第39回福山大賞典観戦メモ

 2004.1.2、福山、2600m

レースのあらましと当日の概況
 福山競馬正月開催の目玉レースにして、福山競馬最高の栄誉と格式を誇る頂点決戦。年に唯一度の2600m戦である。数ある日本競馬の平地競走の中でも、現在コースを2周半するのは、このレースだけだろう。
 天気の変化は急。前日快晴だったところ、予報は晴れのち雨。正午頃には既に曇天で程なく小雨がパラパラと。しかしレース直前に何とか雨はあがって、空は若干明るくなった。空気はしんしん冷えて寒い。砂がたっぷり入って、馬場は深い。馬場状態良で始まったが、第7レース前から稍重発表に。

レース概略
 スタート地点はマイル戦と同じ向こう正面中程。
 ユノエージェントが枠入りを嫌ったがスタートは各馬横一線。内モナクカバキチ中ユノエージェント、外からスイグンが前へ。最初の三分三厘、モナクカバキチが引っ掛かって単騎先頭に。そして最初の正面スタンド前、先頭モナクカバキチ、2馬身弱開いた外目に2番手ユノエージェント、その直後スイグン、この2頭も相当掛かっている。ここで隊列は大きく切れて、4番手ハカタカッサイ、続いて内にネーチャーフレンド、ユキノホマレはこの外、中団6番手。この後ろ、間隔はさらに開いて7番手メカリジョージ、続いてリーガルジョージ、そして殿ブラウンペガサス。
 2周目、先頭は2頭併走に。両者掛かりつつもどうにかこうにか鞍上に宥められている体裁、それでも馬は競り合いたげな様子。3番手スイグンは前2頭から若干距離を取って3番手キープ、これもいつものスイグンに比べたら掛かり気味。4番手以下の中団の並びも変わらず。
 2周目向こう正面、ユノエージェントの脚いろがやや鈍って、モナクカバキチはこれを振り切った格好となって再び単騎先頭に。そして3度目の三角周回、いよいよスイグンが寄せ手を繰り出し先頭に急接近。4コーナーから最後の直線、外からズンと先頭に躍り出る。堂々戴冠かというところ、大外回ってユキノホマレが猛烈に追い込み襲来。残り100あたり、外から一気にスイグンを抜き去って、大賞典連覇のゴールを駆け抜けた。鞍上楢崎騎手、歓喜のガッツポーズ。
1周目(47KB)
最初の正面スタンド前、先頭モナクカバキチ2番手ユノエージェント
3番手スイグンまで、みんな掛かる掛かる
最後の直線(49KB)
最後の直線、ゴール前50あたり
スイグンをユキノホマレが仕留める


ユキノホマレ(51KB)
ユキノホマレ、大賞典連覇のVゴール
鞍上楢崎、ガッツポーズ

  1着 3◎ユキノホマレ    牡5 55.0 楢崎功 田代専 524 -5 2人 3:02:7
  2着 9○スイグン      牡4 54.0 片桐正 千同武 505 +3 1人 3:03:2 21/2
  3着 1 モナクカバキチ   牡5 55.0 岡田祥 荻田恭 471 -1 4人 3:03:5 11/2
  4着 7△ユノエージェント  牡4 54.0 嬉勝則 番園一 508 +7 3人 3:03:6 1/2
  5着 2×ハカタカッサイ   牡6 55.0 渡辺博 吉井勝 491 -9 5人 3:03:7 クビ
  6着 5 ネーチャーフレンド 牡7 54.0※藤本三 田代専 477 +1 6人 3:05:0 6
  7着 8 メカリジョージ   牡7 54.0 鋤田誠 若林達 496 +1 9人 3:05:6 3
  8着 6 リーガルジョージ  牡8 54.0 野田誠 外山清 455 +2 7人 3:06:8 6
  9着 4 ブラウンペガサス  牡7 54.0 佐原秀 石井勝 487 +7 8人 3:08:1 6
  ※ネーチャーフレンドの騎手は池田から藤本に変更
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
ユキノホマレ(1着)
いつも以上に気合い入ったパドック周回。身のこなしも柔らかく、毛艶もいい。トモの踏み込みはやや浅め。
仕上げも調子も最高、前年の勝者でもあり、長丁場には絶対的な自信。にもかかわらず1番人気をスイグンに譲ったのは、ズバリ鞍上不安が理由。予想紙も敢えては触れないが、これは周知の事実。主戦岡崎騎手が負傷欠場中で、前走から楢崎騎手が起用されている。
2周目バックから、昨年の菊花賞と同様、ハカタカッサイを先導役にして上昇、長丁場での捲り追い込みはこの馬の真骨頂、まさに"瀬戸内の鬼脚"の面目躍如。あのミナミセンプウが'95年'96年に遂げて以来の、大賞典連覇を成し遂げた。加えて鞍上楢崎騎手は、重賞初勝利を地元最大のレースで達成したことになる。この点に関して、「馬や!馬が勝手に勝負所から仕掛けてレースしとる!騎手も何もあらへんわな。」とは、"大御所"Oku師匠のレース直後のオコトバ。
スイグン(2着)
ブリブリパンパンの素晴らしい実入りと毛艶。じんわりした気配だったが次第に気合いが乗ってきた。黒のパドックメンコの額には金文字刺繍で縦に「水軍」、後にトレードマークになるこれ、今回が初着用。
全日本アラブグランプリ優勝で掴んだ優先出走権により登場。アラブ王冠はパスしたのそれ以来のレースであり、一気に福山最強の座に上り詰めるべく、必勝を期しての出走。前半は珍しく掛かったが、勝負所からの鋭い寄せはこの馬の持ち味。先頭に立ったところでは鞍上片桐騎手も「勝った。」と思ったろう。が、自身が先に抜け出したところ、勝ち馬に遥か後方から一気に抜き去る競馬をされてしまうと、競り合っての強さが活かせないので、いかにスイグンといえどもこれは厳しかった。
モナクカバキチ(3着)
近2走A1平場戦で連勝。暴れるくらい煩いパドック周回。クニャクニャとした動きはいつもこんな感じか。馬体張りはいま一つ。気難しいクチで内枠発走がネックだが、好発決めて先手取れたのは何より。しかしながらやっぱり引っ掛かって、長丁場には不向き。それでも3着粘ったのは、最近好調が故か。
ユノエージェント(4着)
前走アラブ王冠勝利でここに登場。前走に続き、折り合い重視でメンコ着用でレースを走った。元気一杯のパドック周回で動きもやたら速い。気合い乗り過ぎて2600m保つか心配させられたほど。馬体張りも良好。踏み込みは硬め。先行したがやはり折り合いはいま一つ。案の定残り600mでスタミナ切れ。能力の発揮の仕方に、まだまだ課題がありそう。
ハカタカッサイ(5着)
カッチリした馬体の作り。毛艶も張りも良好。トモの踏み込みがとても小さいのはいつものことか。休養明け2走目だった昨秋の菊花賞時に比べれば、格段に好気配。好位から中盤ジワジワと上昇するも、前の3頭は結局抜けずこの着順。それでも自身の格よりはよく走っていよう。やはり長丁場向くのか。
ネーチャーフレンド(6着)
概ねパドックでは良く見せるクチだが、今回はちょっと仕上げが緩いような。張り、艶も平凡で毛あしも長め。但しキビキビとした身のこなしで気っぷはいい。近2走A1平場戦で連続2着だが、長距離戦に実績なく、結局中団ママ。
メカリジョージ(7着)
括られた舌を無理矢理ベロリと出しているのはいつものこと。菊花賞時に比べ毛艶は落ち、毛あしも長く、概して平凡。追い込みプロパーで長丁場向きのイメージだが、自身の格も格であり、後方ママ。
因みにこの馬の父ナタリージョージの全弟が、↓のリーガルジョージなんである。血統近いがキャラまで近いぞ。
リーガルジョージ(8着)
昨年(6着)に続いて登場。最近は以前に比べ好ルックスが続いているようで、今回も馬体張りあるしキビキビとした身のこなし。これも追い込みプロパーで長丁場は合おうが、A1で勝ち切るまでの実力はなく、レースは後方ママ。
ブラウンペガサス(9着)
これまでA1出走経験がなく、格上挑戦となる。張り艶はまずまずだが胴が太くてちょっと背垂れ。サスガにこの舞台では好走叶わず、ほぼ殿ママ。
スイグン、パドック(43KB)
パドック周回のスイグン
お馴染みとなった「水軍」メンコ

後記〜文字通り「後に記す」
 今回は先輩の"福山最強のステイヤー"ユキノホマレに屈したスイグンではあるが、程なく両者の地位は逆転、この後約1年半にわたり、アラブ界に覇を唱え、現役最強馬として全国にその名を轟かすことになるのである。が・・・遂に"(福山)大賞典馬"の称号だけは・・・
 その両者、因縁の対戦は、この2年後にやって来る――

2007.6.23 記

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