第1回九州アラブチャンピオン観戦報告

 2002.2.3、佐賀、2000m

はじめに〜この重賞、新設の経緯を考える
3月第1日曜、佐賀競馬恒例の大一番といえば西日本アラブ大賞典。これに向けた地元九州勢の前哨戦として、今年二つの古馬重賞が新設された。すなわち、佐賀の九州アラブチャンピオンと、荒尾銀盃。前者は九州交流、後者は荒尾所属馬によるレースである。
新設ではあるものの、これには前身となるレースが存在する。昨年度まで12月に存在した佐賀銀盃である。施行時期を2月に移し、加えて九州交流とし、実体としては継承したものが九州アラブチャンピオンであり、「銀盃」の名義を引き継いだのが、荒尾の新設重賞であるいう具合。また、今年度の西日本アラブ大賞典の1着賞金は、従来の1000万円から700万円に減額されており、差額の300万円分で、九州アラブチャンピオン(その賞金)をこしらえたという見方もされている。

例によって日帰りで九州へ。競馬場到着は正午前。当日の天気は曇り。雲が厚いが時折その切れ間から日がのぞく。寒さはこの時季なり。風が強く、ごくたまに雨粒が落ちる。
馬場状態は良。砂のきめは粗そう。一見それほど重くもない感じ。

メイン前の目玉、第8競走、池田湖特別
メインレースの九州アラブチャンピオンの前に、この日の番組にはもう一つ、大きな見物がある。第8競走の池田湖特別。A1A2A3クラスの一戦。言うなれば、メインレースの重賞へ駒を進めるに至らなかったオープン馬たちによるレース。ではあるが、こちらに登場する面々のうちにも、名の知れた佐賀所属馬が相当数。これとメインレースの出走馬を合わせれば、現在稼働している佐賀の有力どころを、あらかた目にすることになる。

出走馬は以下の10頭。()内は騎手、斤量。
ジュピターボーイ(原口、54k)、キンコートウザイ(山口、54k)、フブキベル(三井、55k)、キングダイオー(吉田、54k)、キタノバーニ(吉原、54k)、ガッシャブルーム(岡元、54k)、イズミクィーン(倉富、53k)、トップウルフ(森田、54k)、ササノリンボー(川野、54k)、セブンテンリュウ(土井、54k)

以下注目馬について。
まずはキンコートウザイ。佐賀生え抜きのオープンの重鎮が約1年ぶりに戦列復帰。ワシは実はお初。栗毛の毛艶はスッキリ。久々からか元来の体型かは不明だが、やや腹は緩そう。馬体重485kにしてはスリムなスタイル。キビキビとした歩様でサスガに実績馬の雰囲気。
フブキベルは9歳になった。'96年笠松のアラブダービー馬。頸でリズムを刻みつつキビキビとした周回。トモの送りは硬いが歳にしてはまだまだ元気。
キングダイオーは昨年の九州アラブ王冠賞2着馬。夏場休んで11月以降4戦したが、馬体が絞れず良積なし。ボッテリ体型。リップチェーンを噛まされ、その口をモゴモゴさせている。ちょっと踏み込みは浅い。
キタノバーニは現5歳だが、3、4歳(旧表記)時、佐賀の同世代の中心にいた馬。本番で勝てず重賞は未勝利。胴長でかつどっしりした体型。515kの馬体重通りの大型馬。ちょっと背垂れで腰の力感がない。
ガッシャブルームは'99年の佐賀アラブ優駿(九州アラブダービーの前身)馬で、西日本アラブダービーへ出走しようとした馬。ガッシリ体型で肩もトモも筋肉質。前の馬を追い越しそうになるくらい元気な周回。
イズミクィーンはヒカサクィーンの全妹として有名。兵庫の準オープンあたりで長く走っていたが、昨年末に当地転入。緒戦は殿負け。毛艶も悪く腹も重めに映り、踏み込みも硬い。
各馬おしなべて歩様は浅めで、静かに大人しく周回。
「キングダイオーは馬体重減って何より(前走比-4kの501k)。これなら狙える。」とディープさん。ワシもそれに乗って、予想。中心はキングダイオー。キンコートウザイは予想紙のシルシも厚く、実力的には問題なかろうが、久々の分を割り引いて相手まで。そしてフブキベル。「馬は元気だが冬場は調子が出ない。」という陣営のコメントを予想紙が伝えるが、今回この一格落ちのメンバーに入れば、思い出したように差し脚を発揮できるのではと見込んで。栃さんはキタノバーニあたりが狙いのよう。3号馬さんは何はともあれキンコートウザイとのこと。

さてレース。距離1800m。2コーナーを回り向こう正面に入ってやや進んだところがスタート地点。
まずはイズミクィーンがハナに。外からササノリンボーが2番手。トップウルフ、キタノバーニと続き、キンコートウザイはこの直後内5番手。以下中団にキングダイオー、ガッシャブルーム、フブキベルと続く。
正面スタンド前でササノリンボーがイズミクィーンを交わして先頭に。3番手以下差がなく続き、キンコートウザイは4番手。キタノバーニはこの後ろ、そしてキングダイオー、内にフブキベル。ペースはスローか。
1、2コーナーあたりで、キンコートウザイが楽に前との差を詰める。そして向こう流し半ば手前、内からキンコー、スルスルと上昇して早くも先頭、押し切る算段か。と思ったところへ、外からキングダイオーが捲り一気。これは二角発進した模様。フロントに立って程ないキンコートウザイを瞬く間に呑み込んで突き放し、3コーナー手前でもう独走態勢に持ち込む。これで勝負あり。一方交わされたキンコートウザイは2番手単走。これを追ってキタノバーニが押し上げ、外からフブキベルも上昇。
最後の直線、押し切るキングダイオー、2着に7馬身差の圧勝。焦点は2着争いに。キンコートウザイが2番手死守でよく粘っているところ、フブキベルがジワジワと差し込む。そしてキンコーの内に入って追い付き、終いはアタマ差差し切って2着。キンコートウザイは3着。4着好位から1馬身差でキタノバーニ。

キングダイオーの二角発進は、昨年の九州アラブ王冠賞と同じ。豪快な白星。鞍上吉田順治騎手は、今日6回騎乗してこれが5勝目。
フブキベルは彼らしい差し脚。ワシにとってこの馬のイメージは「イン突きの差し馬」であり、今日はその通りの走り。おかげで馬券も的中。
キンコートウザイは復帰緒戦にしてはまずまずでは。ソツない先行抜け出し。終いフブキベルにやられたのは致し方ないところか。
キタノバーニはもう一歩。「うーん、最後差を詰めてきてるんだけどなあ。」と栃さん残念そう。

キングダイオー(42KB)
キングダイオー、余裕で勝つ
デカい馬体


ここからメインレース、まずはその顔ぶれ
さて、九州アラブチャンピオン。出走馬は以下のフルゲート12頭。()内は騎手。斤量は全馬56k。
イセイチフブキ(吉留、荒尾)、シュメイヒーロー(真島)、トチノグレイス(山下)、ユートエクセラン(吉田)、ニシケンシーザー(安東)、ミスターナタリー(北村)、スーパージョージ(川野)、ヤマノキング(山口)、キングタイムリー(井上)、ビソウミラクル(鮫島)、アロマ(原口)、メグミダイオー(吉井、荒尾)
イセイチフブキとメグミダイオーは荒尾からの出張馬。

以上、九州交流としては、文句ない好メンバーが揃った。荒尾からもイセイチフブキとメグミダイオーが参戦し、まさにレース名通り"九州アラブチャンピオン"決定戦に相応しい一戦。因みにこのレース、西日本アラブ大賞典ステップと明記されており、3着馬までに、同レースの優先出走権が与えられることになっている。しかし「むしろ本番よりも面白そう。」という声が相当あったりもして。

パドックから発走まで
曇天のもと、パドックに出走各馬が登場する。
1番あのイセイチフブキ。昨年晩秋に金沢より移籍。転入後4戦消化して、近2走は千四、千五戦と連勝、存在を誇示。ゆったりと余裕の周回。何度も物見をするほど。荒尾に移籍しても実入りのいい馬格は相変わらずで、まずは一安心。毛艶も文句なし。問題なのはそのパドックメンコ。黄地、青縁取りで額にピンクのデカい一つ星マーク。ただでさえメンコが似合わぬイセイチに、このダサダサメンコを被らせる仕打ちは非道い。
2番シュメイヒーロー。一昨年の九州アラブダービー馬。昨年は8月まで福山に転出。A1まで出世して金杯も走った(6着)。昨晩秋にデビュー地佐賀に戻り、オープンを2着1着1着と、すっかり佐賀の主力の地位に。相変わらず重心の低そうな実入りのいいフォルム。福山時代より大きく見せる。トモの送りは硬め。
3番トチノグレイス。九州アラブ王冠賞を連覇した実績馬も、今秋以降4戦して7、6、5、4着と、上昇気配はあまりに鈍い。馬体自体はスッキリ仕上げられ、毛艶もなかなか。
4番ユートエクセラン。荒尾デビューから福山に転じるも、C2からC1への壁がどうしても越えられず、昨夏より佐賀に。すると堅実な逃げ・先行馬ぶりを発揮、いつ走っても2着3着には残るというレースで、見事上位に定着した。元来が大味な作りのデカ馬だが、胴がいかにも重そう。覇気に欠ける気配。
5番ニシケンシーザー。今回唯一の4歳馬。昨年の荒尾記念の勝ち馬。「逃げてなんぼ」の馬だと思っていたのだが、近走は好位に控える競馬を続けている模様。時折煩くなるがこれはこの馬なりか。キビキビとした身のこなし。毛艶は仕上がっている。
6番ミスターナタリー。重賞未勝利だが、オープン主役の1頭。しかし当面のライバル、スーパージョージにはここ4連敗。前走久々の勝利。煩い感じでガッとなるが、悍性の迸りか、好意的に取りたい。ギタバタしたトモの送りだが力強くもある。また肩の力感も目を惹く。「ミスターナタリーはいい感じだなあ。」と栃さん。「ただ脚質的にね。差すんだけどスーパージョージに後ろから捲られて負けるという。終いもうひと脚欲しいかな。」と返すワシ。
7番スーパージョージ。8月の荒尾アラブ大賞典での、バック捲り圧勝の記憶は鮮烈。しかしその後は前半殿から捲り追い込みかけて届かず2着3着という、相変わらずの走りを演じているよう。冬毛までいかぬものの、体毛が伸びているにもかかわらず、馬体が光っているという珍しい状態。肩から胴までブリブリの筋肉。気合いに満ちた、キビキビとした身のこなし。佐賀の二千戦は初だが、長めのレースは望むところ。
8番ヤマノキング。目下A3戦を連勝中、一昨年の重賞サマーカップ馬。スピードタイプの逃げ馬のよう。ガッチリ型。毛艶も悪くない。力感あるトモの作り。
9番キングタイムリー。佐賀生え抜きの6歳馬。3走前にはA1で勝利している。佐賀一線級の掲示板の常連。一見スリムな馬体。普通の鹿毛馬だが毛艶と張りは上々か。やや後半身の力強さに欠ける感じ。
10番ビソウミラクル。半年の休養を挟んだ10月の明け緒戦は勝つも、前走である2戦目はコロッと7着に負けるという、相変わらず期待・人気通りに走ってくれない、馬券上被害者多数のお騒がせ馬。とはいえ地力は佐賀トップクラス。コンパクトにまとまった馬体はこの馬の常。毛艶と張りは悪くない。大人しい周回。「何ともイヤですよねえ。」とは"被害者その1"の3号馬さん。「考えると腹立つから、無視無視。」とワシ。「でもこの距離だけにね、好位付けの戦法からしても、やっぱり気になるんだよなあ。」と栃さん。加えて鞍上鮫島、不気味さは褪せない。
11番アロマ。A2以下の短距離戦で健闘してきた馬。今回は格上挑戦。頸でリズムを取っての周回。歩みの硬い、ここに入ると幾分貧相な、特にケツの乏しい馬体である。
そして12番がメグミダイオー。大晦日の荒尾の重賞ファン選抜を圧勝して、西日本ナンバーワンを獲るべく、ここに歩を進めてきた。相変わらずドッシリとした実入りの良い馬体。馬体の張りも毛艶も文句ないもの。至極落ち着いた周回気配。歩様はやや硬いがしっかりとした足取りである。今日は荒尾から"荒尾競馬の決め手"さん以下、応援団も佐賀に。加えて岩手から、馬主の"メグミのパパ"さんもいらしていて、是非とも格好をつけてもらいたいところである。

本馬場入場、そして返し馬に。各馬思い思いにコースを駆ける。中には馬場を2周もしたり、ホームストレッチを何往復もする馬もいて、熱心と言おうかてんでバラバラと言おうか。メグミダイオーは非常に強く、2周もキャンター。スーパージョージも2周、いや3周か。非常に気合いが乗っている。イセイチフブキはハミをガッと噛んで、前にノメりそうなキャンター。キングタイムリーやビソウミラクル、シュメイヒーローやトチノグレイスあたりは比較的リラックスしている方。ミスターナタリーはキャンターも鶴首気味で悍性激しく。ユートエクセランはブリブリの馬体を躍らせて。
「何やイセイチのモッさいメンコ!センスないにも程がある。サンワテイオーのピンクメンコに匹敵するな。」と、合流して開口一番ディープさん。「トウホクシルバーのお下がりじゃない?(出鱈目発言)」と返すと「トウホクシルバーならそれもエエけど、イセイチには絶対アカンやろ。」と。
予想。ワシは素直にメグミダイオー支持で、相手にスーパー、ナタリー、イセイチ、シュメイ、ユートを。特にスーパーとの組を厚く。加えてスーパー−ナタリーのタテ目を。
とはいえこのレース、イセイチ、シュメイにユート、ヤマノキングと、先行馬が揃って、その争いが激しそう。一方でスーパー、ナタリー、トチノグレイスと、差し・追い込みの脚に覚えのある馬もいて、展開的にちょっと難しい。「前行った馬がどれか1頭は馬券に絡んでいるように思えてならないんだよなあ。」と、栃さんがしきりに言う。こうした声は結構聞かれた。「ちょうどメグミの位置を支点にして、前と後ろにパワーバランスが振り分けられている感じですね。」と、概括するワシ。「ワイドがあったらユートエクセランからだけどな。」と、解りやすく核心を突く、九州御大Tienさん。

レースなり
いよいよレース。距離2000mのスタート地点は2コーナーのポケット。
ゲートオープン。外からヤマノキングが好発だが、最内から鞍上吉留に押されてイセイチフブキが予想通りハナに立つ。連れてシュメイヒーローとユートエクセランも併走で前へ、これがイセイチの次列。差がなくヤマノキングがこの外に。やや開いてアロマ、キングタイムリー、ニシケンシーザーあたりで、メグミダイオーはこれらと共に好位、ビソウミラクルも続く。ここでやや切れて、中団以下にミスターナタリーが。トチノグレイスとスーパージョージは並んで最後方から。
正面スタンド前。先頭は引き続きイセイチフブキ。後続に3馬身強差をつけて単騎。2番手に内ユートエクセラン、中シュメイヒーロー、外ヤマノキングが並んで。ユートの直後インにビソウミラクル。直後最内にキングタイムリーがひっそり。ここで2、3馬身開いて内ニシケンシーザー、この外にメグミダイオー。やや後方外にアロマ、内にミスターナタリー。トチノグレイスとスーパージョージの最後方は変わらず。

1周目(37KB)
1周目の正面スタンド前
先頭イセイチ2番手中シュメイ

隊列は1、2コーナーを回り向こう流しへ。「イセイチ割といい感じで走ってるよね。」「気分良さそう。」と、栃さんディープさんと確認し合う。が、それから程なく、バックも半ば、次列のシュメイが加速して前に、イセイチを交わして先頭に立つ。外からヤマノキングもこれについてくる。3コーナーを前にして、一転、レースが動き始める。イセイチは大失速というわけではないが、ペースについていけず漸次後退。後方からはスーパージョージが腰を上げ捲りはじめ、トチノグレイスは連れて上昇。
3コーナーから4コーナー。先頭シュメイ、離れずヤマノキング。メグミダイオーも外を通って進出開始。しかしこのほぼ同列で、スッと押し上げたのがキングタイムリー。ユートエクセランはインベタでモチャモチャと。ここへスーパージョージも加わり、ミスターナタリーは三分三厘で後手を踏んだがまだ圏内。グッと固まる隊列。

残り50m(41KB)
最後の直線、残り50mくらい
外から抜け出すキングタイムリー、粘るシュメイのインからナタリー

そして最後の直線。先頭はシュメイヒーロー。ヤマノキングも健闘。しかし後続がドッと殺到。馬場の内外に広がって大混戦の様相を呈する。メグミは外目の第3列あたり。しかし突き抜けられない。何とか先頭を持ちこたえるシュメイ、直後インにはユートエクセランの姿も。直線半ばでヤマノキングは降参。さあどうなる?というところ、馬場五、六分どころ、ビュッと抜け出す1頭、これがキングタイムリー。残り100から50にかけて先頭に躍り出る。これが何ともすんなり、そして力強く終いまで駆けて、乱戦を制して真っ先にゴールに飛び込んだ。
しかし2着争いは混戦を引きずったまま。粘るシュメイとユート。ここへミスターナタリーが、直線を向いて内に進路を取って、ユートとシュメイの間を割ってねじ込んでくる。さらに駄目押しはスーパージョージ、捲ってもうひと脚、大外強襲。残り2、30mでナタリーがシュメイを競り落としかというところ、ゴール寸前スーパーが突っ込んで、シュメイを挟み、内外離れて入線。際どい!

キングタイムリー(43KB)
終い抜け出すキングタイムリー
盲点の最低人気に反発するような快勝
スーパージョージ(44KB)
2着争い、外から強襲スーパージョージ
内ミスターナタリーを結局交わす

結果、1着キングタイムリー。1馬身差の2着スーパージョージ。アタマ差3着ミスターナタリー。クビ差4着シュメイヒーロー。半馬身差5着ユートエクセラン。半馬身差差し込みトチノグレイス。1馬身差でメグミダイオーは7着止まり。アタマ差ヤマノキングが8着。9着半馬身差ニシケンシーザー。ここで大差開き10着アロマで、イセイチは2馬身差の11着。なおビソウミラクルは2周目三角で故障発生、競走中止、しかしその状況は確認できず。1着から9着までコンマ9秒の間に入る、時計的にも大接戦であった。

レース終わって
レースも激戦だが配当も波乱。枠複2860円はともかく、馬複26,970円、馬単101,540円の大万馬券。単勝も9670円。「キングタイムリーの単勝、17票しか売れてねえもん(最低人気)。この1、2着の組み合わせ、普段のオープンだったらせいぜい2,30倍だろ。」とTienさん。「岩手で馬券売ると平日でもオッズ変わる。このレースもその影響まともに出た。」とさまにべっぴんさん。

最終レース前に表彰式が。インタビュアーのお姉ちゃんの質問に応える、井上悦児騎手のコメントの大意は以下の通り。
−先行馬が揃って激しいレースになると思ったのでは?
「力のある馬なので、自分は馬の行く気に任せて乗ってさえいれば、勝てるのではないかと思っていた。」
−道中の手応えは?
「思った以上に頑張ってくれた。」
−勝利はどこで確信しましたか?
「ゴールに入るまでわからなかった。」
−今後に向けて抱負など。
「まだまだ強くなると思うので、これからも頑張ります。」
井上騎手は一昨年デビュー、しかしあまり若くないという騎手。これが重賞初勝利かと。表彰式後、お客さんに花束を上手く投げられず、「あー!ゴメンナサイ」と口にしていたあたり、いかにも場慣れしてなさそうで、結構可笑しかった。

反省
勝者のキングタイムリー、これは完全に盲点だったな。しかし・・・ゴール前、抜け出すこの馬の姿を目の当たりにして「よし!キングタイムリー、キングタイムリー!おお!やった!」と喜ぶ御仁が約1名。「えっ?何でキングタイムリー買えるん?」と問うと、曰く「この馬、3歳(旧表記)重賞はがくれ賞馬で、一昨年末の佐賀銀盃2着馬ですよ。って、まあ、勝ったから言えるけど。実際そんなに(他馬とは)差がないとは思ってたんで。」とのこと。道中好位で進めて、後半いち早く先行勢に取り付きスッと交わす、という、何とも綺麗な競馬だったと思う。恐れ入りました。が、この馬が佐賀筆頭を襲名して、他地区馬迎撃体勢の中核を担うというのも、イマイチピンと来ぬわけで。
スーパージョージは破壊力を見せつける2着ではあると思う。が、やはり前半殿からの極端な捲り追い込みでは勝利にありつきにくい。もう少し効率的にレースを運ぶ術を身につけたいところ。捲りの脚と終いの斬れ脚、この二枚脚は凄いとは思うが。個人的にはかなり買っている馬なので、今後も注目。
ミスターナタリー、4コーナーでは「何となく」だったところ、捨て身気味にインに突っ込んだのは止む無しか。セオリーに沿えば、佐賀のインはドツボなのだが、外を回っては間に合わなかったろう。終い良く伸びたが、やっぱりスーパージョージに先着できず。
シュメイヒーロー、最後は決め脚の差で屈したが、これは展開のアヤとレースの流れ。好走した方だろう。バテない粘走先行ぶり。いかにも堅実。
ユートエクセランも終始インベタで掲示板入り。「逃げなきゃハナシにならん馬のはずだったのに、2番手以下からでもタレずに走れるんだから、成長したよなあ。」と、ディープさん共々認めるところ。
メグミダイオーは何とも存在感が希薄なレースとなってしまった。道中も積極さを欠いたようで、見どころは押し上げた3、4コーナーあたりくらい。先行勢と差し馬勢の間で埋没してしまった感じ。本来ならばシュメイのした競馬をしてほしかったところ。ただ、予想的には、あまりに無条件に支持し過ぎたかなあ、と、反省。明けて7歳になったが、まだまだ頑張ってほしいと切望。
イセイチフブキのこの負けは致し方ないか。戦前期待はしたが、結果惨敗でも個人的には納得の範囲。距離二千も全盛時なれば押し切れたということで、明けて8歳、歳も歳であり、多くを望むのも酷。だがせめて、荒尾の地元戦では、彼らしい颯爽とした逃げ切りをまだまだ観たいと思う。

今後を思いつつ、おしまい
「結果はともかく、大接戦の凄いレースでしたねえ。」と3号馬さん。ワシも素直にそう思う。そこでTienさんが「結局佐賀のオープン連中って、みんな実力的に大差ないんだって。そいつらが重賞のホネのあるレースしたら、まあこんな感じにもなるわけで。」と、冷静にまとめて下さる。「確かにね。ただ本番(西日本アラブ)は2400、特殊距離だもんな。まあ適性的には地元勢はスーパージョージが一番なんだろうけど、今年も他地区勢に勝たれそうかな。それにしてもいい加減(本番も)二千でやるべきだよな、これが今どき基幹距離だろう。そして東海にも門戸開放すればねえ、あの馬が・・・」と栃さん。

とまあ、本番の西日本アラブ大賞典のことを思うと、あまりトーンの上がらぬ結果となったしまったかなあ、というところ。「局地的には見どころ充分、しかし大局的には盛り下がる」そんな感じ。
しかし、それはそれとして、先のTienさんの見解、角度を変えれば、現在の佐賀勢、そのレースパフォーマンスのレベルって、相当に高いとも解釈出来ようかと。つまりは今日のレースこそ、「今の佐賀アラブは面白い!」という証左に他ならぬわけなのですよ、これが!(ホンマか?)
個人的には、荒尾も含めた、今後の九州アラブ戦線には興味津々。西日本アラブ大賞典はともかく、九州アラブ王冠賞あたりが非常に楽しみ。「実はその前説なのだ!」という言い分は、あまりに乱暴過ぎるでしょうか?

2002.2.12 記

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