第35回福山菊花賞観戦報告

 2002.11.17、福山、2250m

はじめに、そして出走馬について
福山競馬、秋恒例の一戦、福山菊花賞。春の桜花賞と並ぶ、伝統の距離2250m戦、古馬A1重賞である。正月開催に施行される、福山競馬最大の決戦、福山大賞典に向けて、古馬一線級各馬の力関係、充実度をみる上でも、重要なレースである。
大賞典を射程に入れつつも、菊花賞の結果の行方を占うという点では、夏を不休で乗り切って秋競馬に突入した面々と、夏競馬を休んで秋に再始動した面々との、現状での出来の差が、大きなファクターとなろうか。夏の反動が出てきたり、逆に秋口に復帰するもなかなか調子が上向かなかったり、といった馬が、例年見受けられて、結果を左右している。

さて、今年の出走馬は以下のフルゲート10頭。()内は、騎手、性齢、斤量。別定重量戦。
メガビソウ(野田、牡5、51k)、ホマレエリート(鋤田、牝4、53k)、リジョウガバナー(吉延、牡5、53k)、フジナミスペシャル(嬉、牡4、55k)、ブレイヴシーン(片桐、牝5、53k)、ドリーミング(渡辺、牝6、55k)、チュウオーマックス(池田、牡5、51k)、ホマレスターライツ(岡田、牡6、53k)、リーガルジョージ(山田、牡6、51k)、ユノワンサイド(藤本、牡4、55k)

ユノワンサイドは主戦の石井騎手が負傷欠場中のため、藤本サブちゃんが代打、2度目の同馬騎乗。リーガルジョージ騎乗の山田祥雄騎手は前開催デビューした新人クン。この日の第2競走で初勝利を飾ったばかり。
現在稼働する古馬A1馬10頭だが、うち重賞ホースは以下の5頭、これが注目馬、有力馬となろう。
ユノワンサイド ― 今春のローゼンホーマ記念で6着敗退し「千八戦不敗神話」が崩れ、以降休養。夏競馬初めに復帰し、以後7戦5勝2着1回3着1回。金杯は3着と獲り逃したが、近3走はオープンの千八戦で3連勝と絶好調。どの予想紙でもグリグリの本命評価。
ホマレエリート ― タマツバキ記念6着の後も休養なし。夏競馬も、ビーナス賞に金杯連取と抜群の戦績で通過。近2走はユノワンサイドの前に連続2着だが、すっかりオープン主力の1頭。適当な頃合いでレースをスキップし、休んでいるのがミソか。
ドリーミング ― タマツバキ記念7着の後は全開催皆勤のタフさ。今年は谷間のオープン戦でしか勝てていないが、ビーナス賞勝利をホマレエリートと同着で分け合い、金杯も2着。以降4戦3着3回2着1回。ユノワンサイドとホマレエリートには勝てないが、他馬には先着を許していない。
フジナミスペシャル ― タマツバキ記念を地元最先着4着の後、7月2日の金沢セイユウ記念に遠征し3着。以後夏場を休養し、戦列復帰は前開催、ここで、鞍上は主戦嬉jkでなく若手周藤クンであるにせよ、9着大敗を喫した。瀬戸内の若大将、どう盛り返すか。
ホマレスターライツ ― 正月の福山大賞典で8着に敗れた後は半年の休養。夏競馬で復帰するも5戦して3着1回4着3回6着1回。金杯も4着、前走も4着。力落ちは否めないが、岡田騎手が前走から手綱を取っており、ここらあたりに復活の糸口を掴みたいところ。
というように、秋競馬にて戦列復帰したのがフジナミであり、ずっと不休なのがホマレエリートにドリーミング。ユノワンサイドとホマスタは、春を休んで夏競馬を戦って秋を迎えた。

当日の概況
今回も"リーダー"前田っちとの福山行き。現地には1時頃到着。天気は朝から晴れ。午後になると雲も多くなったが、風も弱く、気温がまずまず上がってくれたので過ごしやすい。
馬場状態は良。予想紙によれば砂の補充はないそうだ。見た目にも馬場は深くはない、軽そうで走りやすそう。内ラチ沿いの砂が薄いとのことだが、レースでは道中はインは比較的空いて、終いの直線勝負においても、馬場の内外の違いによる伸び脚の差は感じられない。
1250m戦では行った行ったの競馬もあったが、マイルより距離延びての後半戦では、2番手先行抜け出した馬と、好位以降より終い伸びた馬の連入が目立つ。平均的傾向よりは、差しが決まっている。

パドックから発走まで
雲の塊が太陽を遮り、ちょっと翳ったところで、菊花賞のパドック周回が始まる。
1番メガビソウ。馬体重479kは-5kでこの馬の近走の目方としても軽めなのだが、馬体の輪郭は随分緩い。どうも覇気がない周回。もっと良く見せる余地があると思うのだが。前走は前開催、半年の休養明けでのA3戦を5着。休養前もA1とA2の中間のような格付けだったが、何故か今開催は菊花賞に動員された。
2番がホマレエリート。馬体重461kは前走比+1kだが、秋を迎えて増加傾向のよう。春先は450k前後で競馬していた馬、ちょっと胴回りが太め、スリムとは言い難い。パドックの外目を歩くのだが至極大人しい、むしろ元気がないと映るほど。歩みが遅く、前との間隔が開く。これは案外の見た目。
3番リジョウガバナー。馬体張りはなかなかだが腹がポッコリ太い。覇気ない気配で歩みが遅く、前との間隔が開く。兵庫出身で3歳秋には姫山菊花賞に2番人気で臨んだ(結果タカライデンの3着)馬。今年春先に福山へ。B1からのスタートだが当地では13戦して僅かに1勝。差し一手で終い常に掲示板に載るので、小銭稼いでA1に押し出された感じ。
4番がフジナミスペシャル。馬体重515kは+1k。休養前と比して若干重めの目方。馬体のフォルムも心持ちふっくらしている。毛艶はまずまずであるし、トモの踏み込みはやや浅いものの、大人しい中にもキビキビとした身のこなしが見られ、この馬としては悪くないパドック周回だと思う。セイユウ記念時には至らぬが、死んだように歩いていたタマツバキ時よりは上。頭絡がメンコの外、今日は正月の大賞典以来久々に、重賞でメンコ被ったままレースを走る模様。
5番ブレイヴシーン。胴回りは厚いが、体高があるように見え、なかなかに見栄えのする馬。毛艶はソコソコだが。益田デビュー馬で、当初は同級生のノア共々期待されていた馬。長く地道な戦歴の末、秋口来戦績が上向いて、3走前A3、前々走A2と連勝し、前走A2戦2着でここへ。逃げ・先行タイプ。
6番がドリーミング。馬体重482kは+7kだが、昨秋はこれくらいの目方で競馬をしていたので気にはなるまい。素晴らしい実入りと毛艶。胸前も厚い。トモの送りは若干流れ気味だが、ぎこちないほどではない。鹿毛なのだが、今日の彼女は妙に馬体が黒い。
7番チュウオーマックス。大人しい周回気配。真っ黒な青毛の馬体は見栄えがする。A1とA2の中間の位置づけから、秋競馬では押し出された感じでA1に組み入れられ、近3走はA1で8着4着6着。
8番がホマレスターライツ。じんわりと周回しているが、かつてのこの馬の気配と比べると、ガッとしたところが今日は全くなく、却って心配。相変わらずトモも肩も送りが硬い。馬体重470kが+3kだということもあるが、胴回りがどうも太い、ラインが緩んで見える。7号馬とホマスタは黒い毛色なので、パッと見には非常に精悍に映る。
9番リーガルジョージ。ちょっと寸詰まりな体型で胴も厚いが、キビキビとした身のこなしと、歩幅はソコソコなれど滑らかな歩様は好感。今夏以来A1の常連で金杯5着だが、上位を脅かすまでには至っていない。秋の4戦も5着5着7着5着。差し一手。
そして10番がユノワンサイド。身のこなしはキビキビとしていてこれはいい感じ。一方馬体は、馬体重495kが+4kでもあるが、ちょっとむっちりし過ぎかなあ、と。緩いとは言わぬが心持ち太め。トモの踏み込みは、やや浅いものの力強くて悪くはない。この馬、調子悪いとトモの力感と踏み込みに、てきめんに出るからして、今日は問題なかろう。
目を惹いたのはドリーミングの馬体。フジナミスペシャルは、前走大敗が事前には気懸かりだったが、目にした実物は全く問題ない出来だと思った。

本馬場入場から返し馬。メガビソウとホマレエリートは入場口から一角方向に直行。フジナミスペシャルは登場直後にちょっとガチャガチャやらかして。ユノワンサイドは数回膠着。両頭のこの仕草は時折見られるもの。メガビソウが真っ先に、ゴール前までは緩く、そこから強めに切り替えて。ホマレエリートはシャープに強めに駆ける。フジナミスペシャルは楽に。ホマレスターライツは鶴首気味にじんわりと楽走。ユノワンサイドは比較的軽く。返し馬でも目立ったのはドリーミング、大きいフットワークで力強く。

予想。地元おさるさんもリーダーもワシも、共通見解なのは「ここはフジナミから狙いたい。」ということ。前走の大敗と、直前追い切りの後に歩様が悪化したことで、予想紙のシルシも下がり、人気も上がっていないが、実はこの馬、人気がちょっと下がった時の方が強い。おさるさんをして「フジナミは"新聞の読める馬"だからなあ。」と言わしむる。加えて実績充分の長丁場、連単のアタマで狙う。
相手筆頭には、見た目好感のドリーミングを指名、今回はちょっと穴狙い。そしてホマレエリート。対ドリーミングにおいて優勢なので軽視は出来ない。おさるさんは「ホマレエリートにはなあ、2250mは長いだろう。千八で何とかってところなんじゃないかなあ。」と。加えてホマスタにもちょっと。岡田騎手がひょっとしたら2着には持ってくるかもと思い。
一方人気のユノワンサイドは、やはり得意の千八戦に比べれば確実さは格段に落ちよう。近走の戦績は認めつつも、これは危険な人気馬。馬券は一本被り、外せば高配当のチャンス。

レースなり
さてレース。発走地点は4コーナー、1250m戦のそれと同じ。ここから丸2周と200m強。正面スタンド前を3度通過する。
ゲートが開く。大外からユノワンサイドが鞍上サブちゃんに押されてダッシュ、やや内に切れ込みつつ、馬場五分どころのラインを押さえて前に。注目の一つだったホマレスターライツの発馬はまずまず。内でやや出負けたのはリジョウガバナー、これはそのまま最後方からの競馬に。
最初のホームストレッチ、スタートして150mあたりでワンサイドが先頭に。この内に差がなく、これも行きたいクチのブレイヴシーンが。両頭競り合うことはなく、ワンサイドがハナを主張し切る。ブレイヴは1馬身弱下がって2番手に。その内にはフジナミスペシャルが、早々にすんなりつける。その外目にホマスタも、今日は先行策か。ホマレエリートやドリーミングはこの後ろ。

最初の直線(39KB)
最初の直線、スタートして150m弱
外からハナを目指すワンサイド、内でフジナミもいい位置

最初の1、2コーナーあたりまでは、前はそれなりのペースで、ホマスタまでの先行4頭と、5番手ホマレエリートらとの間隔はちょっと広がって、以降も若干縦長に。しかし三角を回るあたりまでに、ペースはすっかり落ち着いてくる。先頭を行くワンサイドもマイペースで折り合っている感じ。見た目にも若干スローな流れ。
そして2度目の正面スタンド前。ワンサイドが変わらずフロント。1馬身程離れた外に2番手ブレイヴ。2馬身ちょっとは開いて、3番手内にフジナミ外にホマスタ。2頭を直前に見て5番手ホマレエリート。少々間隔があってドリーミングが続き、直後内にメガビソウ。以下チュウオーマックス、リジョウガバナー、リーガルジョージ。
勝負が動くのは2周目バック半ば。フジナミスペシャル上昇開始。3コーナー手前までに、先頭ユノワンサイドの外に追い付く。ブレイヴシーンは既に後退し、フジナミと同列だったホマスタも置かれた。代わって上昇はホマレエリート。3列目からまずはスッとフジナミを追って。そして中団からドリーミングが外目を追い上げる。
白熱の三分三厘。内でワンサイドが粘るも、外に併せたフジナミが早くも交わす体制に入る。それを目がけてエリートが、ここで一気に寄せて、フジナミの外に馬体を並べかけてくる。これでフジナミとエリートがびっちり併せ馬に。暫し3頭横一線となるも、ワンサイドはちょっとインで気圧されてしまった体裁。そして4コーナーを前に、ホマレエリートが外からグッと、クビから半馬身、遂に前に出る。

最後の直線(36KB)
最後の直線、残り50くらい
フジナミvsエリートの叩き合い、外からドリーミング

しかし勝負はこれで終わらない。両頭追い比べのまま4コーナーを回って、最後の直線へ。内の嬉フジナミ、馬場の五、六分どころを取らんとして大きくコーナリング。振られそうな体勢ながらも外からねじ伏せんとする鋤田ホマレエリート。ビッチビチの叩き合いの中、直線半ば、フジナミがエリートを差し返す。残り100から50で完全に並びかけ、残り2、30、グイッと前に。これで決着。最後はフジナミスペシャル、クビ差で激戦をモノにした。

フジナミスペシャル(43KB)
フジナミスペシャル、差し返した!
残り20くらい、さあゴールへ

2着ホマレエリートの後方、ユノワンサイドはインベタで、前2頭からは遅れた。これが「せめて3着には。」というところ、三分三厘以降、何とか前3頭に取り付かんと寄せたドリーミングが、4コーナー大外を回して、終い差し込む。そしてユノワンを交わして3着に。エリートとは3馬身差。ユノワンサイドは1馬身半遅れた4着。
以下の着順はリアルタイムでは記憶なし。5着追い込んだリーガルジョージ。6着リジョウガバナー、ホマレスターライツは結局7着。8着チュウオーマックス、9着先行バテのブレイヴシーン。最下位はメガビソウ。

振り返って、そしておしまい
これは実に見応えのあるレースだった!福山の古馬長距離戦は、結構高い確率で好レースになってくれる。「いいレースでしたよねえ!」と、写真撮影を終えたWSさんも満足気(勿論馬券も当たったそうで)。
さて、お見事フジナミスペシャル。戦前の不安なんてどこ吹く風。強い競馬で勝ち切った。ホンマに地元長距離戦での安定感は屈指。それにしても、人気が落ちるとやっぱり勝つ。因みにこの馬、これが今年10戦して4勝目、その全てが重賞の星。何とも勝負強いと言おうか効率がいいと言おうか。
ホマレエリート、地力強化がより明らかとなった、しかしちょっと悔しい2着。「何だ、呆気なく距離克服されちゃったな。」と、おさるさんも脱帽。勝負所でスッと動ける機動力と、その際の斬れ脚が非常にいい。勝ち馬に終い差し返されたのは、この距離への慣れと適性の差かなあ。
ドリーミング、終いよく追い込んできたのだが。2周目バックで仕掛けたタイミングが、ちょうどホマレエリートと同じくらい。その時点での位置取りの差が、そのまま着差になったかなあ、と思う。それにしても、この距離だったらホマレエリートより上だと期待したのに、やっぱり勝てない。
ユノワンサイドはなあ、やっぱり「千八専用馬」なのか。この馬が長丁場走る際に、ハナ切ってしまうのはしょうがないわけで。それに今日は折り合えていたし。どうしても残り400m(2周目三角以降)がしんどい感じ。それでも人気が落ちないところが凄いのだが。それにしても、重賞に強いフジナミに比べ、こっちは今年12戦して6勝も挙げながら、結局重賞は勝てず、何だかなあ。
ホマレスターライツは、ちょっと・・・

ユノワンサイド(19KB) 「ナンダカトツテモワリニアワナイヨウナキガスル・・・」byユノワンサイド

予想通りにユノワンサイドが連対落ちしてくれたお陰で、連複はどれも四桁配当、殊に枠単2,880円は、単勝3番人気→同2番人気の組み合わせとしては非常にオイシュウございました。ゴッチャンです。
次の古馬重賞は、いよいよ頂点決戦、福山大賞典。3歳上位勢の動向も一方にはあるが、今日上位入線した馬たちが、そこでも主力となるのは間違いないところ。2600m戦への距離適性を捨象すれば、ひとまずはフジナミ、エリート、ワンサイド、ドリーミングが四強で間違いないだろう。大賞典まではあと1ヶ月半、その間に1開催。くれぐれも無事に過ごして、ピークのコンディションで出て来いよ。

「さてさて、大賞典までに、どうやって人気下げようかなあ。こりゃ12月戦は、デブデブ歩様ガタガタの大凡走なんかしてみちゃったりなんかしちゃって。ウシシ。」なんて、たとえヤツが思ったとしても・・・
もう騙されないぞ、フジナミスペシャル!――
  ※他のお客さんはどしどし騙されて下さい(性格悪ぅ、ワシ)

フジナミスペシャル、口取り前(39KB)
フジナミスペシャル、口取りを待つ
今年4度目の優勝レイなのね

2002.11.25 記

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