第83回名古屋杯観戦報告

 2003.1.4、名古屋、1900m

はじめに
名古屋競馬正月開催の大一番、冬の名古屋杯。春の名古屋杯共々、名古屋アラブ古馬競走のうち、ただ2つの東海SPIレースである。昨年まではこのレース、左回りの中京2300mという、個性際立った施行条件であった。が、名古屋公営の中京開催が今年度から消滅してしまったため、今回は春の名古屋杯と同様、名古屋1900m戦である。
また1月2日には、お隣の笠松で古馬重賞アラブギフ大賞典があり、これも1900m戦。「同時期に同じ東海地区で、古馬重賞重複開催してくれるなよ。出走馬分散するやないか。」と従前より思っていたところなのだが、今年は一層条件が似通ったものとなってしまった。因みに両レースの1着賞金は、このレースが350万円のところ、アラブギフは400万円である。
それが効いたかのかどうか真相は不明だが、名古屋杯トライアルである昨年末のシルバー争覇の勝者ブラウンダンディや、昨年力を付けたサマーバース、何故か好調のクールショーと、3頭の名古屋所属馬がアラブギフ参戦で、地元名古屋杯はパスとなった。殊にブラウンダンディは、昨年まで中京冬の名古屋杯を3連覇しており、まさに"鬼"状態だったのだが、舞台変わる今回については、「拘りも不要」といったところか。結果アラブギフは笠松ミスターハヤブサが勝ち、サマーバースは2着、クールショー4着、ブラウンダンディは6着敗退した。
なお「最強アラブ!」マリンレオは、両アラブ重賞いずれでもなく、元旦笠松のサラ重賞東海ゴールドカップに出走。見事に勝った。

出走メンバーについて
そんな状況のもと、集った出走メンバーは以下のフルゲート12頭。()内は騎手、性齢、斤量。
ジョニーダンサー(河端、牝8、54k)、ゴールドランプ(兒島、牡6、56k)、ボールドヒリュウ、(竹下、牡5、57k)、ヘイセイチェッカー(宮下、牝6、54k)、スマノリーフ(安部、牝5、55k)、セトノランボー(宇都、牡6、56k)、ドリームボール(岡部、牡7、56k)、ケイウントップ(横井、牡5、57k)、アインナッチー(平田、牝6、54k)、グロリアスメロディ(安藤貴、牝7、54k)、イメージスター(横川、牡8、56k)、キソノコウリューウ(戸部、牡4、57k)
馬齢定量戦なのだが、明け4、5歳が57kで6歳以上は56k、牝馬2k減というもの。東海地区は日頃それほど斤量背負わせないので、明け4歳馬にとっていきなりの57kは結構重いし、競走馬の高齢化が進む中、明け6歳7歳なんてバリバリ元気であるところ1k軽いという、何とも違和感ある定量なのである。

出走馬は全て名古屋所属。前述の通り、名古屋古馬の有力どころが笠松に矛先を向けたので、結果このレース「地元ヒラオープン馬大集合」然とした、混戦ムードぷんぷんのものとなった。競馬場に入場早々遭遇した"東海の好漢"おーたさんも開口一番「これは当てるの難しいレースだよねえ、どの馬も2着には来れそうな感じだもんな。」と。

当日の概況、そしてメインレースまで
名古屋へは当日住処から新幹線で。1時に名駅前の名鉄バスセンターを出るファンバス最終便に乗って土古へ。
前日の雨と打って変わって、この日の午前中は好天。しかし冬の天気なので、午後になるとやはり曇ってくる。冬の名古屋地方の常で、強い西風(これが伊吹颪です)が吹いて、非常に寒い。
馬場状態は重の発表。コース表面の所々に水が浮いて、不良に近いか。

この日の番組のうち、アラブ系競走は2つ。一方は名古屋杯、もう一方は第8競走、A2組戦の寿特別。オープン2組の一戦である。距離1600m。ここの注目は明け4歳アイシスエール。昨年のアラブダービー、アラブ王冠を共に3着で、昨年の名古屋3歳2番手格だった馬である。その後もじわじわ出世して、現在A2戦を2連勝中、今回も条件据え置き、確勝モードで臨む。
そのレース、注目のアイシスエールは序盤から先団。元来が差し馬のこの馬としては早目の競馬。バック半ばでは横一線の前4頭の一角、ここから3、4コーナー抜け出して快勝。
「いよいよオープンか。」と期待の高まるところなのだが、「現状のままだとあと2回くらい勝たないと、持ち賞金上ではA1に上がれない。」そうで。ちょっと勿体ない。

パドックから発走まで
メインレースの名古屋杯は最終第11競走、16時20分発走。ということで、3時50分近くになって、ようやくパドック周回が始まる。
1番ジョニーダンサー。大人しく周回。馬体張りはあって毛艶もまずまず。前走前開催の師走オープン11着。3走前と5走前にA2戦2着がある。
2番ゴールドランプ。胴長ながらもガッチリした体型だが、胴は太め。冬毛気味で毛艶は冴えない。トモの送りが全く出ない引きずった歩様で気になる。前走シルバー争覇2着。昨秋来好調のよう。基本的には先行馬だが、差しても競馬が出来る。
3番ボールドヒリュウ。毛艶も張りも文句なく、ジワッと気合いが乗った周回気配も相まって、見た目は最高。おーたさんも「何だか妙にイイよね。」と。"同志"ディープさんは「ふーん、ボールドヒリュウねえ。」と至極冷淡。というのも「前走シルバー争覇6着のクセに、今回何でこんなに人気してるんだ?」と不審に思っていたからのようで。そのココロは、前々走笠松の準重賞アラブ銀杯で2着だったから。しかし安勝鞍上で最高の競馬をやって、ミスターハヤブサに敵わないのは悲しい。
4番ヘイセイチェッカー。のんびりと周回している。毛艶と馬体張りは今一つ。昨年のこのレース時も案外だったので、やはり冬の牝馬ということか。トモが貧弱。前走師走オープン2着。秋以降は春頃の勢いが失せた。
5番スマノリーフ。パドックの大外を歩く。踏み込む歩幅は出ているが、馬体はちょっと冬毛気味。前走師走オープン4着、前々走シルバー争覇7着。4走前と3走前をそれぞれA3戦A2戦で連勝している。
6番がセトノランボー。馬体重520kの値通りの大型馬。伸びやかかつ剛直な馬体。張りも上々。力強い踏み込みで、トモの出も目立つ。首を軽く上下させてリズムを取って周回。前走シルバー争覇は期待されつつも4着だったが、これは渋々逃げての結果らしい。基本的には好位差しタイプ。5走前から2走前は1着2着1着1着、現在名古屋オープン界で最も安定している。因みにこの馬、数年前当地の有力馬だったローテーションの半弟。父がカヅミネオンからホーエイヒロボーイに変わっている。
7番ドリームボール。コロンとして太い馬体、腹のラインも垂れ気味。冬毛っぽい毛艶で見た目には冴えない。が、肩の捌きは柔らかく、トモの歩みも力強い。昨年の名古屋杯5着以降10ヶ月休養、復帰以降3戦するも11着4着11着。前走11着はシルバー争覇。「穴で面白いのはこれだと思うんだよな。距離千九は長いって判っとるけど。」とおーたさんも注目。
8番ケイウントップ。コンパクトな芦毛馬。キビキビとした身のこなし。毛並みは割と良さそう。胴はコロンと太い。前走師走オープン3着、前々走シルバー争覇10着。
9番アインナッチー。腹が太くてコロンコロン。全身冬毛が生えている。前走師走オープン10着。
10番グロリアスメロディ。これがもう、剛毛状態な冬毛に覆われていて見た目最悪。やる気無いのか柔らかいのかよく判らぬ気配。歩幅は出ているが、ちょっとトモが流れている。前走師走オープン1着。
11番イメージスター。これ、毛艶結構よくて、皮膚も薄そう。前走師走オープン6着。
12番がキソノコウリューウ。476kの馬体重は+4k、どんどん目方が増しているが、その通りバンバンに実が入って、馬体も大きくゴツくなっている。バキバキのトモの送りはこの馬なり。首を下げて、地面を気にするように歩く。前走シルバー争覇は8着。3走前が3歳重賞帝冠賞1着で、2走前は古馬オープン2着。
見た目好感は人気の2頭、セトノランボーとキソノコウリューウ、そしてボールドヒリュウの出来が出色。

本馬場入場から返し馬。この頃になると西の空が曇って、空が真っ暗になってくる。加えて風が一層きつくなり、極寒の状況。「何でこんな思いしてこんなところに立ってなければならんのだ?」という気分になる。
ドリームボールは入場口から一角方向に直行して、早々にまる1周してスタンド前を強めに流して行く。ヘイセイチェッカーが入場時やや煩い。ボールドヒリュウは騎手が跨って以降煩くなろうところ、何とかじわり抑制されている。セトノランボーは、鞍上宇都騎手の手綱はガッチリながら、スピードの乗った物凄い迫力のキャンターで呻りを上げて通過していく。キソノコウリューウも力強く。

予想。とにかく難しい。そこへ持ってきて、ワシ、年明け以降、馬券3日連敗。何としても当てたいので、なりふり構わず、セトノ、コウリューウ、チェッカー、ボールド、ドリーム、ゴールドの6頭馬複ボックスを敢行する。まあこれはこれとして、本線馬券はキソノコウリューウから。セトノランボーが相手筆頭で、あとはボールドヒリュウととゴールドランプ。おーたさんも難しいと言いつつも「ここはキソノコウリューウ軸でいいと思うけど。」と。「前走シルバー争覇は1番枠で逃げさせられる展開になってしまったのが敗因、今回は大外枠から2、3番手に控えて競馬出来そう。」とは、『競馬エース』も、そして前日園田の新春賞に続きお目に掛かったゴールドレットさんも言及するところ。

レースなり
さてレース。距離1900mのスタート地点は2コーナー。真っ暗だった空が、レースを前に西の地平線沿いの雲が切れて、再度沈みかけの西日が差すようになる。写真撮影的には、光りが戻ってくれて救われた気分。
ゲートが開く。横一線のスタートから、ヘイセイチェッカーがジワリとハナに立つ。隣のスマノリーフが差がなく続いて2番手。すかさずセトノランボーも離れず先行体勢。キソノコウリューウは予定通り2列目以降に控えるのは叶ったが、やっぱり行きたがって折り合いを欠き、外目でバタバタしている。
正面スタンド前。先頭引き続き内でヘイセイチェッカー。1馬身弱下がって次列、チェッカーのやや外に2番手スマノリーフ、この外にアインナッチー、キソノコウリューウはさらに外、依然掛かり気味。スマノリーフの内やや下がったところにセトノランボーがいる。ここまで先団。少々開いて、ドリームボールが中団の真ん中、このあたりのインベタにジョニーダンサー、外にケイウントップやイメージスター。ボールドヒリュウはさらに後ろで、外グロリアスメロディ共々ケツ二。ゴールドランプは今日も後方からでこれが殿。とはいえ先頭チェッカーから殿まで、ほぼ一団の詰まった隊形。

1周目(30KB)
1周目正面スタンド前
先頭内チェッカー次列大外掛かったコウリューウ

このままレースは向こう正面へ。ヘイセイチェッカーがリードはあまりないものの後続を引っ張って逃げる。しかし三角手前、内からセトノランボーが仕掛ける。グイと前のチェッカーに迫る。外からはキソノコウリューウが、一旦は下げた位置取りから再上昇して迫る。ヘイセイチェッカーは、ランボーに直付けされて厳しくなりつつも健闘で、そのまま先頭死守で三分三厘回ってくる。

最後の直線(32KB)
最後の直線、残り50くらい、抜け出すセトノランボー
食い下がるヘイセイチェッカー追うキソノコウリューウ

そして最後の直線勝負。内ランボー中チェッカー外コウリューウの追い比べ。チェッカーがよく辛抱するも、四角回って程なく、セトノランボーが内からグッと抜け出した。これで勝負あって、嬉しい重賞初制覇。
しかしチェッカーもコウリューウも粘走で勝ち馬に離れず食い下がり、2着とは僅か3/4馬身差。キソノコウリューウは道中後手踏んだ感もあり、直線外から追いすがるも、結局ヘイセイチェッカーがこれをしのぎ切って2着に残った。コウリューウはクビ差3着。

セトノランボー(38KB)
セトノランボー、ゴールへ
グイッとクビを突き出し進む力強いフォーム

以降はリアルタイムでの記憶なし。グロリアスメロディは終い大外強襲してクビ差4着。ボールドヒリュウは前半我慢の後方競馬から後半内を押し上がるも及ばす3馬身差の5着。6着好位ママケイウントップ、7着アインナッチー8着スマノリーフは前半前列から落ちて。9着ゴールドランプは完全不発。10着イメージスター、ドリームボールは前半中団も全く追い込めずブービーで、ジョニーダンサーが最下位。

振り返って、そしておしまい
払戻金、枠複1,630円、馬複1,670円、枠単1,680円、馬単1,960円。連複と連単で差のない配当となった。ワシも6頭ボックスで引っ掛かったものの、キソノコウリューウ本線でトリガミの結果。
セトノランボー、強い競馬だった。東海古馬アラブ界は、断然のトップマリンレオの存在を除けば、かなり混戦模様なので、もっと活躍できる余地は充分にあろう。またこの馬、とても強そうに見えるルックスである。重心は決して低くないのだが、首を下げて前にぐいぐい突き出して突進するフォーム、福山ダービー制した頃のトモシロトーザイみたいだわ。今回初めて目にしたが、結構気に入った。
ヘイセイチェッカーは近走の戦績からすれば好走だろう。去年も「見た目冴えない」と思ったところ3着だったので、冬場はルックスは落ちつつも走るのだろうか。瞳騎手の積極策が吉と出た感じ。尤も、この馬このコンビが好結果出そうとすれば、この手しかないのだろうけれども。
キソノコウリューウはいかにも乗りにくそうな馬といった印象。終始掛かりっぱなしだった。内枠から押し出されると逃げざるを得ず、そうなると行きたがり、外枠で控えても結局折り合い難しい、中枠で揉まれたらなお悪い、どう競馬しろっちゅうねん?ただ、パワー強化は馬体にもよく現れているので、まだ期待は持てる。ホントに馬体は3歳当初から見違えた。このあたり、ブラウンダンディが3歳初夏から4歳時までにかけて、別馬のように立派になった、その様に似ると思う。
「グロリアスメロディ、あんな冬毛で4着来てるで。」とディープさんが言及したように、これは脱帽。ボールドヒリュウは行きたがるのを無理矢理下げて、前の馬群を壁にしての競馬。気性難は今だ解消されぬのか。何だか陣営が全然手の内に入れてないようで、兵庫時代を知る人間からすれば不満。ゴールドランプは全くアテにならないな。ドリームボールは、ちょっと現状では厳しそう。

ということで、大晦日から5日連続だった、年末年始アラブ重賞行脚も、これで終了。旅程は無事終えられたものの、馬券は散々の巻であった。
最後にセトノランボーについて、しょーもないこと考えたので再び。名古屋のスターになったところでこんなこと書くのも何なのだけれども・・・
この馬、福山所属になったら、「名は体を表す」で面白いんじゃないか。那俄性哲也厩舎に入厩してもらって、一点ものメンコ被って登場してほしいよなあ。額に輝く、
「瀬戸乃乱暴」
  ↑ベタベタやがな・・・

2003.1.26 記

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