第31回中京スポーツ賞観戦報告

 2002.9.22、金沢、2100m

はじめに〜秋重賞?夏重賞?中途半端な大レース
今回観戦したのは金沢の中京スポーツ賞。金沢のアラブ系古馬重賞としては、金沢七大重賞に含まれる北國アラブチャンピオンとアラブグランプリに次ぎ、黒百合賞や石川テレビ杯と同等の格を有するレースである。距離2100m、1着賞金400万円、大したものである。
が、この競走、黒百合賞や石川テレビ杯、農協牛乳杯に比べて、明らかに地味。その最大の要因は施行時期か。真夏の競馬が終わるか終わらぬかといった、9月初頭に行われるのが通例だったが、これがまた、夏場を休んだ馬が始動するには早過ぎ、使われ続けた馬達はバテバテという、何とも中途半端な時期なのである。11月の石川TV杯から12月の北國アラチャンと続く、秋競馬のクライマックスには間がかなりあり、繋がりにくいとも思われるし。事実、過去4年の勝ち馬、ダイリンフラワ、マルイシヒーロー、ホーエイショウハイ、アイカンセンプーは、いずれも7月の農協牛乳杯に続き重賞連取で勝利するも、秋の本シーズンには主役となれなかった。
というように、秋競馬緒戦のレースというよりは、夏競馬駄目押し競走といった具合に認識した方が妥当な重賞である。ただ今年は、昨年から日程が3週間、1開催繰り下がった。これが情勢にどう影響を及ぼすかは、若干気になるところである。

当日の概況
先週末同様、この週末も三連休である。が、天気の方が今一つスッキリしない。日本列島が太平洋沖の熱帯低気圧と日本海上の前線に挟まれた体裁になっているが故のことらしい。事前の予報は曇りとのことだが、空模様を気にしつつ、金沢に向かう。例によってサンダーバード7号。
競馬場には正午前に到着。天候曇り。雲は厚くなったり薄くなったりするものの、切れて晴れ間が大きくのぞくことはない。風は結構強い。時折風が雨粒が運んでくる。充分涼しく、薄着では肌寒い。
馬場状態は良の発表。しかし見た目には乾き切ってはいないようで、表面には少々湿り気を残している感じ。砂埃もあまり立たない。
確実に先行有利な傾向。道中先団で進めて、三分三厘ではフロントを窺う位置にきていないと勝てない。余程の地力上位であるか強い差しプロパーな馬でないと後ろからでは届かない。

メインレースまで〜その他のアラブ競走
第4レースは2歳1組戦。距離1400m。ここに当地の現2歳トップ、デビュー以来3戦全勝のダイスノーブルが登場。農協牛乳杯の日が初戦でこれは目撃した覚えがある。トチノグレイスの半弟。対抗格は5戦4勝の牝馬ユキノエイコウ。唯一の黒星はダイスノーブルに喫してのもの。
そのレース、件のダイスノーブルは、スタートはイマイチだったものの、程なく余裕でハナに立つ。外から4頭ほどが前を狙って横一線で追走するも、1、2馬身ほど抜け出して、抑えたままの手綱加減で進むダイス。そこへ後方から、バック一杯を使って捲り上がったユキノエイコウが迫り、4コーナーで2頭馬体が合う。が、ここでユキノエイコウが外にヨレてロス。一方ダイスノーブルは手綱をしごかれ気合いを付けられるとスッと伸びてこれで勝利。2着1馬身差でユキノエイコウ。
ダイスノーブル、今は逃げて勝っているが、走りっぷりからは脚質に幅の出る余地を感じる。馬体重535kの大型馬で見映えは充分、雰囲気はありそう。父キタジマオーは気になるが(←ルックスはイイが成長力と底力が疑問)。ユキノエイコウは発馬が悪いらしく当初から差し・追い込みの競馬をしている。この馬、福山の現3歳サンコーアイボの半妹。気の悪さは兄と同じか?馬体重420k、ちょっとギスギスした馬体は脚質も相まってダイリンフラワがダブるか。

ダイスノーブル(34KB)
ダイスノーブル、楽勝でゴールへ
最後の直線も手綱を全く抑え加減。どこまで成長するか?

続く第5レースはC2の1組戦、トパーズ特別。距離1500m。注目は3歳馬チャンピオンマサル。上山所属だったのだが、8月16日、日本海記念の日の第7競走、B級優勝戦4着を最後に金沢へ。そして今回、当地緒戦となる。あのホーエチャンピオンの全弟であるからして、注目度も高いようだ。
レースでは願ったりのハナ奪取。内の3番コズミックレイが併走気味で、外から3頭直後に並んで追走するも、早々にペースはスローに落ち着いた。バックではチャンピオンとコズミックレイが3番手以下を大きく離しての逃げとなった。そして三分三厘、追い出されると伸びてコズミックレイを突き放す。独走になって逃げ切り勝利。2着もコズミックレイが2番手ママで入線し、「行った行った」の競馬となった。
チャンピオンマサルにとっては、競り合いのない楽逃げという絶好の流れになった感じ。クラス上がってどうなってくるか。3歳重賞アラブ大賞典には、ちょっと間に合わないかなあ。

中京スポーツ賞、出走馬について
さてメインレースの中京スポーツ賞。出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手、性齢、斤量。
サクセスフレンド(中川、牡4、56k)、ベストイチ(吉原、牡6、54k)、スーパーベルガー(蔵重、牝4、54k)、ロックウイット(長嶋、牡4、53k)、モトケンホマレ(米倉、牝4、52k)、ホーエチャンピオン(山中、牡7、54k)、キミノミネフジ(古性、牡6、54k)、コーワゴールド(五十嵐、牡4、53k)、ニシノリュウジン(熊木、牝5、53k)、アラブドラゴン(端、牡5、54k)
別定重量戦。牝馬3頭。

エステイヒーローとダイリンフラワの姿のないのは残念だが、まずまずのメンバーであろう。ただ、金沢のオープン一線級の面々も、今年はちょっと変化に乏しいような。数年来続いた、他地区からの大物転入も、昨年のホーエチャンピオン(サクセスフレンドは金沢で開花したと見るので除外)を最後に、その流れが治まり、今季はそれがないのも一因か。まあ、それらの旧所属地は岩手や北関東といった、ここ数年内にアラブ系を廃止した地区である場合が多く、いい加減大物の底も尽きたということだろう。
注目はスーパーベルガー。今や全国最強アラブの1頭であり、相手は全て勝負付けの済んだ馬ばかり。馬自身に特段の出来落ちもないとあっては、不動の本命は当然のこと。注目は勝ち方、その走りだけか。7月以降調子を上げてきたサクセスフレンドと、勝ち切れぬものの安定はしているホーエチャンピオンがこれに続こうが、逆転の目は考えにくい。

パドックから発走まで
さてパドック。
1番サクセスフレンド。筋肉の締まりが感じられる馬体。キビキビとした身のこなしでしっかり踏み込んでいる。次第に鞍下の発汗が目立ってくる。農協牛乳杯2着の後も不休で使われ2連勝、前走はスーパーベルガーの2着。
2番ベストイチ。馬体重493k、夏を越して馬体がやっと絞れてきた。ボテッとした体型は元来のものなれど、非常にスカッとした感じになった。トモの踏み込みが浅いのは常時こんなもの。農協牛乳杯7着の後は5着3着6着。
3番がスーパーベルガー。例によってゆったり周回。馬体はいつも通りパンと張っているし、踏み込みもしっかりとしたもの。馬体重498kは前走比-1kで農協牛乳杯とは+1k、全く安定している。やや余裕のある仕上げの感がなくもないがそれも可だろう。農協牛乳杯の後は2開催スキップして前開催の前走は千九戦1着。逃げるサクセスフレンドに道中直付けの2番手から、三分三厘早々に抜け出した。サクセスフレンドにとってはもう「お手上げ」状態。
4番ロックウイット。非常にシャープに作ってきたという第一印象。歩様はちょっと硬いか。しかし歩幅は出ている。体表からジワッと発汗。農協牛乳杯は11着。適鞍のA2に戻り前々走4着、前走前開催のA2戦を勝利。
5番モトケンホマレ。毛艶はソコソコ、あまり冴える方ではない。腹回りが太くて重い体型。踏み込みはちょっと浅いか。夏場は4開催休み短期放牧に出されていた模様。復帰戦の前走、前開催のA1戦をベルガーの3着に好走。これが効いたか、今日は微妙な穴人気。
6番ホーエチャンピオン。この馬としても今日はいつもに増してキビキビとした身のこなし。毛艶と馬体張りも文句のないもの。肩もトモも出が浅いのはこんなもんか。農協牛乳杯3着の後は1開催休み、前々走をサクセスフレンドの僅差2着、しかし前走は4着。
7番キミノミネフジ。いつも通りゆったりと周回。馬体重530k通り大柄、今日は筋肉の付きが目立つ。肩の出は硬いか。農協牛乳杯10着の後は4着8着9着。この夏は不振。
8番コーワゴールド。3開催前の前々走と2開催前の前走を共にA2で2着1着し、ここへ挑戦してきた。ワシはお初。馬体重491kと馬格はあるがスッキリした馬体に見える。トモの力感は今一つだが、踏み込みは深い。
9番ニシノリュウジン。キビキビと歩いている方かと。馬体の艶と張りはある。肩の動きが硬い。農協牛乳杯は8着、ここ2走はA2に落ちて4着2着。上がり目は正直薄いか。
10番アラブドラゴン。馬体重540kの数字通り、やはり大柄。のんびりゆったりした周回気配で、歩幅はとて大股、トモの踏み込みの深さが目立つ。馬体張りも充分。農協牛乳杯6着の後2開催休み、前走は前開催のA1で5着。

本馬場入場から返し馬。各馬外ラチ沿いを厩務員さんに曳かれて整然と入場する中、ホーエチャンピオンは早々に曳き綱を離され、馬場の真ん中を1頭ダクにて入場。スーパーベルガーは今回も最後に曳き綱を離されて駆け出す。
多くの馬は馬場を順回りに流して4コーナーの待機所に直行。ホーエチャンピオンがごく軽くキャンターでホームを流す。ここで鞍上山中騎手に、若い女の子から声援が飛ぶ。「はあ〜?」とばかりにそちらを凝視する山中さん。そのホーエを追う形で、サクセスフレンドも内ラチ沿いをじっくりごく軽く返し馬。この鞍上の中川騎手が、前の山中騎手の姿を笑って見ていた。最後にアラブドラゴンがキャンターで通過。

予想。スーパーベルガーのアタマは鉄板。相手もサクセスフレンドで間違いないところ。ホーエチャンピオンの取捨が問題だが、距離二千を越えるとガクッと戦闘力の落ちるこの馬が、ここで現状のサクセスフレンドに逆転できるとは到底思われず、買わない。因みに某予想紙が「距離延長を見方に」などと書いていたが、正直「いつまでそんなこと言っとるねん!いい加減学習しろよ。」と思う。
ということで、ベルガー−サクセスの一点買い。連単だけでいいと思うのだが、弱気に投資金額の半分は連複で買う。問題は券種。ワシは枠複と馬単で。馬の選択より券種の選択の方が重大事項であるという、これが。

レースなり
さてレース。距離2100mのスタート地点は2コーナーのポケット。
ゲートが開く。内でベストイチがやや出遅れたが、これが後方待機の馬なのでそのまま殿追走に。サクセスフレンドが並の出からやはり前へ、単騎ハナに。2番手には早くもスーパーベルガーが、サクセスフレンドとは2馬身程度間隔を置いて陣取る。ベルガーの外にロックウイットが続き、ややあってホーエチャンピオンは4番手。内にモトケンホマレが。ここまでが先団・好位で、以降は中団以下。アラブドラゴン、キミノミネフジ、ベストイチ、コーワゴールド、ニシノリュウジンという順番で、最初の向こう正面から3コーナーあたりまで通過していく。
そして正面スタンド前。先頭は引き続きサクセスフレンド、全くマイペースな逃げ。外2馬身強下がって、2番手もスーパーベルガーのまま。折り合いに問題はない。ホーエチャンピオンが4コーナー以降3番手に上がる。ベルガーの2、3馬身後方を単走。やや切れて4番手にロックウイット、モトケンホマレ、アラブドラゴン以下後方勢といった並び。

1周目(37KB)
1周目、正面スタンド前
先頭サクセス2番手ベルガー3番手ホーエ、と、人気3頭が揃って前を取っての競馬

1、2コーナーから向こう流し、一時はサクセスフレンドとスーパーベルガーの差は、3馬身強に広がる。そしてベルガーとホーエとの間隔もそれくらいに。そしてホーエとそれ以下が更に開き、人気3頭の競馬といった感ありありのシーンが展開される。
しかしながらそれもバック半ばまでのこと。3コーナーを前に、前2頭とホーエチャンピオンとの差はドカッと開いてしまい、ホーエは勝負から脱落。その差は15馬身はあろうかというまでに広がってしまう。
三分三厘、逃げるサクセスフレンドに、外からスーパーベルガーがいよいよ並びかけてくる。サクセスの中川騎手の手綱は押し気味、一方ベルガーの蔵重騎手のそれは余裕充分。4コーナーまで暫し併走となったが、蔵重騎手にちょっと気合いを付けられると、スッと前に出るスーパーベルガー。これで勝負あり。最後の直線は流すが如き楽走、残り20では、蔵重騎手、股の間から後続を覗き込んで振り返る余裕まで見せ、地元A級重賞3勝目のゴールに飛び込んだ。
タイム2分17秒2。昨年のセイユウ記念でワシュウジョージが破るまで、長くレコードだったタイムが2分17秒0なので、地元戦としてもかなりの時計であろう。過去5年のこのレースの勝ち時計と比しても、断然速い。
スーパーベルガー(34KB)
スーパーベルガー、圧勝のゴール前
全く楽走、これでもレースのG前
サクセスフレンド(36KB)
2着サクセスフレンド、続いて入線
相手が強すぎるぅ・・・

2着はサクセスフレンドが、ベルガーに交わされた後もしっかり走り切って死守。しかしその着差は8馬身、1秒7差。モトケンホマレが好位から最後の直線差し込んで、サクセスに1馬身半差まで迫る3着。4着ベストイチと5着アラブドラゴンはレースの後半腰を上げての追い込み。この2頭によって、ホーエチャンピオンは4コーナーを3番手で回るも、掲示板を死守出来ず6着に落ちた。以下、コーワゴールド、ロックウイット、ニシノリュウジン、キミノミネフジ。

振り返って、そしておしまい
スーパーベルガー、文句なし。この馬、本質は先行馬であるということがはっきり出たと思う。距離もこれくらいあった方が、走りにより安定感が出る。「今日はただただコースを1周半してきただけ」こう安直に記せば怒られそうだが、そんな何の苦もない、段違いの強さであった。
サクセスフレンドは好調ぶりも感じられたし、距離二千超も現状では何ら問題ない。しかし相手が悪過ぎる。不動の本命馬に直付けされて道中散々可愛がられたらたまったもんじゃない。サクセスくん自身「ベルガーさんさえいなければ、俺の天下なのになあ・・・」って、きっと思ってるだろう。
モトケンホマレは地力強化と成長を知らしむる3着。あのダイリンフラワとは同厩で同い年。現状ではこっちの方が上か?そしてスーパーベルガーと同じくレオグリングリン産駒。レオの仔は成長するなあ。
ベストイチとアラブドラゴンは勝負の流れとは無関係の追い込みでの4、5着。こくらいの着順にはなれようが、勝ち負けには遠い。
ホーエチャンピオン、道中の位置取りとその進行は勝つ気満々、積極的なものだった。が、勝負所を迎える前に脱落。御す側の意気込みと狙いに叶うほどの距離適性と地力が、もう残っていないというのがひしひしと感じられてしまって、ちょっと悲しいものがあった。

配当、枠複200円馬複220円枠単220円馬単210円。選んだ券種が吉と出てやれやれのワシ。しかしながら連複と連単で配当に差が全くないいう、ホンマにアタマ鉄板なレースであったというわけだ。

さて、この後の秋競馬。主役はスーパーベルガーとなろうが、果たして、そうすんなりいくかどうか。冒頭に記した通り、近年の金沢競馬、夏競馬と秋競馬で、主役は交代する傾向が強いからして。などと書くと、
「ワタシを誰だと思ってるの?ワタシを負かしたあのオカタを、全国交流で倒すまでは、この先一つも負けるつもりはないからね。」
とばかりに反撃されそうだ。彼女なら、ホンマにそう思っていそうであるからして、実にオソロシイ。

2002.9.29 記

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