福山グランプリ 第13回ローゼンホーマ記念観戦報告

 2002.3.17、福山、1800m

はじめに〜今年のローゼン事情
ローゼンホーマ記念である。
「年度の掉尾を飾るグランプリ、総決算!」というのが謳い文句となっているようだが、実際のところ、それほどのものではないというのが個人的印象。福山競馬の重賞体系においては、何だかんだ言っても頂点決戦は正月の福山大賞典であり、年度末のこの重賞は、むしろ次年度の古馬戦線に向けて、新顔や上昇馬が足固めをする場としての色合いが濃いような気がする。

さて、今年はどうか。出走メンバーは、内枠より以下のフルゲート10頭。()内は騎手、斤量。
ノア(楢崎、56k)、ユノワンサイド(石井、56k)、モナクマリン(岡田、56k)、フジナミスペシャル(嬉、56k)、モナクダイキチ(岡崎、56k)、ホマレエリート(鋤田、54k)、イケノエメラルド(野田、54k)、グリンティアラ(片桐、54k)、セブンアトム(黒川、56k)、ドリーミング(渡辺、54k)
ハンデは牡馬56k牝馬54kと、定量の体裁。

3月第1日曜に佐賀で施行される、西日本アラブ大賞典への出張馬(これが現在の福山トップである場合がほとんどなのだが)は、この2400mの大一番から中1週と詰まったローテーションを嫌い、顔を見せない場合も多いのだが、今年はフジナミスペシャルが、パスせず登場してくる。
さらに、正月の福山大賞典と2月のマイラーズカップにおいて、掲示板に載った馬が、マイラーズ5着のコウギョウシャトルを除いて全て顔を揃えた。すなわち、前出のフジナミスペシャルに、ユノワンサイド、ドリーミング、グリンティアラ、モナクマリン、セブンアトム。ということで、顔触れとしては、決戦のグランプリに相応しいものとなった。
これに加えて、A1待遇2走目となる新春賞馬ノアや、前走A3戦で圧勝を演じ、主催者選考枠(このレース、単なるA1競走ではなく、上位馬に加えて主催者選考馬が出走できる。これがグランプリたる所以、そして下克上のツボ。)でここに登場するホマレエリートという、フレッシュな2頭。そして実績牝馬イケノエメラルドに、古豪モナクダイキチ。

当日の概況
当日の天気は晴れ、やや薄雲がかかる程度の好天。暖かい、いや暑いほどの陽気。日本各地で早くも桜の開花宣言が出ているという、ちょっと異常気象気味な状況。風はやや強い。
馬場状態は良だが、今週は砂入れがなく、深い馬場ではないとのこと。砂のキメは粗そう。前半を中団以降で進めた馬がロングスパートして、楽逃げに見える馬を差し切るレースも見られ、平均的な福山の馬場よりは、差し馬の好成績が目立つ。
入場すると、まず残念な知らせが。この日の最終レースに出走予定だったビックワンサンセイが、当日になって出走取り消しとのこと。皆さん一様に「一つ損をした」気分になっているようだ。

ちょっと注目の第8レース
メインレース前の第8レース、C2の9組戦、ここに、大器と評判の3歳モナクカバキチが登場。前走キングカップで目撃したのだが、この時は見た目もイマイチで、結果も4着とピンとこぬものだった。「で、ホントはどうなのよ?」とばかり、改めて注目の機会となった。他にも、あのピアホルテの仔マルサンホルテや、前走荒尾にて施行された、4歳補助馬による広域交流レースの九州アラブ栄冠に遠征して突然脚光を浴びた(結果は4着)ムサシボウトップなども出走。
注目のモナクカバキチ。毛艶は前走よりはましだがまだまだ。馬体重+4kの462kだが、肉付きはイマイチ。骨格の作りは大きいので、もっと逞しい体になる余地があろうが、筋肉の張りやボリュームが伴っていない。「何だか、いい頃のモナクマリンの馬体を大柄にして筋肉萎ませたような感じですねえ。」と3号馬さん。「全然(馬体が)出来てない。」とFUKUさんも。チャカチャカ焦れ込むのは前走と同じ。
馬体の出来ならムサシボウトップの方が断然いい。というより今日のこの馬の見た目、絶好。毛艶ピカピカで文句ない張り。マルサンホルテは流星の二枚目顔。腹のラインが太い体型。この馬は追い込み一手。
馬券はカバキチからが断然人気。しかしこの馬に関しては半信半疑なワシなので、ちょっと欲をかいて、ムサシボウ→カバキチの連単裏目で勝負。
距離は1600m。ムサシボウトップがダッシュ良く先手を取り、カバキチは中団からの競馬。マルサンホルテは殿から。「エエ感じの逃げやがな、シメシメ。」と思っていたのも中盤まで。バック半ば手前でカバキチ、全く馬なりでシュルシュルルゥ〜と、先行馬群を押し上がり、三角でいとも簡単に先頭に躍り出る。そのまま後続をブッチ切って独走、最後の直線では岡田騎手に気合いを入れられていたが、これは恐らく馬が遊びすぎないようにとの配慮。結局2着と2秒2の大差で圧勝。カバキチに交わされたムサシボウトップは以降も快走、終いは差を詰められたが2着を死守。マルサンホルテは直線追い込むも4着まで。
今回のモナクカバキチは「なるほどね。」。気性の難しさを前半中団待機の楽走でなだめつつ、地力勝負で結果を出したということか。ちょっとは大器の片鱗、見せてもらったかな。しかしこのキャラこの戦法、同様に気性難を抱えている3歳筆頭ダイニアキフジと被るぞ。福山ダービーでは、ここらあたりに要注目か。

ローゼンホーマ記念、パドックから発走まで
ローゼンタイム(といえばローゼンホーマのアニキですがここではその意味じゃありません)が迫る。パドック周回の前に装鞍所の様子を、環さんやリーダー、3号馬さんと眺める。「ユノワンサイドは相変わらず(馬房の中で)ピクリとも動かないなあ。それにドリーミングも。」と環ちゃん。フジナミスペシャルは前走佐賀の時と同様、今回も馬房に入るのを嫌がる。仕方がないので装鞍所前の広場で鞍付け。グリンティアラは早々に鞍付けされ、ずっと広場を曳かれていた。セブンアトムが馬房から首を伸ばして顔を出し、厩務員さんにじゃれついていて、ちょっとカワイイ。
そしてパドック周回。
1番ノア。前走花市場賞は勝ったユノワンサイドからコンマ4差の5着、初のA1戦としてはなかなかだと。栗毛の馬体が明るく光り、毛艶は新春賞時より格段に上。今日は馬体がシャープに見える。ちょっと煩めな細かい動きがあるが、新春賞時の激しさほどではない。
2番がユノワンサイド。マイラーズカップは3着も、前走花市場賞勝利で、千八戦無敗記録をまた更新。いつものこの馬なりの、ゆったり落ち着いた周回。毛艶は悪くはないが平行線か。馬体重492kは+2kで適正値だが、腹回りは太め。元々トモの踏み込みが深い馬ではないが、今日はその送りに力強さがない。特に腰というのか後肢の付け根というのか、そこらあたりの動きが弱い。
3番モナクマリン。馬体重423kは-8k、この馬体重は全盛時ならば適正値だが、中身は大違いだろう。かつての筋肉の付きは望むべくもなく、毛艶にも良化は窺われない。今のマリンに期待を懸けるのも酷か。マイラーズカップ4着で前走花市場賞7着。前走と同じく今回も千八戦、逃げるのはともかくとして勝ち負けまでは・・・
4番がフジナミスペシャル。佐賀の西日本アラブ大賞典は流れも向かず3着敗退。が、2400m戦帰りも何のそので登場。毛艶は問題ないレベル。馬体重-7kの505kも若干軽い程度。トモの送りがやや硬く、踏み込みが浅いのも、まあいつもこんな感じかというレベル。 見た目には疲れは窺われない。調教もしっかりこなしているようだ。
5番モナクダイキチ。一昨年のこのレース、パッピーケイオーとの一騎打ちに敗れ2着。以後の2シーズン、年の半分以上は休養で、晩秋から冬場にかけてしか稼働していないという、季節労働者のような馬生を送っている。そんな彼ももう7歳。休養明け5戦目の前走花市場賞は追い込んで4着と、A1戦で久々にらしいところを見せてここへ。その馬体、とにかくデカい。鹿毛なのに馬体は真っ黒でピカピカ、バンバンの張り。ちょっと太めだがこのボリューム感は驚愕もの。「何なんだこれは!」とばかりに視線が吸い寄せられる。
6番ホマレエリート。前走A3戦を中団から捲って圧勝し、飛び級状態で勇躍ここへ登場。シャープでスッキリした馬体。毛艶も良好。馬体重450kの割には小柄に見えるのは、体高が低くて幅がないという、元々の体型故のことで致し方ない。しかしホントに背が低い。直後を歩くイケノエメラルドの方が、目方は25k以上も軽いのにまだ体高がある。
7番イケノエメラルド。前走マイラーズカップは殿負け、前開催は休んでここに臨んできた。中間の稽古は熱心に行われたよう。前走よりは格段に毛艶が上がっている。冬毛も解消し、筋肉もしっかり付いている。馬体重+5kの424kも良い傾向。しかし何度も彼女を目にしていて、かつ思い入れも深い3号馬さんは「やっぱり今一つですよ。全盛時の見た目じゃないですね。」と。それに対してワシ、思わず「え〜!?この馬にしては絶好やん!」。「福山来てからは今日が文句なく一番いい。」とFUKUさんも。「でもちょっと前の捌きが硬いね。」と、これは環ちゃんの指摘だったか。
8番グリンティアラ。マイラーズカップでは7着と掲示板を外すも、前走花市場賞ではドリーミングをハナ差振り切り2着と、寒さが緩んでも"雪女"はまだ元気。いつもながらにガッシリ筋肉の付いた体型で、今日も実入りは問題ない。毛艶も良好。身のこなしは総じてギタバタしているが、歩幅は前も後ろも大きい。動きにリズムと活気があって、かなりの好印象。
9番セブンアトム。大賞典は5着だったが、マイラーズ9着に前走花市場賞8着と近走不振。460kの馬体重は前走比+2kだが適正値。しかしながら腹回りが明らかに太い。ちょっと緩んでいないか。毛艶はソコソコ、マイラーズ時よりはましだが。
10番がご存じ"魔女"ドリーミング。マイラーズカップと前走花市場賞を共に3着で、昨夏転入以降8連勝+大賞典2着の勢いは若干鈍ったか。馬体重は12月戦(大賞典の前走にして8連勝目)の480kをピークに暫減、今回-6kで466kまで減った。これが見た目にもてきめんに出ている。毛艶は変わらずなかなかだが、馬体張りと胴の実入りが確実に落ちた。「大賞典の頃とねえ、明らかに違うもんねえ。」とは栃さんやFUKUさん環ちゃんも一様に指摘するところ。環ちゃんや栃さんは加えて、「ドリーミングは踏み込みの歩幅が全然(小さくなっちゃって駄目)。力強くもないし。おかげでずっとパドックの最内回ってるよね。」と。さて、これでどうなのよ。

本馬場入場から返し馬。今日はどの馬も概して返し馬は軽め。モナクマリンは四角手前まで駆けていって待避所へ、例によってホームを流さない。イケノエメラルドの口向きが悪い。ユノワンサイドは大外をサーッと駆け抜ける。ブリブリ走ると思ったモナクダイキチですら比較的軽い。最後にドリーミングが流してくるが、口を割って舌を出している。
予想紙のシルシは、3紙それぞれ推奨馬が異なる。『福山エース』にはフジナミ支持が目立ち、ワンサイドは一様に対抗評価。以下ドリーミング、ティアラ、ホマレあたりに。『キンキ』はワンサイドを高評価。『特報』はホマレを抜擢、続いてドリーミング、ワンサイド。フジナミの評価を下げているのが目につく。
「ユノワンサイド、千八実績は断然なのに本命ズラリじゃないんだよね。調子落ちなのかね、気になるところ。」との声はかなり聞かれた。ワシもパドック気配が気になる。「今回はドリーミングは消し。」とはおさるさん。これにはワシも同意見。「ホマレエリート、いいじゃないですか。調子も相当上がってるみたいやし。上山時代の実績と地力考えてもここで充分通用するでしょう。」とディープさん。加えて「それにしても地味なメンコやな、全然ホマレエリートに見えん。」と。「あのアオメンコじゃねえ。やっぱり上山時代のピンクメンコだよね。」と返すワシ。ホマレエリートに好感との見立ては多かった。「やっぱりモナクダイキチがねえ。ここでは厳しいとは思うんやけど、あの馬体見ると惹かれるなあ。」とワシ。「全く。モナクダイキチはホンマやっぱりいいですよ。過去何度騙されたことか。」とディープさん。横で「いかにも」といった感じでやり取りを見てらっしゃるFUKUさん。ワシの予想は。取り敢えずフジナミとワンサイドの二強は押さえつつも、期待はグリンティアラとモナクダイキチ。前が崩れて捲り馬の勝負になればと見込んで、などというのは屁理屈で、その実はスケベな穴狙い。

レースなり
というわけでいよいよレース。距離1800m。夏季開催を除いて、ほとんどのオープン戦はこの距離で施行されるのだが、同距離の古馬重賞は意外にもこのローゼンホーマ記念と全国交流タマツバキ記念だけ。
ゲートオープン。出が良かったのは最内ノアと外のセブンアトム。果敢に前へ。モナクマリンの発馬は今回は並。しかしながら例によって二の脚の加速は出色。ノアとアトムの間でハナを取りに行く。ここでマリンがすんなりと、とはならず、なまじダッシュがついたからか、ノアとアトムがマリンに引っ絡まる感じで、若干マリンを深追いする形になる。三分三厘でどうにかこうにかマリン単騎ハナ、やや開いてノアとアトムの隊形に落ち着く。先行3頭の後ろ、ユノワンサイドが好発から次第に下げて4番手にすんなり。外からドリーミングが今日はスッと好位を取って5番手で。先行集団に姿のなかったフジナミスペシャルはらしくない後方8番手から。
正面スタンド前。先頭は引き続きモナクマリン。リードは3馬身程度、この馬にしては後ろを引き離していない。2番手ノア、その外にセブンアトムが併走。ユノワンサイドはインベタ4番手。やや開いてドリーミングが5番手。次列は内イケノエメラルド外グリンティアラの併走。フジナミスペシャルは相変わらずこの後ろ8番手で。ホマレエリートはさらに後方ケツ2を単走で、殿はモナクダイキチ。

1周目(35B)
1周目の正面スタンド前
先頭モナクマリン、さほど差がなく2番手ノア、外にセブンアトム

1コーナーから2コーナーにかけて、先頭マリンのリードは変わらず3馬身程度。セブンアトムが次第次第に後退気味。グリンティアラとホマレエリートが若干位置を上げる。
そしてレースが動くのは向こう流しの半ば過ぎ。ユノワンサイドが仕掛け気味に前へ、外からドリーミングもペースアップか。三角手前でモナクマリンは辛うじてリードを保った先頭死守だが、ノアは既に後続に捕まり、セブンアトムはとっくに圏外。マリンめがけてまずはユノワンサイドが迫り、外から連れてドリーミングが。さらに外からグリンティアラがいい脚で寄せ、そのさらに外、ホマレエリートが抜群の勢いで捲り上がってくる。後方から押し上げた馬が順次外を回って迫るという状況、しかも外目の馬ほど脚勢が良い。
ということで三分三厘、モナクマリンの逃げも風前の灯、ユノワンサイドの走りにも力強さはなく、ドリーミングの脚にも今日は斬れがない。そこでグリンティアラが一旦は捲り切ってフロントに立ったかどうというところ、それも束の間、問答無用で外からホマレエリートが交わし去って四角先頭。他馬と桁違いの伸び脚を披露して、最後の直線は単騎独走となる。終いは鞍上鋤田騎手、後ろを振り返る余裕を見せて、完勝のゴール。

ホマレエリート、ゴールへ(34B)
ホマレエリート、独走でゴールへ
鞍上鋤田も余裕の楽走

他方その後の2番手争いは熾烈を極めた。比較的早めに前に来てしまったグリンティアラだが、ホマレエリートに抜かれた以後も力走で直線をゴールを目指す。ドリーミングがこれに付いてくるものの、それが精一杯で差し切ることは叶いそうもない。ティアラ2番手で決するか?というところ、ゴールまで直線も残り半分くらいになって、やっとこさっとこフジナミスペシャルが馬場外目、追い込んで2番手圏内に登場。ジワリジワリとティアラに迫る。こうなると馬券の都合もあって、現場は騒然。「片桐残せぇ〜!」と「嬉差せぇ〜!」の怒号錯綜。内にティアラ外五分どころフジナミ、内外離れた競り合い。残り2、30でフジナミが1馬身差まで詰めて、まさにゴール板前、フジナミが馬体をティアラの前に出す。これは際どい!

フジナミvsティアラ(35B)
外フジナミスペシャルvs内グリンティアラ
写真ではティアラが残しているがここからフジナミが交わす

結果、2着フジナミスペシャル、3着グリンティアラ、その差アタマ。両頭の首の上げ下げのタイミングもあり、着差はくっきり出た。フジナミは勝ったホマレとは3馬身差。意外に最後差を詰めた感。フジナミは単勝1番人気、対するティアラは穴馬評価、ということで、フジナミ2着にホッと胸をなで下ろす方が多数。しかし約1名「ぬわぁ〜んや(何〜や)!グァクゥ〜(ガクッ〜)!」と、その場にへたり込む御仁が。曰く「ホマレエリートはともかく、グリンティアラ、絶対自信あったのになぁ。」と、獲り損ねた穴馬券を悔しがる。ワシはホマレエリートを買っていなかったので、ちょっと蚊帳の外。
ドリーミングは2馬身差で4着。5着に終い追い込んだモナクダイキチが入り、掲示板圏内に。ユノワンサイドは全く不発の6着。イケノエメラルドが7着。8着モナクマリン、9着ノア、大差最下位セブンアトムと、逃げ・先行勢総崩れとなった。

ホマレエリート、口取り後(35B)
ホマレエリート、口取り終わって
能力を凝縮したスリムな馬体

レース後ホマレエリートが鋤田騎手に促されて再度ホームストレッチへ。しかしゆったりとした歩みでなく、ウィニングランらしからぬ早足で外ラチ沿いをビュッと通り過ぎて行った。

反省
勝ったホマレエリートはお見事。初の古馬A1クラスとの対決も関係なし。前走と同様の捲り一気でレースを制してしまった。3歳時に上山で一流古馬に混じってタフな競馬をしてきているので、終わってみれば、これくらい走って当然ということか。それにしてもワシは、そのあたりをスコンと忘れて「A3から一足飛びのオープン重賞はちょっとキツいぞ。」とばかりに、あっさり買い目から外して、結果このざまである。「3歳の頃は、ちょっと距離が長くなると掛かり気味になる先行馬って感じだったのに、今じゃ千八で難なく折り合う捲り差し競馬。このあたり、どうなんでしょう?」と、感心しつつ、くもさんに問うと、ちょっと首を傾げて「うーん、やっぱり騎手が巧いんだと思う。正直、わからん。」と。彼女を上山での若駒時代からよく知るくもさんの見込みを越える充実ぶりということか。
フジナミスペシャルは際どく届いての2着。しかしこの後方待機、嬉騎手が先行崩れ、差し有利と読んでのものなのか、たまたまなのか。ワシ的には後者の線が極めて強いと思うのだが。「そもそもスタート良くなかったでしょ。」と3号馬さんや環ちゃんも指摘されておるし、この馬、内枠発走はあまり得意でないようで、このことからも、出負けからの致し方ない後方追走だと思われるわけで。本来ならばポカになるレースのところ、展開と馬場の利で、結果オーライになったような。「でも何だかんだでねえ、やっぱり佐賀に代表で出ただけのことはねえ。」と栃さん。
グリンティアラは惜しい3着。好調なのだろう、寄せの見せ場は充分だったし、直線もよく持ちこたえたと思う。が、、この馬、ワシが現場観戦していないレースに限って連入し、観戦したレースでは絶対馬券に絡まないという、それでもってまたワシがこの馬の馬券を毎回買っているという、個人的には悪魔のような馬なのである。
ドリーミング、今日は迫力不足。というよりもぼちぼち好調のピークを越した感があり。「正月以降走れば走るだけ着順が下がる。」とディープさんやおさるさんが言及されたが、それは個々のレースの展開や勝負のアヤ故のことではあるまい。
ユノワンサイドはまったく振るわぬ6着敗退。千八不敗神話が崩壊。どうやらやっぱりちょっと不調だった模様。これですかさず巻き返してくれればいいのだが、この馬も昨夏以降高レベルでの走りを続けてきておるわけで、ぼちぼち調子が下降線を辿りだしてもおかしくないところか。しかしその程度も甚だしく、再浮上してこれぬようだと、また「煮え切らない馬」呼ばわりされること必至だぞ。
モナクダイキチは前崩れの流れに乗った5着かと。終いよく追い込んだとは思うが、この馬の持ち味はやはりレース中盤での捲り寄せ。年齢的にも競走馬としてのピークを越えていようとは諒解されるが、かつての迫力ある走りをまた観たいと思う。
イケノエメラルドの7着は、何となく中団を追走して、後半崩れた先行馬を抜いただけ。やっぱり現状ではここは家賃が高いのでは。3号馬さんが仰るように「今は不調期、やっぱり暖かくなってからでないと。何と言っても道営のサラB2級戦で圧勝した馬ですから、ホントはこんなもんじゃないですよ。」であるならば、当面は臥薪嘗胆、梅雨時以降、殊に夏季開催"灼熱のマイル戦線"あたりが正念場、ということだろうか。しかしこの馬に対し、ワシは甚だ懐疑的。
先行勢は見事に潰れて着順下位に沈んだ。モナクマリンは現状を鑑みるに致し方ないか。ノアは序盤マリンに絡み過ぎたのが痛かったよう。ああなるとやっぱりこの馬、ちょっと激しいといおうか、一所懸命になるところがあるみたい。ただ、上位勢に比べて、割と使い詰めでないし、調子的にもまだまだ煮詰まっていないので、巻き返しの余地はあろう。逆に最下位のセブンアトムは完全に煮詰まった感。旧4歳時以降、下級条件からこつこつと、ほとんど不休で走り続けてA1まで出世したわけで。そろそろ休養させてもいいのでは、とも思うのだが。ただ、カヅミネオン産駒って、使われ続けている間は着実に想像以上に成長するが、一旦息を入れると、そこからの再立ち上げが大変、下手をすると頭を打つ傾向があるような。ツルギネオン然り、カズミサチフジ然り、ドミネーター然り、マツノホープ然り。
「やっぱり前半3頭で相当競り合ってかなりハイペースになったのかなあ。差し届く馬場も相まって、案の定みんな潰れたなあ。」とは、戦後多く聞かれた見立て。確かに勝ち時計2分1秒6は、それなりに速い時計であるようだが。しかし実際のところ、前がバカ競り合いしたのは序盤だけであるし、中盤は各々位置をキープしての進行だったようで。個人的には、ハイペースというよりは、3頭共々「ハイペースのつもりになってしまった」レースだったのではと思われるのだが、如何。

次年度を思いつつ、おしまい
これにて2001年度の福山古馬戦線は終幕。そして月が明ければ、開催2日目、4月14日の桜花賞を皮切りに新年度の戦いが始まる。今回のローゼンホーマ記念は、それを前に超新星が名乗りをあげた舞台。
と言えるかは、実はちょっとわからぬところでありまして。というのもこのホマレエリート、現在の福山在籍は、上山が冬季休催の間のいわば出稼ぎ移籍、翌春開幕に合わせて上山に帰るというのが当初の予定だったはず。このあたりをおさるさんらと、くもさんに訊ねると「オーナーは変わってないからその意向としては(上山に)戻してもいいようだけれど、(上山時代の)調教師は、同厩のホマレトウカクが力つけてるみたいで、これで交流競走狙いたいようだから、エリートに関してはどっちでもいいと思っているらしい。」とのこと。翌月の去就に注目の集まるところである。

ユノワンサイドにドリーミングという、ここまで半年以上福山を牽引した上位2頭の勢いに翳りが生じ、フジナミスペシャルも相変わらずやっぱり掴み所のない馬のまま、ひと頃に比べて、福山古馬のレベルと勢いがちょっと落ちた印象は否めない。その穴を埋めてくれようホマレエリートまでも去ることになるも知れぬという、これが。
5月26日には、全日本タマツバキ記念アラブ大賞典が控えている。この全国交流の大一番を、向こう2ヶ月以内で著しく好転するとも思われぬこの陣容で迎えねばならぬのかと思うと・・・「次年度への弾みのレース」のつもりが、図らずも「次年度への不安」を垣間見せることになってしまった、今回のローゼンホーマ記念だったかと。少なくともワシ個人にとっては――
「心配にゃーで。ムキムキマンコンテスト(死語だな)じゃたらワシが日本一じゃけ。」そういう問題じゃないだろう、モナクダイキチ・・・

2002.3.26 記

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