第2回全日本2歳アラブ優駿観戦報告

 2002.12.8、福山、1600m

はじめに〜出走馬について
現在のアラブ競馬界における唯一の2歳全国交流競走、全日本2歳アラブ優駿。昨年福山競馬に新設され、今年で2度目となる。レビンマサが2歳離れした完成度の高い好位差しで制して、ペルターブレーブに続き上山に全日本のタイトルを持ち帰ったのが昨年第1回。「今年はどんな若駒が才能を発揮するのか。」と期待する中、その日が巡ってきた。

その出走馬は以下のフルゲート10頭。()内は騎手、所属地区、性、斤量。他地区馬5頭、地元馬5頭。
ムサシボウタッチ(吉延、福山、牡、54k)、ラピッドリーラン(片桐、福山、牝、53k)、ユノエージェント(嬉、福山、牡、54k)、ユタカリュウオウ(野田、福山、牡、54k)、バンナチック(宮下瞳、愛知、牝、53k)ミルフィーユマリモ(関本淳、上山、牝、53k)、ミスラッキー(藤本、福山、牝、53k)、ビミョウ(坂下、北海道、牡、54k)、ヤマノユーノス(村井、笠松、牡、54k)、クールフォーチュン(岩田、兵庫、牡、54k)
牡馬6頭に牝馬4頭。斤量は一律牡馬54k牝馬53k。

日程の接近した地元2歳重賞との兼ね合いや、長距離輸送の不利をおして、今年も各地から他地区馬がやって来てくれ、非常に楽しみな一戦となった。
まずは他地区馬、北から順に。
北海道からはビミョウ。13戦4勝2着2回。当初は断然の筆頭ダイヘイゲンが登録していたのだが、前哨戦を直前で出走取消、実は前脚腫れたそうで、ここも断念。それに代わって登場。重賞鳳凰賞とジュニアチャンピオンは、いずれもダイヘイゲンの前に4着2着。千二程度の短距離戦だと道中追走に苦しみ追い込み一手だが、距離延びると見違えたような先行・好位競馬を披露。今回の舞台は小回り福山のマイル戦とあって、何とも微妙。
上山からは8月の重賞若草賞馬にして彼の地の2歳トップ、ミルフィーユマリモ。12戦5勝2着5回。持続力と斬れを兼備した差し脚が武器。ただ前走で次位ホマレスターボーイに惜敗。そのHSボーイも今月1日の重賞若竹賞で人気薄馬2頭の前に3着敗退と、地元2歳戦線が混迷ムード。己の地力と所属地区上山のレベルが共に問われる、今回の走りとなろう。
名古屋からは牝馬バンナチック。7戦2勝2着1回。前週2日に施行された地元重賞フェニックス賞を蹴って全国交流挑戦となる。「この馬アレクシアの半妹ですわ。」とは、当日"同志"ディープさんからの入れ知恵。主戦の吉田稔騎手がこの日JRA阪神で騎乗するので、今回はあの宮下瞳騎手が初騎乗で登場する。
笠松からはヤマノユーノス。6戦3勝2着3回。笠松は今年の2歳でアラブ系の入厩が終了なのだが、馬がなかなか集まらずレースが組めぬ中、過去6戦のうち5戦を名古屋に出張して戦ってここへ。9月の地元重賞ジュニアグローリも延期の末結局中止という、恵まれぬ境遇の鬱憤を晴らすべく(?)乗り込む。「テンの行き脚は劣るが末脚には要注目。」とは3号馬さんの御教授。鞍上は地味なベテラン村井栄治騎手。
兵庫からは指定特別栄駿賞を勝ったクールフォーチュン。8戦3勝2着3回。あのクールテツオーの全弟である。秋になってメキメキと頭角を現してきた感で、ワシュウジョージの全妹ワシュウビジン共々兵庫の現2歳トップ。3日後の11日に、地元で重賞園田2歳優駿があり、これが1着賞金400万円も出るレースでありながらも、敢えて他地区遠征でここに挑んできた。その気概は大いに認めたい。
そして地元福山勢は、前開催11月23日の重賞ヤングチャンピオン(以下ヤングCと略)の1着〜5着馬がそのまま登場。番手抜け出しで快勝した、10戦7勝2着1回で勝ち星も受賞賞金も最上位のユタカリュウオウ。スピード逃げ牝馬の5戦3勝2着1回ラピッドリーラン。道中ドンケツ追走から最後展開不問で追い込む7戦1勝2着1回ムサシボウタッチ。ユーノス産駒の大型芦毛素質馬だがまだ幼げな6戦2勝2着2回ユノエージェント。ホーエイヒロボーイ産駒の牝馬4戦2勝ミスラッキー。
当初は金沢のチョウヨールビー(チョウヨームサシの半妹)も登場予定だったのだが、地元重賞アラブフレッシュカップで4着敗退したが故か回避。それにしてもダイヘイゲンだけは、個人的に期待が非常に大きかっただけに、残念。でもまあ、それを充分補いうるだけのメンバーだとは思う。
付言すると、出走馬中ニホンカイユーノス産駒が3頭も。すなわちムサシボウタッチ、ユノエージェント、ヤマノユーノス。未だに重賞勝ち馬は出ていないが、産駒の多さ(初年度とはいえホンマ多い)と晩成型の気も多少あってか、秋を過ぎて、活躍馬が増えてきているのは事実。今回待望の産駒初重賞勝利となるかどうか。

当日の概況、そしてメインレースまで
在来線にて福山に。11時20分過ぎに福山着。ホームでまりおちゃんニーナちゃんのコンビと合流する。競馬場には正午前に着。早々に"リーダー"前田っちと、その隣りにいた「どーしてもビミョウが観たくてやって来たフォーモサボーイ産駒マニア」ラティラーちゃんと合流する。
前日来西日本は広範囲で天気が崩れた。当日の予報は曇りとのことだったが、到着時の天気は小雨。結局最後まで雨が途切れる時間がほとんどないまま。加えて寒波も襲来したようで、非常に寒い。という、悪条件のもとでの競馬観戦となった。
この雨で馬場状態は重。水が浮くまでには至っていないが、砂が雨をよく吸って、締まった馬場である。時計は概して速め。この土日の開催前に砂を入れたようで、先々週の全日本アラブグランプリ時ほどではないが、路面は深そう。
展開としては概ね先行馬に有利かと。前半前列で回って早々に進出した馬の上位入線が多い。「ただ捕まる逃げ馬も結構おるで。その塩梅が微妙は微妙やで。」とはリーダー。

メインレースまでにちょっと注目のレースは2つ。いずれも他地区から転じ今回当地緒戦となる馬が主役。
まずは第5競走の2歳2組戦、距離1600mにおけるサンダーソレイユ。道営からの移籍で、彼の地では鳳凰賞3着ジュニアチャンピオン4着の馬。「大したことないやろ。」という事情通の方々の評価が大勢ながら、レースでは前半2列目3、4番手あたりから、バックで進出して三分三厘では先頭、後続を見事に封じて勝利。「何や意外に強いじゃん。」の声が。勝ち時計1分49秒4も2歳戦としては水準以上だろう。観ていて思ったのは、この馬かなりのピッチ走法で、ひょっとしたら福山の小回りコースが合うかも知れぬということ。さて今後は如何に?
そして第7競走、C2の9組戦、距離1600mにおけるホマレリクオー。上山からやって来た3歳馬で、彼の地ではレビンマサに遙かに差を付けられた世代2番手格。今季初頭かなり期待されたが、それからすれば伸び悩み気味。先月3日の3歳重賞コスモス賞では辛うじてレビンマサの2着。ワシも数度目にしたが印象はあまりよろしくない。「そんなに強くはないやろ。」と言うと「そりゃそうやろけど、C2の9組で格好付かんようだと、レビンマサ以下上山のレベルが疑われるので困る。」とはディープさん。そのレース。道中は外目を3番手あたりで先行。バックで鞍上野田クンの手綱がやや押っつけ押っつけになるも、ジワッと上昇して四角ではほぼ先頭、そして1着。この勝ちタイムは1分48秒2。まずは快勝、なかなかにパワフルな走りであった。

そしてメインレース、パドックから発走まで
メインレースのパドック周回を前に、装鞍所の様子をスタンドの端から観察する。ラピッドリーランは馬服を纏って広場で回されていた。ユノエージェントとユタカリュウオウが並んで馬房の中でガチャガチャと首を振る。ビミョウは長い時間広場で周回。真っ白芦毛に青メンコ。「ヤングメドウやん!ちょっとデカイけど。」と思わずワシ。「かなり白いですがホンマに似てますね。青メンコがたまりませんね。」と3号馬さんも。クールフォーチュンは馬房の中で意外にも至極大人しい。「栄駿賞の時も大人しかったですよ。」とは、これも3号馬さん。
そしてパドックタイム。雨粒がここにきて大きくなるという、非常にイヤラシイ空模様のもと、出走馬が登場する。
1番ムサシボウタッチ。のんびりと回っているが、ヤングC時よりは気合いはあるか。皮膚が薄く毛艶は良好。やはり後半身が薄い。
2番ラピッドリーラン。ガンと実が入っている。気合いが前面に出て力強くグイグイと周回。ただしちょっと冬毛っぽく毛艶はくすんでいる。「冴えない馬ですねえ。」「何やモッさい馬やなあ。」とは後で3号馬さんとディープさん。
3番ユノエージェント。馬体重は前走比-1kなのだが、ヤングC時よりも胴回りは緩め、張りと艶はまずまずだが。ちょっとチャカチャカする。踏み込みはソコソコで、案外平凡。
4番ユタカリュウオウ。キビキビとした身のこなしで毛艶と張りもまずまず。馬体重前走比-12kは、ヤングCが+10kだったので戻した値かと、その時見られた胴の緩さは今日はない。「でも体重の変動激し過ぎるんとちゃうか?」とはリーダー。思ったより今日は小柄に見える。
5番バンナチック。牝馬ながら馬体重492kは出走馬中最大。とにかくデカい。やたらデカい。顔までデカい。ちょっと胴回りは緩めか。そしてトモは馬体の割に力感平凡。キタジマオー産駒にはこういった馬が結構多い。
6番ミルフィーユマリモ。431kの軽量馬だが、それよりは馬体を大きく見せる。キビキビとした身のこなしで、トモも大きく踏み込んでいる。品のある顔立ちも印象的。
7番ミスラッキー。時折鶴首になって、気配は概して煩め。毛艶はななかかだが、馬体重が前走比-13k、その分ヒ腹とトモが弱く見える。馬体はかなり大柄。
8番ビミョウ。かなり白い。首をチャッチャと振って大外を素軽く周回。踏み込みもいい。胴の実入りもあって、イメージしていたより結構大柄。「ビミョウは鳳凰賞の時より腹の毛艶エエで(この時はここに内出血の跡のようなものがあったらしい)。」とはリーダー。「『ヴォケーッ』と脱力した顔で歩いてるねん、タマラン!」とまりおちゃんニーナちゃんは大喜び。ラテ、「うーん、やっぱりイイ。」と大満足。
9番ヤマノユーノス。鶴首になって気合いを現しての周回。毛艶はなかなか良好。しかし馬体重は前走比+11k。これまでを知らぬので比較は出来ぬが、それほど太いとは思われなかった。脚長背高でスラッとしていて、幾分トモが細いのは、他2頭のユーノス産駒にも共通する点。
10番クールフォーチュン。金ラメメンコは兄テツオーと同じ。右目だけに大きなブリンカーを装着、そしてパドックではメンコ二重被り、パドックメンコまで金ラメ。胴が太めでトモの骨格が大きい、ちょっとコロンとしたフォルムは兄テツオーやマルイシヒーローと共通するところ。テツオーより若干小柄だがちょっと脚長に見える。いい毛艶、いい張り、いい実入り。馬体重+4kの434kも、成長分や長距離輸送を考慮しても絶妙の値か、仕上がり良さそう。
どの馬も晴れ舞台に相応しいまずまずのルックスかと。「でも周回中、ボロ出し馬続出やってんで。"尾離れ理論"も何もあったもんやない。」と後にリーダーが。

ミルフィーユマリモ(42KB)
ミルフィーユマリモ、パドック
品のある顔がイイです

本馬場入場から返し馬。クールフォーチュンは兄テツオーの地元戦と同様、入場口から即左折で一角方向に直行。しかしながら真っ先に正面スタンド前にゆったりと流してやって来た。昨年の全日本アラブグランプリにてテツオーが、地元でもしないのに、馬場を1周返し馬したのと同じく、これには初馬場へのスクーリングの意味合いでもあるのか?ユタカリュウオウはガンガンと突っ走る。ラピッドリーランも強め。ミルフィーユマリモはやや強めでシャープに。ヤマノユーノスが馬場の外目を凄いフットワークでダダダダーッと駆けていく。これに「村井やる気満々やないか!」と大御所Oku師匠や"東海の好漢"おーたさんやディープさんが盛り上がる。最後にビミョウが、キレのあるキャンターで通過。

ヤマノユーノス(34KB)
ヤマノユーノス、返し馬
ドドドッと力走

予想。他地区馬にも地元馬にも、突出した馬がいるようには思われず、これ、かなりの混戦模様だと思う。事実、予想紙上でも重いシルシがかなり割れている。
個人的にはホンマに買い目を絞り込めなくて、結局、「逃げ切りあるか?」と見込んで、ラピッドリーランを一応の軸馬に据えて、ここからドッと流す。そしてタテ目もあれこれと。ユタカ、マリモ、ビミョウ、フォーチュンを厚めに。とにかくわらわらと自分でも収拾つかぬほど買った、のだが・・・

さあレース〜雨でも晴れ舞台!
いよいよレース。距離1600m。向こう正面中間地点からの発走。
ゲートが開く。大外クールフォーチュンはちょっと外に吹っ飛び加減の発馬となったが、大事に至らず先行体勢に。内から予想通りラピッドリーランがダッシュしてハナに立つ。が、隣のユノエージェントがビッタリ張り付いていって、ラピッドリーを一人旅に持ち込ませない。ユタカリュウオウも遅れまじとばかり直後に追走3番手。クールフォーチュンはその外から4番手にすんなり。以上4頭が、後ろをやや引き離して、三角過ぎまで進行していく。しかし三分三厘半ば過ぎには、クールフォーチュンはスッとペースを落ち着かせ、前3頭と距離を置くように。このあたり、ユタカリュウオウはちょっとムキになって追走しているような印象。
そして正面スタンド前。先頭変わらずラピッドリーラン。3馬身くらい離れて、2番手内にユノエージェント。半馬身から1馬身ほどの差で、外にユタカリュウオウが。2馬身くらいあって、クールフォーチュンが外目4番手。ほぼ同列のインにミスラッキー。フォーチュンとミスラッキーの間、やや下がってバンナチック。ビミョウはこの外7番手、2列目からここまでは比較的一団。ここでちょっと開いて、ミルフィーユマリモは8番手。ヤマノユーノスがマリモと差がないケツ二で、殿はやっぱりポツンとムサシボウタッチ。

1周目スタンド前(34KB)
最初の直線、先頭ラピッドリー
次列内ユノ外ユタカ、フォーチュンはその次

1コーナーから2コーナー。ここに至ってもラピッドリーランは後続を引き離せず、先団の間隔はむしろ縮まったような。フォーチュンは相変わらず外目先団をじっくり。ミスラッキーや瞳ちゃんバンナチックが、中から前に出ようと差を詰めた感じ。
そして3コーナー手前、先頭ラピッドリーは早くも脚が売り切れ加減で、外へユノエージェントが並びかけてくる。追走ユタカリュウオウも何だか手応えが怪しそうで、当面のライバルエージェントにも行き脚が劣っている。
3コーナーを回る。ここへ満を持して、外からクールフォーチュンがスッとやって来る。イマイチ伸びないユタカリュウオウや後退気味のラピッドリーランを難なく交わして、そして束の間先頭に立ったユノエージェントをも、4コーナーですんなり捉えてこれでフロント。脚いろの差歴然。と、これに単騎迫ったのがミルフィーユマリモ。向こう流しから外を通って自力で押し上がった模様。三分三厘グイグイ迫り来て、四角、クールフォーチュンに急接近。「おおっ関本来たか!」と、隣でカメラ構えたOku師匠はじめ、この模様に場内沸いてくる。
最後の直線、追いすがるミルフィーユマリモ、必殺のロングスパート。しかし逃げ込むクールフォーチュンも手応えは確か。なかなか抜かせない。一瞬「ひょっとして何とかなるか?」と思われる程に見えたのだが、やがて脚いろは同じになって、むしろマリモの伸びは止まったようで、結局クールフォーチュンが、終いはかなり余裕を持ってしのぎ切り(そのようにワシには見えた)、嬉しい優勝のゴールを駆け抜けた。岩田騎手はゴール手前から、左手でフォーチュンの首筋をポンポンと叩いて労っていたような。1馬身遅れて2着にミルフィーユマリモ。
この後ろはかなり開いた感があったのだが、実際はユノエージェントが3馬身差で、粘っての3着。ユタカリュウオウは終始ユノエージェントを抜けずクビ差4着。ヤマノユーノスが四角8番手で回って追い込んだらしく5着。同様にムサシボウタッチは四角ドンケツからの6着。ラピッドリーランは沈んで7着。ビミョウは前半好位も後半どんどん遅れてしまった競馬のようで8着大敗。バンナチックは先行競馬も終い下がってブービー。最下位はバンナチックと同様な競馬でミスラッキー。
勝ち時計1分47秒2。「何じゃそれ。えらい速いでないかい。」とOku師匠も思わす声に出したように、この日の馬場を勘案しても、2歳マイル戦の時計としては相当速い。

勝った岩田騎手、クールフォーチュンをゆっくりともう1周走らせて、ウィニングランに導いた。因みにワシ、フォーチュンVゴールの写真、シャッター切った瞬間に、もたれていた金網揺らされて完全に手ブレで大失敗。ガビーン。

クールフォーチュン、ウィニングラン(38KB)
クールフォーチュン、ウィニングラン
ゴール前写真は失敗なのでこれでご勘弁を

レース終わって、大反省
クールフォーチュンと岩田騎手、サスガの勝利。1周目の三分三厘でと力が抜けて好位前に控えて、後半スッと再上昇して差し切った。「ホンマにレース巧いなあ。」と、3号馬さん共々、そのセンスには感心しきり。テツオーの同時期に比べて、圧倒的強さでは劣るものの、むしろそれが故に、センスや勝負根性(栄駿賞の叩き合いもまた良かった)が兄以上に目立つ。本命で臨め、勝つのは明らかに楽であろう地元重賞を蹴っての挑戦が見事報われた。陣営の英断にも拍手を贈りたい。
ミルフィーユマリモは惜しい2着だったが、実力を知らしむるに充分は走りだったと思う。己の長所を最大限に発揮した息の長い自力差しで中団からよく迫った。レビンマサに続く上山勢の連覇はならなかったが、それにしても上山からの遠征馬は、福山で結果を残すなあ。感心。
ユノエージェントは嬉騎手らしい先行競馬で3着。前半からそのまま前に残った。一応は素質馬の片鱗というやつか。キャラ的には好位からの競馬の方が合いそうなのだが。そしてユタカリュウオウはヤングCの快勝から一転、伸びずの4着。ちょっとラピッドリーの番手に拘り過ぎたか、加えてユノエージェントに先にそれをされたのが誤算か。何となく道中進行に余裕がなかった。両者のヤングCでの5馬身弱で1.1秒差が、クビ差逆転した。結局現状の地元2歳勢は、まだまだ上位拮抗で勢力図も固まり切ってはいないということか。
ヤマノユーノスの追い込み5着は、己のカラーだけは出せたというところか。ムサシボウタッチにも同じことが言えよう。今日の馬場では、殿一気の競馬は通じないかなあ。「村井の追い込みに期待してたのに、駄目じゃん。」とは"神出鬼没"のさまにべっぴんさん。「サスガに先々週のホーエイトップみたいに、一瞬の夢は見られなかったなあ。」とおーたさん。「ムサシボウタッチの追い込み3着はヒジョーにクサい。」とリーダー共々戦前言い合っていたのだが、そこまでには至らなかった。それにしてもこの2頭、ルックスもキャラも何となく被っているような。
ラピッドリーランは単騎逃げの叶う局面が皆無にせよ、いいところのない完敗。ビミョウは戦前危惧したように、小回りコースの競馬が合わなかったのかも。この馬がマイル戦で、よもやスタミナ切れはあるまいよ。前半好位にいただけに。末脚のエンジン掛けようにも、ストレッチ短いわコース狭いわでは・・・バンナチックは、デカかった・・・

1着フォーチュン2着マリモ。「よしよし的中。」と思って馬券確認したところ、「ゲッ!買い目抜けてるやん、うっそ!?」と、非常にショックなワシ。前述の通り、とてもあたふたした状況で購入したので、思いっ切り抜け目となっている。「わざわざ上山に行って観た縁ある馬に、地元兵庫の挑戦者でしょ。アンタが真っ先に買わなきゃいけない馬券じゃない。何やってるのよ?」と栃さんから突っ込みが飛ぶ。「ラピッドリーラン流しって、何やそれ?ヤングCの観戦記であれだけ評価低く書いておいて。何をらしくない馬券買うてんねん。」「そやから逃げ馬でも結構トンどる言うたっちゅうの!」とディープさんもリーダーもグサリ!そしてワシ、死亡。実際、ホンマにらしくない妙な買い方したもんだとは思う。

クールフォーチュンの顔(33KB)
口取り前のフォーチュンの横顔
金ラメブリンカーメンコが特徴

もう一つのメイン、第10レース、ポインセチア特別
この日の最終レース、古馬A1の1800m戦が大きな見もの。単なる平場オープンにあらず、次開催に頂点決戦福山大賞典を控えて、有力どころがそろそろピークに近づけてこようところ、その前哨戦となる大事な一戦なのである。出走馬は以下の10頭。
リジョウガバナー(吉延、53k)、ユノワンサイド(對ィ、55k)、ブレイヴシーン(野田、51k)、ドリーミング(渡辺、55k)、チュウオーマックス(岡田、53k)、ホマレスターライツ(佐原、53k)、グリンティアラ(片桐、53k)、フジナミスペシャル(嬉、56k)、リーガルジョージ(▲山田、50k)、ホマレエリート(鋤田、53k)
注目はユノワンサイド。というよりは、今回の鞍上とのコンビ。手綱を取るのは對ィ騎手。前益田所属でその廃止に伴い移籍してきて、今開催より福山で騎乗開始となった。まだまだ若手。主戦石井騎手が負傷欠場中で、なおかつ自厩舎の馬とはいえ、いきなり大本命の"福山千八限定最強馬"騎乗となった。この日のユノワンがこれがまた気合いも馬体も最高で、「これで負けたらアカンやろ。」状態。「今後の騎手人生における信用を賭けての一戦」となってしまった。
ホマレエリートは馬体重も絞れてシャープな作りに戻った感、活気もある。ドリーミングは変わらず悠々と。そして問題はフジナミスペシャル。ここで好走するようだと大賞典に向けてややこしくなるのだが、プラス体重で余裕残しの馬体、気合いもソコソコという、いかにも本番前の消化戦といった趣で登場し「よしよし計算通り。」。
そしてレース。内でユノワン對ィコンビ、見事に発馬のタイミング合わず、半馬身ほど出負け。外隣のブレイヴがダッシュ良くハナに立とうとするのを無理から併走していくことになる。外からフジナミもすんなり次列先行、ホマスタもティアラも差がなく前へという流れ。そして最初の三分三厘から四角にかけて、ユノワンが何とか先頭に立つ。ホームでは流れもソコソコに落ち着いて、先頭ユノワンから6、7番手ドリーミングまでは差のない集団になる。夏場を休んで休養明け2戦目ティアラの行きっぷりが妙に目立つ。
レース後半三角手前、抜け出すユノワンサイド。次列は先団4頭横並びのところを、中団からドリーミングが一気に動いて追い付いて、その真ん中を割って2番手に押し上がる。三分三厘先頭ユノワンに並びかけて、あとはゴールまで2頭の叩き合い。実況さんまで「頑張れ!對ィ雄一郎!」と応援する始末。が、そこは千八限定最強馬の面目躍如、抜かせずしのぎ切って1着入線。まさに馬が對ィクンに移籍後初勝利をプレゼントした体裁となった。ホンマ、勝ててヤレヤレ。
2着3/4馬身差でドリーミング。3着後半よく押し上げたが間に合わなかったホマレエリート。今日はドリーミングの方が先に仕掛けて追い上げて、ホンマ久々にホマレエリートに先着した。4着後半差したリーガルジョージ。ホマスタは先行競馬から粘れず5着。フジナミは勝ち負けに全く絡まぬ6着敗退。
重馬場の千八戦で勝ちタイム1分58秒5はまずまずの時計。さすがにオープン馬。あとは無事に、正月の決戦を迎えて下さいませ、皆様。個人的にはドリーミングに期待、かな。フジナミスペシャルとユノワンサイドの人気はどうなることやら(これが大賞典最大の関心事だったりする)。

おしまい
ということで、最後まで悪天候のもと、本日の競馬は終了。フォーチュンの勝利、マリモの健闘、ユノワン對ィクンの名(迷?)プレーと、印象深い出来事も多く楽しい競馬ではあった。が、おマヌケで馬券外すわ写真失敗するわで、トホホな出来事も多かったなあ。冷たい雨はナミダ雨?ああ、どよよん・・・

2002.12.10 記

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