第55回日本海特別観戦報告

 2002.1.13、益田、2200m

はじめに〜日本海特別といえば・・・
今回観戦するのは、益田のご存じ日本海特別。年に2回冬と夏に施行される、益田最高峰レース。
ここ5年、冬の日本海特別は、正月開催の目玉として1月4日に施行されていたのだが、今回は時期が13日にずれた。なお、同日に福山では、恒例の3歳補助馬重賞、園田・益田・福山交流特別競走が行われ、益田からもベイビイベイビーとグリーンジョーの2頭が参戦。この騎乗のため、沖野、媼サコ]畑の2騎手が福山に出張し、地元不在。現在益田の所属騎手は僅かに10人、他地区から応援騎手の参戦をあおぎ、またいくらフルゲート8頭とはいえ、有力馬の騎乗などの兼ね合いも含め、騎手のやりくりが大変そうである。
日本海特別といえば、益田の誇るニホンカイ兄弟姉妹。'97年以来5年間10回のうち、キャロル('97冬)、ユーノス('97夏)、プリウス('00冬)、マリノ('01冬夏)と、半数を制覇している。加えてこの兄弟姉妹の偉大なる母、ニホンカイローレルも'91夏と'92年冬を連覇しており、まさに日本海特別はニホンカイ特別とも表記しうる状況である。
そして今回、前回前々回と連覇中の、次女にして三番仔のニホンカイマリノが、三連覇を懸けて登場する。過去シンワスターとミスターハゼオーが3勝しているようだが、三連覇した馬はいない。

ということで今回の日本海特別、出走馬は内枠より以下の8頭。()内は騎手、斤量。
ニホンカイマリノ(秋元、57k)、リップスポイラー(服部、54k)、エスペラントタカシ(御神本、56k)、ローレルヒロ(岡田、55k)、ミヤマリュウセイ(上田、54k)、イッテンヨカイチ(山口、54k)、グリーンマスク(末田、57k)、カネキヒット(永尾、54k)
ハンデ戦。服部、山口騎手は上山、永尾騎手は佐賀からの応援騎手。

当日の状況
益田には正午前に着、当日の天気は曇り。冬の日本海側のこと、寒さは覚悟していたのだが、かなり暖かい。天気予報では午後から時々雨と告げていたが、幸いにも天気は保ってくれた。
馬場状態は良。逃げ・先行有利かと見受けられる。レースでは馬場の最内が空いて、皆三分どころより外を走っている模様。

メインレースについて記す前に、この日の出来事として是非書いておきたいのは、上山からの応援騎手、鈴木徹平騎手のこと。昨年の新人ジョッキーだが、なかなか勝てず、初勝利はシーズンも終わりに近づいた11月18日の第2レース。このレース、地元ブルボンさんやくもさんも目に出来なかったという貴重なもの。徹平騎手は結局これが昨年唯一の勝ち星。その彼、この日の4レースと7レースで1着、何と1日2勝。超レアものの現場に立ち会ってしまった。まあ、徹平クンには、これを「レアなんて言わせません!」という具合に、今後頑張っていただければ何よりですが。

パドックから発走まで
さて日本海特別のパドック。いつの間に(というのも、一昨年の春先、大風で大破して以来、暫く存在しなかったもので)新調された、パドックの出走馬掲示盤に、出走各馬の馬名と馬体重が表示される。確認すると全馬マイナス馬体重。実物と比較しつつ、ふささんが「やっぱりどの馬もビッチリ追い切って仕上げたようだなあ。」と仰る。
1番がニホンカイマリノ。馬体重-6k。数字の通り、スッキリとした馬体。福山在籍時に数度目にしたことがあるが、記憶に残る彼女の体型に比して、かなりスリムであるなという印象。歩幅は狭いが、雰囲気はいい。
2番リップスポイラー。腹がボッテリした体型。左トモの踏み込みが浅いような。
3番エスペラントタカシ。11月11日の重賞鴨島特別の勝ち馬。これもパッと見腹が緩め。まあ実入りはいいが。歩幅は浅い。
4番ローレルヒロ。一昨年前半はニホンカイプリウスのライバルとして上位を賑わせた馬で、その年の鴨島特別を勝った。が、その後はイマイチのよう。毛艶と張りは良好だが、トモのボリュームは馬格の割には並。以前もこういう姿だったと記憶している。
5番ミヤマリュウセイ。馬体の張りは上々で艶もあるが、トモは硬め。益田の秀才少女も明けて7歳になった。
6番イッテンヨカイチ。ちょっと冬毛気味。422kと相変わらず馬体重はないが骨格はしっかりしている。ゆったりした胴の作りと長さで、そんなに小さく見せない。
7番グリーンマスク。元岩手オープン馬、最後のビクトリーカップの勝ち馬にして、最後の北日本アラブ優駿(ホマスタ勝利)でハナを切った馬。馬体重519kは出走馬中最大だが、その通りバンバンの馬体でどっしりとした胴回り。トモの送りはちょっと硬いか。
8番カネキヒット。毛艶は冴えない。鈍重に映る馬格だが、筋肉質でもある。
以上、どの馬も歩様はちょっと浅くて硬そうであるが、仕上がりは良さそう。そして、全馬一様に大人しく、煩い素振りを見せる馬は1頭もいない。

そして本馬場に登場し、馬場に散る。距離2200mの長丁場とあってか、キャンターで流す馬は1頭もおらず、全馬まる1周時間をかけて並足で流す。

「マリノもヨカイチもグリーンマスクも、益田では初めて見る。」とは、ワシと同様、一昨年の夏の日本海以来の益田遠征となるディープさん。往路小郡から山口線を同行した、電設の男@ともろうさんも、益田観戦はその時以来だそうで。「グリーンマスク、サスガに岩手のオープン馬だっただけのことはある、いい馬体だね。」と認め合う。「マリノは日本海連覇中、福山から益田に戻って進境があったの?」「そんなことないでしょう。」「福山時代はB級からA3あたりで、毎回岡崎が乗って追い込んでも届かず5着くらいだった馬ですよ。」などと皆さんで語らう。
予想。素直に買えば、実績、能力からしても、ニホンカイマリノとグリーンマスクに逆らう手はなさそう。益田は連単しか発売しないので、どちらをアタマとするかが問題。マリノは差し・追い込み脚質なので、この日の逃げ有利の傾向を考慮するに、いくら距離実績があるとも展開的に厳しかろうということで、ワシはグリーンマスクを上位と見て、グリーン→マリノの買い目を厚く、裏目を薄く。電設師はグリーンマスク勝負。ふささんは御神本鞍上のエスペラントタカシに期待。加えて、「グリーンマスクはすんなりハナならいいだろうけど、どうやらミヤマリュウセイが掛かって絡んで行きそう。これが気になる。」と言及。この点についてはディープさんは「言うてもミヤマリュウセイの現状とグリーンマスクの地力比較したら、問題にはならんでしょう。」と、気にしていない様子。今日、何故か益田にいる"神出鬼没"さまにべっぴんさんは、7−7のゾロ目というお楽しみ穴馬券まで持っている。

レースなり
さてレース。2200mは益田最長施行距離。4コーナーからのスタート。馬場をまる2周。
全馬すんなりゲートに収まりスタート。予想通りグリーンマスクがすんなりハナを切る。続いてミヤマリュウセイが、そしてカネキヒットが続く。1周目の向こう流しでは既に縦長の隊列。先頭からグリーンマスク、ミヤマリュウセイ、カネキヒットの順番は変わらず、やや開いてローレルヒロ、リップスポイラー、イッテンヨカイチが縦列で続き、ここで差が開いてエスペラントタカシ、そしてニホンカイマリノが殿。

1周目(35KB)
スタートして150mくらい
先頭グリーンマスク(緑帽)まずは抜け出す

しかし1周目の三分三厘、2番手ミヤマリュウセイが掛かったか、グリーンマスクを交わして先頭に。そのまま2周目ホームを迎える。
ここでは先頭ミヤマリュウセイとグリーンマスクとの差は3、4馬身ほど。ミヤマが単騎逃げに持ち込む。交わされて2番手グリーンマスクだが、折り合いはついている模様。その外にカネキヒットが併走3番手。やや開いて馬場半ばでローレルヒロ、内でリップスポイラー、イッテンヨカイチ、エスペラントタカシ、そしてマリノは依然最後方という隊形。
2周目の1、2コーナー。ここでイッテンヨカイチが外からグニャッと内に刺さる。ローレルヒロの進路をちょっと塞いだ模様。レース後これが審議となる。
2周目向こう流しに入ると、馬群の前後間隔がグングン詰まってくる。バックの半ばでケツ2エスペラントタカシも殿マリノもぼちぼち腰を上げる。3コーナーを過ぎると先頭のミヤマリュウセイは降参で、代わってグリーンマスクが再度先頭に立つ。2番手にリップスポイラーがつけ、ローレルヒロも3番手に接近する。エスペラントタカシの上昇は三分三厘まで、そしてこれについてきたマリノが、いよいよ4コーナーで先団に接近。勝負は最後の直線へ。
4コーナーを回って残り200。先頭はグリーンマスク、馬場四分どころを逃げ込む。後ろとの差は2、3馬身。2番手外からローレルヒロ。リップスポイラーはインで脱落。そしてニホンカイマリノがヒロのさらに外、みるみるうちに追い込んでくる。
「グリーンマスクぅ!」と、馬券の都合もあり声援を送る電設師。それに応えてか、ゴールへ一目散のグリーンマスク。しかししかし、大外からマリノが急襲。直線入り口では相当あったと思われた差をぐいぐい縮めて、我々の立つ、ゴール前20mあたりでついに追い付く。内外離れて、際どい体勢でゴール。

ゴール直前、マリノvsグリーンマスク(50KB)
ゴール前20m、粘るグリーンマスク、大外からマリノ急襲
ここからゴールにかけての逆転劇

「残った?」「勢いで多分マリノが交わしたかな。」と確認し合っているところへ、ゴール前で見守っていたふささんが合流。「マリノ交わした。ゴールして秋元、ガッツポーズ。しかし写真グリーンマスク狙いだよ、萎えるなあ〜」とのこと。
確定。結局クビ差でマリノが交わして優勝。2着グリーンマスク。3着1馬身半差でローレルヒロ。4着先団持ちこたえたリップスポイラー、5着押し上げ切れずエスペラントタカシ。6着見せ場に乏しかったイッテンヨカイチ、7着早々に脱落のカネキヒット、8着2周目バックで逆噴射のミヤマリュウセイ。

振り返って、そしてレース後のことなど
ニホンカイマリノ、「恐れ入りました!」の差し切り勝ち。8頭立てとはいえ、道中あれだけ縦長の殿追走、かつ先行有利そうな馬場でよくもまあ届いたもんだ。観ていて「あれでホンマ大丈夫なんか?」と心配になったくらい。その差し切りもゴール前キッチリという、このレースにおけるゲンや相性の良さを感ぜずにはおれない。「前に御神本(のエスペラントタカシ)がいてくれて、仕掛けのタイミングは上手く測れたんじゃないかな。」とのふささんも見立てもある。とまれ、これで日本海特別三連覇を達成。付言するなら、この3勝、沖野、御神本、そして今回秋元と、全て鞍上が異なるという。「パートナーを選ばす、それは熟女の魅力」といったところか(何だか艶っぽい表現だ)。
グリーンマスクは惜しい2着。道中ミヤマリュウセイが絡み気味に前に出て、鬱陶しかったのではという見方もあったようだが、2番手に控えてからも、それなりに折り合っていたように見えた。終いは決め手と運の差か。しかしサスガ岩手の重賞ホース、いい馬だと思うし、逆転、そして筆頭奪取のチャンスは今後いくらでもあろう。馬券的にはアタマに来てくれず残念至極。
ローレルヒロの3着は、現状を思うに久々のそれなりの走りなのでは。2周目三分三厘ではちょっと見せ場があったような。しかしやっぱり突き抜けられず存在し続けそうな馬だな。エスペラントタカシはバックで仕掛けて寄せた時は一瞬「オ!」と思ったが、そこまでだった。

配当金、枠単530円。「安っう〜!」とさまにさんらが思わず口にしたが、「このド本線で5倍だったら結構ついた方でしょ。」と、ディープさんとワシは返す。
レース後、表彰式が行われ、続いて本馬場で口取り撮影。ここで、ふささん、電設師共々、馬場に入らせてもらい、写真を撮らせてもらった。足を踏み入れたコースの外目、パッと見に比べて非常に砂が細かく、また軽い。歩いても靴はほとんど埋まらない。

ニホンカイマリノ、口取り(44KB)
優勝マリノの口取り撮影
「ニホンカイ」な御一行様、ズラリ

おわりに
というわけで、今回も日本海特別は「ニホンカイ」特別であった。印象的だったのは、表彰式の間、口取り撮影を待って、馬場で厩務員さんに曳かれていたマリノの姿。福山時代と比べて随分色も白くなり、シャープに見せる馬体は、さながらちょっと線の細い兄ユーノス。実のところは酷似というほどではないのかも知れぬが、やっぱり兄妹、どうしても想起される。こんな事書くと「あの兄だから、それも少しはしょうがないけど、ここまで頑張ってるワタシも認めてほしいわね。」と、マリノに逆襲されそうだ。その反駁に抗うつもりは全くないので、念のため。マリノ様――

ニホンカイマリノ(34KB)
「兄は兄、ワタシはワタシ」
マリノの横顔


2002.2.5 記

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