第20回奥の細道大賞典観戦報告

 2002.11.19、上山、2300m

はじめに〜出走馬について
上山競馬、古馬戦線のシーズン総決算、奥の細道大賞典。であるのだが・・・
今年は回避馬続出で結局7頭立てとなってしまった。在籍頭数の減少と、有力馬や中堅どころの他地区流出が目立った、今季の上山アラブ界を象徴するかのような、ちょっと寂しい大一番である。

その出走馬は内枠より以下の通り。()内は騎手、性齢、斤量。別定重量戦。
ベアズサーキット(関本淳、牡4、55k)、キヌカゴゼン(関本秀、牝6、55.5k)、ニホンカイマリノ(江川、牝7、55k)、マルワサンライム(鈴木義、牡4、56.5k)、アオイリュウセイ(板垣、牡5、57k)、エルソパレード(前野、セ5、56.5k)、セイフクガバナー(佐藤庄、牡5、56.5k)

不動の中心馬は昨年の覇者アオイリュウセイ。ペルターブレーブは引退し、ムーンライトブルーは福山に移り、マルハチフレンドは不調からか不出走。そして今や最大のライバルとなりつつある、同厩の3歳馬レビンマサは、5日後の全日本アラブグランプリに遠征するためここには登場しない。という状況なので、出走馬中、重賞勝ち馬(上山施行のもの)はこの馬だけ。
昨年と同様、シーズン前半は脚部不安で休養し、このレース奪取を目標としてここへ。9月のかかしまつり賞は4着と案外だったが、以後3戦3勝、臨戦過程は万全のよう。連覇は濃厚か、そうでなければちょっと格好つかないのだけれども。
これに続くのは、今季オープン戦線で常に上位争いを繰り広げた3頭。昨年同レースの2着馬にして、今季は日本海記念とかかしまつり賞でも2着、都合重賞2着5回あるもどうしても勝てないオ○マ、エルソパレード。堅実な先行脚質とレースセンスの良さ、加えて地力強化著しいマルワサンライム。逃げが叶うと時に非常に渋太いセイフクガバナー。因みにマルワサンライムとセイフクガバナーは、今季これまでの15開催を皆勤、エルソパレードにしても1開催休んだだけ、と、まさに当地のレギュラーメンバー。個人的には以上に加えて、益田から転じたニホンカイマリノとの再会は、ちょっと嬉しい。

山形へ、そして当日の概況など
昨年一昨年に続き今年も観戦するべく山形へ。往路は日本海記念時と同じく大阪−山形間の夜行バス。前夜に難波を発ち、約11時間半のバス旅で、山形には早朝7時半頃到着。上山の市街地まで行って、公衆温泉(銭湯です)で体をほぐしてから、10時頃競馬場に。

到着時の天気は曇りだが、次第に雲が切れて空が顔を覗かせてくる。今年の東北地方は雪の降り出しが早かったようで、当日の天候が気になったが、幸いまずまずの天気。空気は冷たいがそれは当然のこと、想像していたほどの冷え込みではない。競馬場の借景とも言うべき蔵王の山並みの、その上の方は冠雪していて、午後になると明らかに雪雲と判るそれがかかってくる。麓の方は綺麗な紅葉黄葉。
馬場状態は重との発表。砂は適度な湿り気を帯びているが、見た目には稍重くらいだろうという程度。三分三厘で好位に取り付くことが叶えば差しも決まる、この競馬場らしいレース展開の傾向。ただ最後の直線、意外とインコースも、差し馬は伸びるし逃げ馬は粘れている。

メインレースまで〜その他のアラブ競走
この日のアラブ系競走は3鞍。メインレース以外の2つも興味深いものなので以下少々。
第1競走は2歳A1戦、距離1500m、11頭立て。2歳馬の上位数頭は既に古馬編入しており、ここに登場するのは、それらを追う面々である。トップの1頭(それは後述)は強いが、それ以外は比較的上位拮抗のようで、このレースも注目に値する。「レベル的には去年の2歳よりは若干落ちるかもしれないけれど、それでもソコソコの水準にあるし駒は割と揃ってると思う。」とは、くもぎりまるさんの評価。
人気は7戦2勝2着3回3着2回と複勝率十割で堅実なタカセンプーだが、一番の注目馬は、10月8日施行された補助馬限定特別の若松特別を勝ったワタリタキオンかと。加えて、8月14日の2歳重賞若草賞3、4着馬のホーエイアキフジ、ホーエイフレンドあたり。
ワタリタキオンは入場時に1頭、四角まで厩務員さんにずっと曳かれていく。地元ブルボンさん曰く、「この馬ムチャムチャ気ぃ悪くてですねえ、入場口で曳き綱離すと帰ってこうとするんですわ。でも最後の直線、1頭だけ段違いの脚で突っ込んできますからね。で、それで勝つかどうかはわかんないですけど。」と。
さてレース。千五戦の発走地点は3コーナー。大外ホーエイフレンドが二の脚全くつかず、ポツンとドカ遅れ。正面スタンド前では最前列に3頭横並びで、ここから好位までは一団。ホーエイアキフジはフロントの外、ワタリタキオンは3列目のインと思ったより前。直後外にタカセンプー。バック半ばからペースが上がり、ここで殿からHフレンドが捲って上昇、好位の外まで。これが真横に迫ったタイミングでワタリTも動く。三角手前、単騎先頭はHアキフジ、次列からユノワンサイドの全妹ハナケンハートやタカセンプーも続く。そして四角までにこの直後へワタリTとHフレンドが一気に。
最後の直線、Hアキフジが内で粘り、ワタリTとHフレンドが外から併せて差し込む。暫し叩き合った結果、抜けたのはワタリタキオン、終いはやや内目に走って1着入線。外でHフレンドが伸び切れず、代わって大外から人気薄スキナパグが飛んでくる。これが2着で、3着にホーエイアキフジ。ホーエイフレンドは4着。タカセンプーは結局5着。
ワタリタキオンは意外とまともな好位差しでの勝利。パドックでは馬体重+9kの通り腹は緩いわ冬毛出てるわ煩いわで、あまり感心しなかったのだが、素質がやはりあるのだろう。スキナパグは道営から転入3戦目、門別の鳳凰賞9着馬。この2着で、馬券は馬単14,410円3連複47,480円と、のっけから荒れた。

第7競走は古馬B1戦、距離1500m、9頭立て。世代混合の一戦だが、ここでの注目は2歳馬2頭。すなわち筆頭ミルフィーユマリモと、2番手格のホマレスターボーイ。それぞれ若草賞1着馬と2着馬でもある。
ミルフィーユマリモは馬体重435kと比較的軽量ながらも、それよりは大きく見える。腹袋はボリューム豊かで首差しはスラッと。牝馬らしい上品な顔。くもさんも「秋口の頃見た時よりも実が入っていい感じになってる。」と。「ただ今回は1枠発走が問題。この馬差し馬なんだけど、気性のせいか馬群に入って競馬しないんだ。(関本)淳は多分一旦下げて外に出すんだろうけど、後手踏みの危険性があるから。」とも。既に12月8日に福山で施行される全日本アラブ2歳優駿への参戦を表明しており、ここは格好を付けておきたいところ。因みに彼女の父は、かつての上山の強豪カガヤキヨシオー。
ホマレスターボーイは馬体重500k前後で大柄、伸びやかなフォルムで見栄えのする馬。背の高さが目立つ。ちょっと毛は伸びてきているが馬体張りは良好。オイタでもしたのか、鼻先を紐で括られている。こちらはゴージャパンの半弟。くもさんの評価は「素質あるんだけれど、走りに勝負への貪欲さがないなあ。」といった感じ。
さてレース。ミルフィーユマリモは無難に出たがすんなり下げる。ホマレスターボーイは先行体勢。正面スタンド前では、5歳牝馬シュガーフレアが単騎逃げ、2番手3歳牝馬ファンシーピンク(エルソパレードの半妹)、直後外3番手にHSボーイ、折り合っているよう。MFマリモは中団外目、前から6番手あたり。向こう正面でHSボーイはスルスル進出、三角あたりで先頭に。一方MFマリモはバック一杯押されて上昇し、三角過ぎではHSボーイの外へ。勝負はこの2頭の一騎打ち、そのまま最後の直線まで。内HSボーイ外MFマリモ、直線半ばまではマリモ優勢に見えたのだが、内でHSボーイが渋太く抵抗。長く続いた首の上げ下げ勝負だったが、最後はホマレスターボーイ、差し返し気味に前に出て、アタマ差1着。ミルフィーユマリモは2着。
と、何だかんだでホマレスターボーイが勝ってしまった。かかしまつり賞デーの古馬A3戦でも、こんな感じで終い粘って勝っていたので、この馬、案外粘走タイプなのかも。ミルフィーユマリモに関しては「やっぱり外に出さざるを得ない競馬だったでしょ。うーん。」という、くもさんの回顧がズバリかと。尤も、この差し脚はいいなと思ったが。
ワタリタキオン(34KB)
第1レース、差し切って抜け出したワタリタキオン
気性の割にフォームはよく伸びている
ホマスタボーイvsミルフィーユマリモ(34KB)
第7レース、ホマレスターボーイvsミルフィーユマリモ
鞍上は兄弟対決。関本秀(弟)vs 関本淳(兄)

そして奥の細道大賞典、パドックから発走まで
時刻は3時過ぎ、ちょうど頃合い良く西の空の雲が大きく切れて初冬の西陽が差す中、メインレースのパドック周回が始まる。
1番ベアズサーキット。首を下げて、時折気合いの入ったところを見せての周回。毛艶はなかなか、馬体張りも良好と、パッと見に仕上がりの良さが目立つ。5走前にA3勝利があるが、前走A1戦8着と、最上位では経験も地力もまだ足りぬよう。「見た目いいんだけれどクラス的になあ。」とくもさんも。
2番キヌカゴゼン。冴えない毛艶の栗毛馬。骨太な脚がちょっと目立つ。前走A1で逃げて4着、その前3走は準オープンで3連続2着と、秋に入って好調のよう。行きたいクチ。
3番ニホンカイマリノ。馬体重443kは前走比-12kだが、益田時代はこれより軽い目方で競馬をしていたので気にはならない。むしろ数字よりは緩め。胴長でスリム。踏み込みの歩幅がとても狭いのは今冬の日本海特別時と同じ。全く大人しい周回で歩みが遅く、前との間隔が開く。益田から転じ当地緒戦が9月8日(これがあの「第7回ネット地方競馬ファン賞」)、以降5戦6着1着5着7着7着。1勝はA級2組でのもの。
4番がマルワサンライム。素晴らしい毛艶と馬体張り、実入りも充分で、馬体重は前走比-5kの450kながら、これまで以上に大きく見える。好仕上げだと一目瞭然。煩めに振る舞う時が多かったのだが、今日はキビキビとした身のこなしににピシッと気合いが伴って、集中している感じ。かかしまつり賞3着の後はA1で3戦2着4着3着。
そして5番がアオイリュウセイ。相変わらずボン!と太い腹袋。それに比して若干ヒ腹は細くて、トモのボリュームはこの馬にしては並。毛艶は上々。トモはあまり踏み込まない。悠然と余裕の周回で、やはり雰囲気はあるし、いい。「でもやっぱり去年のこのレースの時の方が上だなあ。」と言うと「あの時は良過ぎた。」とくもさん。ごもっとも。
6番がエルソパレード。黒鹿毛の毛艶はいい、アオイと遜色ない。馬体重480kは近2走と変わらないし、かかしまつり賞時からは+5kだが、それ以上に胴回りが太くなった感じ。実入りは伴っているので重くはないが。歩様を硬く見せるのはこの馬なり。かかしまつり賞2着の後はA1で3戦4着3着2着。
7番セイフクガバナー。いつもながらに胴回りの太い馬体。毛艶はソコソコ、それほどのものではない。トモの送りは硬め。じんわりとした気合い乗り、というか大人しくて少し覇気に欠けるかも。前との間隔が開く。かかしまつり賞5着の後はA1で3戦3着9着5着。前走前々走は共にハナを切れていない。
大本命アオイリュウセイは全く問題ない出来かと。しかしながら7頭中、パドックで最も良く映ったのはマルワサンライム(後出しジャンケンじゃなくってホントなの!)。くもさんもそのようで。

本馬場入場から返し馬。長距離戦ということもあってか、全馬まずはゆったりとダクで1周して、そこから駆け出す。マルワサンライムは首を上げて、ちょっとバタバタしてキャンター、これはいつものことのよう。アオイリュウセイは楽走から加速して。マリノは素軽く駆ける。セイフクガバナーは軽め。最後にエルソパレードが、前野騎手の手綱は抑え気味なのに馬は首を上げて行きたがって、これもいつものこと。

エルソパレード(35KB)
エルソパレード、返し馬
「どうしても重賞勝ちたいのよぉ〜ん!」

予想。「本命アオイ、対抗エルソ、ひょっとしてマルワも」これでまず間違いなかろうが、まあそこはスケベ心もあって色々と考えるわけで・・・3頭の3連複を無難に本線として押さえつつも(これ1.5倍くらいしかつかない)、エルソ→アオイの馬単や、アオイ−マルワの枠複なども買う。ただこのレース、7頭立てなので、3着の複勝を狙う楽しみがない。マリノの複勝など買いたかったのだが、代わりにアオイ−エルソ−マリノの3連複を。
関心は、果たしてエルソがアオイに逆転できるかということ。「なるべくアオイの前で仕掛けて最後の直線まで来て、終いもうひと脚使ってしのぐしかないだろう。後ろから追いかけたら勝てない。」とはくもさんの見解。「ふんふん。」と傾聴しつつも、「エルソって脚溜めないと駄目のような気が・・・」ともちょっと思う。
マルワサンライムは気配絶好なのは大いに認めるものの、どうしても距離不安を考えてしまう。距離に関してはセイフクガバナーも同様。加えて逃げ馬のクセにゲートの出に心配があるので、ワシはコイツを信用していない。マリノは日本海特別3勝という、長距離戦の場数にちょっと期待。ただ差し追い込み一辺倒なので、道中離され過ぎて終いの勝負に間に合わない危険性も多分に。

さあレースなり
いよいよレース。上山競馬最長2300m戦のスタート地点は1250m戦と同じく4コーナーを出た直線入り口。ここから2周と200m、ゴール前を3度通過する。
ゲートが開く。内からキヌカゴゼンが好ダッシュ、そのまま一気に逃げる。が、大外からセイフクガバナーが、並の発馬から内にグンと切れ込んで2番手に、そして直線半ばから猛然とキヌカを追いかけて、ゴール板あたりでキヌカからハナを奪い取る。この時点でそれ以下との差は相当開く。さて追走する残り5頭、そのアタマにはマルワサンライムがスッと。直後にアオイリュウセイが、そして外に並んでエルソパレードが、続いてベアズサーキットとニホンカイマリノ。序盤はこの5頭はほぼ一団。
1コーナーから2コーナー、セイフクガバナーがガンガン飛ばす。2番手キヌカゴゼンをも3馬身ほど離して進む。キヌカゴゼンと以降とは大差開いて、大逃げの図となる。3番手にマルワサンライムがガッチリ。1馬身下がってアオイリュウセイ、直後外にエルソパレードがピッタリと、両頭ちょっと掛かり気味。この3頭は一塊りで、6番手ニホンカイマリノと殿ベアズサーキットは次第に離されていく。
ところが最初の三角手前、先頭セイフクと3番手集団との間隔が瞬く間に縮まる。「セイフク早くもタレたのか?」と思いきや、これはセイフクがガコンとブレーキ踏んだ体裁、スローな逃げに切り替えた模様。同時にマルワがキヌカに追い付いて、2番手併走となる。
2度目の正面スタンド前。先頭変わらずセイフクガバナーがインベタでマイペース。マルワサンライムが2馬身弱下がった外目で早くも2番手。頭はやや高いが、鞍上チャーリー(鈴木義jkのあだ名)が柔らかく御している。直後内でキヌカゴゼンは3番手。エルソパレードがマルワの直後外まで押し上げて、この時点でアオイに先んじる。そのアオイリュウセイはやや内目5番手。ここで5馬身は開いて、6番手ニホンカイマリノ殿ベアズサーキット。見た目にもペースは落ち着いてスロー。

2周目スタンド前(38KB)
2度目の正面スタンド前
先頭セイフク2番手外マルワ、背景は秋色に染まった蔵王の山裾

しかし2周目バックで流れは速くなってくる。引っ張るセイフクの逃げにマルワは離れずピッタリ追走。そしてバック半ば前から、エルソパレードがアオイに先んじ、前野jkの手綱に促されて勝負に出る。三角前では2馬身くらいは離したか。アオイリュウセイの腰が上がったのはバック半ば過ぎ。ここから板垣騎手も追い出す。切り替えてエルソの外へ。キヌカゴゼンは内で後退した。マリノとベアスは遅れた。
三分三厘から四角手前、まだ逃げるセイフクガバナー、まだ2番手マルワサンライム。アオイリュウセイとエルソパレードは外内併走で追いかけるが、前との差はまだ2馬身はある。4コーナー、エルソが外に持ち出しコーナリング、ちょっと張り気味、外のアオイを振らんとするかのよう。しかしアオイも被せて受けて立つ。
そして最後の直線走路。満を持してマルワサンライムが抜け出して先頭に立つ。最内でセイフクもタレずに粘る。そして馬場外目にエルソとアオイが来る。直線を向いて程なく、クビほど前に出たアオイリュウセイ、エルソも食い下がる。両騎とも目指すのはフロント。「アオイリュウセイ、どう追い付いてマルワを交わすかな。」と思うところ。なのだが・・・
見た目にも明らかに脚に斬れがあるのは先頭のマルワサンライムの方。2馬身弱のリードを詰めさせない、むしろ後続をスッと離すが如き印象の走り。「ホンマにマルワサンライムが勝ち切るんか!」と、驚愕の心情で見守る中、マルワサンライム、堂々の走りで真っ先にゴール板を駆け抜けた。

マルワサンライム(41KB)
マルワサンライム、ゴールへ
最後までしっかりと、お見事!

「アオイは2着か・・・」というところ、実は内でセイフクガバナーが想像以上に粘っていて、これが終いクビの上げ下げの大接戦。内外離れてもつれての入線、写真判定に。エルソパレードは最後のひと斬れを欠いて、半馬身遅れた4着。ベアスサーキットが終い追い込んで3馬身差の5着、ニホンカイマリノは結局四角殿から、タレたキヌカゴゼンを抜いただけの6着に終わった。
2着争いの写真判定、「セイフク買ってないからアオイじゃないと馬券丸負けやんか!」とハラハラしたのだが、何とか2着アオイリュウセイ。マルワとは1馬身半差。

振り返って、そしておしまい
アオイ2着で辛うじて馬券はかすったものの、枠複の配当は僅かに450円。馬単ならば2,490円ついたのだが、マルワの距離不安を考えればこれはワシには買えなかった馬券。「結局去年と同じで、パドックで一番良く見せた馬が勝っちゃったな。」と、くもさんと言い合った。
マルワサンライム、完璧である。恐らく鞍上チャーリーとしても、そして見守る側からも「道中折り合って先行前付け、二強に先んじ仕掛けてあとは粘り込むだけ、捕まったらしゃあない。」といった競馬になろうとは見込まれたが、見事に走り切った。「何でマルワサンライムやねん?」と思われる向きもおられると推察されるが、ケレンもギミックも何もない、正攻法の自力競馬であるからして、ここにおいて「後ろから進めてマルワに勝てなかった方が悪い。」と思うのである。中盤スローに見えたが、勝ちタイム2分33秒4はレコードに2秒9差。「今季はずっと時計が速い馬場(平均して1秒半から2秒くらいは)だったにしても速い。アオイの位置取りじゃあペルターでも届かないぞ。それにしても強くなったもんだなあ。」とくもさんが回顧した。
振り返ればこの馬、当初は千五戦でギリギリ、千七でも長いと評されていたのだが、着実に距離適性を付け、それと共に地力も上げてきた。仙台七夕…1.7秒差5着 → 日本海記念…1.9秒差5着 → かかしまつり賞…0.2秒差3着と、重賞での着順と勝ち馬とのタイム差も詰めてきていたし。当初は有力馬大量流出に伴っての、押し出されるが如き上位編入であり、ホマレエリートやホマレトウカク、ミスターハヤブサなどと同い年で、その格下だったわけだが、古馬の強豪に潰されず、連戦連敗にもメゲずに見事成長した。今季ここまで15開催皆勤ながらも未勝利だったのだが、最終決戦で大きな1勝目。この星は値打ちがあるぞ。
アオイリュウセイは連覇ならず、大本命評価を裏切る走り、辛くも2着。やはり展開が・・・あまりにゆったり構え過ぎたか。「あれで差し届くとカキピー(板垣jkのあだ名)思ったのかなあ。」とワシ。「ちょっとレースの流れ掴めてないんじゃないか。」とはくもさん。結局今年は重賞未勝利に終わることになった。上山筆頭の強さは誰もが認めるところなのだが、やはり稼働率が上がらないと"絶対王者"にはなれないなあ。
セイフクガバナーにはマルワ以上に距離不安を感じたのだが、大した粘走ぶり。終いの渋太さは、今季のこの馬のキャラを象徴するものだったろう。まさか「親父マルセンガバナー譲りの、晩熟長距離の血、開花。」ということではあるまいよ。
エルソパレードはやっぱり重賞勝てず。戦前の予想通りアオイに先んじて動いたが、結局差し返された。「でしょ?やっぱり終いの差し脚勝負に賭けないと駄目なんですよ。」といった、この日不在の山形シチーさんの見解が聞こえてきそうだ。ホンマにまあ、2着には突っ込めるけど、自分から勝ちに行ったら着順落ちる馬だよなあ。
ニホンカイマリノには、このペースはやっぱり厳しかっただろうか。「この馬差し馬だけど、斬れ脚鋭いタイプじゃないよね。それに何だか、ここのコースにあまり合ってないような気もする。」とはくもさん。

というわけで、「アラブ北の聖地、最終決戦」は、終わってみれば、"地味で健気な努力家"の成長ぶり一色に染まった次第。それもまあいいだろう、今日ばかりは、ね。素直に言おう。「おめでとう、マルワサンライムくん、そしてチャーリー」

最後に。レース後印象的だったのは、レイを纏って口取り撮影に臨んでいる勝者の横で、曳かれていたアオイリュウセイの姿。何だかとっても恨めしげでありましたな。

「これではレビンマサに示しが付かぬではないか・・・」byアオイリュウセイ アオイリュウセイ(26KB)

2002.11.27 記

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