第34回新春賞観戦報告

 2003.1.13、福山、1800m

はじめに〜何故に千八戦?今年の新春賞
福山競馬で唯一のA2重賞、新春賞。これまではその名に相応しくなく、1月下旬、正月開催の次開催の後半に施行されるのが常だったが、今年はその開催の前半に位置し、辛うじて正月気分残る中での施行となった。
A2重賞という点ともう一つ、この競走の個性はその施行距離。準オープンのレースながら2250m、桜花賞菊花賞や全日本アラブグランプリと同様の福山伝統の長丁場。であったのだが・・・今年今回蓋を開けたら、距離1800mとなっているではないか!これはホンマに意外な、予想紙さんにとっても不意のことだったようで。当日の馬場内の重賞・特別競走予告の看板も「新春賞、A2、2250m」となっている。「日頃走り慣れない距離二二五っていうところに、紛れが生じてさ、準オープン重賞ながら面白かったのに。これじゃ魅力失せるよな。」とは、"同志"ディープさんばかりか、『福山エース』紙上で、樋本デスクまでもが言及するところなのである。

出走メンバーについて
さて出走馬は以下のフルゲート10頭。()内は騎手、性齢、斤量。
セブンアトム(佐原、牡6、54k)、エリートカップ(吉延、牡7、54k)、メガビソウ(鋤田、牡6、54k)、サエノリーダー(楢崎、牡6、54k)、ムーンライトブルー(岡崎、牡7、54k)、チュウオーマックス(岡田、牡6、54k)、フジキタイトル(三村、牡8、54k)、ミスターグラシアス(渡辺、牡7、54k)、グリンティアラ(片桐、牝7、53k)、ノースパワー(松本、牡6、54k)
馬齢定量戦。紅一点グリンティアラが1k軽い53kで他は54k。全馬6歳以上である。

そのものズバリで、これが今開催におけるA2格付けの10頭。このうち、セブンアトムとグリンティアラは、本来ならばA1バリバリの馬。いずれも昨年11月の3開催前が休養明け緒戦で、それ以後一気にオープンに返り咲けず。「であるならば。」とばかり、狙ったようにここに矛先を向けたクチである。エリートカップ1頭が、前開催大賞典を走って(9着最下位)中10日でここへ。
因みにこの10頭のうち、昨年に続いて登場する馬が2頭。すなわちメガビソウ(昨年2着)、エリートカップ(同3着)、エリートカップは3年連続の出走である。尤も、A2重賞に連続出走するということは、A1に突き抜けられず、ここに居座ってしまっている馬であるわけで、あまり自慢にもならぬのだけれども。

当日の概況
昼過ぎに現地に到着。朝は曇天だったが次第に回復して、競馬場の天気は晴れ。風はあるが気温は比較的高くて過ごしやすい。コースの対面、バックストレッチの向こうは芦田川の河川敷、凧が数多く揚がっている。正月気分の名残が感じられて、レース名にも相応しいアクセントとなっている。
馬場状態は良。今開催に際し砂を入れたそうで、正月の大賞典よりは馬場は深いとのこと。しかし見た目にはソコソコの深さな感じ。最近降雨はないようで、砂はバサバサ。
前半の1250m戦では差し馬の台頭が目立った。マイル戦でもその傾向が続く。

パドックから発走まで
さてパドックタイム。
1番セブンアトム。良く言えばガッチリと、有り体に言えば重いルックス。大人しく周回していたが次第にキビキビしてくる。毛艶も張りもソコソコ。前走年末29日のA1A2混合、つまり大賞典の出走に漏れたオープン馬の一戦で3着。
2番エリートカップ。パンパンの馬体張りで毛艶も上々。姿勢は高いがキビキビとした身のこなしでルックスは好感。大賞典9着からの強行日程も、追い込みプロパーだけに力の出し所次第では、今回も充分怖い。
3番メガビソウ。ちょっと毛艶はイマイチだが、ブリブリに実の入った馬体。比較的胴長で若干背垂れ。動きはキビキビしている。前走年末のA1A2戦を勝利。同等の相手にはその気になれば圧勝できるが、元来ムラッ気で好走を連発出来ず、このあたりにA1に定着出来ない一因があるとか。
4番サエノリーダー。青鹿毛漆黒の馬体はピチピチに張っていて、気合い乗りも相まって、見た目だけなら好感。左の鼻先だけが白く、モナクダイキチやメジロアルダンと同じ。前走年末のA1A2戦6着。これもアテにならないクチのよう。
5番ムーンライトブルー。上山で4重賞を制した"稀代のクセ馬バカ馬"が、昨秋当地に転じ6戦1勝2着2回3着1回で、今回7戦目。前走年末のA3戦を勝ってここに間に合った。馬体の張りと実入りは上々で、このあたりは上山時代と変わらず。時にキョロキョロとしつつ、舌をべろりと出しかけているが、首を上下させて、概ねじんわりと。トモの踏み込みは浅め。上山時代は「狂気の逃げ」が真骨頂だったが、馬群に入って小器用に競馬出来ないのがネックのようで、当地では追い込み馬になっている。
6番チュウオーマックス。真っ黒で胴がボン!とした体型だが、トモの力感には欠ける。大人しい気配。昨秋はA1を走ったが、ちょっと成績下降気味。前走年末のA1A2戦8着。
7番フジキタイトル。パンパンに実の入った胴体、張りも上々。前半身に比してトモ回りはソコソコで、踏み込みが浅いのはこの馬なり。実はこの馬、地味ながら「隠れた好馬体馬」だと思う。大人しく周回。前走年末のA1A2戦4着。
8番ミスターグラシアス。周回開始時、「あれ?1頭足らんで。」と、隣の"リーダー"前田っち。実はこの馬が入場当初から最後まで、入り口で止まったまま周回しなかったから。ということで、パドック気配は観察出来ず。渡辺騎手が跨って以降、その姿を見るにつけ、かなりシャープな馬体で、ともすればヒ腹がスッキリし過ぎかも。張りはまずまず。悍性キツそう。前走年末のA3戦5着。因みにこの馬、イクノシンプウの全兄だそうな。
9番グリンティアラ。今日は妙に胴長に、無駄に(失礼!)大きく見える。毛艶はソコソコ、正直よろしくない。トモの歩みは大股なのだが、ちょっと出が遅れ気味、流れた感じ。何となくガニ股でケツが開き気味、まさかフケてはいまいか。「グリンティアラも歳取ったよなあ。全盛時の見る影もない。」とは"同志"ディープさん。2年前の大賞典、最高の仕上げだった彼女を知る者としては、どうしてもシビアにそう思えるのだろう。
10番ノースパワー。これも胴長で、ティアラと同様毛艶の冴えない栗毛馬。胴の立派さの割にはトモは平凡。大人しい気配。昨秋まで兵庫所属のヒラオープン馬、転入以降5戦して緒戦と3戦目をA3で1着2着している。前走年末のA3戦6着。ノースパークにノースタイヨウ、ノースパワーと、(元)兵庫のノース軍団はどれもキャラ紛らわしく、ワシはこの馬の兵庫時代って印象皆無。

本馬場入場から返し馬。メガビソウは入場して即左折で一角方向に直行。そして真っ先にホームへやって来る。よく抑制されたやや強めの返し馬。ムーンライトブルーは首をひん曲げて煩い入場行進、キャンターもで首を上げて岡崎さんの手綱が張っている。グリンティアラは内ラチ沿いをジワリと。セブンアトムもリラックスして軽め。フジキタイトルは例によって、首を前に突き出し口を割ってガンガン突っ走って、鞍上三村クンは見事に持って行かれている。

ムーンライトブルー(34KB)
ムーンライトブルー、ダクに下ろす
どっち向いとるねん?

予想。軸はムーンライトブルー。この馬の走りを観ることが、今回このレースを現地観戦する最大の意義でもあるので。枠単で、相手にアトム、ティアラ、メガビソウ、そして追い込み馬のフジキとグラシアスが同枠で面白そうな7枠へ。同じ買い目で枠複も。申し訳程度にタテ目のアトム−ティアラと、アトム−7枠も。
3号馬さんもお楽しみはムーンライトブルー。しかしディープさんはこのあたり正反対の見解で、曰く「ムーンライトブルーが2走続けて好走出来る馬だと思えます?わしは買いませんから。」と、完全無視の模様。上山時代から、この馬を全く信用しないのは彼のポリシー。リーダーは追い込み連中が気になりつつも、結局"尾離れ理論"もあって、アトムとティアラを信頼のよう。

レースなり
さてレース。距離1800m、2コーナーからの発走。
ゲートが開く。エリートカップがアオり気味の発馬、ミスターグラシアスとムーンライトブルーも遅れるが、これらは元来後方待機の馬なので、そのまま追走していくことに。さて、セブンアトムがすんなり先手を取ってハナに立つ。が、メガビソウも好発からアトムに離れず付いていき先団の競馬に。チュウオーマックスが続き3、4番手、サエノリーダーもこれに続く。グリンティアラはまずは中団から。
1周目の三分三厘では、先頭アトムに2番手メガビソウが直付けの形に。チュウオーマックスはやや控え4番手に、代わって外からサエノリーダーが上がって3番手となる。
正面スタンド前。先頭内でセブンアトム。殆ど同列の馬場真ん中にメガビソウ。この直後にサエノリーダー、かなり掛かり気味。ややあって次列内にチュウオーマックス、グリンティアラはこの同列外、メガビソウと同じライン。ここまでが先団・好位。以下ややあって、ノースパワーが6番手。直後外にミスターグラシアス。ここでまた間隔が開いて、ムーンライトブルーとエリートカップが追走。さらに後ろにフジキタイトルが単騎殿。ペースはそれほど速くなさそう。

1周目(29KB)
1周目、正面スタンド前
先頭内アトム、ほぼ同列外にメガビソウ

向こう正面、先行3頭はそのままで、岡田チュウオーマックスは早くも後退気味。代わって押し上がるのはグリンティアラ、外から楽に寄せ加減。後方からエリートカップやノースパワーも上昇気味。ムーンライトブルーも進出を試みるが、中団に取り付くのがやっとのよう。
そして3コーナー。先頭セブンアトムも、早々に外からメガビソウが馬体を併せて交わしにかかる。するとこのあたりセブンアトム、抵抗出来ず呆気なく後退してしまう。サエノリーダーも置かれ加減。そしてメガビソウの外にグリンティアラが急接近。この両頭馬体が並びつつ回る三分三厘、しかしメガビソウ、ティアラを前に出させない。
そして最後の直線勝負。メガビソウ、直線半ば手前までにはグリンティアラを振り切って抜け出す。そのまま最後まで走り切って、1馬身半差の1着入線。昨年ノアの独走に屈してお預けとなったこのレースを、1年越しで制することとなった。

メガビソウ(41KB)
メガビソウ、ゴールへ
胴長巨躯を伸ばして突き進む

さて2着争い。グリンティアラが地力で2着に粘ろうかというところ、三角以降、中団から密かに押し上げていたノースパワーが外から襲来。残り50あたりか、いつの間にティアラを抜き去って2着獲り。ティアラは1馬身半差の3着に落ちた。フジキタイトルが三角ドンケツで回って追い込んでの4着。ムーンライトブルーはそれより前の位置から仕掛けつつも、もがいてどうにかこうにかの5着。サエノリーダーは後半伸びず6着。エリートカップはバックで一時押し上がるも伸び切れず7着。8着ミスターグラシアスは追い込み不発。セブンアトムは終い完全失速で9着大敗。チュウオーマックスが早々にタレて最下位。

また反省、そしておしまい
メガビソウ、完勝である。スローな逃げ馬にすんなり直付けして自力で交わし、そのまま押し切った。強いじゃないか。常時これだけ走れれば、A1定着出来ようものを。やっぱり気分屋のようだ。実際、レースでは実にスムーズに走っていたのに、口取り撮影時は終始ガチャガチャ煩かった。因みに、巨体の割には額に小星のあるきょとんとした顔で、結構可愛い。
ノースパワーの2着にはビックリ。近2走好位競馬で8着6着と、当地では頭を打った感じがしたところ、差し強襲でこの結果。しかも鞍上は地味な松本騎手。買えない。おかげで払戻金、人気のグリンティアラが同枠なので、枠複と枠単はそれぞれ690円と1,310円だったものの、馬複何と20,620円。単勝1番人気のメガビソウが相手でこれである。
グリンティアラが捲り切った後フワッと脚が鈍るのは元来の個性、弱点衝かれた体裁で3着。「しゃーないなー」。A2に落ちてここを獲ろうという目論見は失敗してしまったわけだ。
フジキタイトルの勝負決しての追い込みは個性。
そしてムーンライトブルー、やっぱりアテにならず5着。「だから言わんこっちゃない。」とばかりにディープさん。後方待機の道中、岡崎さんをもってしても乗りにくそうであったし、2周目バックで必死に押し上げようとするも、行き脚はイマイチだった。上山時代のように、一度逃げる競馬を試みて欲しいと思うところなのだが、何せこの馬、加速した状態ではラチ頼らないとコーナー回れないからして、この幅員も狭い弁当箱コースでは、やっぱり危険かなあ。
セブンアトムは全く案外。平均ペースで他馬に絡まれながらも粘走し、交わされても沈没しないのがこの馬の取り柄であるところ、三角でギブアップではどうしょうもない。戦後『福山エース』の樋本デスクが、「セブンアトムは手綱を緩めたら駄目。」と、佐原クンに苦言を呈していたが、確かにそう。立て直しに期待。とは言うものの、カヅミネオン産駒の出世馬って、押せ押せで使われ続けると、その間想像以上に強くなるけれど、休養や大きな壁などで一息入ってしまうと、それ以降勢いが失せてしまう傾向が強い。ということで、ちょっと心配。

こんなレースこんな馬券、獲った人間お知り合いの中には誰もおらず、全員負け負けで本日終了。わざわざ九州よりお越しの"神出鬼没"さまにべっぴんさんだったが、その労は報われなかった。
というわけで、帰路はまたまたリーダーと、敗残の身を山陽線の鈍行で寄せ合って(ちょっと大袈裟)。この惨めな図だけで、オチには充分足りようよ。ちえっ・・・

2003.1.27 記

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