福山グランプリ 第14回ローゼンホーマ記念観戦報告

 2003.3.16、福山、1800m

はじめに、そして出走馬について
福山競馬の開催日程はいまだに年度単位。その中にあって、掉尾を飾る古馬重賞が、ローゼンホーマ記念である。
毎年このレースの様相を左右するのは以下の二点。一つは古馬有力どころの消耗度や調子。福山の年度後半の古馬戦線は、正月の福山大賞典がクライマックス。それから2ヶ月を経た3月年度末は、なかなかに微妙なところ。そしてもう一つは、このレースが「福山グランプリ」と銘打たれる所以である、単なるA1重賞(桜花賞菊花賞やマイラーズカップがそう)ではなく、出走対象に主催者選出枠を持つという点。既存の有力馬が強力な年であれば、最強馬決戦の色合い濃く、それよりも主催者選考枠にて登場する面々の勢いが優れば、昇り馬の踏み台たり得る、というように、振幅があるわけだ。

というわけで、今年の出走馬は内枠より以下のフルゲート10頭。
マルサンウイザード(石井、牡4、56k)、ドリーミング(渡辺、牝7、54k)、ブレイヴシーン(野田、牝6、54k)、ネーチャーフレンド(片桐、牡6、56k)、キカンボー(對ィ、セ7、56k)、ホマレエリート(鋤田、牝5、54k)、エリートカップ(吉延、牡7、56k)、ノア(楢崎、牡6、56k)、リーガルジョージ(岡田、牡7、56k)、ハカタカッサイ(岡崎、牡5、56k)
負担重量は一律牡馬セン馬56k牝馬54k。
エリートカップは嬉騎手騎乗予定だったところ、第4競走以後の乗り鞍を全てキャンセル(疾病とのこと)で、吉延騎手が代打。

今年の大賞典馬ユキノホマレは、前々週の佐賀西日本アラブ大賞典に挑み、馬体重-17kながら捲り圧勝を演じた。激走の反動は想像に難くなく、早々に回避。出走登録の時点で既にそのは名はなかった。大賞典2着のユノワンサイドはマイラーズカップのレース中故障発生で競走中止。肉離れ発症のようで、大事には至らなかったようだが、すぐさま放牧に出され、これも出走できない。フジナミスペシャルは大賞典5着マイラーズカップ8着と完敗続き、前開催の花市場賞も格下相手に6着敗退で、調子落ち明確。ここは登録こそあれ結局回避。と、古馬重賞ホース3頭にして三強が、揃って不出走となってしまった。
一方、ネーチャーフレンドにハカタカッサイといった、A1戦は未経験なれど勢いある上昇馬2頭、昨秋の鞆の浦賞を逃げ切ってアッと言わせた明け4歳マルサンウイザード、そして、昨夏益田に転出し、佐賀を経て当地再々転入で、福山オープン最上位に再挑戦となるノア、と、ここに躍進を期す面々には富んでいる。
「そこで彼らが大威張り!」かといえば、それは甘い。牡馬三強は不在なれど、迎え撃つ実績馬は、瀬戸内が誇る牝馬2頭。すなわちホマレエリートにドリーミング。先月のマイラーズカップ1、2着馬でもある。ホマレエリートは距離千八以下の舞台においては、当地14戦8勝2着3回3着2回と抜群の安定度を誇る。この距離ならば逃げ差し自在でシャープに走る。自身前年の当レースにおいて下克上を遂げており、連覇を懸けての出走でもある。ドリーミングは前々週西日本アラブ大賞典を惜しい3着。激闘直後、「ホントに出るのかよ?おい。」とのファンの声をもお構いなし、不休で登場。この馬のここ1年、その時点での筆頭馬や距離適性に優る馬には勝てぬものの、ヒラ馬や格下には滅多に先着を許さない、まさに「古馬オープン界の番人」が如き存在。
というわけで、今年今回は、次年度古馬オープン界に食い込みたい面々の挑戦を、牝馬二強が真っ向受けて立つ一戦となった。両陣営の近況を思うに、これはこれで熱い戦いを期待できそう。さあ、幕が開くぞ。

当日の概況〜メインレースまで
この週末もまたもや雨。関西では土曜午後に一旦やむも、日曜日当日は朝からまた雨が。現地には1時前に到着。福山の天気も完全な雨降り。雨粒は小さいが、間断なく、そして密にしとしとと降っている。気温も上がらず、冷たい雨である。
馬場状態は重で始まったが、第6競走からは不良の発表になる。今週末を前に砂入れがあったようで、厚い砂の層が水分をたっぷり含んで、馬場はグッチャグチャ。が、深さが幸いして、表面には水はさほど浮いていない。
目撃した範囲(第5競走以降)では、逃げ・先行馬に最後の直線後続勢が殺到。逃げ切る馬もいるにはいるが、概ね差し・追い込み勢に有利な傾向かと。

これが如実に現れたのが第8競走の3歳2組戦、距離1600m。勝ったのはホーエイアキフジ。2周目バック半ばまではポツン殿。ここから始動して押し上げて、直線大外怒濤の追い込みを決めた。2着も前半ケツ二のヨシユキキングが突っ込んで、福山ではかなり稀な、追い込み馬によるワンツーとなった。勝ち馬のホーエイアキフジは上山出身で夏の重賞若草賞3着馬。彼の地の昨シーズン終了後に福山へ。これで当地5戦2勝2着2回4着1回となった。が、他地区デビュー馬なので、福山ダービーには出走不可能なり。

パドックから発走まで
降りやまぬ雨、パドックタイムを前に「"高気圧オトコ"さん、何とかしてよぉ!」とニーナさんに言われつつ、恨めしげに見上げる空。「もちょっとであがりそうなんだけどなあ。」と洩らしつつ待っていると、ホントに雨あしが弱まって、傘を差さずにカメラ構えられるまでになる。まさに首の皮一枚。天候に関してはワシ、実に運があると思う。そしてパドックに出走馬が現れる。
1番マルサンウイザード。実入りは充分。キビキビとした身のこなしでスタスタ周回。ただ、頭を内の厩務員さんに預ける場面が目立つ。前走前開催のB2下選抜戦(1800m)を最下位9着。鞆の浦賞を逃げ切り勝ちして以後5戦、勝てていない。そもそも何故にここに登場できるのかも疑問。
2番がドリーミング。馬体重は前走佐賀遠征から+6kの482k、適正値に戻った。相変わらず張りと実入りに富んだ立派な馬体。毛艶も上々。牝馬ながら冬毛が全く出ない。常時パドックの内々を回る馬ではあるが、今日はそれがより甚だしく、歩幅も狭い。トモの送りも硬め。「佐賀の時の方が、ギリギリな感じがして好きだなあ。」とは「ドリーミング・らぶ!」ニーナさん。ちょっと無茶な評だ。
3番ブレイヴシーン。ここは補欠待遇で、フジナミスペシャル回避によって登場。469kの馬体重以上に大きく見えるが、毛艶はよくない。胴は重めで踏み込みは硬い。前々開催のA2戦は逃げ切り勝ちしたが、前走前開催のA1戦花市場賞(1800m)最下位10着。
4番ネーチャーフレンド。スカッとシャープな、均整の取れたフォルムで、かつ筋肉質で格好いいルックス。身のこなしはキビキビしつつも余裕が感じられるもの。時折物見。肩の捌きはちょっとクニャクニャ。この馬に好印象との評は多かった。近3走B1→A3→A2と3連勝中。前走は前開催のA2戦(1800m)でノアを下した。息の長い差し脚が身上。。
5番キカンボー。青鹿毛の真っ黒な馬体で、毛艶はビカビカ、胴の実入りはパンパン。大外をスタスタと気っぷよく歩いている。ゆったりした風情から、次第に活気が出てくる。パドックだけなら実に見栄えする。「モナクダイキチみたいやな。」と言及すると、"同志"ディープさんやふささんが「ホンマやわ!」と。前走前開催のA2戦7着。今冬B級上位からA3までは良積重ねたが、A級上位は家賃が高そう。
6番ホマレエリート。馬体重456kは前走比-3kながら、胴の実入りに不足は感じられない。毛艶も上々。柔らかい身のこなしで踏み込みもしっかり。特段出来落ちはなさそう。ゆったり歩んで前との間隔が開くのはこの馬の常。前開催は出走スキップしたので、勝利した前々開催のマイラーズカップが前走。
7番エリートカップ。パンパンの実入りで張りも凄い。かつ首が高いので、相変わらず雄大に見せる。前走花市場賞2着。追い込みプロパーで、A1戦でもメンバーが軽くなると上位に突っ込んでくる。
8番ノア。無駄肉がほとんど感じられない、筋肉の付きがよく目立つ馬体。踏み込み強く、ガシガシと歩いている。細かい動きが目立つのはこの馬なりだが、周回を重ねるにつれ、どんどん活気を増して、明らかに煩く思われるほどになった。前開催のA2戦が当地再々転入緒戦、早め先頭もネーチャーフレンドに差されて2着。
9番リーガルジョージ。胴が太くて短い、ちょっと不格好な馬。しかし毛艶と張りは、この馬としては良好な方。キビキビとした身のこなしは上々。踏み込みは浅め。前走花市場賞では追い込み決めて1着となった。これが自身A1初勝ち。
10番ハカタカッサイ。体高が相当ある、497kの雄大なルックスの大型馬。毛艶もいい。内々を大人しく回っているが、力強さはある。「もっとバカでかい馬かと思ったけど案外普通やなあ。」とはディープさん。昨晩秋以降B級から着実に出世して、前々走B1と前走前開催のA3戦(1800m)を連取してここへ。

本馬場入場から返し馬。入場時、渡辺騎手がドリーミングの首筋を「さあ行こうか。」とばかりに数度ポンポンと軽く叩いたのが印象的。「ドリーミング、しんどそうやん。」とディープさん。「そう?余裕綽々に見えるけど。」とはワシ。ネーチャーフレンドとキカンボーはゴール板前を少し進んだだけで早々に反転して返し馬に。両者軽快に流してくる。マルサンウイザードも同様。ハカタカッサイは楽走で。ホマレエリートはこの馬にしては強め。ノアは力が入った蹴りのキャンターのところ、楢崎クンがグッと抑えている。ドリーミングは最後に、スパスパッとシャープに強く駆けて行く。これはこの馬の常。

予想。ここは素直に牝馬二強を信頼して本線に据える。これに上り馬ネーチャーフレンドも加え、ノアにも少々。期待したいのはドリーミングなので、ドリー→ホマレとドリー→ネーチャーの枠単も。オマケでしょーもない馬券をちょっと。「何買った?」とディープさんが問われるので、「そんなに妙な買い方はしてませんよ。ハカタカッサイが来たら死亡。マルサンウイザードから総流しはしたけれど。雨馬場って鞆の浦賞ん時と同じやし。」。「また佐賀の時(西日本アラブではヤマノキング総流しを敢行)みたいに変なことしてからに。」と、返す同志の顔には「懲りんやっちゃ。」と書いてあった。

レースなり
さてレース。距離1800m、スタート地点は2コーナー。発走前、「ノア、ハナじゃなくていいから、2番手すんなり取れればな。ブレイヴシーンが野田だから押していくかな。」とふささんが。「でも今回、行きたいクチ、多いでしょ。マルサンウイザードもキカンボーもそうだし。」とワシ。加えてホマレエリートの出方が問題。前に行くのか差しに回るのか。
ゲートが開く。先行勢が横一線となって出て行く。このうちマルサンウイザードが1枠を利してハナを切った。中ではキカンボーのダッシュも良く続く。これに付いていくのはホマレエリート。鋤田騎手は明らかに意図的な先行競馬。内からブレイヴシーン、外からノアも差なく続いて前へ前へ。大外ハカタカッサイが次いで。ドリーミングとネーチャーフレンドはこれらを見つつ、まずは中団から。
正面スタンド前。先頭マルサンウイザード。後続を2馬身弱離して単騎走行。そして次列、ホマレエリートが外目で先んじ2番手ガッチリ。次いで差なく、内ラチ沿いにブレイヴシーン、ホマレの直後内にキカンボー、ノアはこの同列、先団では一番外を走っている。この3頭は同列横一線。2馬身ほど下がって、内ドリーミング外ネーチャーフレンドが追走し、外にハカタカッサイが、序盤の先行争いからここまで下げた。エリートカップとリーガルジョージは例によって後方待機。ホマレエリートが次第次第に前に押し上げていく。

1周目(30B)
1周目、正面スタンド前
先頭ウイザード、外からホマレエリートが2番手に上がる

1、2コーナーにかけて、ハカタカッサイが中団からさらに下がってケツ二になる。殿は変わらずリーガルジョージ。
向こう正面。先頭マルサンウイザード、2番手にはホマレエリートが単騎で続く。この2頭は依然快走だが、次列の先行勢は、バック半ばで離され始める。
そしてここで、ドリーミングが進出開始。横にばらけた前列3頭のど真ん中を割っていく。連れてネーチャーフレンドも動く。前ではホマレエリートが、いよいよマルサンウイザードを交わして先頭に立つ。これが3コーナー周回の時点。ウイザードは内でどうにかこうにか食い付いている。
そしてここに、やって来たのはドリーミング。じわりじわりと、自力でホマレに急接近。一方ホマレエリートの行き脚に、今日はどうも素軽さがない。4コーナーを前に、ドリーミングが遂にホマレを射程圏内に捉えた。そして外から並び掛ける。今日はホマレを抜ける!「おおっ!ドリーミング来たぁ!」思わず声が出た局面。ドリーミングを追って、ネーチャーフレンドも脚を伸ばしてきている。
そして最後の直線勝負。ホマレエリートが辛うじて四角先頭で回ったものの、外に併せたドリーミングが、じりじりと前に出て、残り100あたり、遂に先頭に立つ。あとはゴールまで一目散。ホマレは伸び脚欠いて差し返せない。ネーチャーフレンドが直線内を掬って差し込んでくる。これが残り50までにホマレを交わして2番手に。そしてドリーミングに肉迫。が、ドリーミング、最後は渾身の力を振り絞り、クビ差これを凌ぎ切って、優勝のゴールに飛び込んだ。

最後の直線(36B)
最後の直線、残り50を切って
先頭ドリーミングの内からネーチャーが迫る。ホマレは遅れた。

2着ネーチャーフレンド。ホマレエリートは1馬身半遅れて3着まで。以下はリアルタイムでの記憶はなし。ハカタカッサイが中盤以降追い上げて、直線4番手にまで差し込んだものの、リーガルジョージが追い込んで交わし4着に。前とは1馬身半差。カッサイは5馬身差の5着。ノアはドリーミングに交わされて以降も前に食い下がっていたようだが、直線遅れて6着。7着エリートカップ。マルサンウイザードは直線沈んで8着。9着キカンボーと最下位ブレイヴシーンは早々に先団から後退してのこの着順。

ドリーミング(36B)
ドリーミング、勝つ!
これはホンマに凄い走りだった・・・

最後の直線、走るドリーミングもともかく、見守る我々の方が完全に度肝を抜かれてしまっていた。「ドリーミング、ホンマに勝ってまった!」と、ゴール後隣のWSさんと、ちょっと昂揚して言い合った。その向こうでニーナさんは、目をまん丸にして「ウワーッ!ドリーミング姉さん、凄い!」と興奮気味。
口取りを前に、ドリーミングの馬主さんに「佐賀でも期待して観てましたけど、今回勝てておめでとうございます。」と声を掛けた。馬主さん曰く「今日勝てるとは思わなかった。」。つまりは馬主さんの期待をも越えた、タフさということか。ただ、レース後WSさんが、口取り撮影の様子を眺めて、「右後肢、出血してた。外傷負ってる。」と言及された。無事ならいいが。

振り返って、そしておしまい
ドリーミング、「連戦も上り馬も何するものかは!」まさに仁王立ち。広域交流大一番に遠征して、長丁場の激闘を好走した、その僅か2週後に、それも7歳牝馬が、どうしてこんなに強い競馬が出来るのだ!?「信じられん。」「化け物だわ。」との、驚嘆の声が戦後次々と挙がったが、まさに「鉄の女」の面目躍如。差しも決まる状況の中、ライバルたるホマレエリートが先行策を取ってくれ、これが終い案外だったということで、確かに展開利と運はあったろう。が、しっかり後半末脚を繰り出して勝ち切るのは、彼女の能力以外の何ものでもなく、勝利のケチにはならない。元来のジリ脚が故、必然的にジワジワと前を捉える図となったのも、力の限り勝利を目指すひたむきな様がよく現れて、彼女の現状に非常に似つかわしく、ビジュアル的にも興奮を喚起するものだった。とにかく驚いた。「(全妹の)アヤヒカリもこれくらい走ってほしいよな、全く。でも今日は2着でよかったのに。」とは、枠単で裏目食らった電設師の嘆き。
ネーチャーフレンドはドリーミングを意識したと思われる中盤以降のレース運び。自身の得意手に向いた展開にもなったが、よく食らい付いて、また、終いの脚も見どころあったかと思う。最後差し切れなかったのは、これはもう経験と底力の差であろうし、今日のことろはしゃあない。地力上げているとは充分感じられたので、来年度の活躍が楽しみである。因みにこの馬、ドリーミングと同じく田代厩舎所属。同一厩舎ワンツーとなったわけだ。この厩舎、ユキノホマレも擁しているので、昨今の勢い、恐ろしいものがある。
ホマレエリートはその戦法が注目されたところ、鋤田騎手は先行競馬を敢行。やっぱり今日の馬場にそれは向かなかったのか、最後の直線伸びを欠いてしまった。「それでも押し切れる」と自信があったのか、鋤田騎手の戦後談を訊いてみたいところ。当地ではあまり経験のない(確か初めてのはず)不良馬場での競馬であったことも、少なからず影響したかも。とはいえ3着、無様では全くない。なお、この1、2、3着、全て上山出身馬。「アラブ北の聖地」の奥深さが、図らずも現出されたわけだ。
ハカタカッサイは一旦下げて後方待機策。これは今までになかった競馬。馬場と展開を読んだ、岡崎さんの戦略か。結果それは当たったのだが、リーガルジョージに差されてしまった。リーガルジョージの終い追い込みはいつものことなので、このあたり、戦法慣れとクラス慣れの違いかな。
先行勢のうち、掲示盤に名が載ったのはホマレエリート1頭のみ。見た目さほど競り合ったとは思われなかったのだが、当日の展開傾向そのまま、軒並み後半まで保たなかった。それにしても各馬順位を下げた局面が早い。前半意外とハイペース、それも無意識にスタミナを消耗するものだったのか。
6着ノアも然り。序盤前列2番手あたりが取れなかったのもともかく、バック半ば早々に遅れたのが痛い。ペースの緩急に長けたクチではないので、再度追い上げねばならない展開では、上位入線は厳しくなってしまうかな。

最後に、再びドリーミングについて。意外にも、これが重賞2勝目。もっと勝っているような気もするのだが、'01年金杯以来の星である。さらに意外なのは、金杯は岡田騎手鞍上だったので、お馴染みの渡辺騎手とのコンビでは、重賞初勝ちである(金杯では渡辺騎手はホマスタ騎乗)。
まあこうした、「オープンの常連、主役の1頭ながら、なかなか重賞を勝てぬ馬」というのは、いつの時代どこの競馬場にも、いくらでも存在するわけだ。勝利が叶わず潰えて消えていくのは、残念だけれども、ある意味容易い。が、ここにおいて、故障もせず、とにかく走って走って出続けて、久方ぶりに勝利を奪取した、この馬の非凡さというものが、改めて思いやられるわけなのである。

「夢は見るだけじゃ駄目、掴まなきゃ。ワタシをご覧なさい。文句なんて、言わせなくってよ。」
文句などと、滅相もございません。タフで強くてムチムチのグラマーで、まさにアラブの鑑ですわ。「鉄の女」の称号は、畏敬の証でございます――

2003.3.25 記

兵庫発アラブ現場主義ホームに戻る