第23回福山マイラーズカップ観戦報告

 2003.2.9、福山、1600m

はじめに〜出走メンバーについて
福山競馬のレース体系の中で、古馬マイル重賞は2つ。一方は夏の金杯。そしてもう一方が、今回観戦した福山マイラーズカップである。正月開催の福山大賞典、2600m戦の長丁場を使ったオープン馬が、それから1ヶ月と少し(2開催後)で、一気に1000m距離短縮されたマイルの重賞を闘うことになる。
このあたりのスイッチの切り替えが、どれだけの負担かは判らぬが、ピークの出来で臨んだであろう大賞典の、その余勢も残っているのか、今年はそこで上位入線した馬たちがあらかた登場することになった。こうなってくれると、このジェットコースター然とした距離短縮も、強豪勢揃いのマイル決戦を現出するべく作用するわけで、なかなか悪くない。因みに金杯は、オールスターズのマイル決戦というよりは、夏競馬の総決算というべきものであり、夏馬上り馬が台頭する一方で、有力馬が休養中で出走しないケースも多い。

その出走馬は内枠より以下のフルゲート10頭。()内は騎手、性齢、斤量。
ホマレエリート(鋤田、牝5、53k)、ホマレスターライツ(佐原、牡7、53k)、フジナミスペシャル(嬉、牡5、55k)、メガビソウ(野田、牡6、51k)、ユキノホマレ(岡崎、牡4、53k)、リーガルジョージ(楢崎、牡7、51k)、ユノワンサイド(石井、牡5、55k)、ライトジュピロ(對ィ、牡7、53k)、ドリーミング(渡辺、牝7、53k)、ヤマノダイオー(周藤、牡6、51k)
別定重量戦。明け4歳ダイニアキフジが予備馬だったが、回避馬が出ずこれは登場しない。

当日の概況
前日土曜日は荒尾・高知・福山交流特別競走を観戦したので福山泊まり。駅前のビジネスホテルに宿を取り一泊。そして当日朝、駅前場外で前日のレースリプレイを観てから、10時半発のファンバスで競馬場に。
前日午後の雨はその日の夕刻に止み、当日の天気は回復傾向。朝のうちは曇天だったが、やがて雲が切れて晴れ間が覗くようになる。しかし午後になると再び雲も多くなる。気温は結構高く、過ごしやすい、日が差す日向に座っていると暑いほど。
前日の降雨で、馬場状態は重。とはいえ走路に水が浮くほどでもなく、適度に砂が締まって、蹄の掛かりがよさそうな馬場である。
脚質による有利不利は感じられない。逃げ切り決着もあるし、差し・追い込みも決まっている。これが人気や能力と無関係で、各レースてんでばらばらな決着の仕方なので、その傾向が全く読めず、予想するにも非常に悩ましい。

パドックから発走まで
この日は地元駐在おさるさんも"リーダー"前田っちも"同志"ディープさんも欠場で、お知り合いに出会わない日だったところ、パドックタイム直前で、大阪在住のアオちゃんヒロチさんコンビに遭遇。ちょっと嬉しい。そしてパドック。
1番ホマレエリート。スッキリ仕上がった感の馬体。腹回りの重さはない。毛艶も良好。ただ肩の捌きは硬いか。歩むスピードは遅い。前走福山大賞典7着。2600m戦は適距離から明らかに長いので致し方ないところ。
2番ホマレスターライツ。毛艶は一見良好で黒光りしている。トモの送りはギクシャクと、そして肩の捌きも硬い。この馬らしくなく至極大人しい。前々走大賞典4着、前走前開催のA1戦レディオBINGO賞5着。
3番フジナミスペシャル。毛艶、馬体張り、そして実入りと、総じて上々で大賞典時と変わらず。トモの踏み込みが浅めなのもこんなものか。厩務員さんに曳き綱を引っ張られて、その後をとぼとぼとやる気無く周回。前走大賞典5着で大本命人気を裏切った。「直前に歩様悪化が故」との敗因が戦後流れたが、今日の予想紙上には、何のことはない「大賞典は調子が良過ぎて掛かったのが敗因」とある。「何じゃそりゃ!?」と言いたくなった。
4番メガビソウ。気ムラな性格らしいが、今日はのんびり大人しく歩いている。身のこなしは柔らかい。明るい栗毛の馬体に、冬毛気味に白い刺し毛が伸びている。前走前開催のA2重賞新春賞を完勝して、A1返り咲き。
5番前走福山大賞典を優勝したユキノホマレ。馬体重518kは前走比+9k。次走に佐賀遠征(西日本アラブ大賞典)を控えているので、多少の余裕残しはあろうか。胴回りは若干太いが、ダボダボではない。胴長背高な元来の体型もあって、数字通り、悪い意味でなく、さらに立派に見せるようになった。毛艶は大賞典時よりむしろ上。歩様も柔らかくキビキビと回っている。
6番リーガルジョージ。ユキノホマレとユノワンサイドが前後なので、胴体の寸詰まりさ加減がより強調される。毛艶は今一つ。キビキビと周回している。前々走大賞典と前走レディオBINGO賞は共に6着。
7番ユノワンサイド。相変わらず実入りに富んだ馬体で、毛艶も張りも高水準。ただ、胴回りは大賞典時より幾分コロンとして、フォルムのキレは劣るような感じ。またトモの踏み込みも大賞典時より浅く、力強さに欠けると思った。前々走大賞典と前走レディオBINGO賞は共に2着。今回久々に主戦石井騎手が手綱を取る。
8番ライトジュピロ。前のユノワンサイドと遜色なく実入りいい、堂々たる馬体。張りも素晴らしい。「この馬こんなに立派だったっけ?」と、ちょっと感心。首を上下させてキビキビ周回。トモの送りも柔らかい。正月開催は休んで、前走レディオBINGO賞3着。
9番ドリーミング。毛艶も馬体張りも最高。「この7歳牝馬、一体何なんだ!?」と思わせる程。今がピークといった感。踏み込みも力強い。ただ左トモの出は弱いか。気配は概ねじんわり。前々走大賞典3着、前走レディオBINGO賞は、ユノワンサイドとの一騎打ちを終い競り落として制し1着。昨夏ビーナス賞以来の勝ち星で、金杯(2着)ぶりユノワンに先着。
10番ヤマノダイオー。3歳時のちょっとギスギスした印象がいまだに強いからか、現在のこの馬の巨漢ぶり、個人的にはしっくりこない。バンバンの実入りで、体高もあるので押し出し感がある。歩様もスムーズ。前々走大賞典8着、前走レディオBINGO賞4着。
周回の後半ユキノホマレが脱糞。ユノワンサイドは石井騎手が跨ると気合いが乗った。

ユキノホマレ(42KB)
ユキノホマレ、堂々たる馬体で周回
厩務員さん、次回は口取り撮影のお姿載せますね!

本馬場入場から返し馬。ホマレエリートは入場して一旦一角方向に数歩進むが、反転して入場行進に加わる。メガビソウは前走同様一角方向に直行する。そして真っ先にスタンド前を、大きなフットワークで駆けて行く。ホマレスターライツは今日はダクではなく馬場真ん中を強めに駆ける。ホマレエリートは軽やかにスッと。ヤマノダイオーはゆったり。フジナミスペシャルは今日も四角を逸走気味に回って、ちょっと口向き悪くスタンド前を通過。ユノワンサイドはやや強めのキャンター。ユキノホマレは完歩大きくゆったり見えるキャンター。最後にドリーミングが、ズババババッと、非常にシャープに突っ走って行く。

ドリーミング(37KB)
ドリーミング、キャンター
駆けりも馬体も最高だ

上位勢が揃った好メンバーでありながら、オッズはユノワンサイドからほぼ一本被り。これを外すと、枠複枠単馬複どれも10倍以上。
予想。ワシは中心馬として2頭抜擢。まずはフジナミスペシャル。大賞典敗退と距離千六が相まって、今日はソコソコの人気。が、この馬、とにかく人気が落ちると好走する。長距離馬のイメージが強いが、実は昨年同レースの勝者でもある。そしてドリーミング。とにかく絶好調だと思われるので。自在性ある堅実脚で連軸には堅そう。この2頭の枠複が本線。そしてここからユキノホマレに。長距離得意の追い込み馬な感じもするが、つい昨晩秋まではC1以下の格付け、常時マイル戦を走って連勝してきたわけで、苦手でもあるまい。オープンのペースに対応出来るか次第。人気のユノワンサイドだが、この馬やっぱり「千八の王者」だと思わる。実際本命人気に推されつつも、昨年のこのレースも金杯も勝てていない。よって申し訳程度に。
「マイル戦だったらホマレエリートが強いでしょう、ねえ。」とはヒロチさん。ワシはそれは重々承知ながら、年末以来ちょっと調子落ちな気がして、これは切った。アオちゃんは色々と。曰く、「3人三様で買い目違うんだから、誰か当たるやろ。」と、さーて、どうなることやら・・・

レースなり
さてレース。距離は勿論1600m。向こう正面中程からスタート。
ゲートが開く。フジナミスペシャルが痛恨の出遅れで序盤後方からの競馬を余儀なくされる。ホマレスターライツに至ってはドカ遅れ、まともにゲートを出ていない。一方前では、最内からホマレエリートがスパッと鋭発を決めハナに立つ。ハナ切るかと思われたユノワンサイドの出はイマイチ。だが何だかんだで加速して、エリートの直後まで押し上げ追走して行く。しかしながら顎を上げて、そのフォームはどうもおかしい。結局最初の3コーナーまでに、ユノワンサイドはホマレエリートを抜くことなく、先頭2番手は決まった。三分三厘あたりでは、内メガビソウ外ライトジュピロがやや離れて前2頭に続き、外にはドリーミングもいる。フジナミスペシャルはどうにかこうにか、この直後まで押し上がる。
正面スタンド前。先頭変わらずホマレエリート余裕の快走。1馬身強下がって次列、内メガビソウ外ライトジュピロが併走。その外ややあってドリーミングが構える。この外2馬身くらい下がったところにヤマノダイオー。メガビソウから3馬身くらいあって、内にフジナミスペシャル。フジナミの後方にユキノホマレが追走で、リーガルジョージが内、ホマスタが外で後方追走。
問題はユノワンサイド、ホームストレッチに差し掛かると、隊列からポツン1頭離れて大外を、明らかに行き脚のおかしい様子で単走。漸次スローダウンして、1コーナーまでには最後方まで下がる。故障発生のようで、1、2コーナー半ばで競走中止となってしまった。

1周目(35KB)
1周目、正面スタンド前、先頭ホマレエリート
2番手中ライト、その外ドリーミング、ユノワンはもっと大外

レースは進む。変わらずホマレエリートが先頭、まさにスイスイと。そして3コーナー手前、2番手インでメガビソウ、その外ライトジュピロのところ、ドリーミングが腰を上げて、外からこれらを交わして2番手に。ホマレエリートを自力で追撃開始。ヤマノダイオーも前との差を詰め、そしてユキノホマレも外目を上昇、この馬にしては仕掛けが早いか。これらと共にフジナミスペシャルもバックで押し上げようとはしたが、三角あたりで既に伸び脚無く、早々に圏外に去る。
三分三厘、ホマレエリートが後続を突き放す。ドリーミングが単騎追うも、差が詰まらない。ややあって次列、インでメガビソウ、中ライトジュピロ、その外にヤマノダイオーが並びかけ、大外にユキノホマレも急接近。
が、勝負は既に決した。ホマレエリートが終いまでスイスイ快走、スタートから誰にも抜かれることなく、逃げ切りゴールへ。ドリーミングは最後の直線馬場真ん中を必死に追い上げるも届かず、結果1馬身半差で2着まで。印象としては、両者の脚いろは最後までほぼ同じで、いくら追っても逆転はなるまいと感じられた。ホマレエリート、着差以上の完勝であった。

ホマレエリート(38KB)
ホマレエリート、逃げ切り完勝でゴールへ
シャープに終いまで快走だ

3着争いは激しい。三分三厘3番手集団を形成した4頭がそのまま直線に。内メガビソウ粘走も、ライトジュピロが交わして先んじる。これが押し切るかというところ、残り僅かで外からユキノホマレが末脚を振り絞る。結果、アタマ差交わしてユキノホマレが3着。ドリーミングとは2馬身差。4着ライトジュピロで、半馬身遅れて5着メガビソウ。ヤマノダイオーはライトジュピロやユキノホマレとの競り合いに負けて、1馬身半差の6着に落ちた。ここで3馬身開いて7着リーガルジョージ、これは後方から追い上げて。フジナミスペシャルは勝負所から全く駄目で半馬身差8着。9着後方ママのホマレスターライツ。

レース終わって、そしておしまい
勝ち馬について触れる前に、競走中止となったユノワンサイドについて。序盤後手踏みながらもホマレエリートに追走して行ったので、故障発生したのは、ホームでスローダウンする直前、最初の三分三厘から四角あたりだろうと思われた。が、レース後『福山エース』のHPで樋本デスクの伝えるところによれば、既にスタート時に故障したとのこと。そう知らされれば、三角までの頭を上げたおかしなフォームも納得できる。石井騎手は手綱を引っ張ってユノワンを制止しようとしていたのだな。それでも闘志が故か止まれず、己がスピードとパワーでエリートに競り掛けていったユノワンサイド。ちょっと痛ましい。故障の程度はこの観戦記執筆時点で不明なのだが、軽傷であって、早くコースに復帰してくれることを祈る。何と言っても福山オープンの主役なので。

さて勝ったホマレエリート。ライバルにして本命馬のリタイヤのもとでの勝利となってしまい、ちょっと後味よろしくないのだが、存分に実力を発揮してのことなので、引け目を感じる必要は全くない。好発決めて一気に逃がした鋤田騎手の戦術もズバリだったし、何よりテンから中から終いまで、スイスイと軽やかな走りで、見事としか言いようがない。それにしてもこの馬、ホンマにマイルから千八戦は強いなぁ。逃げようが差そうが捲ろうが、いかなる戦法でも勝負に絡めるし、脚にキレがある。これが昨夏の金杯以来の重賞勝利、つまり今年度の古馬マイル重賞は、いずれも彼女の制するところとなった。サスガ!
ドリーミングは今日は堅実に先団競馬、勝負所から追い上げたが及ばなかった。後半馬体を併せての叩き合いが望みだったろうが、その局面に持ち込ませてもらえなかった。相手がマイル巧者ということもあろうが、どうもホマレエリートには分が悪い。それでも堂々2着。何度も書いて彼女には悪いが、7歳オバハンがアラブ王国オープン界の重鎮よろしく、毎開催走って常に馬券に絡むこの状況、凄いと思う。
ユキノホマレはどうにかこうにか3着に届いた。前半ゆったり走る追い込みステイヤーが、古馬オープンマイル戦初体験でここまで間に合えばまずまずだろう。ホマレエリート逃げ快走という、レースの流れも向かなかったし。この馬にとって決戦は次走、そこで完全燃焼を切望。今回比較的早めに動いたのは、次に向けて、岡崎さんが仕掛けのタイミング、確認をしたのかな?
ライトジュピロは先団維持のいい走りだったと思う。今は上位の重賞ホースたちが強いけれど、これらが数頭お休みして手薄になった開催ならば、馬券に絡めそう。
メガビソウも持ち味は出せたかと。彼にとってマイル戦はやや忙しいようだが、それでも追走に苦労せず、終いまで粘走出来た。
ヤマノダイオーも中盤寄せて見せ場はあったが、やはりこの馬、ジリさ加減は昔と変わらないな。スピードもさほどではないので、マイルよりは千八向きだろうし。
それにしてもフジナミスペシャルは・・・一体何なんだ。出負けしたにしても負け過ぎ。後手踏みながらも差し込んで2着獲ったこともある(昨年のローゼンホーマ記念がそれ)馬であるのに、今日はあまりに無策に負けた。大賞典に続いて不本意な結果、ちょっと運気の歯車が、噛み合っていないような・・・

ホマレエリートをバッサリ切ったワシは馬券大外れ。ユノワンサイドがトンだこともあって、枠複2,470円、馬複2,480円、枠単5,610円の、何ともオイシイ配当だったのに。フツーに考えて、充分買える馬券なので、ますます腹立たしい。因みにアオちゃんも外し、ホマレエリート本命のヒロチさんも何故か外している。曰く「数分前にオッズ見たらドリーミングとの組、ごっつ安かってん。何であんなに付くん?信じれんわ、悔し〜。」と。
というわけで、「誰か当たるやろ。」との見込みも空しく、3人完敗でありました。

レースは牝馬のワンツー、付言するなら両頭上山OG。「女性上位時代」とは、以前にも持ち出したフレーズなれど、このレースを括るそれとしては、やはり一番相応しかろう。
その逞しく強かな牝馬二強に、むんずとやり込められてしまったのが、ワシら関西オヤヂ3人組なのね。と、中年の黄昏を滲ませて(←どこがやねん!)、おわる・・・

2003.2.19 記

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