第12回西日本アラブ大賞典観戦報告

 2002.3.3、佐賀、2400m

はじめに
佐賀競馬、毎年3月第1日曜恒例の大一番、西日本アラブ大賞典。大井の全日本アラブ大賞典が廃止され、福山に全日本アラブ大賞典が昨年新設されるまでの間、古馬の広域交流競走としては、唯一開催の時期と舞台が定まった競走であった。
それにしてもこの西日本=兵庫以西交流という条件、東日本地区でアラブ系競走を施行しているのが道営、上山、東海・北陸のみとなった現状を鑑みるにつけ、いい加減撤廃して、全国交流に改めるべきだとは、アラブファンとしては誰しも思うところである。実際上山や名古屋には、全国交流競走への参戦を、それこそ手ぐすね引いて待っている強豪が存在するわけであり。

出走馬について
出走馬は内枠より以下のフルゲート12頭。()内は騎手、所属地区。
スーパージョージ(鮫島、佐賀)、シュメイヒーロー(真島、佐賀)、メグミダイオー(吉井、荒尾)、チーチーキング(北野、高知)、ニホンカイマリノ(沖野、益田)、キタノバーニ(吉原、佐賀)、キングタイムリー(井上、佐賀)、サンバコール(田中、兵庫)、ミスターナタリー(北村、佐賀)、ユートエクセラン(吉田、佐賀)、フジナミスペシャル(嬉、福山)、ワシュウジョージ(小牧太、兵庫)
負担重量は紅一点ニホンカイマリノが55kで、他の牡馬は56k。他地区馬6頭、地元馬6頭のラインナップ。

ここで出走馬について少々。拙観戦記を継続的にお読みいただいている方々にとっては、既にご存じであろうことばかりですが。まずは他地区勢について、東より順に。
兵庫からは何故か2頭。「いつから兵庫枠2つになったんや。」という突っ込みはさて置いて。本来ならば、地元でワシュウジョージに三タテを食らわせているハッコーディオスに、是非とも参戦してほしかったところなのだが、新春賞後、陣営にはまるでその気がなかった模様。
ということで、前年同レースの覇者にして、良くも悪くもここ2年交流競走の顔となっているワシュウジョージが、連覇を目指して登場。地元戦では昨秋以降、ハッコーディオスとクールテツオーの前に4戦連続勝ち星を逃しているが、ここは得意の長距離レース、久々の勝ち星を狙う。
そしてサンバコール。前走新春賞はディオス、テツオー、ワシュウに次ぐ4着に留まったが、ディオスとテツオーが腰を上げぬためか、旧4歳時の西日本アラブダービー以来、7歳にして久々の他地区遠征。大捲りのスタイルは昔のままだが、地力はさすがにやや衰えたような。3年前にこの舞台を踏みたかったところ。
アラブ王国福山からは、昨秋の全日本アラブグランプリと正月の福山大賞典を制した、フジナミスペシャルが登場。前記2戦で、長丁場への適性と強さは実証済み。平均以下のペースで番手に収まって、早め抜け出しで押し切る形になった時の安定感とソツの無さが光っている。ハッコーディオスとの絡みを楽しみにしていたのだが、叶わず残念。なお、これが出走馬中唯1頭の4歳馬。実はこのレース、過去11回のうち4歳(旧5歳)馬はあまり勝てておらず(勝ったのは第1回'91年のグリンダイオーと'96年地元グレートマルゼンの2頭だけ)、'95年ミナミセンプウ、'97年ケイエスヨシゼン、'00年のホマレスターライツにワシュウジョージと、人気を背負いながらも敗れている。
益田の誇るニホンカイ一族、偉大なる母ニホンカイローレルの三番仔にして次女のニホンカイマリノは、益田最高峰レースの日本海特別3連覇の実績を引っ提げて登場。同レースは益田最長施行距離2200m戦であり、長丁場の経験は豊富。
高知からは元旦の古馬決戦、高知市長賞南国王冠2着のチーチーキングが参戦。一昨年の全日本アラブグランプリでは2着と僅差の3着の実績もある。が、古馬になって常時A級のトップを張っていたわけでもないようで。実績からすれば、南国王冠を制したスマノガッサンがバリバリの高知筆頭であろうが、長距離適性に不安のあるガッサンよりも、得手であろうチーチーで妥当という見方もある。
そして荒尾の英雄にして岩手の誇り、メグミダイオー。2月3日の九州アラブチャンピオンでは7着と振るわなかったが、前走地元の荒尾銀盃を2着に4秒3の大差をつけて圧勝し、ここに乗り込む。前々走の、そして昨年ワシュウジョージの前に2着敗退したこのレースへの、リベンジを懸けての参戦となる。自身の守備範囲からすれば、距離2400mは長いところだが、それは実力をもって補いたいところ。
というように、中には各地の現トップとは言い難い馬もいるが、長丁場の脚に覚えのある馬が多いようだ。
迎え撃つ地元佐賀勢。今年も6頭。頑なにフルゲートの半数を占める。
前哨戦の九州アラブチャンピオンにて、単勝最低人気に反発して好位から勝ち切ったキングタイムリー。オープン最上位で現在最も堅実な成績を挙げているシュメイヒーローは渋太い逃げ・先行馬。捲り追い込みの脚は強烈、しかし勝ち方は下手なスーパージョージ。スーパーとはすっかりライバル関係を築いた感じの、これも勝ち切れない差し馬ミスターナタリー。荒尾デビュー、福山経由で佐賀入りして以降、逃げ一点張りから粘走先行馬に変身して安定しているユートエクセラン。佐賀生え抜きの眠れる素質馬、しかし現状ではオープン二線級上位のキタノバーニ。
良く言えば多士済々、有り体に言えばドングリの背比べ、逃げ馬あり、差し・追い込み馬あり、しかし交流競走の舞台を踏むにはパンチ不足な感は否めぬ面々である。まあ、ワシは個人的には好きな馬たちですが。

当日の状況〜メインレースまで
昨年のこのレースの日は、風は強いわみぞれは舞うわあられも落ちてくるわ、とにかく寒くて大荒れな天気、おまけにレースの真っ最中に日が射し始めてカメラの露出はてんてこ舞いになるわの、非道い一日であったのだが、今年の当日は打って変わってポカポカ陽気の好天。日中は空には雲がほとんどない快晴、レース前になって少し雲が出た程度。風はソコソコあるが、それがために過ごしづらいということはない。
馬場状態は朝から稍重発表で、メインレースまでそのまま。しかしながら、馬場の表面がほんの僅かに湿っているのかなあ、という程度にしか見えず、良馬場発表とほとんど変わらぬのではないかという状態。

メインレースは第9レース、16:00発走。準メインの第8レースとの間に、足利で施行される北関東弥生賞の場外発売が挟まるため、両レースの発走時刻が1時間15分開いている。
北関東弥生賞には特段興味がないので、メインのパドックを待つ間、パドックから少し見える、装鞍所の様子などを窺う。ワシュウジョージとサンバコールの兵庫勢は、鞍とゼッケンの装着時以外は、概ね広場で曳かれていた。フジナミスペシャルがどうしても馬房に入ろうとせず、仕方がないので、がら空きになっている偶数レース出走馬の待機馬房に無理矢理入らされる。この束の間の隔離状態のもと、鞍付けと馬体検査を何とかクリア。メグミダイオーのピンクメンコもよく見える。

パドックから発走まで
ちょっと待たされたなあという気持ちになったところで、いよいよパドック周回が始まる。
1番スーパージョージ。ビシッと筋肉が付いてピチピチに張っている、これは好馬体。毛並みは九州アラチャン時より上。ピッカピカの毛艶で、鹿毛の肌色はもう何だか黄金色に近い。
2番シュメイヒーロー。相変わらず重心の低い馬体。ジンワリかつゆったりとした周回気配。重厚だが緩さは感じさせない。
3番がメグミダイオー。506kはこの馬としてはまあ許容範囲だが、減らして出た前走と比べると+11k。この二桁の上げ幅が先入観としてあるからか、一回り腹の線が太いかなあ。毛艶はいつもながらに上々で、ゆったりとした身のこなし。ちょっと左肩の出が硬くて悪いような。
4番チーチーキング。首の高い歩みでキョロキョロとちょっと落ち着かず、やや煩い。黒鹿毛の毛艶と馬体張りはなかなかで、元来の細身の体型と相まって、なかなか精悍に見せている。馬体重前走比-9kの438kは最近では最も軽い値。これでどうか。
5番ニホンカイマリノ。7歳ベテラン牝馬、遠征競馬でもじんわりと大人しくマイペースで周回。この中に混じると、サスガに線の細い体型が強調される。それでも前走日本海特別から馬体重+10kの数字通り、前走時に比してお腹はふっくらした感じ。
6番キタノバーニ。ドッシリとした腹回りだがちょっと緩いか。肩のボリュームが目を惹く。馬体重511kの大型馬、その数字だけのことはある肉感。毛艶も良好。
7番キングタイムリー。スッキリスリムな体型で毛艶は問題ない。ただヒ腹は若干上がった感じで、トモが貧相に映る馬格。これは九州アラチャン時も感じたことだが、今回の方が甚だしいような。馬体重-7kの先入観故でない。
8番サンバコール。とにかく大柄なのでここに入っても見栄えがする。例によってギタバタした硬い歩み。ただ馬体総体としては、地元で好調時に見せるものよりは劣る感じ。今日は絶好時の、うんざりするくらいの筋肉の付きではない。馬体重前走比-8kの502kは、最近の彼の目方としてもやはり軽い。
9番ミスターナタリー。キビキビと活気ある周回はこの馬のいつもの姿。むしろ九州アラチャン時の方が悍性ギラギラだったような。今日はまだジワリとしている。そのせいか、馬格も発散する雰囲気も、今日の方が重厚。それが良いのか悪いのかは判らぬが。
10番ユートエクセラン。元来がモッサリした大型馬だが、馬体重-4kの値以上に、前走に比べて明らかに見た目シャープになった。無駄な肉付きを感じさせない良い毛艶。ジンワリと大人しく周回。
11番がフジナミスペシャル。馬体重前走比+4kと聞かされれば、確かに懐から腹にかけて輪郭が太くなっている感じがしなくもないが、正直言ってこの馬のパドック気配って変化に乏しいような気がする(もしくはワシにそれを見抜く目がない)ので、今回もこれまでの地元戦と特段変化があるようにも思われない。周回している間はいつもながらのジワリとした大人しい態度。毛艶は問題ないレベル。
そして12番がワシュウジョージ。昨夏以降の地元戦においては、敗戦も多々あったが、こと出来と見た目に関しては、いつも文句ない凄みのあるものだった。ピカピカの毛艶、ハラメからヒ腹へのシャープなライン、引き締まったトモにガッチリした胸前。それからすれば、遠征競馬の今回はやはり見劣りがする。馬体重はやはり減らして前走比-9k。その分ヒ腹がやや上がっているし、こうなると流れ気味のトモの送りがより目立つ。毛艶も微妙に落ちた感じであるし、何より気配にちょっと落ち着きを欠くような。"ワシュウLOVE"のまりおちゃんをして「今日は何かソワソワした感じやわ。」と言わしむる。まあそれでも、昨年の遠征時よりはだいぶましではあるのだが。
実のところ、パドック周回時間がどうも短かったようで、全馬の気配をじっくり観察しきれぬうちに騎乗命令が掛かってしまった。つまりは今回はそんな程度のパドック観察である。

本馬場入場から返し馬。ワシュウジョージは例によって入場口からそのまま1コーナー方向へ駆け出して、4コーナーの待避所に直行、馬場を1周しない。フジナミスペシャルはごく軽めに1周流す。メグミダイオーは2周、1周目は鞍上がジワリと駆けさせようとしているのに馬が行きたがっているような感じ、2周目は豪快に。サンバコールはブリブリと力強く、前肢の振り上げが利いた駆けり。チーチーキングは首を高く上げてガチャガチャと入場。「チーチーあそこまで煩い馬じゃないのに、大丈夫か?」とディープさんが心配するほど。しかしキャンターは非常に躍動感溢れ、これは好感。スーパージョージは鶴首になって悍性を迸らせつつジワリ1周、そしてホームをゴール板前まで流してくる。ミスターナタリーも気合いの乗った走り。シュメイヒーローはじっくり2周。ユートエクセランは楽走。

「ワシュウジョージ、輸送で多少はガレてるけど、これまでの遠征競馬の中ではまあまあなんじゃない。何だかんだ言ってもまあ雰囲気はあるよねえ。」と栃さん。続けて「注目はフジナミスペシャルだよね。これまでの強さが本物かどうか、これで判ろうってもんでしょう。」。それに対し「いやあ格好つけてもらわないと困る。」と応えるディープさんやワシ。
ということでワシの馬券の中心はフジナミスペシャル。相手としては一応ワシュウジョージ、そして応援の心情多分に含んだメグミダイオーと、実績馬2頭へ取り敢えず。相手本線は地元スーパージョージ。気分は「ジョージはジョージでもスーパージョージ!」なのである。マークカードを塗っているとOkuさんが「ホホン?」とばかりに覗き込んでくるので「そんなに奇をてらった買い方じゃないですよ。狙いはスーパーなんですけど。鞍上鮫ちゃんやし、捲り追い込みの脚なら今のサンバコールよりは絶対上でしょう。もっとも『佐賀勢はドングリの背比べ』っていう、前回アラチャンでの教訓が何ら活かされていない気がしなくもないんですが。」と言い訳。「そやな。オッズ見ても特定の馬からしか売れてやんもん。それほどの力差があるとも思えんのですけど。」と師匠。佐賀勢に関してはディープさんは次のような見立て。「過去このレースで連対した地元馬、グレートマルゼン('96年優勝)にフクヨシオー('99年2着)と、いずれも逃げ残り。差し馬じゃ勝負になってないんですよ。よって佐賀の馬で買ったのはシュメイだけ。」。
ゴール板前で発送を待つワシの真後ろに、この日現地へ愛馬の応援に駆けつけた"メグミのパパ"さんの、その息子さんが立ってらっしゃる。「メグミ頑張ってほしいよねえ。前走と同じくブリンカー着けて、あれで巧い具合に先行勢の流れに乗れればいいけどね。」と話しかけると、息子さん「2、3番手でスムーズに運べれば。」と。

そしてレース
いよいよレース。距離は恒例2400m。4コーナーを回って直線に入ったところがスタート地点。ここから2周と少し。ホームストレッチを3回通過する。
ゲートオープン。各馬最初の正面スタンド前を駆け抜けていく。まずは大方の予想通り、内からシュメイヒーローがハナへ。外からユートエクセランも前を目指しこれが2番手。インではメグミダイオーがユートの同列、まずまずの位置。メグミの直後にキングタイムリーで、この外目にフジナミスペシャル。このあたりまでが先行志向といった面々か。キングタイムリーから1、2馬身ほど下がった外目にワシュウジョージ。この内にサンバコールが併走、珍しく後方待機ではない。この列の半馬身後方インにチーチーキング。直後にキタノバーニ、同列外目にミスターナタリー。そしてニホンカイマリノ、スーパージョージの後方待機勢が殿。まだまだ序盤、隊列の前後は等間隔でそれほど開いていない。
が、2コーナーから向こう正面にかけて、次第に縦長の形となってくる。シュメイヒーローを先頭に、ユート、タイムリー、メグミ、フジナミまでが先団。ここで間隔が大きく開いて、好位のアタマがワシュウジョージ。相変わらずサンバコールはワシュウの直後。
そして2度目の正面、先頭シュメイヒーロー。1馬身後方外目に2番手ユートエクセラン。シュメイの直後インにキングタイムリーと、ユートの外直後のメグミダイオーはほぼ同列で3番手。メグミダイオーの掛かり方が酷い。2馬身程度開いて、フジナミスペシャルが外5番手。ここでかなり間隔があって、ワシュウジョージは6番手変わらず。サンバコール、チーチーキング、ミスターナタリーと続く。チーチーも掛かり気味。遅れ加減のキタノバーニを抜いて、ニホンカイマリノとスーパージョージがちょっと上昇。ゴール板前を通過したあたりで、ワシュウジョージが、先行勢との間の差を詰めるべく、スッと寄せる。これで1コーナーでは先団の直後の好ポジションに。

2周目、先団(34KB)
2周目の正面スタンド前、先団
先頭シュメイ、メグミは3番手外、フジナミは5番手単走


2周目、中団以降(37KB)
2周目の正面スタンド前、中団以降
画像左端のワシュウは6番手、バコール、チーチーと続く

2コーナーを回って向こう正面。その半ば前で、フジナミスペシャルが仕掛けた感じ、前へ。しかしながら既にこの時点で、ワシュウジョージはフジナミの直後。「逃すまじ」とばかりに、ほぼ同時にワシュウも仕掛け、フジナミの抜け出しを許さない。見た目としては、2頭がラインになって、一気に先頭へ駆け上がっている格好。さらにワシュウの上昇から微妙にワンテンポ遅れて、サンバコールの脚にも点火。しかしこの馬らしい捲り一気にはならず、びったりワシュウマークの形となる。バコールに連れて直後チーチーも。一方でバック半ば、先行していたメグミダイオーは早くも、あまりに早くもズルズルと後退し始め、三角手前で圏外に去る。
3コーナー、フジナミとワシュウは完全に先団を射程圏内に。三分三厘で、ここまでハナで引っ張ったシュメイヒーローが脱落。先頭代わってユートエクセランがインで粘る。が、それも束の間、外へフジナミが、さらに外へワシュウが襲来。手応え充分のワシュウ、一方フジナミは、早々にワシュウに取り付かれてイヤな展開。
そして決着は呆気なく、割と早い段階でついた。4コーナーを回るあたりで、ワシュウがグイとフジナミを交わして、先頭に躍り出る。既に末脚勝負の局面、ここで交わされてしまっては、フジナミがワシュウを差し返すべくもなく、これで勝負あり。
ということで最後の直線。馬場五、六分どころ、抜け出してゴールへまっしぐらのワシュウジョージ。前に獲り逃した馬はもういない。これは圧勝体勢、またもや終いはワシュウ一色ムードか、と思ったところ、レースに彩りを加えたのはサンバコール。ワシュウマークのロングスパートから、馬場外目、渾身の差し脚。「何やバコール来てるやないけ〜!」と驚くリーダーや「いまさらサンバコールもあるまいに、全く。」と思うワシのことなどお構いなしに、既に伸びが止まりかけた感のフジナミを交わして、想像以上の走りで前に迫る。

最後の直線(38KB)
最後の直線、残り100mを切って
抜け出すワシュウに外からサンバコールが迫る。3番手フジナミはワシュウに隠れた位置

しかし最後はワシュウジョージ、連覇達成の1着入線。これを半馬身差までサンバコールが追い詰めて2着。フジナミスペシャルは結局3馬身差の3着。チーチーキングがサンバコール共々鋭く追い込んで、1馬身半差の4着。ミスターナタリーが勝負決してからの大外追い込みで、佐賀勢最先着の5着。ユートエクセランが粘って6着。スーパージョージは7着止まり。8着今回は先行するも保たずでキングタイムリー。9着ニホンカイマリノ、概ね後方で競馬を終えた。10着逃げて沈んだシュメイヒーロー。11着キタノバーニで、メグミダイオーはよもやの最下位。

ワシュウジョージ(46KB)
ワシュウジョージ、ゴールへ
サンバコールに詰められるも、連覇のVゴール
サンバコール(49KB)
2着外からサンバコール
半馬身差まで追いすがって

他馬が引き揚げ、馬場内ビジョンにレースのリプレイが流れるところへ、ワシュウジョージが、正面スタンド前に再度やって来てウィニングラン。鞍上の太さん、会心だったのか、もうニッコニコの笑顔。

そして最終レースの本馬場入場後に、ウィナで表彰式。この時の勝利騎手インタビューでの、太さんのコメントのポイントは次のようなもの。
「自分の馬が強いと思ってやって来ているが、勝ててホッとしている。」
「馬の出来は良かった。今回は大外枠に入ったので、気楽に乗れた。あまり後ろからになりすぎないよう、なるべく前で競馬しようと思っていた。」
「前半レースの流れは速いと思ったが、いい位置に付けることが出来、絶好の展開になってくれた。」
「馬の反応は良かった。会心のレースだと思う。」
「またワシュウジョージと、このレースを獲りに、佐賀へ来たい。」
まあ最後の件は、「ホンマかよ?」「もうエエやろ。」と突っ込みが飛んできそうなところだが。
この日は佐賀競馬としては異例なことに、他地区馬優勝馬の口取り撮影を、コース上で行ってくれた。ワシュウ陣営は慣れたもので、お客さんの方にまでポーズをとってくれる。ただ主役のワシュウジョージは、ちょっと煩めで「何やじゃーくさいなー」といった感じ。

振り返って=反省
ということで、上記の太さんのコメントも踏まえて、以下反省。
ワシュウジョージにとっては、前の馬にスローペースで逃げられてペースの主導権を握られるという、望ましくない展開とは逆の、前が速い流れになってくれて、やれやれだったのでは。おかげで「バックで自力捲り差し、四角先頭押し切り」という、昨年のこのレースや金沢のセイユウ記念や園田金盃でも見せた、この馬らしくかつ強いと思わせる競馬での勝利。現状での他馬との地力差よりも、長距離戦への適性と経験の差の方が、より濃厚に出たのでは、というのがワシの感想。やっぱり長丁場では強い。が、それと裏腹に「千八から二千前後の、スタンダードな距離ではどうなのか?」という疑問も、より強調されつつあるのだが。
サンバコールは、バックで捲り切るという、自身の個性を殺しての徹底したワシュウマークと、終いまで末脚が残るような常識的な差し競馬で2着。「本人(馬)はメイチに捲ってるのに脚力落ちてるから、端からはワシュウマークの差しにしか見えない」などということはあるまい。本来の競馬なれば、終いこれだけ斬れない。戦法はともかく、ここまで走るとは思わなかった。「自分から捲って動かずに、ワシュウの仕掛け見ながら動いたのが、結果的には成功ということやな。」とはOkuさん。それにしても、持ち前の大捲りをやめて、フツーの差しに徹したら好走って、じゃあ、今までの走りと馬生は、一体何なのよ。
何だかんだで兵庫勢のワンツーとなった。以下はとある御仁との会話。氏が「この1、2着は勿論当たったでしょう。」と問うので「いやいや駄目でしたよ。サンバコール買ってないから。」と返すと、非常に不思議そうな表情になって「えっ?どうしてですか。サンバコール長いところ絶対強そうじゃないですか。ってことはフジナミスペシャルから?」「はあ〜」という具合。そう、サンバコールの長距離適性は判っておったのよ、でもね、ここまで走れるとはね、思わなかったのよ。ちょっと見くびりましたよ、はい。
ワシュウジョージとは反対に、前半先団が淀みないペースで進んで、自分の競馬が出来なかったのがフジナミスペシャルだろう。スローペースの逃げ馬を大名マークという形にはなりようがなかったし、やはり前が速いからか、前半馬なりで走った結果が、割と後ろの5番手。2周目の向こう流し前半で仕掛けた様は、一昨年のアキフジクラウンをちょっと思わせたが。しかしその時既に、直後にはもうワシュウジョージがビッタリ。「リードとスタミナを稼いで終いまで持ちこたえる」などという悠長なことを思う間もなく、後ろから可愛がられ、4コーナー手前で差し勝負に持ち込まれて万事休す。この馬の望む流れになるところが、全くなかった。その点では気の毒。しかしながら「福山大賞典勝ったっていっても、やっぱりこのくらいの実力なのかな。」と、栃さんらこの馬への評価は辛口。それにしても福山陣営にとってこの敗戦は痛い。「役者は揃って活況に見えるけど、結局のところ、それほどのレベルじゃないんじゃないか?」と言われかねないわけで。事実こういった評価はレース後現地で聞かれたような。1頭の1回の走りのみを、地区レベルの判断材料とするのは乱暴ではあるが、広域交流競走ってそういうものだったりもする。地区の看板背負って出てきているというのはそういうこと。
チーチーキングはワシュウ−バコールの差し馬ラインに上手く乗った体裁での差し込み4着。「チーチー惜しかったよな。一瞬2着はあるぞ!と思ったんだけどなあ。微妙に最後止まったかなあ。」と電設師が惜しがる。やっぱりこの馬、長距離適性ある感じ。「スマノガッサンだったらどこまでやれたか?」というのも、オマケでちょっと興味ある。
ミスターナタリーの追い込みはリアルタイムでは全く気付かず。一昨年イメージアラシの4着に昨年ビソウミラクルの5着、そして今年のミスターナタリーと、佐賀勢がソコソコでしかない年の地元最先着馬は、いずれも勝負決してから差を詰めて、脱落馬を抜いてのもの。
6着ユートエクセランは先行勢の中では健闘した方。この馬はどうやら一定のペースで最後まで走れる馬のようだ。勝ち切る機会は多くはないが確実に上位を取るし、逃げが叶わなくてもジタバタしない。
スーパージョージ、鞍上鮫島、一体何だったんだ?の7着。勝負所でどうしていたのか、全くもってわからず。「単に期待しすぎなだけ、こんなもんだって。」と言われればそれまでだが、個性すら発揮できていなかったわけで、大いに不満。
ニホンカイマリノの9着は一昨年の弟プリウスのブービーよりは上の着順。この中にあってはこの結果は納得か。
メグミダイオーはよもやの殿負け。前半の掛かり方が、前々走九州アラブチャンピオンと同様、とにかく甚だしかった。これでは2400mは保たない。それにしても、相手関係はさて置いてここ3走、佐賀での走りと地元荒尾での走りに、ギャップがありすぎる。佐賀が、輸送が苦手なのか?戦前「距離も距離だし、出来としては去年の方が絶対上に見えるし、あまり期待しすぎるのも。」との意見もあったが、それを納得したとしても意外な着順。

おわりに
今更ながらの西日本"限定"交流、そしてちょっぴりアナクロな2400mの大一番、ではあるが、なかなか力の入る、好レースであったと思う。ワシ個人としては、メンバーさえ揃って、締まった流れのレースになってくれさえすれば、長距離戦はむしろ好きなクチなので、局地的には文句はない。ただ、数多くない交流競走の舞台が、アナクロな匂い漂うものというのが、引っかかる次第。
まあ、今回の結果はそれはそれ。次の全国交流、観たいのは、ズバリ"最強馬決戦@スタンダード・ディスタンス"。対象馬は、あの馬にこの馬に・・・主役は勿論――

それにしても今日のメイン、"園田系"と目される、リーダーもまりおちゃんもワシも、どういうわけかサンバコール絡みの馬券を持っておらず、馬券大外れ。「そら愛郷精神欠如のバチやがな。」とばかりに、誰かに突っ込まれそう。その時は「いやいや、いまやアラブ業界もグローバル化の時代。我々はその魁なのです。」と返そうか(インチキ)。

2002.3.16 記

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