セイユウ記念 第15回アラブグランプリ観戦報告

 2002.7.2、金沢、2100m

はじめに
今年のセイユウ記念も、昨年と同様金沢にて、金沢七大競走であるアラブグランプリにその名を冠して施行される。そして施行時期も、昨年と同じくこの梅雨時。結局また福山タマツバキ記念から1月強と、年にただ二つの古馬全国交流がここに固まってしまう、詰まった日程となった。このあたりの問題点や不満は、昨年のセイユウ記念観戦記にて記したので、今回重ねては書かない。それにしても、年度の後半に古馬全国交流の存在しないというスケジュールの不均衡、何とも困ったものである。

出走馬について
ということで今回の出走馬は以下の通り、フルゲート12頭。()内は騎手、所属地区、斤量。
フジナミスペシャル(嬉、福山、56k)、エステイヒーロー(山本、金沢、56k)、ワシュウジョージ(小牧太、兵庫、55k)、スーパーベルガー(蔵重、金沢、54k)、ベストイチ(吉原、金沢、55k)、アラブドラゴン(端、金沢、56k)、ペルターブレーブ(関本秀、上山、55k)、ホーエチャンピオン(山中、金沢、55k)、ミスターナタリー(北村、佐賀、56k)、サクセスフレンド(中川、金沢、56k)、マリンレオ(宇都、名古屋、55k)、チーチーキング(北野、高知、56k)
馬齢重量戦かと。4、5歳馬は56k、6歳以上は55k。紅一点スーパーベルガーはそれより2k減の54k。
地元馬6頭に他地区馬6頭。他地区馬のうち5頭は、タマツバキ記念の1着馬から5着馬が丸ごと登場してのものであり、いずれも前走がタマツバキで、それ以来の出走となる。
全国交流に登場する馬たちは当然強豪であり、大舞台でもそれなりの成績をおさめ得る馬ばかり、実際タマツバキ記念がそうであった。よって全国交流の日程が詰まれば、故障など余程のことがない限り、引き続いて狙ってこよう。逆に言えば、顔を見せるメンバーが固定してしまうわけで、他の馬、特に交流の常連と同一地区のライバルの、付け入る隙がなかなかない。このあたり、古馬全国交流の日程が接近することにおける、最大の問題点だと思われるのだが。

当日の概況
梅雨時の北陸地方のこと、好天は期待できない。当日を前に、スッキリしない空模様が続いた。それでもどうにかこうにか当日の予報は、雨のちくもりまで持ち直す。朝の時点で関西は既に雨が上がり、曇天。特急サンダーバードで金沢に向かう、その車窓の景色、福井県内までは雨が上がっていたが、加賀温泉あたりで怪しくなる。到着した金沢は小雨模様。それでもファンバスで競馬場に着いて、入場する頃には止みそうになっている。
馬場状態は不良。馬場に水が浮く、まさに雨馬場である。概ね先行有利、好位差しも混じるが、これらも勝負所で前に押し上げてのもの、道中中団以降からは届かないようだ。
午後になると雨は上がり、濡れる心配はひとまずなくなった。空模様は明るくなったり暗くなったりを繰り返し、メイン前には雲切れて日が差すほどにまで回復した。

あれやこれや
平日にも拘わらず、かなりの人数のアラブ好きなお知り合いの方々が来場されている。メインレースまでの間、あれこれ予想談義など。
まずもって話題になるのはマリンレオ。「前回(タマツバキ)勝つには勝ったけど、やっぱり輸送で馬体減りしたでしょう。今回もそのあたりは気になりますよね。追われる側として圧倒的に人気背負うことになるだろうけど、全幅の信頼を寄せるに足るかどうかは・・・」と、慎重なのは"東海の好漢"おーたさん。因みに予想紙によると、中間意識的に緩めたようである。「陣営は『金沢は走りやすいコース』として自信を持ってるみたいやけど、ホンマにそうなのかなあ。まあ実際去年2着好走してるけど。」と、この点ちょっと懐疑的なワシ。「そりゃ福山に比べたら全然合うでしょう。」とおーたさん。
昨年は馬場を貸すだけの結果になってしまった地元勢だが、今年の二強は骨がありそう。すなわち5月5日の重賞黒百合賞の1、2着、スーパーベルガーとエステイヒーロー。殊にスーパーベルガーは4歳牝馬ながら、底を見せていない感ありあり。「穴で狙いたいな」くらいに好評価していたのだが・・・蓋を開けてみれば、関万さんをはじめ高く評価している方が非常に多い。のみならず、地元予想紙の大半が、贔屓目があるのは致し方ないが、かなり重いシルシを打っている。「これだけ見込まれると却って気色悪い、逆に買いづらくなってくるなあ。」と環さんやワシ。
エステイヒーローにとっては、距離2100mは長そうだが、渡辺壮騎手鞍上でのバック捲りは脅威で侮りがたい。などと思っていたのだが、その渡辺騎手、第3レースの騎乗の後、体調悪化(例の持病であるとは想像に難くない)で以降の乗り鞍は騎手変更。ということでエステイ騎乗は山本登志彦騎手に。渡辺騎手と比較すると何とも・・・「まあ"消し"の馬が1頭増えたということやね。」と思うワシ。
「今回はフジナミスペシャルの評価が一様に上がっとらん。これ完全な盲点となっとる。ある意味狙い目やで。」とはOku師匠。「距離も合うだろうし。ただね、去年のレースみたいに途中一気にペースが上がって激しくなるような展開になるとツラいだろうな。西日本アラブん時のこともあるし。」とワシ。「ところで何が逃げるのかな?」とおさるさんが問われるので「それは間違いなくサクセスフレンドでしょう。」と返す。「どんな逃げ方するんですか?」「それなりに単騎逃げに持ち込んで走ると思うけど、今季は調子が上がってないから、2周目の三角あたりで捕まるんじゃないかな。フジナミは直付けで行けるでしょう。」「うーん、フジナミとしては早々にヘバられちゃ困るんだよなぁ。また押し出されるように先頭に立たされて目標にされるなあ。」などとやり取り。
「今年も不良馬場ですか。これじゃ時計的にも、また苦しいかな・・・」と、山形シチーさんが馬場を目にして仰る。誰にとって苦しいか、それは勿論、ペルターブレーブ。予想紙に載る陣営のコメントにも「今年は良馬場でやりたいね」とあったが、残念ながらその願いは叶わなかった。ペルターブレーブと同様、鋭い捲り追い込みのチーチーキングにとっても、距離は合おうが雨馬場はツラそう。
「でも何だかんだ、あれこれ考えても、結局マリンレオとワシュウジョージの人気サイドで決着しそうな感じもするよなあ。ワシュウジョージは輸送難とかピークを過ぎたとか言われるけど、福山よりは金沢の方が合いそうだし、距離も問題なく、道悪もいけるもんな。こうなっては面白くないんだけど。」と、誰とはなく。

パドック、そして発走まで
いよいよパドックタイム。梅雨の晴れ間の中、出走馬が登場する。
1番フジナミスペシャル。前走タマツバキ4着。毛艶は上々、張りも問題なし。首でリズムを取ってキビキビと周回。元々パドックでの身のこなしはピンとこず、さほどよく見せないこの馬としては、これは出色の見栄え。全く覇気を表さずタラタラ周回していた前走時とは雲泥の差。歩様は若干硬めだが、概ね常時こんな感じでマイナス材料とはなるまい。
2番エステイヒーロー。黒百合賞2着の後は5月19日戦と6月16日戦で勝利。姿勢はいつもながら高いが、二人曳きでやや鶴首気味になっての周回。パドックではいまいち冴えない馬だが、今日は毛艶も馬体張りもこの馬にしてはいい方かと。ギタバタしたトモの送りだが、以前もこんな感じだったと記憶している。
3番ワシュウジョージ。前走タマツバキ5着。馬体重+6kの448kはこの馬の適正値かと。ちゃんと馬体に実が入っていて張りも充分。気配も極端な焦れ込みや散漫なところもなく、まずまず好感の持てる範囲の気合い乗り。発汗も適度。これまでの遠征競馬の中でも一番の見栄えだと思う。肩の捌きがギクシャクしていなくもないが、これは好調時にも時折見られたこと。
4番スーパーベルガー。黒百合賞優勝の後、6月2日戦を使って(1着)ここへ。実は昨秋来11連勝中でもある。馬体重492kは-5kだが、これは緩んだ前走から戻した値、黒百合賞とは+4k。パンパンの実入り。艶も上々であり踏み込みも力強い。そして非常に落ち着いて周回。ともすれはちょっと太め残りで出てきはしないかと危惧したが、杞憂に終わったようだ。悪くない。ただ環ちゃんは「でもやっぱり黒百合賞の時の方が印象いいな。」と。
5番ベストイチ。昨年のこのレース地元最先着馬(6着)である、が、これは勝負決してからの追い込み。黒百合賞6着以後は3戦3着2回に5着。馬体重506kは-2kだが、なかなか絞れず、陣営も理想と見なす500kを切る値になれない。元来のものではあるが、やっぱりボッテリとした緩い体型。気合いはそれほど明らかには出さない。大型馬なのだが、このメンバーの中に入ると全く大きく見えない。概して平凡か。
6番アラブドラゴン。今年4月まで兵庫の準オープンで走っていた馬。5月の転入緒戦以降A2で2連勝してここに挑戦だが、明らかに格下。馬体重549kの大型馬。確かに体高がかなりあって大柄、見栄えはする。トモの送りも深く、力強い。毛艶も上々。
7番ペルターブレーブ。前走タマツバキ2着。馬体重495kは前走から-1kだが問題ない値かと。その下げ幅よりも前走に比してフォルム、特に腹回りがスッキリシャープに見える。このあたり「ペルターってトモのボリュームあんなもんだったっけ?」と環ちゃんは気になったよう。毛艶はかなりいい方ではないか。踏み込みもまずまず。適度に気合いも滲ませて、首でリズムを取っての歩み。個人的には今日のペルターは悪くないと思った。
8番ホーエチャンピオン。笠松所属で出走し4着だった昨年に続き、今年も同レースに登場。黒百合賞4着の後はA1で連続2着と、上昇傾向が窺われるが、この距離は得手とは言い難い。歳はとったが相変わらず充分に張った馬体。歩様は若干固いが力強くこの馬なりか。馬体重514kは前走比-5kだが問題ない。ただ、リアルタイムでの印象としては、思ったより大きく見せないなあ、と。
9番ミスターナタリー。全国交流初登場となる。群雄割拠の佐賀古馬オープンにあって、常に上位で闘っている馬。ではあるが、その筆頭でもなく、重賞未勝利。前々走5月5日の九州アラブ王冠賞は2着、前走4着。差し馬なのだが、いい脚を一局面しか使えないため、なかなか勝利にありつけない。ワシがこの馬を地元佐賀で目撃する際には、いつも悍性を迸らせたパドックなのだが、それに比べれば今日はじんわりとした気合い乗り。毛艶もなかなかで馬体張りもある。口から泡を吹いているのはこの馬らしい。
10番サクセスフレンド。昨年の金沢アラブ系年度代表馬だが、今季はまだまだ調子が出てきていない。黒百合賞7着の後は3戦して2着5着4着。馬体重-2kの472k、今季開幕以降、明らかに重めだった馬体がようやく適正値に落ちてきた感じ。ではあるのだが、その馬体はまだ緩そうでスカッとしたところがない。毛艶はソコソコ、キビキビとは歩いているが。
そして11番がマリンレオ。言わずと知れた前走タマツバキの勝者。昨年のこのレース2着惜敗の後、1年間負けなしの11連勝で乗り込んできた。馬体重は+9kの466k、これは輸送で減った前走から地元戦での適正値に戻した数字。胴の輪郭は心持ち緩い感じがしなくもないがこんなものかも。毛艶とまあまあ、絶好でもないが馬体張りも良く問題ない。ゆったりのんびりと、かつしっかり歩いている。輸送による出来落ちはなさそう、力は出せるのでは。
12番チーチーキング。前走タマツバキ3着。馬体重-3kの438k、気になる下げ幅でもなかろう。細身の馬だが胴の実入りはこの馬なりに充分。やや煩めだがこれは彼の個性、いい活気と取れよう。発汗も適度、気になる程ではない。
かなり蒸し暑い中でのパドック周回であったが、無茶無茶な発汗の馬はいない。時としてかなり汗を流すワシュウジョージやチーチーキング、エステイヒーローあたりでも、周回を重ねるにつれてその頻度は増しこそすれ、常識に収まる範囲のものである。
「止まーれー」の声が。騎乗命令が掛かる。ここでペルターブレーブは首を突き出し「ガルル」とばかりに武者震い。ガチャガチャとなる。チーチーキングは北野騎手が跨るとさらに気合いを前面に押し出す。
フジナミスペシャル(50KB)
フジナミスペシャル、パドック入場時
珍しく絶好の馬体
スーパーベルガー(42KB)
スーパーベルガー、パドック入場時
今日もエエ感じ、人気してるのがどうか?

本馬場入場。外ラチ沿いに曳かれて、スタンド中程あたりまで歩むのが金沢の流儀の中、ワシュウジョージは昨年と同様、さっさと登場し、早々に手綱を放されて、ゴール板前あたりから一角方向にヒュッと駆け出す。ホーエチャンピオンは珍しく今日は入場口から駆け出しはせず、他馬と同様に曳かれて登場。順次手綱を放される各馬、最後にスーパーベルガーが腰を上げる。
返し馬。マリンレオは早めにスタンド前にやって来る。やや強めのキャンター、タマツバキ時よりはリラックスしているか。ペルターブレーブはピッチを上げた強めの走り。フジナミスペシャルやホーエチャンピオン、スーパーベルガーあたりはやや強め。ミスターナタリーは相当気合いの入った力強い駆けり。サクセスフレンドは楽走。チーチーキングも小気味よく力強く。
マリンレオ、返し馬(41KB)
マリンレオ、返し馬
今日はリラックス
ペルターブレーブ、返し馬(39KB)
ペルターブレーブ、返し馬
スピード馬場、逆境を跳ね返したい

「フジナミスペシャルの気配が絶好、目立つ」との声が多い。地元おさるさんをして「あそこまでパドックで良く見せたフジナミってこれまでなかったんじゃないか。」と言わしめる。「バカに良く見える。」と、故大川さんよろしくOku師匠も。ワシも同感ではある。が「ただこの馬、戦前の気配と走りが連動しないように思えるのよね。」と。
おーたさんのマリンレオ評に耳を傾ける。「馬格はこんな感じで問題ないとは思うけれど、騎手を乗せてから、グンと首が沈んで鞍上を振り落としそうになるっていう、気合いが乗った、いつもの身のこなしが今日はなかったんだよね。あれでどうだろう。輸送を完全克服したかはちょっと不安は残るかも。」といった旨の私見を述べられた。
個人的にやっぱり気になるのはペルターブレーブのこと。となれば必聴は山形さんの感想。「ソコソコの気配で(パドック)回ってたのに、秀乗せる最後の最後で欠伸かましやがって・・・あれやらかすと駄目なんですよ。それに去年(のこのレース時)と同じように、に左トモの踏み込みがやっぱり浅かったでしょう。去年よりはましだけれど前走よりは落ちるってところでしょうか。スピード勝負もツラいしなあ。」と。「ペルター、秋の時から比べて、思ったより白くなってないですね。」とは、昨秋の奥の細道大賞典に続いて、ペルターを追っかけて遠征やらかしたラテちゃん。マタマタホンマニヨウヤリマスネ・・・

予想。展開としては、昨年と同様、平均ペースの楽な流れにはなるまいと思う。向こう流しのどこかで好位勢が一気に動きそう。という見込みのもと、買うのであれば、マリンレオ、ワシュウジョージ、スーパーベルガー、人気サイドの組み合わせとなる。フジナミは距離は合おうが流れ的に向かなそうなので、当初は切ろうと思ったのだが、見栄えに負けてこれも加える。そしてやっぱり、初志貫徹でペルターブレーブを。ペルターからはこれがアタマの馬単も。買い目が多くなり、おまけに締め切り時間が迫っていたので、一体どういう組み合わせで何点買ったか、結局判らなくなってしまった。「俺もや。何故か妙に焦った。」と環ちゃんも。

レースなり〜2002古馬頂上決戦、第2ラウンド!
いよいよレース。距離2100mの発走地点は2コーナーのポケット。
ゲートが開く。外からマリンレオが好発、そしてスッと控える。大外チーチーキングはちゃんと出て位置を下げる。ワシュウジョージやペルターブレーブの出も良い。「(ペルター)いつもに増していい出だなあ。」と山形さんも口に出す。ワシュウはそのまま先団キープに。1枠からフジナミスペシャルが並の出からダッシュ。二の脚を使い一旦はハナに立つ。が、外からサクセスフレンドも当然前へ。3コーナー手前で、こちらがハナを奪って、フジナミは2番手に。ここでスーパーベルガーがフジナミの直後外にピッタリと。ワシュウジョージは4番手に、直後にマリンレオが続く。
正面スタンド前。先頭サクセスフレンド、3、4馬身以上は後続を離し、単騎逃げ。2番手にフジナミスペシャル。嬉騎手は上体を前傾させて折り合いをつけている、彼らしい騎乗。2馬身弱開いて3番手にスーパーベルガーが単走。ややあって以降が好位集団。この真ん中、半馬身ほど先んじてワシュウジョージ、この馬にしてはやや前付けか。その直後外にマリンレオ、内にエステイヒーロー。エステイのさらにイン、内ラチ沿いギリギリのところにアラブドラゴンが。ペルターブレーブはワシュウの直後、後ろ過ぎない好位置キープかと。この集団の直後にホーエチャンピオンが単騎追走。以降やや切れて、内ベストイチ外ミスターナタリーが併走で、直後に最後方チーチーキング、これらは見込み通りの後方待機策。

1周目(34KB)
1周目、正面スタンド前
先頭サクセス2番手フジナミ、3番手ベルガーのピンクメンコが鮮やか

各馬の並びとその間隔は概ね崩れず、1、2コーナー、そして向こう正面へとレースは進行する。サクセスフレンドのリードも相変わらず4馬身くらい。「昨年に比して有力どころの仕掛けが遅いかなあ。」などと思いつつ、バック前半の模様を眺める。「どうもお互い(殊にマリンレオvsワシュウ)牽制しあってって感じだったねえ。」とおーたさんが後述した局面。
向こう正面半ばあたり、レースが動く。「あ!ワシュウ動いた。」と環ちゃんと確認し合う。外から連れてマリンレオも。2頭併走で前へ一気(このあたり、後に『競馬エース』のHPに掲載された、マリンレオ鞍上宇都騎手のコメントによれば、「ワシュウがそれほど手ごたえがあるようには見えなかったので、自力で先に動いていった。」そうだが、リアルタイムではワシュウの仕掛けが目立った次第。)。
そして三角手前、先行するフジナミやベルガーの直後まで迫る。このあたりで先頭サクセスフレンドの脚が鈍り、インで後退。これでフジナミスペシャルが押し出される。が「さあここからどうする?」と思う間もなく、外からスーパーベルガーがスパート。フジナミに猶予を与えず、交わし去って敢然と先頭に立つ。ここへワシュウジョージとマリンレオが内外併走で急接近。三角の時点でマリンレオが早々にワシュウジョージに先んじる。このあたり、内のワシュウに比して外のマリンレオの馬体が妙に大きく映る。
三分三厘、逃げるスーパーベルガー、フジナミスペシャルもタレたわけではないので2番手内でこれを追撃。ここへ外からマリンレオがドッと。鞍上宇都に押されて前を射程圏内に捉えんと。ワシュウジョージはマリンレオに遅れた。ワシュウの直後にはペルターブレーブが接近している。今日はそれほど後手を踏んでいない、まだまだ目があるか。ペルターの直後にはホーエチャンピオン、しかしこれは次第に離されていく。
そして最後の直線。スーパーベルガー、インコースをゴールめがけてひた走る。脚は上がっていない。最終コーナーを回ったあたりで、マリンレオとの差は3、4馬身か。そして追うはマリンレオ。スパッとは差は縮まらない。しかしジワジワと、確実にベルガーを追い詰めていく。フジナミスペシャルは自分なりの脚勢キープで一杯。ワシュウジョージは4番手、馬場外目を追われるが伸び脚がない。この外へペルターブレーブが馬体を併せる。そしてワシュウの前へ出るも・・・
決着。残り100あたり、遂にマリンレオがスーパーベルガーに並びかける。そしてここからジリジリと交わし去って先頭に。勝負あった。が、圧巻はここから。残りの50m、これまでの脚に輪をかけて加速し、ブン!とばかりにベルガーを、それこそエゲツないほど突き放す。最後は着差2馬身だったようだが、印象としては完璧完勝で、古馬全国交流連取のゴールに飛び込んだ。タイム2分15秒0、前年のこのレースでワシュウジョージが出したレコードを、更にコンマ5縮めて見せた。

マリンレオ、ゴールへ(44KB)
マリンレオ、スーパーベルガーを交わしてゴールへ
シャッター切るのが早過ぎて、引き付けが甘い、駄目だな写真

2着スーパーベルガー。終いまでしっかりした脚で見事に走り切った。3着はインコース粘走フジナミスペシャル、ベルガーとは3馬身差。最後外から迫ったペルターブレーブだったが、フジナミをクビ差交わせず4着。ワシュウジョージは遂に末脚を繰り出せず5着に終わる。チーチーキングはほとんど最後の直線だけで追い込んだようで6着だが、これは現場での記憶は皆無。エステイヒーローは前半好位付けも勝負所で脱落といった感7着。ホーエチャンピオンの寄せも三角だけだったようで8着。9着後方ママのミスターナタリー。10着逃げて沈んだサクセスフレンド。ブービーベストイチ、最下位アラブドラゴン。

振り返る
マリンレオ、まさに仁王立ち。「スーパーベルガー交わすのに手こずったように見せかけておいて、何で終いあんなに突き放せるんだ?信じられんな。」と、この走りには皆さん一様にあんぐり。前走タマツバキでは、慣れぬ遠征競馬に得手とは言い難い深馬場の中、接戦を制したということで「よく勝てたな、やっぱり強い。」といった意味合いでの賞賛の念を抱いたのだが、今回のこの走りに関しては「こんな勝ち方されたらどないもこないもあるかいや。恐ろしすぎる・・・」といったところなのである。「問題は今後でしょう。名古屋杯の時点で賞金別定のハンデ57kだったからねえ。これに全国交流連取の賞金が加算されて、地元のアラブ戦じゃあかなり斤量キツくなって使うところが・・・サラのレースに出るってのもあるけど、平場限定で重賞は無理らしいし。当分は休養させるでしょうけど。」とはおーたさん。この"アラブ界の至宝"に今後更に上を目指させる余地はないものか、勿体ない・・・
勝者と同等に賞賛するに値するは2着スーパーベルガー。大舞台でのキャリアも浅い4歳牝馬が、ここでこれだけの走り、それも自らが勝負に打って出るレースをして終いまでバテずに走り切ったこの事実、その潜在能力は底知れない。「連勝で初の全国交流に、秘密兵器的待遇で臨んで2着。去年のマリンレオみたいだよね。同じレオグリングリン産駒だし。この後どうなるんだろ。マリンレオみたいにバケモノ級になるのかな。」とおーたさん、地元東海の怪物に重なるものを彼女に見出したか。「うわ!しまったなあ。もっと信用しとくべきだった。」とは環ちゃん。なまじ黒百合賞で目にしていただけに・・・「これ今年ばかりは全日本アラブクイーンカップやって欲しいよな。ホマレエリートやドリーミングあたりと対決観たいで。」とOku師匠。
フジナミスペシャルは今回もペースを我がものに出来ず泣いた。三角先頭の直後、ベルガーに一気に勝負賭けられて交わされたあたり、ちょっと差が出てしまった感じ。終いまでこの馬なりにバテずに走っているだけに、尚更あの局面が浮き上がる。ただ福山勢として同じ3着ながら、昨年のパッピーの闘志溢れる走りには、印象としては負けるかなあ。
ペルターブレーブにはやはりこの馬場状態は向かなかったか。昨年よりは勝負所で置かれず差を詰めていたことで、着順を一つ上げて4着になれたとも。しかし前の馬に止まらず走り切られては逆転は叶わぬわけで。上がりの時計はマリンレオ(3ハロン37秒1)、ベルガー(同37秒7)に次ぐ3番目(同37秒8)だったようだが。
ワシュウジョージは全く案外の走りで完敗。「前付け過ぎて失敗。」は言い訳になるまい。「鞍上の感覚を類推するに、去年と同じ様なタイミングで仕掛けているつもりが、馬が思ったより応えてくれず、またライバルが更に強くなっていたってところなんじゃないかなあ。」と、皆さんで振り返った。二千超のレースで、終い脚が鈍り、直線後ろの馬に交わされるワシュウなど、これまでなかったこと。やはり盛りを越えつつあるのか、それとも歴戦の疲労が出てきているのか。それにしても今回のレースでのワシュウジョージvsマリンレオ、頂点を降りつつある者と、いまその絶頂にある者の陰影が、残酷なほど鮮明に、浮かび上がった体裁となった。
チーチーキング、この馬場このペースでは、追い込み競馬は無理があったろう。
エステイヒーローは道中意外なほどすんなりと好位付け、逆に一気に脚を使う局面を遂に作れなかった。レオやワシュウらを相手に、その仕掛けが通じぬ線は濃厚ではあったろうが、それでもトライして欲しかった。やはり鞍上・・・
ホーエチャンピオンはこれで一杯か。加齢につれ長いレースへの適応力が目に見えて落ちているだけに致し方ないか。
ミスターナタリーは何だか思いっ切りブタれた感じ。この経験が地元戦でプラスとなってくれれば。"神出鬼没"のあの御仁(今日も現場にちゃっかりいらっしゃった)にとっては、残念だったでしょうか。
サクセスフレンド、道中はこの馬なりの逃げだったと思う。もっと良化した状態で臨められたら、もう少し骨のあるところを見せられたか。

おしまい
「何はともあれ、今回はエエもん観させてもらいましたわ。」と、纏めはOku師匠のオコトバ。仰る通り、今年のMyベストレース、間違いなくその有力候補である。
大一番は終わった。問題は今後。向こう半年以上、古馬全国交流の存在しない、この物足りなさをどうすればいい?そしてマリンレオ、彼は次に何を目指せばいい?
「アラブの王者に活躍の場を!アラブの亡者に更なるワクワク感を!」
言いたいことは、つまり、
アラブに愛を――

2002.7.16 記

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