第37回福山大賞典観戦報告

 2002.1.6、福山、2600m

はじめに〜福山大賞典に思う
「伝統と格式、そして栄誉」
福山大賞典ほど、このことばが相応しい競走もないのではと思う。距離2600mは、年に1回、この競走のみにおいて施行される、まさにチャンピオンディスタンス。現在では全国アラブ系競走において、最長距離となった。スタミナと底力、レースセンスが問われる、紛れのない王者決定戦。優勝賞金1000万円は、いまや非交流競走では全国一の金額である。売り上げ不振から、重賞も含め、今年度は相当の賞金カットを断行した福山競馬であるが、その中にあって、このレースの賞金は従来の額を維持している。また、長距離かつハンデ定量の王座決定戦となると、勝ち目の薄い馬は回避して少頭数になりがちであるところ、出走することがまずは栄誉とばかりに、例年フルゲートとなるのも特徴かと。こういったあたり、主催者や厩舎サイド、馬主といった、福山競馬に携わる人々の、このレースに対する特別な想いが感じられて、非常に好ましい。
ここ3年は正月3日に施行されており、園田の新春賞と日程が重なっていた。住処に近いということから、どうしても新春賞に足が向いてしまっていたところ、今年の大賞典は1月第1日曜の6日。売り上げ的には三が日に施行した方が望ましいのであろうが、個人的には、おかげで他のレースと日程が被ることなく観戦出来、有り難い。
というわけで、ようやくのことで叶った、初の大賞典観戦である。

当日の天気は晴れ。午後になって時折曇る。結構寒い。
馬場状態は良。砂はちゃんと補充されているようで、見た目にも相当深い。レース傾向としては先行有利。逃げ馬の連入も目立つ。

出走馬について〜これぞ王座決定戦
出走馬は以下のフルゲート10頭。()内は騎手、斤量。
ユタカブレーヴ(野田、54k)、ドリーミング(渡辺、54k)、パッピーケイオー(藤本、54k)、ヨシユキトップ(吉延、55k)、セブンアトム(黒川、55k)、フジナミスペシャル(嬉、54k)、グリンティアラ(鋤田、54k)、ホマレスターライツ(佐原、55k)、フジキタイトル(岡田、54k)、ユノワンサイド(石井、54k)
ハンデは馬齢定量。5歳セブンアトムと6歳ヨシユキトップ、ホマレスターライツは55k。他の牡馬は54k。6歳牝馬のドリーミングとグリンティアラが1k減の54k、
グリンティアラは主戦片桐騎手が怪我で欠場、鋤田騎手が代打。

以上の通り、現在の福山古馬オープン戦線にて、考えられうる最高のメンバーが揃った。
昨夏転入以来、破竹の8連勝で君臨する"魔女"ドリーミング。その魔女にアタマが上がらない実力牡馬、ホマレスターライツにヨシユキトップ。ドリーミング回避の菊花賞にて待望の重賞制覇を遂げたセブンアトム。昨秋来不振も、悲願の大賞典獲りを目指すパッピーケイオー。寒くなるにつれ調子を上げてきた"雪女"グリンティアラ。そしてフジキタイトルにユタカブレーヴといった古馬勢。加えて、明け4歳の二強、三冠馬ユノワンサイドにアラブグランプリホースのフジナミスペシャル。
しかしこの中に、昨年の覇者、ミスターカミサマの姿はない。放牧帰りの昨秋、別馬のように走らなくなり、大賞典を前に引退が発表された、状態に致命的欠陥を抱えてしまったようで、結局、その盛りは短いものとなってしまった。
ミスターカミサマも含め、昨年の大賞典から、出走馬の顔ぶれが大きく変わった。2年連続出走となったのは、昨年3着のグリンティアラに4着パッピーケイオーのみ。パッピーは3年連続の登場である。他地区から有力馬の転入が増加し、オープン戦線がかつてより活気づいたという面はあるにせよ、5年連続出走して3勝というミナミセンプウの戦歴は、まさに規格外である。
そしてカミサマといえば、その5歳世代の出走馬がセブンアトム1頭だけというのも寂しいところ。多士済々の4歳(旧表記)戦線を現出した世代であるのだが、A1まで出世して、かつ常時稼働しているのはこの馬だけ。

パドックから発走まで
さてパドック。
1番ユタカブレーヴ。腹はやや重いが張りはある。しっかりとした足どりで周回。
2番がドリーミング。文句なしの仕上げ。馬体の実入りも毛艶も良好。牡馬に何ら引けをとらない逞しさ。
3番パッピーケイオー。入場早々ドドドッと走る。これはお馴染み好調時のサイン。馬体は皮膚が薄く、ガッチリ作ってきている。若干胴が重いか。
4番ヨシユキトップ。ピカピカの毛艶で筋肉が張っている。相変わらず剛直な馬体。
5番セブンアトム。栗毛の艶はソコソコ。一見胴が緩めなのはこの馬の個性か。踏み込みは若干浅い。時折鶴首気味になって気合いは入っている模様。
6番フジナミスペシャル。毛艶はまあまあ。割と大人しい周回気配。馬体は緩くも細くもなくこんな感じかという具合。悪くない。
7番グリンティアラ。一時より胴に実が入ってこれは好感。毛艶は普通。若干トモが細いのは最近の傾向。大股な踏み込み。
8番ホマレスターライツ。いつもながら毛艶は文句なし。ジンワリとした気合い乗りで、これはこの馬としてはむしろ大人しく見える。
9番フジキタイトル。戦績では劣勢だが見た目は最高。毛艶と馬体の張りは素晴らしい。前半身に比して後ろの力感が乏しい体型。
10番がユノワンサイド。馬体は雄大だがトモの踏み込みが弱いか。馬体重495kは前走比-3kだが、前走+12kだったのでこれは戻したということ。しかしながら馬体は前走アラブ王冠時よりむしろ重くて緩い。実は直前じんましんを発症して、出走も危ぶまれたとか。これが影響しているのか。
サスガアラブ王国のトップ10頭、どれも水準以上の見た目。ユノワンサイドの緩さはともかくとして、パドックのみでどれを上位と判断するかは個人の好みによるような。ワシは、ドリーミング、パッピー、ホマスタ、フジキタイトルあたりに特に好感を抱いたのだが。
「止まーれー」の号令か掛かり、騎手が跨る。この時フジナミスペシャルが一変、煩くなる。「パッピー、さらに気合いが入ったねえ。」と環さん。

パッピーケイオー(36KB)
パッピーケイオー、本馬場に登場
悲願の大賞典制覇、逆転打は出るか?
グリンティアラ(35KB)
グリンティアラ、返し馬へ
誰が呼んだか"雪女"

本馬場入場、そして返し馬。最後に登場したユノワンサイドが、ご機嫌斜めか、ゴール前10mあたりで膠着。曳いている厩務員さんを手こずらす。パッピーは伸び伸びと登場してダクから。そしてシャープにキャンター。ヨシユキトップのキャンターはパワフル。セブンアトムは楽に。ホマレスターライツは例によって首を下げ闘志を秘めてジンワリと。ドリーミングはリラックスして軽め。フジナミスペシャルは馬場に出ても煩い。アラブ王冠時と同様、4コーナーを大きく逸走気味に回ってくる。ユノワンサイドは強め。しかし「何だかユノワンサイドの走り、後ろがガニ股だなあ。」と、万歳さんが指摘する。

ユノワンサイド(35KB)
ユノワンサイド、キャンター
じんましんは大丈夫?
ドリーミング(35KB)
ドリーミング、キャンター
今日も魔女が征く

「パッピー、今日はイイじゃないですか!」と、パドックを見終えてディープさんが開口一番。これは電設の男@ともろうさんや万歳さんをはじめとして、現場の皆さんの共通見解。「今回は買いますよ。これで来なかったらA1でパッピー買うの、今日が最後になるでしょう。」とディープさんや電設師。ネット上ではずっと以前からやり取りさせていただいていて、今日ようやく初めてお目にかかった、福山出身で現在は北海道在住のローゼンホーマさんは「ホマスタって凄く好きなタイプなんだけれど、ちょっと前脚の歩様気になったんですよね。ユノワンサイドは逆らいにくい雰囲気だけれども、やっぱり重い気がしたし。フジナミスペシャルは気になるんだけれど、ここに入るとちょっと一格落ちるのかなあ。」などと。初めて目にする馬ばかりながらも、非常に丁寧に、優しくチェックしてらっしゃる。「ホマスタはだいたいいつもあんな感じで肩の出は硬いですよ。ただ脚の使いどころが難しいでしょうね。」とワシ。ユノワンサイドが重めでイマイチというのも現場の共通見解。電設師は「ワタシは今回ユノワンは切る。」と決断。
予想。専門紙では、ユノワンサイドとドリーミングのシルシが厚く、ヨシユキ、ホマスタ、フジナミあたりがソコソコ、ティアラ、パッピー、フジキにパラパラといった具合。しかしながら、実際にはどこからも狙える状況。ちょっと難しい。ユノワンサイドはじんましんの一件と、この重めの馬体が心配だが、安定性と地力からして無視するには勇気が必要かと。ドリーミングは福山で二二五超の距離は初、牝馬に二六は楽ではないというのが気になる点か。しかし上山時代に2300mの経験はあり。
さて、ワシの狙いはパッピーケイオー。近走良積ないが、この出来、そして何より、三度目の正直で大賞典奪取に期待して。二二五超の長丁場は7戦2勝2着3回3着1回で連対率は7割を越え、まさに望むところ。まあ、応援の心情、非常に多し。枠単でここから、相手はドリーミング、フジナミ、ティアラとホマスタの7枠、ユノワン。同じ目で枠複も。加えて、タテ目を一点だけ、ドリーミング−フジナミ。ドリーミングはこれまでの強さを、フジナミは長距離適性を買って。ヨシユキトップが来たら降参。セブンアトムは菊花賞を逃げ切ったとはいえ、二六はサスガにキツいのではと見て、切る。「2250までは千八の延長で何とかなるけど、2600mは誤魔化し効かないからなあ。2周目の2コーナー過ぎてからがサバイバルだからなあ。」とは、おさるさんが常々仰るところ。

決戦!
いよいよ発走。2600mのスタート地点は向こう正面半ば。マイル戦と同じ位置。ここから2周半。コースを2周半する平地競走の番組は、日本では恐らくこのレースだけだろう。
ゲートオープン。ホマレスターライツの出はイマイチ。パッピーケイオー、鞍上サブちゃんに叱咤されつつ前を目指す。しかし程なく、大方の予想通りセブンアトムがハナに立つ。最初の3、4コーナーあたりで先頭アトム、パッピー2番手、フジナミスペシャルが先行3番手、直後にユノワンサイドやヨシユキトップ、グリンティアラが続き、ドリーミングはこの後ろ、まずは中団待機。
そして1周目の正面スタンド前。先頭セブンアトム、折り合って。4、5馬身開いて、2番手フジナミスペシャル、この外にユノワンサイドが併走。次列内にパッピー、ここまで下がって、それでも若干掛かり気味。その外にグリンティアラ。パッピーの後ろにヨシユキ。この後ろにドリーミング、インでじっと我慢。その後方外目にホマレスターライツが続く。さらに後ろにフジキタイトル、ユタカブレーヴ。

1周目(35KB)
最初の正面スタンド前
先頭セブンアトム、2番手中フジナミ外ワンサイド

この1周目のゴール前50あたりから、ユノワンサイドが堪えきれなくなったのか、ガーと上昇、ゴール板過ぎでセブンアトムを交わし先頭に立ってしまう。ちょうど全日本アラブグランプリ時と同じ。セブンアトムは逃げタイプとはいえ平均ペースで折り合えるクチなので、そのまま控えて2番手に。これでフジナミスペシャルが絶好の3番手に収まる。グリンティアラが好位外のいいポジションをキープ。2周目をこなす間に、ドリーミングが徐々に位置を上げていく。
2度目のホーム、先頭ユノワンサイド、辛うじて抑制されている感じのフロント。1馬身下がって次列、内にセブンアトム、外にフジナミスペシャル。フジナミの直後にグリンティアラ。この時点でドリーミングがアトムの直後のインに忍び寄っている。パッピーはドリーミングの後方、前から6番手、ヨシユキがこの外。ヨシユキの後ろにホマスタ、この内にフジキ、そして最後方がユタカブレーヴ。各列の前後は1、2馬身程度、意外と一団。
そして1、2コーナーから向こう流しへ。残り800m、ここからが正念場。案の定苦しくなる馬が出てきて、隊列が長くなる。
バックも後半、ユノワンサイドが加速、勝負に出る。連れてこれを逃すまじとフジナミスペシャル、鞍上嬉がパートナーを激しく叱咤。好位からグリンティアラが寄せ上がる。内ではセブンアトムが遅れ加減に。
一方中団以降から、ドリーミングが加速。スルスルと上昇して3コーナーで外に出て、ディアラの外に迫る。しかしヨシユキトップにホマレスターライツあたりはここで押し上がれない。パッピーもサブちゃんが懸命に追うも、三角を迎えずして脱落、圏外に去る。
三分三厘、先頭ユノワンサイドをフジナミスペシャルが外から追う。グリンティアラはサスガに脚を使い切ったか伸びはここまで。そして外からドリーミング、道中溜めた脚をリリースしてのロングスパート。前とは差があるが追い詰めんとする。勝負は最後の直線、三頭の争いに絞られた。
内で粘り込まんとするユノワンサイドの外にフジナミスペシャルが馬体を併せてくる。鞍上石井必死の左鞭も、苦しくなってAGPと同様外にヨレるワンサイド、またもタイトな叩き合い。しかしフジナミスペシャル、残り50で前に出て、足どりも確かに、終いは2馬身半差をつけて、栄光のゴールに飛び込んだ。

フジナミスペシャル、ゴール前(42KB)
フジナミスペシャル、これが栄光のゴールだ
展開にはまると何と強いことか

2番手でユノワンサイドがゴールに辿り着こうとするところ、直線いっぱいを使って、馬場六分どころをドリーミングが急襲。四角出口で5馬身以上はあったであろう差を一気に詰めてくる。残り10でユノワンサイドを交わし去って、これが2着。魔女の意地、恐るべし。ユノワンサイドはクビ差3着。
以下、5馬身離れた4着がグリンティアラ。クビ差5着がセブンアトム。このあたりは三角以降先団にいた両頭の我慢比べといったところ。6着追い込んだフジキタイトル。ヨシユキトップは勝負所で動けず7着。ホマレスターライツは後方ママ、見せ場もなく8着。パッピーケイオーは後半好位すら維持できずブービー。ユタカブレーヴが最下位。

嬉騎手、フジナミスペシャルをウィニングランに導く。スタンドからはこじんまりとではあるが暖かい祝福の歓声。大賞典の勝者を迎える。嬉さん、ホントに嬉しそうに手を振って応える。「しかしフジナミ、何だかヘバッてたぞ。」という指摘も。


フジナミスペシャル、ウィニングラン(36KB)
フジナミスペシャル、ウィニングラン
鞍上、いとウレシ!

くどく振り返る
フジナミスペシャル、全日本アラブグランプリに続き、ビッグタイトルをGet。「しかしホンマ長丁場で番手マークの形になったら強いなあ。」と、ディープさん共々、半ば呆れ、半ば感心して戦後の感想を漏らし合ったが、その勝利を一言でまとめれば、こんな感じだろう。「先団外目追走、最後は押し出されたユノワンサイドを交わして勝利、AGPと全く同じだな。」とふささんおさるさんらも言及したが、実際そんな印象のレースであった。「でも2周目の3コーナーで、嬉騎手の鞭、凄かったでしょう。音が聞こえてくるかと思ったくらい激しかったよね。必死だったんだろうね。」と万歳さん。確かに、だらしない時のフジナミだと、勝負所であっさり降参しているわけで、今日は実によく走ったということだろう。
この勝利で、3月初めの、佐賀西日本アラブ大賞典への切符は手中に収めたかと。このレースも距離2400mと長丁場、力を存分に発揮できるのでは。加えて、佐賀のレースもともかく、今後福山のオープンを引っ張っていってくれることを希望。このところ3年、大賞典馬がその1年を通じ、有力馬として過ごせていないので(ピアドハンターは程なくヒラオープン馬に逆戻り、アキフジクラウンは佐賀セイユウ賞は制しつつも、桜花賞後骨折リタイア、カミサマもその輝きの時代は短く)。
ドリーミングは敗れこそすれ、8連勝は本物であったことの証左となろう2着。「今日一番強いレースをしたのはドリーミングだろう。」という声も相当数あった。前半は中団インで我慢、徐々にポジションを上げて、勝負所で駆け上がる、馬も強く、また、渡辺騎手のリードも光ったと思う。明らかに馬の能力を信用した乗り方。終いの追い込み脚も確かだった。「バックで加速したとき、同じ位置のヨシユキトップとか、全然付いていけなかったでしょ、差が出たよね。」と万歳さんがポイントを振り返った。
ユノワンサイドはAGPに引き続き、途中からハナに立ってしまっての敗退。「この馬はホントに長距離のスローが駄目だな。」と栃さんらが言及。どうしても辛抱が効かないのだろうか。しかし壊滅的に掛かりもせず、ギリギリで抑えがついて進行できるだけましといえばましとも。それでも勝負所では自力で勝負を賭けて、最後まで踏ん張っているあたり、実力は見せつけたのではないだろうか。得意距離でないながらも、格好がついているところは評価したい。戦前の体調・仕上がり不安をもある程度跳ね返しての結果であり。同じ敗戦でも、昨春までの、「煮え切らない馬」と呼ばれた、歯痒い走りとは全然印象が違う。この馬はホントに強くなった。
グリンティアラは道中ずっと好位のいい位置をキープしていて、妙に目を惹いていた。「ちょっと掛かっていたけどね。」と万歳さんが振り返ったが、三角での寄せはレースを盛り上げたかと。いい脚が持続しないのはこの馬の個性であるからして、やむを得ぬところ。ここで4着は、やはり好調の証拠だろう。
セブンアトムはサスガに残り400mがしんどかった感じ。それでも掲示板を確保したのはバリバリのA1馬の実力か。ユノワンサイドが我慢できずにハナを奪っても、自分は折り合って控えられるのはこの馬の個性。これが喧嘩を売るようなタイプだと、またレースも面白くなったかも。
フジキタイトルの6着は勝負決しての追い込みではあるが、格的にはまずまずかと。調子は良さそうだったし。
ヨシユキトップ、好調が伝えられ、また長丁場も合うと見なされていたのだが、案外の着外敗退。
ホマレスターライツは出遅れから中団ママ。追い込みすら叶わず。佐原クンにホマスタで二六、ちょっと荷が重かったかも。
パッピーケイオーは復活ならず。前半は行く気大ありの走りだったのだが、後半全く駄目。結局昨年6月のセイユウ記念(金沢)3着の後、休養してそれが明けて以来、振るわぬまま。石川の温泉でのぼせて能力を置いてきたのか、いよいよ衰えてきたのか。実際、今回のこの出来で走れぬとなると、ホンマにヤバイ。

環ちゃんはフジナミから勝負で今年初の大当たり。ワシは唯一のタテ目が引っかかってラッキー。枠単3240円、馬複1510円、枠複でも1350円もつき、アリガタヤ。上位拮抗ゆえの好配当かと。「でもフジナミって、大一番だと何となく人気があまりないねんな。」とリーダー。

おわりに、そしてちょっとオマケ
好メンバーということも手伝ったのだろう、アラブ王国の頂点決戦は見応え充分であった。3分を越える長丁場のレースも、途中だれることなく終始緊張感が漂うもの。「さあ、ここからどうなる?どうなる?」と、ワクワクしつつ、見守った次第。
そして結果は、新長距離王の誕生を告げるものとなった。とはいえ上位伯仲の感も大いにあり、この先の福山競馬も、目が離せそうにない。

最後に、ここで4歳二強、フジナミスペシャルとユノワンサイドについて、現時点で思うことなどを。
アラブ王冠時の『キンキ』紙上に「お前と俺とは永遠のライバル!」などという、ベタな見出しが躍ったが、昨年来の2頭の歩みはまさにそういったところであろう。
ただ、この2頭、昨年中盤までは、どことなく頼りなげで、一方は堅実だが煮え切らなかったり、一方は好・不調の波を被ったり、必ずしもピリッとした馬でもなかったような気がするのだ。
加えて両者、いずれも逃げ・先行タイプの大型馬、レースぶりもルックスも比較的地味、と、ズバリ、キャラが被っていた。このあたりも、実績は残しつつも、思ったほどブレイクしない一因ではとも思われたり。一つ上の世代の二強はミスターカミサマにモナクマリン、お互い正反対の脚質で派手なレースぶり、インパクトある外見であっただけに、比較するにつけますます上記の印象が強調された。
それを思うと、秋以降の充実には目を見張る。同時に、両者の個性が顕著になってきた感じ。距離適性しかり、レース運びしかり、イメージも。千八ならワンサイド、長めはフジナミ。剛直、加えて堅実なワンサイド、巧脚(こんな語あるか?)、しかしポカもあるフジナミ・・・
ユノワンサイドのパワー強化はめざましい。千八戦で早めに後続を突き放してねじ伏せる競馬は観る者を黙らせる。目標としてほしい、地味でも鬼のように強かった、ホーエイヒロボーイ産駒の先輩、エイランボーイの域が現実味を帯びてきた。課題はスローペースでの辛抱と、最後苦しい競り合いでの口向きか。
フジナミスペシャルは、AGPと今回の大賞典勝ちで明らかなように、長丁場で番手に収まって進めると、抜群の巧さと強さを発揮する。ただ、戦績にムラがあるのは個性でもあり玉にキズでもある。
さて今後、いかなるライバル模様を描きつつ、進化していくのか、この両者。アラブ界今年の見どころ、その一つである。

2002.1.28 記

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