第33回ヤングチャンピオン観戦報告

 2002.11.23、福山、1600m

はじめに、そして出走馬について
福山競馬の2歳重賞、ヤングチャンピオン。かつては当地の2歳王者決定戦であったところ、全国交流戦である全日本2歳アラブ優駿が昨年新設されたのに伴い、開催が11月に繰り上がって、それに向けての地元前哨戦といった位置づけのものに変容した。

その出走馬は以下のフルゲート10頭。()内は騎手、性、斤量。牡馬54k牝馬53kの馬齢定量戦。
コトイチ(佐原、牡、54k)、ムサシボウタッチ(吉延、牡、54k)、ミスラッキー(藤本、牝、53k)、ラピッドリーラン(片桐、牝、53k)、ユタカレオグリン(岡田、牡、54k)、ユタカリュウオウ(野田、牡、54k)、ムサシボウシルキー(柳井、牝、53k)、ユノエージェント(渡辺、牡、54k)、ムツミセンター(黒川、牡、54k)、セイコウ(鋤田、牡、54k)

前開催の2歳1組2組3組戦は、当レースへのトライアル戦として、それぞれニューヒーロー特別、ビクトリー特別、エクセレント特別と銘打って施行、結果それぞれ以下の馬たちがここへ駒を進めた。
・ニューヒーロー特別
   1着セイコウ、2着ユノエージェント、3着ユタカリュウオウ、4着コトイチ、5着ミスラッキー、6着ムサシボウシルキー
・ビクトリー特別
   1着ラピッドリーラン、3着ムツミセンター
・エクセレント特別
   1着ユタカレオグリン、2着ムサシボウタッチ
なおビクトリー特別2着のフジナミスパートは回避で、ムサシボウシルキーが予備馬から繰り上がり出走。

今年は夏から初秋にかけて福山に足を運べなかったので、この地の2歳勢の動向には全く疎いまま、ここまできてしまった。
出走馬の中では、ユタカリュウオウが9戦6勝と最多勝で獲得賞金も高いのだが、前走あっさり3着に敗れている。そのニューヒーロー特別を制したのはセイコウだが、その勝ち星も人気薄でのもの、ちょっと半信半疑。同2着のユノエージェントは、素質は大いにあろうがユーノス産駒でもあり本格化はまだ先とも。こうした中、今回はビクトリー特別を逃げ切って3連勝のスピード逃げ牝馬、ラピッドリーランが大きく注目されている。というわけで、ちょっと乱戦混戦の気配はありそう。

当日の概況
さて、先週の菊花賞に続き、現地へ。明日も当然全日本アラブグランプリ観戦で福山、土、日連闘となるので、この日は家事を済ませてから住処を出る。よって競馬場着はやや遅く2時頃。またまた"リーダー"前田っちとの福山競馬観戦。
天気快晴!ホンマに雲一つない。写真撮影を考えると、レースでは逆光まともに食らって迷惑なほど。風はややあるが暖かくいい日和。
馬場状態は良。この週末の開催を前に、砂をかなり入れたそうで、見た目にも明らかに深い。コース外ラチの縁の、馬場の嵩が高くなっているのが一目瞭然。
こうなるとレースの傾向としては能力なり。強い先行馬が結果を残せる。力のない逃げ馬はヘバって差し有利に作用すると見込めなくもないが、極端な追い込みは決まらなそう。

この日の第4レース、2歳4組戦に、マルシンヴィラーゴの仔である牝馬デザートビューが出走。この馬、デビュー戦の800m戦を、レコードにコンマ5差の48秒5で圧勝している。が、故障があったそうで(3号馬さんによれば両前エビとのこと)今回復帰戦。結果1250mを大差逃げ切り圧勝。タイム1分25秒9はこの日の水準値よりも1.5〜2秒は速いもの。が・・・そのレースにワシは間に合わず、また翌日開門直後のレースリプレイ放映にも間に合わず、その模様は確認できなかった。
これで2戦2勝、期待も高まるが、獲得賞金は95万円、ちょっと1組には遠い。残念ながら次開催の"全日本"には間に合わぬだろう。

パドックから発走まで
さてパドック。この季節になると、メインレースの頃には陽も西にかなり傾いて、パドックはスタンドの陰に完全に覆われる。快晴であっても光量は相当落ちる。そんな中、周回が始まる。
1番コトイチ。チャカチャカと煩く、二人曳きで鶴首でガッとなっての歩み。毛艶と馬体張りはいい。8戦2勝3着2回。
2番ムサシボウタッチ。大人しい、どうも覇気に欠ける気配。ユーノス産駒にありがちな脚長背高で伸びやかな体型だが、ちょっとトモの力感がないしヒ腹も薄い。6戦1勝2着1回。追い込み一手。これが最も受賞賞金額が低く格下。
3番ミスラッキー。二人曳きで鶴首になって、気合いが入っている。馬体重472kに増してかなり大柄だが小顔。馬体の張りは上々。3戦2勝。
4番がラピッドリーラン。かなり気合いが乗った気配で、外外をグイグイと回る。トモの踏み込みはかなり深いが、どうやら飛節の角度が相当深いよう。スピード逃げ馬であるのも「むべなるかな。」といったところ。胴はガンと太め。4戦3勝3着1回。
5番ユタカレオグリン。二人曳きながら当初は大人しかったが、次第に集中してくる。馬体重前走比+7k、エクセレント特別で目にしたよりも胴に実が入っている。431kの目方よりは重量感あり。毛艶はソコソコ。8戦1勝2着3回3着3回。
6番がユタカリュウオウ。伸びやかに大人しく、煩いところをほとんど見せない周回。身のこなしも柔らかくこれは好感なのだが、問題は馬体重。453kは前走比+10k、それが一目で判る、ダボダボと重く緩んだ胴回り。「ホンマ太いで、大丈夫かいな?」とリーダーも。9戦6勝2着1回。
7番ムサシボウシルキー。鶴首でこれも煩めな気配。足どりもチャカチャカと。馬体重414kと軽量馬だが、シャープでスッキリとした仕上げ、黒鹿毛の毛色も相まって、艶と張りは上々。8戦2勝2着4回。逃げプロパー。
8番がユノエージェント。芦毛のユーノス産駒。馬体重498kと現役時の父より大柄。背の高い雄大な馬体で伸びやか。のんびりと周回しており、身のこなしも柔らかい。ただ、まだちょっと力強さがないし、どことなく子供っぽい。踏み込みも並。5戦2勝2着2回3着1回。
9番ムツミセンター。程良い気合い乗りで毛艶もいい。骨太な馬体で胴回りが太い。8戦2勝3着1回。
10番セイコウ。のんびりじんわりとした気配。胴は太め。トモの送りは硬めだが、前肢の捌きは柔らかい。7戦2勝2着3回3着1回。
2歳馬なのでちょっと煩めな馬も多いが、おしなべて毛艶も馬体張りもいいし、しっかりした実入りで作ってきている。

本馬場入場から返し馬。セイコウは馬場入りの早々から駆け出している。ユノエージェントは馬場に出て気合いが前面に表れてきた。そして大抵の馬が強めにキャンター。ラピッドリーランはかなり気合いが入っての駆けり。その中にあって、ユタカリュウオウは比較的楽に。セイコウも巧く力が抜けている。ユノエージェントはちょっとフワフワとした走りで。

予想。今回はちょっと素質馬の先物買いで、ユノエージェントを軸に据える。相手は人気どころのラピッドリーランにユタカリュウオウ、そして人気薄のユタカレオグリン。連複と共に連単も買う。あとは保険で、ラピッドリー−リュウオウの人気2頭の組み合わせ。ラピッドリーランに逃げ切られたらしゃあない。ユタカリュウオウはこのプラス馬体でどうかが懸念される。「ラピッドリーランは逃げ同型のムサシボウシルキーとの兼ね合い次第でしょう。それにしてもここでまたセイコウが突っ込んで来たりすると、馬券的には厄介だよなあ。」とはおさるさん。単勝式ではラピッドリーランが圧倒的な1番人気、ユノエージェントが見込まれて2番人気、ユタカリュウオウは馬体重増が敬遠されたか、結局3番人気であった。

レースなり
さてレース。距離1600mのスタート地点は向こう正面半ば。秋の西陽をまともに浴びて。
ゲートが開く。ラピッドリーランがハナを狙うが、テンのダッシュがそれより勝ったのはムサシボウシルキー。しかし負けじと内からラピッドリーも並びかけて行って、3コーナーあたりで何とかハナを奪取する。2頭差がなく飛ばし、3、4コーナー半ばでは後続は6馬身以上離れる。3番手にユノエージェントが早々に出て、ユタカリュウオウも差がなく続く。

最初の直線(32KB)
最初の直線、先頭内ラピッドリーラン
外にムサシボウシルキーが離れずに

正面スタンド前。先頭内の三分どころをラピッドリーラン。半馬身弱の差で2番手ムサシボウシルキー、これは五分どころ、併せ馬というには内外離れている。4馬身くらいは差があって、3番手内にユタカリュウオウ、同列外目にユノエージェント、ちょっと首の高いフォーム。次列内コトイチ外ムツミセンター。セイコウはこの後ろ、前とは間がある。ミスラッキーが続き、ユタカレオグリンはこれまでにない後方ケツ二の位置取り、上位戦のスピードに付いていけないのか。そして殿はやはりムサシボウタッチ。

最初の直線、ユノエージェント(37KB)
最初の直線、3番手ユノエージェント、首が高い
内にユタカリュウオウ

1、2コーナーを回るあたりでは、中団以降は各馬の間隔が相当開き、かなり縦長の隊列となっている。
向こう流しを迎えずして、ムサシボウシルキーは降参で後退の模様。代わってユタカリュウオウがスッと上昇し、三角手前で先頭ラピッドリーランの外に並びかける。ユノエージェントは3番手から必死に追走するが、前2頭がグングン加速して、これは引き離されていく。ミスラッキーがエージェントに続く。そして密かに、ムサシボウタッチが2コーナードンケツから追い上げる。
が、勝負はラピッドリーランとユタカリュウオウのマッチレース。完全に3番手以下を置き去って、三分三厘を回ってくる。
そして4コーナーから直線に。ユタカリュウオウがジワリと、余裕を持って先頭に立つ。あとはホームストレッチをゴール目がけて一目散。完全に抜け出し終いは独走楽走。結局2着馬に4馬身差をつけての優勝となった。着差以上に引き離した印象の勝利。勝ちタイム1分50秒3は、この日の馬場としてはまずまずの時計だろう。

ユタカリュウオウ(35KB)
ユタカリュウオウ、ゴールへと
西陽を受けて快走

そして2着争い。ラピッドリーランが粘る。3番手ユノエージェントは遅れて四角を回る。ちょっとフラつき気味になって外へ。これは届きそうにない3着ママか。というところ、大外からバタバタと追い込んでくる馬が1頭、これがムサシボウタッチ。何だかんだでどんどん迫る。ユノエージェントを捉えて、さらにゴール寸前ラピッドリーランをも追い詰める。終い一瞬にして非常に際どくなったが、結局ラピッドリーランが、クビ差2着を持ちこたえた。3着ムサシボウタッチ。ユノエージェントは半馬身差4着。
以下はリアルタイムでの記憶なし。ミスラッキーが後半先団を維持して5着。ユタカレオグリンは追い上げるも6着まで。7着中団ママのセイコウ。8着コトイチ、9着ムツミセンターで、最下位は早々に沈んだムサシボウシルキー。

振り返って、そしておしまい
ユタカリュウオウ、緩めに見えた馬体も何のその、実に頼もしい走りで圧勝してしまった。「何だ、やっぱり強かったんだ。」と素直に思った。そして「早い時期から活躍してるけど、レオグリングリン産駒だから超早熟ってこともないんじゃない。」と言うと、おさるさんは「でもなあ、現時点であまりに(完成度高く)まとまっちゃってるから、この先の伸びる余地ってのがあまり期待出来ないんだよなあ。」と。「まあ、次(全日本2歳アラブ優駿)を考えると、引っ張ってくれる地元の馬(ラピッドリーラン)がいて、それを楽に追走して抜け出す形に持ち込めそうなのは、願ったりなんだろうけれども。」とも。
ラピッドリーランにとっては、やはり前半ムサシボウシルキーの存在が鬱陶しかったか。それでも2着に残せているので格好は付けられたか。個人的には、こうしたピーキーでガサのない早熟っぽい逃げ牝馬は、あまり好みではないのだけれど。ただカヅミネオン産駒なので、意外にある程度は成長するかも。
ムサシボウタッチのドンケツ追い込みは、2歳秋にして既に芸の領域か。この時点でテンに行けない追い込み一手の馬って、長じて出世出来るか、甚だ怪しいのだけれども。後半身のひ弱さが、ひょとしてテンの行き脚のなさの原因か。
ユノエージェントはまだまだパワー不足ということが露呈した4着だろう。道中の走りも何となく頼りない。が、成長してパンとした時の期待を、充分抱かせる馬だと思う。「狙うの早過ぎましたな。」とおさるさんも。

本命サイドでの決着で、ワシの馬券は保険で買ったのが引っかかるにとどまった。全敗しなかっただけまし、ということで。
レース後印象的だったのは、表彰式を終えて引き揚げる調教師さん(恐らく)と野田騎手との会話。「馬場重いのか?(これは含水度ではなく砂の深浅についてだろう)」との問いに、野田クン「ハイ、重いです。」と即答していた。間違いなく重く深いのだろう。明日の全日本アラブグランプリを前に、一晩で馬場状態が激変するとも思われず、これは念頭に置いて、明日の決戦の予想に臨みたいと思った次第。

ということで、12月8日の全日本2歳アラブ優駿に向けて、地元福山勢の陣容は、何となく明らかになった感じである。今年は福山での広域交流競走において、ここまで地元勢は全く勝てていないので、何とかしたいところだろう。
「十文字と神山さながらに(ちょっと古い?)、今日の2着馬1着馬でライン組んで、頑張ってもらおうかな。」と、ちょっと期待のおさるさんとワシであった。
と書いておきつつも、「他地区馬も頑張れ!」なんて、八方美人にエールを送る、いい加減なオヤヂがワシなのね。

2002.12.2 記

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