南国王冠 第31回高知市長賞観戦メモ

 2004.1.1、高知、2400m

レースのあらましと当日の概況
 高知競馬アラブ系競走の最高峰にして、唯一の2400m戦。近年では元旦恒例レースとして定着している。
 天気は朝から晴れ。早朝は冷え込んでいたが、そこはサスガ南国高知、気温はどんどん上がった。馬場状態は良。

レース概略
 2400m戦のスタート地点は4コーナー、1300m戦と同じ。が、コースをまる2周する。
 ダッシュ目立ったのはナスノセンプーとジョイブラボーだが、外からコウエイエンジェルが花本騎手にやや押されて先頭に。マルジュウラッドは先団3列目あたり外目、ダスティーはいつも通り後方から、出負けたエイランヒットが殿。
 若干縦長だったが、ペースは超スロー。1周目の4コーナー辺りでさらに落ち着いて、隊列の前後が詰まった。先頭コウエイエンジェルはちょっと手綱を引かれ加減。
 レースが動くのは2周目1、2コーナーから。ここでダスティーがケツ2から腰を上げる。向こう正面で外からズンズン上昇し、三角で前を射程圏に。そして三分三厘、捲り脚全く緩めず、コウエイエンジェルを一気に捉え、四角先頭。圧巻はここから、最後の直線、ドバッと後ろを突き放しての大差圧勝。鞍上倉兼騎手、ゴールの相当手前から左拳を握って振るってガッツポーズ。
 さて2着争い。コウエイエンジェルが粘るところ、アローパッションが追い込み来襲。三分三厘、前のマルジュウラッドやナスノセンプーを交わし、終い150、コウエイエンジェルをも抜いて2着入線。コウエイエンジェルは結局3着。

ダスティー(37KB)
ダスティー、圧勝のVゴール
鞍上倉兼、お約束のガッツポーズ

  1着 7◎ダスティー     牡8 55.0 倉兼育 田中譲 477 -2 1人 2:48:5
  2着 11 アローパッション  牡9 54.0 緒方洋 打越初 441 -6 7人 2:50:7 大差
  3着 10△コウエイエンジェル 牝7 54.0 花本正 宮路洋 481 +2 2人 2:52:0 6
  4着 8○マルジュウラッド  牡6 55.0 西川敏 田中譲 475 -4 4人 2:52:0 クビ
  5着 2 ニシキノマーク   牡9 55.0 赤岡修 谷 力 485 -1 5人 2:52:6 3
  6着 5 ナスノセンプー   牡8 55.0 宮川実 打越初 495 -3 6人 2:52:8 3/4
  7着 4×スカイプリティー  牝5 54.0 中西達 打越初 456 +9 3人 2:53:1 11/2
  8着 6 ハナサキボタン   牡6 55.0 中越豊 雑賀正 450 -3 8人 2:53:6 21/2
  9着 9 ジョイブラボー   牡9 55.0 古川文 田中譲 509 -1 10人 2:53:6 ハナ
  10着 3 エイランヒット   牡8 55.0 上田将 國澤輝 467 -2 9人 2:54:5 4
  11着 1 サンユウラピート  牡8 55.0 明神繁 別府真 460 -1 10人 2:55:3 4
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
ダスティー(1着)
2001年12月より当地所属、長く高知アラブ界の主力を張っているが、意外にも南国王冠は今回が初出走。胴は太いが元来の体型か。この馬にしては身のこなしはキビキビしており活気あって、かなりやる気になっているように思われた。
圧倒的な捲り競馬。長丁場だからか、いつもよりも始動が早く、またスローペースもあってか、上昇も早かったかと。幾度ととなく捲り追い込み決めて派手に勝っているが、今回が最高のパフォーマンスだったと思う。そして彼自身、2000年金沢、黒百合賞以来、実に3年半ぶりの重賞勝利となった。
アローパッション(2着)
前開催B1戦(A1からは2階級下)を勝ってここに滑り込んだ。今回出走のどの馬も、一様に毛あしが長く冬毛気味だが、特に冬毛ボサボサ。コロンとした印象の体型。飛節の動きが硬く、爪先立ちのようなトモの送り。人気薄ながら、予想筋からは好調と伝えられていた。
前半は後方、ダスティーの前列。ダスティーの仕掛けをやり過ごして、追い掛けて上昇。2着狙いの追い込みという印象プンプンで、まさに"ミスター泥棒差し"の面目躍如。因みにこの馬、2001年福山大賞典の2着馬、ということで、これで2つの地区の最高峰競走で2着したことになった。
コウエイエンジェル(3着)
昨年のこのレースの勝ち馬。毛艶と張りはかなり良く、冬毛が目立った昨年より、この点は上。トモの踏み込みが全くないが、以前も歩様が硬かった記憶がある。それより特筆するべきは被ったメンコ。額に某有名菓子メーカーのそれと酷似した天使のマーク。大丈夫か?
昨年同様逃げ切り狙うもそれはならず。近走の戦績通り、地力が漸減してきている感が。
マルジュウラッド(4着)
昨年6月兵庫より転入、以来A1で3勝とオープン主力の一角に。スラリとしているがやや腹回りは太くて重め。じんわりとした気配のパドック周回。この中では見映えは上位。終始先行集団でレースを進めるも、勝負所の2周目三分三厘で束の間脚いろ鈍った感じで、何とか粘った4着。イムラッド産駒でもあり、長距離適性あるとも思われず、致し方ないか。結局このレースを最後に登録抹消。先行してキビキビと終いまで走り切る、個人的には好みの馬だったのでこれは残念。
ニシキノマーク(5着)
実入りは良い。黒い毛色なので見映えはするが、よく見ると毛あしは長い。中団からの差し。
ナスノセンプー(6着)
ガッチリした四角いフォルム。大きく見せている。先行2列目からこの着順。
スカイプリティー(7着)
前走トライアル戦を勝っており、予想紙の評価は高かった。以前と比べて馬体が大きく感じられる。やはり気配は煩く、パドック周回の後半は隔離されていて、騎手が騎乗するとさらに煩くなった。アローパッションと同列から、2周目バックでインから上昇したが、四角までに脚が上がってしまった。
ハナサキボタン(8着)
2001年荒鷲賞2着馬(勝ち馬はトサノキュータ)。その後兵庫に移籍し、昨秋当地に戻った。張りと艶は良い方。首を上下させゆったりした気配。前半は先団にいたが、2周目中盤から後退してしまった。
ジョイブラボー(9着)
大きく重厚なフォルムで張りもあり、堂々と周回していて見映えは良い。ナスノセンプーと共に、逃げたコウエイエンジェルに次ぐ位置で進めたが、早々に脱落。
エイランヒット(10着)
毛あしは長いわ、馬体も緩んでいるわで、何とも冴えないボロいルックス。出負けて道中は単騎殿。後方ママ。
サンユウラピート(11着)
腹回りボッテリ。目にするときはいつもそうだが、今回も歩様は硬い。ダスティーと同列で道中ケツ2だったが、こちらは最下位。
アローパッション(51KB)
アローパッション、パドック
冴えなかったんだがなあ・・・この"ミスター泥棒差し"
コウエイエンジェル(42KB)
コウエイエンジェル、問題のエンゼルメンコ
商標権の侵害にはならないんでしょうか・・・

後記〜文字通り「後に記す」
 「岩手出身アラブ、最後の生き残りの1頭たるダスティーが、高知最高の晴れ舞台で、最高の走りで戴冠した。」これに尽きる、2004年の南国王冠だったと思う。
 結局、ダスティーにとっては、このレースが絶頂だったと言えよう。この後、西日本アラブ大賞典(佐賀)とセイユウ記念アラブグランプリ(金沢)にも遠征し、"高知の顔"としての任を務めたものの、高知アラブ界の覇権は、程なく、エスケープハッチへと移行していったのであった。そして・・・
 ―― 2005/10/12 地方競馬登録抹消
 NARの競走馬データベース、彼の競走成績(全出走履歴)、最後の行に、そう記されている。現役最終戦は2005年10月2日第10競走、馬産地協賛特別(A1、1600m)、9着だった。

2006.1.28 記

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