第30回アラブギフ大賞典観戦報告

 2002.1.2、笠松、1900m

2002年、年頭の御挨拶、そしてお断り
年も改まって2002年、拙観戦記の執筆もこれで3シーズン目に入ります。今年はどれだけアラブ行脚をし、観戦記を書き続けられるかはわかりませんが、とりあえずは成り行きに任せ、行けるところまで行こうかなと思っておる次第。

ここで一つお断りを。昨年前半あたりから、観戦記の執筆が、常に遅延している状態が続いております。まあ、観戦している数もたいがい多いのではありますが、原因の一つとして、内容が益々冗長になり、分量が増加して、このため執筆にアップアップしているということが挙げられます。
そこで、この状況を少しでも軽減するべく、年変わりを機に、観戦記のスタイルを若干変更することにしました。具体的には、競馬場への往復の行程に関してと、現地でのお知り合いの方との交流等、私個人の日記的要素の濃い記述については、今後割愛させていただくことにします。「現場の空気をお伝えする」という点においては著しい後退という他なく、読者の皆様にとりましても、「潤いがなくなる。」とか「何やワシはもう登場せんのか。」といったご不満もございましょうが、何卒御容赦のほどを。
まあ、レースに関する一連の記述については(出走メンバー、パドック、レース模様、まとめ)従来通りのワンパターンでありますので、今年もそうぞ御贔屓に。

はじめに
さて、2002年一発目のアラブ重賞観戦は、笠松のアラブギフ大賞典。出走メンバーは以下の9頭。()内は騎手、斤量。ハンデ戦。
マリンレオ(山田、54.5k)、ホウシュウトミカワ(尾島、49k)、ショウリイットー(坂井、52.5K)、クールマックス(濱口、52k)、トモシロヒット(柴山、52.5k)、シャロンビクター(大塚、50k)、トライハートキング(東川、52k)、マルカシード(安藤光、53k)、ケイエスマジック(川原、50k)

笠松ではただ二つのアラブ系古馬SPI競走(もう一方は4月のアラブチャンピオン賞)であり、1着賞金440万円と、現在も高額賞金を維持しているレースである。しかしながら、同じ正月開催に中京では名古屋杯が施行され、強豪の出走が分散し、真の東海頂点決戦にはならないという状況については、シルバー争覇の観戦記の冒頭に記した通り。
レベル的に笠松よりも名古屋優位という、近年の東海アラブ事情を反映してか、ここ2年はイケノエメラルドにブレーンワークと、名古屋所属馬が続けて勝っている。
そして今年も名古屋から1頭、強豪が乗り込む。すなわちマリンレオ。いまや「中距離までなら日本一強いのでは。」とも言われるまでになった、押しも押されぬ東海筆頭馬。前走名古屋杯トライアルのシルバー争覇を勝つも、自身未経験の中京2300m戦である名古屋杯は避け、確勝を期して参戦。今後交流競走に打って出るためにも、重賞の星を積み重ねておきたいという陣営の思惑は、想像に難くない。

天気は晴れだが、朝から強い西風(これが伊吹颪である)が吹きつけ、とんでもなく寒い。午後になると時折雪が舞う。前日午後に雨が降ったようで、このためか馬場状態は不良。路面に水は浮いていないが、砂は粘っている感じ。しかし深くはないようだ。路盤は堅そう。

パドック、そして発走まで
そしてパドック。
1番が注目のマリンレオ。煩いところなど微塵も見せず、あたりを見渡す余裕。馬体に実が入って文句なしの出来。踏み込みも力強く、そして深い。「確かに首差しがいいわ。」とディープさん。
2番ホウシュウトミカワ。大人しい周回。馬体の張りはイマイチ。トモが硬い。差し馬だが、今回のオープン編入は陣営としても計算外だったとか。
3番ショウリイットー。若干立派な作りはこんなものか。この馬なりの仕上がった馬体。トモの踏み込みは浅め。のんびりとした周回。3走前のアラブ銀杯はブラウンダンディを交わしてマリンレオに続く2着。しかし前走銀嶺争覇は本命を裏切る3着。
4番クールマックス。馬体重500kの割にはひ弱い感じ。トボトボと周回。この馬が前走銀嶺争覇を7番人気で勝った馬。差し脚質。
5番トモシロヒット。一昨年の夏、爆速逃げで金杯を制したが、輝きはこの時のみ。結局昨秋福山を去り当地に移籍。チャカチャカと煩いのは福山時代と同じ。馬体重508kは全盛期と遜色ないが、あまり張りがあるようには見えない。
6番シャロンビクター。馬体重500kの割には何となく細身。時折小走りになり、イライラ気味。笠松オープンの常連だが、どうも突き抜けない戦績。
7番トライハートキング。青毛なのでパッと見はいい。キョロキョロと。以前目にした際の黒メンコから、今回はピンクラメの派手なメンコに変えている。近3走連続大差殿負け。逃げても三分三厘まで保っていない。
8番マルカシード。昨春は、クラボクモン重賞三タテ全てに2着として付き合い、7歳にして完全本格化を思わせたが、春の名古屋杯以後は長期休養、その実は骨折していたそうで、今回が復帰緒戦。相変わらずドシッとした馬格だが、まだまだかなり緩そう。
9番ケイエスマジック。キビキビとした周回。トモの送りは浅いが小気味いい身のこなし。元来パドックでは良く見せるタイプ。前々走1着は妥当だが、前走銀嶺争覇4着は不満。

パドック周回が終わり、各馬馬場に出て返し馬に。ケイエスマジック、クールマックスらは強め。トライハートキングは空を向いてガーッと。マルカシードも久々だが豪快に。トモシロヒットも強く。マリンレオは余裕綽々といった感、楽走で流す。
「柴山ぁ!何が何でも逃げろ!」と、トモシロヒットとその鞍上に声援を送る辻本くん。彼も金杯圧勝に度肝を抜かれたクチ。しかもその次走のタマツバキトライアルでの撃沈に力が抜けたというオマケつき。
「ところでクラボクモンはどうしてるの。」と問うと、"東海の好漢"おーたさんが、「厩舎にはいるらしいけど、どうも勝負避けているみたいね。今日は見た目似た馬が久々に出ててますが。」と、マルカシードを指す。「似てるったってそれ黄メンコブリンカーだけやん。馬体重100kちゃうねんで。」と、これもお約束の返答。

予想。マリンレオのアタマは鉄板。考えるのは相手だけ。だが、これがちょっと難しい。地力と、当地での道悪成績5戦3勝2着1回を考えれば、ケイエスマジックが筆頭か。逃げ同型としては、テンの速さは勝るかも知れぬトライハートキングやトモシロヒットもいるが、近走の戦績からしてもこれらには負けないのでは。「ショウリイットーの差しは?」と振ると、おーたさん、「うーん、そっちをとるかあ。」。「ああそうか。こいつは良馬場の方がいいのね(笠松千八は3戦2勝2着1回)。」と納得。「ショウリイットー買うくらいならクールマックスだな。」との声も。マルカシードは道悪巧者だが、何せ久々。それに明けて8歳。「このモッさい馬が長期休養明けでいきなり走るわけがない。」とはディープさん。同感。「それでも安光が乗ってきとるのが不気味。」との見方も。
ワシの買い目は連単で勿論マリンレオから。相手はケイエスマジックを本線に大きく。オマケでショウリイットーと、これは半ば情けでトモシロヒットに。

レースなり
いよいよレース。距離は1900m。2コーナーを立ち上がって向こう正面に出たところが発走地点。
ゲートオープン。中から押されてトモシロヒットが前に。マルカシードがフワッと2番手に。トライハートキングも当然フロントを狙う。大外からケイエスマジックも前へ。マリンレオは無難に出て、これら逃げ馬勢を前に見る好位をすんなり取る。その外に連れてシャロンビクター。
正面スタンド前。先頭はトモシロヒット。2馬身程離れて2番手にマルカシード。直後内にトライハートキング、外にケイエスマジックが併走。2馬身くらいあってこの後ろにシャロンビクター。マリンレオはこの後ろ、インを単走。直後にショウリイットーがつけ、差しのホウシュウトミカワ、クールマックスは後方から。

1周目(36KB)
1周目先団、ホームストレッチ
先頭トモシロヒット、2番手マルカシード

1コーナーから2コーナー。先頭トモシロの外直後にマルカが張り付き、さらにその外にケイエスマジックが。ケイエスの背後にショウリイットーがマリンレオより先に前に出る。マリンレオはこれら先団をじっくり見ての競馬。
向こう流し半ば過ぎ、やや前と差があったマリンレオが動き、寄せる。3コーナーあたりでトモシロヒットは捕まり、マルカシードも息切れ気味で、ケイエスマジックが一旦は先頭に。しかしこれも束の間のこと、三分三厘マリンレオがあっさりと交わし去り、難なく先頭に。ショウリイットーがマリンレオについて上昇を試みる。四角では先頭マリンレオ、2番手は内でケイエスマジックだがその伸びはいま一歩。これをショウリイットーが交わそうかといったところ。
最後の直線はマリンレオの独走。それもあまりに事も無げな走り。鞍上山田騎手はさほど追うところもなく、ゴール前20mあたりでスタンドに左腕を突き出しガッツポーズを見せ、楽走でのVゴール。結局後続とは8馬身、1秒4差。

マリンレオ、ゴールへ(46KB)
マリンレオ、ゴールへ
しなやかに楽走、逆光だ

2着はショウリイットーがそのまま残って。3着はクールマックスが四角ケツ二からの追い込みで、しかし前とは3馬身差。ケイエスマジックは結局半馬身差の4着に終わる。5着好位のシャロンビクター。6着ホウシュウトミカワ。マルカシードは三分三厘で売り切れの7着。トモシロヒットは逃げバテ8着。トライハートキングが2周目バック早々に圏外の、これで4戦連続の大差最下位。

SPI競走なので、優勝馬の口取り撮影と表彰式がある。これに臨むべく、1コーナー方向の装鞍所から、マリンレオがウィナ前に曳かれてやって来る。「白メンコがダートで黒く染まって、いい感じだなあ。」とWSさん、愛用のサンニッパでそのアップを狙う。

マリンレオ、口取り(44KB)
マリンレオ、口取り写真に収まる
泥にまみれた白メンコが生々しくてイイ


振り返って
マリンレオ、まずは順当勝ち。こう言っては他馬に失礼で、かつ身もふたもないが、ここらあたりではモノが違う。前半の先行争いには構いもせず、楽に中団追走で折り合いもバッチリ。バック半ばで難なく寄せて、スイスイと四角先頭。「この楽走で着差が8馬身か!いつの間に?」と、レース後着順掲示盤の表示で改めて気付かされるほどの、そんな次元の違った走りであった。因みにこの馬、これで重賞4勝目だが、SPI勝ちは初。目論見通り、キッチリ実績と賞金を加算。
ショウリイットーはこの馬としては早めに動いての2着では。マリンレオさえいなければ、すんなり綺麗な好位競馬というところ。「ショウリイットーで2着とれるんだから、クラボクモン出てりゃ面白かったろうに(この2頭は同厩)。」などと思ったりもして。
クールマックスは自分の差し競馬か。鞍上濱ちゃんはやっぱり馬を動かせるということか。ケイエスマジックは案外の4着。逃げ・先行勢最先着ではあるが、無茶な競り合いがあったようにも見えず、ちょっとだらしない。昨春の名古屋杯では距離千九を二位付けで僅差3着に粘ったこともあり。
マルカシードはまあこんなところ。今回多くを望むのは酷。トモシロヒットは距離が長めだったにせよ、やっぱり復活には遠いか。後半の粘りのなさは福山を去る以前からのまま。トラハはねえ、キツいよなあ。

最終レースについてチラッと、そして結びに
最終レースはアラブA2級のハッピーサンライズ特別。距離は1800m。これはメインのアラブギフと同様、近年正月2日の笠松競馬の恒例レース。ホウシュウトミカワが本当は狙っていたレース。
ここはA1だと家賃が高いがA2なら元気の追い込み牝馬ホマレメガミ(個人的にはこの馬、アスターダルシャンの後継者と勝手に決めつけている)がキッチリ決めて勝利。
なおここに登場したイッシンユメマル、このレース、実に4年連続出走。この間園田に移籍したこともあるにもかかわらず、こんな珍記録を打ち立てた。結果は4着。

以上、今年の重賞観戦一発目は、見事マリンレオに決めてもらいました。結びはベタにこんな感じ。
「さあマリンレオ、その強さ、全国交流で存分に見せつけるがいい!」(加賀丈史風、やや旧い)

2002.1.16 記

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