにはラテちゃん、小さな驚き。ワシにとっては9月24日のかかしまつり賞以来、そしてラテちゃんにとっては、人生初の上山競馬場である。「とうとうやって来たね。」「来ちゃいましたねぇ。」と、ちょっと感慨。
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メインレースまで〜注目のレースなど
到着時は2レースの発走が終わった頃。取り敢えずパドックに出る。そしてそこでメイ後さんと合流。朝一番の東北新幹線にて仙台まで移動し、ここから9時15分発のファンバスに乗車して御来場とのこと。「おおっ、遠路はるばる。今日は、やっぱりペルターブレーブですか?」とメイ後さん、開口一番。「はい〜。」とラテちゃんとワシ。ワシはまあそれだけが目当てでもないのだが、それがやはり最大関心事であるので。
この後、3人であれこれ談笑しながらの競馬観戦。メイ後さんのおハナシというのはいつもホンマに面白くって、個人的には大好き。上山競馬のマニアックなガイドから、所属騎手のかなり細かい癖など、話術巧みに解説して下さり、楽しいひとときが過ぎていく。
時刻は1時を回り、「そろそろ腹ごしらえなど。」と思い、一同食堂を覗いたところ、そのうちの一軒で、地元ブルボンさんを発見。何となくその店に入り、合流する。そのままソバを注文して食す。そして食事後、くもぎりまるさん、地元"高級大学生"マクレガーさんと合流する。この後、スタンド内の食堂に入り、ラテちゃんお目当ての芋煮定食を食べようとしたが、これは秋前半の季節限定メニューだそうで、今はその時季ではなく、残念ながらありつけず。それでも玉コンニャクだけはしっかりと押さえる。
馬場状態は重。今日はコースの外より内の方が伸びる感じ。インで逃げ粘った馬がそのまま持ちこたえて、また、外を追い上げた馬が思うように前を交わせない傾向が強い。いわゆる「前が止まらない」馬場となっている。そして馬券戦線は荒れ模様。朝から連複は四桁配当続出。トドメは3レースの単勝19380円。
この日の上山競馬はなかなかのアラブデー。メインの奥の細道大賞典以外にも、注目のアラブ番組が複数。
第4レースの古馬混合A3戦(勝ったのはかかしまつり賞に出走したキヌカゴゼン)を皮切りに、
第6レースは2歳A1戦
、つまり2歳オープン戦。上山の2歳勢では、レビンマサが断然のトップ、収得賞金上既に古馬中堅クラスに編入されているのだが、このレースに登場したのは、レビンマサを遙か後方から追いかける、2番手集団の面々。これは先行したワタリハンターに、最後の直線ヤマノコナンが並びかけての、人気馬どうしの競り合いを、最後ヤマノコナンがゴール前抜け出しての勝利。ヤマノコナンは馬体重500k超の重厚な馬体。ワタリハンターは460k台にしてはちょっと華奢で、パドック気配もかなりピーキーな感じの馬。これがレースになると、新人江川クン騎乗でなかなか辛抱できている。それにしても印象的だったのはゴール前での、ヤマノコナンを叱咤する鞍上小国騎手の鞭乱打。ムチャムチャ乱暴、悪く言えば出鱈目。
7レース8レースは、サラのC3戦C2戦。これはサラの相当下級の条件戦、逃げて終いまで保つ馬がいないので、道中ダラダラの団子状態で進むという、これも一種上山競馬名物ではあるのだが。
そして準メイン、
第9レースはアラブA級選抜戦
。奥の細道大賞典出走に至らぬ程度の、A1.5級以下の面々でのレース。くもさん曰く、「見れば見るほど買いたい馬がいなくなる。」という、まさにパッとしない重賞断念組の一戦か。
ここに、あのタービュレンスが登場。かつての"貴公子"も衰えは如何ともし難く、今季は着外連発で、とうとう重賞の選に洩れた。しかし今回、出走馬中逃げプロパーは彼だけで、単騎逃げが見込めるところ。ちょっと期待。因みにメイ後さんにとって、タービュレンスは思い入れの深い馬。パドックに登場した彼を観て「タービュレンス、肉落ちたなあー。」と、ちょっとしみじみと感想を漏らす。メンコ着用で走ったり、ブリンカー着けてみたりと、最近馬装を工夫しているようだが、今日はパドックメンコだけで、レースは素顔で走る模様。
そしてレースでは、江川クンを鞍上に望み通りのハナ奪取。後続とのリードはそれほど取らぬものの、のっそりのっそりと逃げていく。そして最後の直線、捕まりそうになりながらインベタで必死に粘るも、残り30あたり、差してきたネーチャーフレンドに無情にも交わされて2着敗退。「しょうがないんだけどなあ、ちょっと寂しいな。」と思う。
※奥の細道大賞典についてはここからです
いよいよメインレース、奥の細道大賞典。上山アラブ古馬戦線の、シーズン総決算。そして上山アラブ系では、唯一の2300m競走、まさに大一番。
今季これまでの上山古馬A級、及びオープン重賞。7月仙台七夕まつり賞は、大本命マルハチフレンドが3着にコけ、ムーンライトブルーが勝利。続く盆の日本海記念では、ペルターブレーブが直線追い込みを決めて逆転V。そして9月かかしまつり賞、三連覇の懸かったペルターブレーブが3着に敗退し勝者はここもムーンライトブルー。
そして迎える今回。中心はやはりペルターブレーブ。一昨年の同レース、三連覇の懸かったビソウウエスタンとの叩き合い、死闘を制して君臨。昨年はロングスパートから逃げ込むマルハチフレンドを、ゴール前差し切って連覇。そして今回、ビソウの三連覇を阻んで奪取したタイトルの三連覇を、自らが懸けることとなった。かかしまつり賞ではレース中盤の反応が最悪で、追い込むも届かずの3着。道中の行きっぷりの悪さが定着しつつあり、今後の大きな不安材料と思われたのだが、前走では先団直後からインを衝いてあっさり抜け出し、早々の先頭で完勝したとのこと。一つの不安を払拭して、王者が登場する。
上山5歳勢の筆頭はマルハチフレンド、4歳筆頭はアオイリュウセイ。この各世代トップも揃って登場。マルハチフレンドは今季10戦6勝も重賞は未勝利と、何とも勝負弱い有力馬。アオイリュウセイはシーズン前半を全休し、今季緒戦が9月23日(かかしまつりデーのA2戦)と、使い出しが大きく遅れた。緒戦勝利以後、2着2着3着の着順で、今季の重賞、ラストチャンスに間に合わせた感じ。
上記3頭以外でも、今年は2重賞を制した、しかし気性的にあまり信用されていない、"気まぐれ"ムーンライトブルー。好調時は実に安定している"堅実"カミノマルーエース。仙台七夕に日本海記念の2重賞で2着と地力を上げた、4歳騙馬エルソパレード。大逃げで時折アッと言わせる、これも地力強化が目立つ4歳ラピッドベアーズ・・・
ということで、上に名前を挙げた馬も含め、出走メンバーは内枠より以下のフルゲート12頭。()内は馬体重、騎手、負担重量。
サファリルージュ(455k、五十嵐、54.5k)、マルハチフレンド(520k、小国、57k)、ムーンライトブルー(505k、佐藤涼、57k)、ベルサリオ(430k、関本淳、54k)、ミスターハヤブサ(468k、鈴木義、54.5k)、カミノマルーエース(490k、馬渕、56.5k)、アオイリュウセイ(498k、板垣、56.5k)、サファリクラッシュ(500k、須田、53k)、セイフクガバナー(505k、佐藤庄、56k)、エルソパレード(470k、関本秀、56.5k)、ペルターブレーブ(496k、冨樫、58k)、ラピッドベアーズ(490k、鈴木勝、57k)
馬体重を記したのは、上山の一線級各馬のボリューム感をお伝えしたかったから。馬体重500k超が4頭、490k以上となると実に8頭にも及ぶ。
同じ週の金曜日に全日本アラブグランプリへと遠征する、3歳筆頭ホマレエリートの姿はないものの、主役から曲者、脇役まで、いいメンバーがズラリ揃った。この層の厚さはまさに"北のアラブ、最後の聖地"。
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パドック、そして返し馬〜発走まで
西の空にかかった雲の切れ間から陽が射し込む中、パドックに出走馬が登場する。
1番サファリルージュ。牝馬だがゴツい馬体はこの馬なり。栗毛の毛艶は普通。差し脚質もA級上位では苦戦気味、昨季も今季も1勝のみ。
2番がマルハチフレンド。毛艶も張りも良好。今日は馬体を太く大きく見せている。「マルハチフレンドのこの秋の3戦(連勝の後前走はペルターの2着)は、最高の出来ですよ。」とブルボンさん。ラテちゃん曰く「マルハチフレンド、顔が大きかった。」。
3番ムーンライトブルー。例によって括られた舌をモゴモゴさせて。ちょっと太いか。見た目はまあまあだが、秋口までの方が良かったような。
4番ベルサリオ。最も馬体重が軽いが活気ある周回。肌艶はまあまあ。前々走A3戦勝利で前走A2戦3着。ここは格上挑戦。「9レースに出たら勝ち頃だったのに。」とはブルボンさん。
5番ミスターハヤブサ。3歳次位格。前走は3歳重賞コスモス賞をホマレエリートの2着。古馬A級ではソコソコの活躍。毛艶はまあまあだが平凡か。
6番カミノマルーエース。夏場は調子が落ちるようだが、今日の毛艶はなかなかで、これは良化の表れか。踏み込みが強く、気分も良さそう。
7番がアオイリュウセイ。これがもう、毛艶が超絶!筋肉の張りも絶好で、素晴らしい仕上がり。かかしまつりデーの復帰緒戦時の緩い馬体とは雲泥の差。皆さんからも感心と驚嘆の声が出る。「アオイリュウセイ、ピッカピカ!」とくもさんも。
8番サファリクラッシュ。前走B級重賞最上川賞を勝った3歳馬。つまりはまだB級格付けだったわけで、ここは相当の格上挑戦。まだら芦毛でちょっと胴長スリムな馬体はペルターブレーブの弟分といった感じ。なかなか悪くない。「でもこっちの方が体重重い。」とラテちゃん指摘。
9番セイフクガバナー。この馬なりのいつものドカンとした堂々たる馬体。しかし毛艶は若干落ち気味か。A1ではなかなか自分の逃げ競馬をさせてもらえない現状に加え、今回の距離二三は明らかに長い。
10番エルソパレード。皮膚が薄そうな黒鹿毛の馬体の毛艶は今日も良好で、調子落ちはなさそう。トモの送りは硬い感じだが、全体的には悪くない。右目の三白眼をギラギラとさせて。
そして11番がペルターブレーブ。馬体重496kは適正値。芦毛なのでそうは目立たないが、どうも冬毛っぽい。6歳の晩秋を迎え、馬体はさらに白さを増した。「前走(11月6日)より白くなったんじゃないか?」くもさんが仰る。「馬体が白くなるのと併せて、パドックでホント大人しくなったっすよ。」とはブルボンさん。確かに周回中、ガッとなる場面が全くない。周回の歩幅はペルターにしてはある方かと。くもさん曰く「まあ何だかんだ言ってもシーズン最後の重賞だから、キッチリ目一杯の仕上げだよ。」。
12番ラピッドベアーズ。重厚で胴長な馬体。ゆったりとした気配で周回している。これはなかなか悪くない。千八戦の場数は少ないが、千五よりも千七に良積があり、長丁場が合いそう。ここも出るか?大逃げ。
ペルターブレーブ、本馬場に登場。白くなったな・・・
「三連覇で上山競馬史上に不朽の名を刻むか」by与那覇アナ
本馬場に各馬登場する。概ねゼッケン順通りにゴール板前まで一列で入場する中、ムーンライトブルーは例によって入場口からそのまま1コーナーへぶっ飛んで行く。アオイリュウセイは入場口前で暫しうろちょろして、全馬入場を終えた、その最後尾についてゴール板前に。そしてペルターブレーブ、外ラチ沿いを厩務員さんに曳かれて登場。パドックメンコは外されて、この時点で素顔。
ムーンライトブルーが真っ先にゴール前をキャンターで勢い良く通過。マルハチフレンドの返し馬も今日は強め。ペルターブレーブは1周ごく軽く流し、そしてもう1周いつもよりは軽めのキャンター。しかし入念。アオイリュウセイはダク気味に1周回って、ゴール板前あたりから加速して軽めのキャンターに移る。
予想。上山には連単馬券がないので馬複にて。ペルターブレーブからマルハチフレンドとアオイリュウセイへの2点。超本命サイドなので、前者が1一番人気、後者が2番人気の買い目。マルハチフレンドには若干の距離不安があるが、昨年の2着でもあり、出来を考えると外しにくい。アオイリュウセイは昨年のこのレース、長距離適性を見込んで本線に据えたところ、掛かり癖露呈で差せず敗退という結果に終わり、個人的には長丁場どうなのか?という印象が強く、また、「今回も引っ掛かるか」という心配が大きかった。のではあるが、恐ろしいばかりのパドック気配を目の当たりにして、むしろこちらを勝負馬券に据える。「マルハチフレンドにとっては、絶対逃げるラピッドベアーズの存在が気になるだろうな。自分が前々でペース握れなさそうだし。」。それでも加えて「しかしここは上位三強で決まってくれないと困る。」とも。ラテちゃんは「アオイリュウセイ、パドックは凄かったけど、返し馬は何だかフニャラフニャラ走ってたような。」「まあ楽走ではあったけどね。」とワシ。
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レースなり〜これが上山2001総決算!
いよいよレース発走。2300m戦の発走地点は4コーナーを回って直線に入ったあたり。1250mのそれと同じところ。ここからコースをまる2周して最後の直線。ホームストレッチを3回通過する。メイ後さん、ラテちゃん共々ゴール板前に陣取り、決戦を見届ける。
ゲートオープン。各馬概ね横一線の綺麗なスタート。予想通り大外からラピッドベアーズが、内に切れ込み気味に前へ。インではマルハチフレンドも、因みに今日はメンコを取って素顔で。この外並んでミスターハヤブサも前に、カミノマルーエースはこの直後外。セイフクガバナーはハナを切らず、カミノマルーの外。そしてペルターブレーブはこの直後外、先行集団の大外といった位置取りで、なかなか悪くないポジションかと。このあたりの最内にムーンライトブルーがいて、ペルターの後ろのインにエルソパレード、さらにその内にアオイリュウセイ、これらが中団。ベルサリオ、サファリルージュ、サファリクラッシュは後方。このような隊列で最初の正面スタンド前を通過。
1コーナーあたりまでは最前列は数頭で形成されていたようだが、やがてラピッドベアーズが単騎ハナに。マルハチフレンドは2番手に。向こう流しまでに、ムーンライトブルーはインからやや位置を上げた模様。一方のペルターブレーブは先団から次第次第にポジションを下げる。それと共に、いつの間に大外からどんどんラインがインコースへ。向こう正面では直後のアオイリュウセイとの内外が逆になっている。インにペルター外にアオイ。
2度目のホームストレッチ。先頭ラピッドベアーズが快走。後続を離しての単騎リード。2番手マルハチ、ムーンライトブルーが内から3番手に。この横にミスターハヤブサ。次列内にセイフクガバナー、この外にカミノマルーエースが併走して、ペルターブレーブはこの後ろのイン。直後外にアオイリュウセイが陣取り、エルソパレードがこれに続く。ペルターは完全に好位馬群に囲まれた体裁。2頭(サファリルージュとサファリクラッシュだった模様)が既にこの時点で、可哀想なくらい前の隊列から引き離されている。
2周目のスタンド前、中団
ペルターは内で包まれ気味、直後外にアオイリュウセイ
2周目の2コーナーから向こう正面に出る。先頭ラピッドベアーズが大逃げ体勢。後続を20mくらいは引き離している。これがバックの半ばを通過するあたり、サスガに拙いと思ったのか、2番手からマルハチフレンドが動く。格好としては昨年と同じ二角発進のロングスパート。だが、それが目立ったのも束の間、中団からアオイリュウセイが一気に仕掛け、前にドッと寄せる。連れて上昇したのはエルソパレード。三角手前で、マルハチフレンドが先頭ラピッドベアーズにようやく追いついたかどうかというところ、瞬く間に両頭を呑み込み、アオイリュウセイが敢然と先頭に立つ。これ以降、マルハチフレンドの存在感が完全に失せる(ズルズル後退だったようだ)。
ところがこの頃のペルター。バックの半ばまでは、それなりに中団の位置をキープできてはいたが、アオイが仕掛けた時点でスッと反応できず、付いていけない。それでも何とか三分三厘位置を押し上げるが、前から下がってくる馬が邪魔になり、これを捌くのに手間取っている感じ。つまりはそれらをブチ割る脚勢が、今日はない。
そして4コーナーから最後の直線、先頭のアオイリュウセイはロングスパートの単騎先頭。馬場二分どころを一目散。エルソパレードが馬場ド真ん中を2番手で回る。四角でようやくエルソの直後まで取り付いたペルターブレーブ、鞍上冨樫は明らかにエルソの通ったラインを狙ったように見えたのだが、そこを先に押さえられ、ペルターを外に持ち出さざるを得なくなる。これが痛恨のミスか。末脚リリースのタイミングが遅れてしまう。
先頭疾走アオイリュウセイ、2番手でエルソパレードがしっかりとした末脚でゴールを目指す。ここに、直線を向いてようやくエンジンのかかったペルターブレーブが急迫。メイ後さんもワシも「トガシ!!」と思わず声が出る。が、どうもアオイリュウセイの位置までは届きそうにない。結局アオイリュウセイが後続を振り切って、復活の、そして頂点奪取のVゴール。着差は1馬身なれど、印象としては完勝。
そして2着争い。残り20あたりでペルターとエルソの馬体が重なる。ペルターは例によって馬体と首を一杯に伸ばして差し切らんとする。が、エルソパレードの脚も確か。2頭鼻面を並べての入線。
アオイリュウセイ、ゴールへ
堂々抜け出し、ハミ吊りが揺れる
ゴール直前、2着争いのエルソvsペルター
ペルター届かない!
メイ後さんと顔を見合わす。そしてお互い「ペルター、多分駄目だ、交わせてない。」と確認し合う。馬場内ビジョンに流れるゴール前のリプレイ、外のペルターに勢いはあるも、しっかりと内でエルソが残している。その差ハナ。
4着勝負所で後退した感じだったが、何だかんだでムーンライトブルー。5着先団好位ママといった体裁でカミノマルーエース。大逃げラピッドベアーズは6着に踏みとどまる。が、マルハチフレンドは1着アオイから実に3秒5遅れの11着ブービー惨敗。
アオイリュウセイ、今日は完勝。折り合い難をそれほど感じさせない走りであったし、何より2周目向こう正面での一気の寄せは圧巻だった。「ペルターブレーブの後ろから捲って勝ったんだから大したもの。」と、くもさんも言及。出来がそのまま結果に出たか。今季前半を全休で棒に振れども、最後に大きなタイトルをゲット。それも狙い澄ましたかのような臨戦過程で。まあ、こうなると来季の活躍に期待が懸かるわけだ。政権樹立とはまだ言い難いが、"筆頭第一候補"には躍り出たろう。
その一方でペルターブレーブは"絶対王者"から、有力馬の一頭に後退したというところ。それにしても、かかしまつり賞に続き、ここも三連覇を逃すとは。いかにこれが達成困難なものであるということか。前走で、道中の機動力面での不安を払拭したと思われたのだが、今回もまた、かかしまつり賞時ほどではないにせよ、勝負所で反応が悪く、届かずという結果になってしまった。「ペルター反応悪過ぎ。あれで届いたらバケモノ。」とくもさんもメイ後さんも御指摘。それにしても今日のペルターwith冨樫の走りに関しては、コースのライン取りがどうも不可解。外目先団楽走から、どんどん中団のポッケに押し込められていった。それに駄目を押したのが最後の四角、土壇場で外に切り替えざるをえなくなったところ。まあ、負けは負けとして、今回は勝者を讃えようと思うが、個人的に悲しかったのは、「馬体を並べて追い合ったら、少なくとも隣の相手には、ゴール前絶対競り負けない」という、まさに彼を彼たらしめるパフォーマンスが叶わなかったということ。「ペルターブレーブはこのところ取りこぼしが増えてきた。」と山形シチーさんが後日言及されたが、6歳を終えようとして、そろそろ能力のピークが過ぎんとしているのだろうか。
着順と前後してしまったが、2着のエルソパレードについては、その地力アップをまざまざと見せつけられた。これで自身が今年出走した古馬重賞3戦、全て2着という好結果。まだまだポカもあるようだが、この馬、先行しても差しても、終いはちゃんと来るという印象が強い。アオイリュウセイと同じ4歳、まだまだ若い。来季も楽しみ。
それにしても今日のマルハチフレンドはいくら何でも負け過ぎ。くもさんのこの馬に対する戦前の危惧、それが的中してしまったわけだが、ちょっとそれどころではない。結局今季は重賞未勝利。この妙に自在性があるところがクセモノなのか。因みにワシ、この馬の勝つところ、観たことがない。
アオイリュウセイ、口取りを終えて
堂々たるこの姿
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競馬終わって〜おわりに
せめてペルターがエルソを抜いて2着になってくれさえすれば、馬券は的中だったのだが、経済的にも心理的にも一気にガクッとくる結果となった。そんなことにはお構いなしに、表彰式が行われる。その間、ゴール板前のコース上に、勝ち馬のアオイリュウセイが厩務員さんに曳かれて登場している。これは上山では珍しい光景なのでは。
最終レースに手を出す気にもならず、ワシの競馬はこれにて終了。メイ後さんは最終レースも際どく外し、まさに病状悪化、相当打ちのめされてのジ・エンド。ぼちぼち日も暮れようかという中、皆さんと競馬場を退場する。
メイ後さんは往路と同様仙台までファンバスにてということで、ここでお別れ。くもさんとラテちゃんとワシは山形駅前行きのファンバスに乗車。くもさんとは駅前でお別れ。次は3日後、福山の全日本アラブグランプリで再会の予定。
ラテちゃんとワシは駅前から、17時頃に出る空港バスで山形空港へ。空港の売店でお土産を買ったりして、18:50発、関空行きの便に搭乗、帰路に。関空着の場合は、どうやら岡山あたりまで西に飛んで、瀬戸内海上空を逆戻り、鳴門海峡方面から大阪湾に進入、と、非常に大回りのコースを取るようで、このため所要時間が伊丹発着便と比べて2、30分余計にかかる。ということで20:20分過ぎに関西空港に無事帰着。ここからは関空快速で。車中ラテちゃんと今日の反省(何をやねん?)やレースの回顧、その他しょーもない話題で盛り上がる。そして大阪駅でお別れ。
以上、サスガ"北のアラブ、最後の聖地"の年度総決算、しかも2300m戦、今年も堪能させていただきましたです。しかしなあ、やっぱり本音は「ペルターの三連覇達成、観たかった・・・」なんだよなあ。スマン、アオイリュウセイ。
後記:
後日、ペルターブレーブの主戦、冨樫騎手が、この日を限りに騎手を引退したというニュースが流れた。そしてこれは事実であった。ということで、実は冨樫騎手にとって、奥の細道大賞典は、騎手人生最後の騎乗だったのだ。騎乗馬の三連覇はともかく、自身の最後の晴れ舞台として、是が非でも勝っておきたい、おかねばならないレースだったはずである。しかしながら、そこでキメられない冨樫騎手って、何となく冨樫騎手らしくて、「何だかなあ。」なのである。加えて「冨樫真面目に追え!!」だの「冨樫バ○ヤロ!」だの、ファンの罵声を浴びつつ去っていく冨樫ってのも、やっぱり冨樫らしくて・・・何だか、悲しい・・・
2001.12.12 記
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