第17回福姫交流観戦報告

 2002.3.6、姫路、1500m 但し重賞ではなく指定(特別)競走

はじめに
春の姫路開催名物、福姫交流。兵庫と福山の3歳補助馬が競う一戦である。レースの格付けは指定特別競走、重賞ではないのであるが、山陽杯が消滅した今となっては、兵庫県競馬が施行する、福山との唯一の交流競走であり、それだけでも注目に値する。
昨年は3月21日に施行され、2月下旬に重賞キングカップ及びクイーンカップを走った福山勢も理想的なローテーションを組みえたのだが、今年は菜の花特別共々日程が2週繰り上がり、前記2重賞に出走した福山の馬は、中10日弱で福姫を迎えることを余儀なくされた。交流競走でありながら、相方の日程を考慮しないこのあたり、端から見てもいい気がしない。
地元兵庫勢にとっては、1月13日福山での重賞、園田・益田・福山交流特別競走(通称3県交流)、2月12日の菜の花特別と続いた、補助馬限定路線の最終ラウンドであり、福山勢にとっては、ちょうどホーム&アウェーの体裁で、3県交流と対になったレースである。
3県交流では、兵庫スカイタカオーとタッカージョージが敵地でワンツーを決め、地元期待のルパンユイナを3着に下した。その後菜の花特別は、タッカージョージwith太が必死で逃げるも、スカイタカオーが散々可愛がって2番手から抜け出し連勝。

出走馬について
そして迎えた福姫交流。出走馬は以下の11頭。()内は騎手、性、斤量。
ブルーマジシャン(石井、54k、福山)、マキオライデン(松平、54k)、リードオーカン(寺地、54k)、セレクション(野田、54k、福山)、スカイタカオー(坂本、54k)、ベアーダンス(松浦政、54k)、トモシロトーザイ(藤本、54k、福山)、ホウコウサイシン(黒川、53k、福山)、クインパウエル(米田、53k)、ヒットランナー(三野、54k、福山)、ルパンユイナ(片桐、53k、福山)
負担重量は牡馬54k牝馬53kの馬齢定量。ヒットランナーは当初福山の山田騎手が騎乗予定だったところ、何故か三野騎手に乗り替わり。
福山より6頭、地元兵庫勢が5頭。当初はタッカージョージも出走予定だったのだが、追い切り後に不安が出たそうで(『キンキ』紙上より)、この回避によりフルゲートに満たず。

不動の中心と目されるのは、補助馬路線を連勝中のスカイタカオー。この福姫交流に"補助馬三冠"を懸けて臨んでくる。この馬、11月の指定特別レース栄駿賞5着、12月の重賞園田2歳優駿6着と、2歳時はオープンで掲示板に載れるかどうかというレベルだったのだが、補助馬限定戦のレベルが低いのか、地力を上げたのか、随分と格好がついてきた感じ。
一矢報いたい福山勢の期待を一身に負うのはルパンユイナ。前走牝馬重賞クイーンカップで素質馬アヤヒカリを抑え勝利。前走から中8日と詰まった日程と、ちょっと煩い気性での輸送競馬は気になるが、3県交流での完敗の借りは返したいと、陣営にも力が入るところ。

前夜に雨が降ったが、当日の早いうちに天候は回復すると予報は告げていた。予報よりは若干回復は遅れたものの、神戸・大阪では午前中には雨が上がり、日も射し始めた。ということで午後より姫路へ。ところが到着時(2時頃)外は雨。そのうち止んで晴れ模様となるも、播州の天候は不安定なのか、以後も時折雨粒が落ちてきたりする。風が強く、日陰はかなり寒い。 馬場状態は不良。砂がたっぷり水分を含み、グッチャグッチャの馬場。外ラチ沿いには水も浮く。見た目砂は粘っこそう。かなり速いタイムでレースは決着している模様。

パドックから発走まで
さてパドック。
1番ブルーマジシャン。馬体重480kの通り、実入りのよいなかなかの馬体。毛艶はソコソコ。雰囲気はある。前々走3歳4組で1着、前走は1組で7着。まだまだ。
2番マキオライデン。スラリとした首差しでスリムな体型はいかにもスマノヒット産駒らしい。胴の作りはまだ緩いが、皮膚の薄そうな、明るい栗毛の毛艶は目を惹く。一見牝馬かと勘違いしそうな美形。菜の花特別4着、今回は穴馬レベルだが、'97年のじぎく賞馬マキオクインの仔であり、血筋は確か。
3番リードオーカン。パドックの最内を煩そうに周回。馬体張りはなかなかで筋肉の締まりも上々。3県交流6着で菜の花特別5着。未だ1勝馬。
4番セレクション。青鹿毛なので肌艶の見栄えはなかなか。馬体重473kなりには大きく見せる。3県交流7着、前走3歳2組で2着、これも1勝馬。
5番が注目のスカイタカオー。栗毛の毛艶はまあまあのレベルで格段の見栄えではない。至極落ち着いた周回気配。スリムでコンパクトだが均整の取れた馬格で、馬体重424k以上に大きく見せる。「この馬体重には全然見えないですねえ。」と3号馬さんも。因みにこの馬の母ピッチアップは、あのタッチアップの半妹である。
6番ベアーダンス。胴はボッテリしているがヒ腹はくびれた、ちょっと不格好なフォルムの馬。歩みにもトモの力強さがなく、毛艶もあまり冴えない。今回5走目、前走初勝利と、まだまだ実戦経験は浅い。
7番トモシロトーザイ。馬体重480kのなかなか雄大な馬体。肩と胸前が非常に厚く、重心の低そうな、それも前半身が後ろに比してかなり低い特徴ある体型。ゆったりした胴回りだが、まだまだ緩く、絞る余地が相当ありそう。3県交流は6着止まりだが、前走3歳1組を勝ち上がり、ここにきて本格化の端緒についた感。
8番ホウコウサイシン。馬体重前走比-11kが馬体に出たか、ヒ腹が完全に上がっている。くすんで冴えない毛艶は元来のものかと。前走クイーンカップは後方ママの見せ場ない8着。格落ちの感は否めず。
9番クインパウエル。前走菜の花特別ではスカイとジョージに次ぐ3着。ここまで7戦2勝2着2回3着3回と、複勝率は高い。この実績故か、なかなかの穴馬評価。しかし見た目は毛艶も悪く冴えないもの。馬体重も前走比-11kの416kと、明らかに貧相。
10番ヒットランナー。前走キングカップは先行するも早々にタレて8着沈没。マイル戦では着外連発で、成長度も甚だ疑問。前走同様冬毛気味の馬体で、その張りも緩い。
11番がルパンユイナ。首を高くして鶴首気味になっての煩い周回だが、これはある程度予想されたこと。馬体重-2kならまずまずか。毛艶は上々で皮膚の薄さも目立つ。遠征競馬だからといって、地元での姿とそれほど変わったところはない。初めて目にする3号馬さんは「何かムチャムチャバランス悪い体型の馬ですねえ。」と感想を漏らす。

本馬場入場から返し馬。しかしながら出走馬の2/3は、ゴール板前からそのまま1コーナーへ駆け出し、四角手前あたりでウォーミングアップを切り上げて待機所に入ってしまい、再度ホームストレッチにやって来ない。スカイタカオーはソコソコ強めのキャンターで、ルパンユイナは軽くホームを流していく。

スカイタカオー(43KB)
スカイタカオー、返し馬
獲るぞ!補助馬三冠
ルパンユイナ(45KB)
ルパンユイナ、返し馬
リベンジへ、Go!

予想。スカイタカオー断然のムード。馬券の売れ筋もほとんどこの馬絡み。これを外せば軒並み高配当。福山贔屓のワシとしては、「何としてもリベンジを。」と期待して、アタマはルパンユイナから。相手は取り敢えずはスカイタカオー、そして福山のトモシロトーザイ、プラス、大穴狙いでブルーマジシャン。3号馬さんは一応スカイタカオーに期待で。加えて注目はトモシロトーザイのよう。まりおちゃんは福山騎手応援馬券で、福山勢の単勝を全点。のつもりが「あっ!三野っちの馬、買うの忘れた。どないしよう。」と。そこで「大丈夫やて、ヒットランナーなんか絶対来おへん!」と返すワシ。
しかしこれが数分後、悲劇となって彼女を襲う――

レースなり
いよいよレース。距離は1500m。4コーナーを出て直線に入ったあたりがスタート地点。
ゲートが開く。好スタートを切ったのは外ヒットランナー。そのまま前へ。内でスカイタカオーも好発。これが二の脚鋭く押し上げて、直線半ばではこちらがハナに立つ。ルパンユイナはまともな発馬、ゲートを出て頭を上げることもなく行き脚がつく。これ幸いとばかりに先行体勢、加速して隣のヒットランナーに並びかけていく。
ということでゴール板前から1コーナーにかけて、先頭は内スカイタカオー中ヒットランナー外ルパンユイナの併走。次列最内にブルーマジシャン。1、2馬身開いて外目にトモシロトーザイが続き、この内にセレクション。この直後インにマキオライデン。続いて内からリードオーカン、ホウコウサイシン、クインパウエル。ベアーダンスが殿。1コーナーのコーナリングで、ヒットランナーが下がり、ルパンユイナが内へ被せ気味に回って、スカイタカオーと併せる格好になる。 2コーナーから向こう正面にかけて、先頭二騎が後続を引き離して飛ばす。内でスカイタカオーがクビから半馬身差先んじ、外からルパンユイナが絡む形。開いた3番手にヒットランナー、この外にトモシロトーザイが相当掛かった走りで上昇。内でブルーマジシャンは下がって5番手、この外にセレクション。マキオライデンとクインパウエルが続く。ホウコウサイシンが1頭ズルズルと引き離されて殿。
バック半ば、まず隊形が崩れたのが好位集団。トモシロトーザイが前との差を詰めるべく動くと、直前のヒットランナーは位置をキープし、直後セレクションは辛うじて食らい付いていくが、それ以降の馬たちが取り残される。
その頃先頭2頭は相変わらずの併走。だが、3コーナーを前に、先に鞍上の手綱が動いたのはルパンユイナ。スカイタカオーは気合いを付けられるとスッと加速。ユイナ鞍上片桐騎手のアクションがますます大きくなる。先に手応え怪しくなった模様。これが三分三厘あたり。二強めがけて外からトモシロトーザイが接近。これに交わされながらも、ヒットランナーが三野っちに叱咤されてよく食らい付いている。この2馬身後方にセレクション、以下は完全に遅れる。前の二強+トモシロの、3頭の競馬になりそう。
そして4コーナーから最後の直線。1馬身ほど抜け出すスカイタカオー。外でルパンユイナはやっぱり先に降参。外からトモシロトーザイが脚を伸ばす。直線に入ってユイナに追い付き、ジリジリこれを交わし2番手に。内スカイタカオー外トモシロトーザイ離れての争い、トモシロの末脚の方が鋭い。これがタカオーを交わして先頭か?と思ったところへ、最内からスルスル伸びてくる馬が1頭。「何やあれ?エッ、三野っち!?」と混乱する我々の前を、インからスパッと抜け出して、真っ先にゴール板に飛び込んだのはヒットランナー。

ヒットランナー(44B)
ゴール前、内を突き抜けたヒットランナー
外から2着トモシロトーザイ、スカイタカオー敗れる

半馬身差の2着にトモシロトーザイ。スカイタカオーは半馬身遅れて3着。ルパンユイナは結局2馬身遅れた4着。5着にセレクション。ここで9馬身開いて、6着リードオーカン、7着マキオライデン、8着クインパウエルと、兵庫の穴馬勢は揃って討ち死に。9着ブルーマジシャン、ブービー後方ママのホウコウサイシン、殿はベアーダンス。

振り返って、そして幕切れは悲喜劇で
それにしても1着がヒットランナーとは・・・後でビデオで確認すると、一旦遅れた4番手から三分三厘で前に再び詰め寄って、4コーナーではスカイタカオーの直後に迫り、インを突いて追い出されている。残り100手前ではトモシロに先んじてタカオーに並びかけ、ここから完全に差し切っている。
馬自身に好走材料など皆無のはずなのだが。結局どう考えても、勝因は代打騎乗の三野騎手ということに辿り着いてしまう。とにかく今年の三野っちの好調ぶりは尋常でない。太、岩田に続くリーディング3位を赤木と激しく争う現状、兵庫最年長jkにして騎手会長の腕は冴えまくっている。中継で観戦した山根さんもその好騎乗、殊に最後の直線でのプレーを、御自分の掲示板にて絶賛。以下引用。
「ホンマ冷静な判断と内側からスルスルと伸びてきたあのテクニック。ちゃんと途中で鞭を右から左へと持ち替えてたし、ちゃんと狭いところやったので横ではなく縦に鞭を使うてるところもミスターファアやった。今ならジャングルポケットに乗せても大丈夫や!」
何はともあれ「三野、恐るべし。」。

トモシロトーザイは道中の掛かりっぷりが目についたものの、レース後半よく追い上げて、なかなか迫力ある末脚を使ったと思う。前走の3歳1組戦勝ちは伊達ではなかった。まだまだ成長が見込める雰囲気であるので今後にちょっと期待。ひょっとしたらモナクダイキチみたいな馬に化けるかも。
それにしてもスカイタカオーとルパンユイナは・・・スカイタカオーは好ダッシュで自信満々の先頭快走。ルパンユイナは発馬不安をクリアして想像以上のまともなスタートで、それを利してか果敢に前へ。このあたり、ユイナの片桐jkは「相手はスカイタカオー1頭だけ、これを倒せば勝てる。」とばかりに真っ向勝負を挑み、対してタカオーの坂本jkは「ライバルなんていない。相手が何であれ、ねじ伏せられる。」とばかりにまともに受けて立ったのでは、などと、両騎手の判断が類推されるのだが、どうだろう。結果として一歩も譲らぬ競り合いになったものの、共倒れとなってしまった感じ。
このレースの勝ちタイム1分37秒7は、同日第9競走の、同一距離のサラ3歳準オープン戦よりコンマ7秒速く、かなりの高速レースであったと思われる。このタイムの立て役者こそ、競り合った二強であり、道中のハイペースに終い脚を鈍らせて、伏兵の逆転を許したという推測は成り立とう。

二強が揃って連対落ちしたことで馬券は大波乱。枠複4,570円、馬複55,730円、馬単何と126,510円。ヒットランナーの単勝も6,750円(8番人気)。というわけで――
悲惨なのはまりおちゃん。1点だけ買い漏らした福山の馬が1着、その配当を知るや「キ〜ッ!バカバカバカ!」と発狂寸前。「競馬なんて、えてしてそんなもんなんやって。」とOku師匠。三野っちのファインプレーだとはイヤというほど判るのでこれを責めるわけにもいかず、「山田ぁ!アホ〜!」と、怒りの矛先は全て、本来騎乗するはずだった山田騎手へ。実は「絶対ないない。」と太鼓判押したワシにも相当責任あるのだが、それは知らぬがホットケ。

これにて福山と兵庫の3歳補助馬限定路線はひとまず終了。今回のレースで、出走した面々の将来が拓けたかは・・・甚だ怪しい。

2002.3.23 記

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