日刊スポーツ杯 第6回マンペイ記念観戦報告

 2002.5.19、高知、1400m

はじめに〜当日の概況など
高知競馬は、かつて他地区にて活躍した馬が再起して活躍する競馬場として名高いが、3歳戦においても、三冠路線がちゃんと存在している。すなわち、初夏のマンペイ記念、梅雨から夏頃の南国優駿、そして秋の荒鷲賞。今回観戦したマンペイ記念は、その第一弾というわけである。今年初めて、このレースを観戦することとなった。

今回往路に、初めて神戸三ノ宮−高知間の高速バスを使用。三ノ宮を7:30発、明石大橋を渡り淡路島経由で四国へ。そして高知には11時10分頃到着。
連休明け以降、非常に雨の多い近2週間であったが、当日を前に幸いにも天気は回復傾向。そして到着時、高知の天気は曇り、次第次第に晴れ模様となる。日陰は涼しいが日向は蒸し暑い。風はやや強い。
馬場状態不良での開始だったが、途中第4競走から重馬場発表となる。適度に締まった馬場、表面に水は浮いてはいない。

場内の片隅、パドックを挟んでスタンドと反対側、馬頭観音の横に、今日の重賞名のもととなった、種牡馬マンペイの顕彰碑がひっそりと立っている。マンペイは、戦後期に高知の馬産振興のため導入された国営のアラブ種牡馬で、多大なる功績を残したそうだ。顕彰碑自体は旧競馬場に元々あったようで、現在の競馬場に移転する際、共に移されたとのこと。これをもりも先生、電設師、3号馬さんと連れだって拝みに行く。そして、高知競馬とアラブ競馬の維持されんことを祈念して、畏み畏み手を合わせたのであった(ちょっとウソ)。

出走馬について
さてメインレースのマンペイ記念。出走馬は内枠より以下の8頭。ちょっと寂しい頭数。()内は騎手、斤量。
ホーエイミラクル(戸梶、牝、53k)、ミツキノミヤロン(中西、牝、53k)、カミケンマック(倉兼、牡、55k)、ミスターブラウン(宮川実、牡、55k)、ユタカオヤシオ(鷹野、牡、55k)、チーチーメガミ(西川、牝、53k)、テイケイミチカヒメ(花本、牝、53k)、チュウオーマイピヤ(中越、牝、53k)
斤量は牡馬55k牝馬53kの馬齢定量。出走馬のうち牝馬が過半数の5頭。なお、ミスターブラウンは当初騎乗予定の西内騎手が疾病欠場のため宮川実騎手に乗り替わり。

2歳時この世代をリードしたマルチタイガーと、重賞銀の鞍賞を制したヒダカシュウホウは、共に年明け以後戦績が今一つで、今回は自重のようで姿を見せず。殊にヒダカシュウホウは、翌月9日福山にて施行される、3歳中央補助馬全国交流重賞の瀬戸内賞への参戦を以前から目指していたのだが、追い込み一手で展開に左右される脚質であるにせよ、あまりにピリッとせぬ現状、瀬戸内賞どころではなく、結局夢の断念となってしまった。
ということで一身に注目を集めることとなったのが、3歳年明け以降躍進して、上記2頭に代わり断然の世代筆頭格になったテイケイミチカヒメ。正月4日の祝月特別こそマルチタイガーの2着に敗れるも、以後6連勝。3走前には3歳限定戦を卒業して古馬編入されている。加えてこの馬、ヒダカシュウホウに代わって瀬戸内賞への挑戦を予定しており、弾みをつけるためにも地元一冠を奪取したいところである。
これと他の出走7頭との戦績の差は歴然。7頭のうち、3歳になって1組戦を勝ったことがあるのは、前開催1組戦の勝者カミケンマック1頭のみ。これは3月10日のマンペイ記念トライアル弥生特別の2着馬であり、実績的にも2番手か。

パドックから発走まで
初夏の南国、3時半過ぎでも太陽の位置はまだかなり高い。その陽を受けて、出走馬がパドックに登場する。
1番ホーエイミラクル。馬体重-8kだが体型のせいか、胴はやや緩く映る。毛艶は良好。周回当初は首を下げてのんびり歩いていたが、次第に煩くなって、やがて周回を離れ、パドック入り口で回される。届き切らぬが堅実に差し込む脚質で、3着が多い。11戦中の2勝はいずれも2歳時に挙げたもの。
2番ミツキノミヤロン。これも毛艶は良い。スッキリスリムな体型。やや細かい動きが目立つ。13戦1勝2着2回、その1勝は2歳時2組戦でのもの。3走前の1組戦でヒダカシュウホウの2着が最近の好走例。
3番カミケンマック。胴がドンと太い体型で、毛艶はソコソコのレベル。前脚の出がギクシャクしている。次第に発汗がキツくなり、内股と鞍下に泡が立ってくる。何となくピーキーな馬であるような気がする。通算13戦3勝。
4番ミスターブラウン。尾花栗毛、剛直な馬体で張りはあるが、前後とも歩様が硬い。体型はやや胴長。15戦2勝だがその勝ち星は全て2歳初期の800m戦。「目つきが精悍でちょっと気になるなあ。」とは電設師。
5番ユタカオヤシオ。登場して暫くは入り口で止まったまま周回せず、間があってから歩き始める。毛艶はまあまあだがこの馬も肩が硬い。16戦1勝だが前走は1組で3着。
6番チーチーメガミ。馬体重-6kなれどやや太い見た目。明るい鹿毛だが毛艶は一息で、トモには冬毛らしきものも。動作はキビキビしているが。13戦してこれも1勝馬。3走前と2走前は2組落ちして連続2着。
7番がテイケイミチカヒメ。概ねじんわりした気合い乗りで大外を歩くが、時折小走りになる。歩様は滑らかかと。芦毛ながら毛艶はなかなか。馬体重481kは+10k、やはり腹のラインはやや緩いか。鞍下に汗が滲んでいる。首のつく角度が高いあたり、トライバルセンプー産駒らしさはある。通算13戦7勝。
8番チュウオーマイピヤ。馬体に張りと艶はあるが胴は緩め。トモの送りがビョコビョコしている。7戦2勝とキャリアは比較的浅い。前走は2組戦で2着。

本馬場入場から返し馬に。テイケイミチカヒメは口からデレデレと泡を垂らしつつ入場。「いつもあんな感じ。きっと蟹の祟りに違いない。」と、適切な指摘と規格外の冗談を一緒に発するもりも先生。「ホントにあの馬が本命でいいの?あまり迫力ないんだけれど。」とは、今回高知競馬場初体験の、観戦記サイトの大先輩yamachanさん。
ホーエイミラクルは首を下げてガンガンと。カミケンマックはスピードが乗ったキャンターで。テイケイミチカヒメはごく軽く流す。最後にチュウオーマイピヤが楽走で通過。
予想。見た目メイチの出来ではないのだが、地力からしてテイケイミチカヒメのアタマは間違いないところ。考えるのは相手だけ。厚く対抗評価を貰っているカミケンマックを取り敢えず押さえ、期待はホーエイミラクル。堅実さで何とか2着までと見込んで。それにしても高知の3歳戦、その中堅勢はどうも混戦模様のような気がするので、ヒモ荒れの余地も考慮して、それ以外の馬へもテイケイから薄く総流し。我ながら賢明だと思ったのだが、オッズを見ると、テイケイからの目はどれもソコソコしかつかないので、的中したとしても利ざやがほとんどない。これは失敗。

レースなり
いよいよレース。距離は1400m、4コーナーのポケットからの発走。どういうわけか発走時間になると、太陽に雲がかかって空が暗くなってしまった。
ゲートが開く。内カミケンマック、中ミスターブラウン、外チーチーメガミあたりが好発だが、やはりテイケイミチカヒメがダッシュ、ハナに立たんとする。最初のホームストレッチ半ばあたりでは、内のカミケンマックに半馬身程度先んじている。チュウオーマイピヤが大外からスルスルと3番手。その内にチーチーメガミが併走気味で。下がってミスターブラウン、以下ミツキノミヤロン、ユタカオヤシオと続き、殿は予想通りホーエイミラクル。

1周目(33KB)
最初の正面スタンド前
先頭の芦毛がテイケイ、インの流星がカミケンマック

1コーナーから2コーナー、前2頭は相変わらず馬体を併せたまま、外テイケイミチカヒメが、内カミケンマックより半馬身弱前に出た形で突っ走る。そのまま後続を引き離して向こう正面へ。バックの半ばでは3番手にチュウオーマイピヤが単走で、これと以下との間も一時かなり開く。
そして三角手前、チュウオーマイピヤが前の二騎に寄せる、これで前3頭、開いて後続の隊形に。3コーナーを回るあたりではカミケンマックに鞭が入る。外からチュウオーマイピヤが差を詰める。それ以降の各馬も接近。そしてこの三分三厘、ドンケツから隊列の大外をグイグイと、ホーエイミラクルが捲り気味に上昇。
テイケイミチカヒメ、先頭で四角を回るも、コーナリングの口向きが非常に悪く、馬体は直線に差し掛かっていながら、馬はまだ外を目指している。が、そんなことお構いなしで抜け出してゴールへと一目散。他方、2番手以下は束の間の混戦。内でカミケンマックが粘り、外に3番手からのチュウオーマイピヤ、中団からユタカオヤシオも接近。そして大外から一気にホーエイミラクル。これら4頭が残り100で一瞬横一線となる。が、そこから伸びるのはホーエイミラクル、止まったのはチュウオーマイピヤ、そしてカミケンマック。
フィニッシュ。確勝体勢で逃げ込むテイケイミチカヒメであったが、ホーエイミラクルの伸びが際立ち、「エッ!逆転?」と一瞬思わせるほど。が、終いは3/4馬身振り切って、テイケイミチカヒメ、高知三冠その1をGet。2着ホーエイミラクル。
3着にはホーエイに連れて終い差し込んだユタカオヤシオ、前とは1馬身半差。カミケンマックは粘れず4着。5着チュウオーマイピヤ。6着ミスターブラウン、7着ミツキノミヤロン、8着チーチーメガミ。

テイケイミチカヒメ(41KB)
ゴール手前、テイケイミチカヒメが逃げ込む
しかし外からホーエイミラクルが肉迫

「花本、ゴール手前で一瞬外を振り返ったでしょう。ホーエイミラクルに気付いて焦っただろうね。慌てて最後ひと追いしてたもん。」とはもりも先生。しかしながらやはり現時点での他馬との地力差は明確、きっちり勝ち切った。地元の事情通のお方によれば、今日は次の瀬戸内賞を見越して、多少余裕残しで仕上げられたとのこと。
ホーエイミラクルの2着は、ワシとしては見込みが的中でやれやれ。もっとジリ脚だと思っていたのでこれはむしろ想像以上の走り。「高知の競馬で殿一気っていうのは、今や名物だからねえ。(デルタフォースやチーチーキングに続いて)この馬がそのキャラの後継者になりきれるかな。」とは、これも事情通のお方のコメント。
ユタカオヤシオは中団から、ちょっと狡っ辛い感の3着。カミケンマックは今日の走りを見るに、やはり気性の勝った短距離先行馬という印象。大本命馬に真っ向先行勝負を挑んだ愚直さは認めてあげよう。
ホーエイミラクルは3番人気、ユタカオヤシオでも4番人気、2番人気のカミケンマックが4着止まりだったものの、2着以下もそれほどの波乱ではなかったわけだ。
優勝レイがないからか、南国桜花賞に続き、今回も馬場での口取り撮影はなし。表彰式は辛うじて行われたが、勝利騎手である花本さんは最終レースに騎乗があるため、インタビューも割愛で、残念。

おしまいはトホホ話
ともあれテイケイミチカヒメ、今日の結果を弾みとして、瀬戸内賞、頑張って貰おうか。今年の瀬戸内賞はなかなかに豪華なメンバー、その中に入ると地味なきらいは否めぬが、それが不服であるならば、アッと言わせて見せなさい。

などと思いつつ、この日の現場観戦を終えたのであるが、数日後、とんでもない事実が明らかになる。テイケイミチカヒメ、そもそも瀬戸内賞への出走資格を有していなかったという(中央補助馬じゃなかったとでもいうのか?)ではないか。全くもって訳の分からぬオチでもって、この話題はプッツン終了、の巻・・・
かくなる上は、「目指せ、南国優駿、そして三冠!」とでも言っておくしかないな。

2002.5.29 記

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