第85回名古屋杯観戦メモ

 2004.1.4、名古屋、1900m

レースのあらまし、見どころと当日の概況
 名古屋競馬正月開催の大一番にして、春の名古屋杯共々、名古屋アラブ古馬競走のうち、ただ2つの東海SPIレースである。一昨年までは正月競馬が中京開催で、左回り2300m戦であったところ、昨年度から名古屋公営の中京開催はなくなったため、春の名古屋杯と同条件の名古屋1900mとなっている。
 前月10日には、この競走のトライアル戦と謳われた重賞シルバー争覇が行われたのだが、出走した12頭のうち、アイシスエールとグロリアスメロディを除く10頭が今回も登場し、まさにその再戦といった趣となった。中でも注目すべきは、そのシルバー争覇を3歳にして制したキジョージャンボ。群雄割拠の時代であれば、「その真価が問われる一戦」となろうところだが、層の薄化が目立つ東海アラブの現状のもと、不動の本命評価を背負って臨むこととなった。
 午前中は快晴だったが、午後から雲が多くなった。ソコソコの寒さ。馬場状態は良。

レース概略
 距離1900mのスタート地点は2コーナー。
 概ね横一線の最初の向こう正面。内トキノメイユウが好発だが程なく下がっていく。外からゴールドランチが内に切れ込んで先頭に立つ。同様に外からボールドヒリュウとトガミアスリートが続いて2番手3番手。キジョージャンボも先行態勢で次列に位置する。セトノランボーも好位から先団へ突進。グレンゼスターはまずまず好位。一方セイフクガバナーは出負けの上にパッチン食らって後手踏みで後方から。ゴールドランプも出足悪く、前に馬を置いて頭を上げてバタバタの走り。
 正面スタンド前。先頭ゴールドランチ、2馬身程開いて2番手内ボールドヒリュウ外トガミアスリート。直後次列の内にキジョージャンボ、この外にキビノテイセンが併走。次いで内スマノリーフ、外セトノランボー。この外にグレンゼスターが追い付いてくる。以下は中団から後方。内にトキノメイユウ、外にセイフクガバナー、ここで開いて内アインナッチーで、殿はゴールドランプ。

1周目(34KB)
正面スタンド前、単騎先頭ゴールドランチ
2番手内がボールドヒリュウ

 1コーナー手前から2コーナーにかけて、グレンゼスターが外目をスルスル上昇、向こう正面に出る頃には最前列を窺うところまで。そしてバック半ば手前、ゴールドランチが先頭陥落、代わってトップはボールドヒリュウ。トガミアスリートが2番手で粘るが、三角周回で外からグレンゼスターがこれを追い抜く。そしていよいよキジョージャンボ、馬場外目に持ち出し気味に、グレンゼスターの外へ併せる。セトノランボーもグレンゼスターのインから押し上げる。
 三分三厘、ボールドヒリュウを交わしてグレンゼスターが先頭に立つ。これをキジョージャンボが外からピッタリとマーク。ボールドヒリュウの脚は鈍った。トガミアスリートも健闘したがここまで。代わってセトノランボーがキジージャンボを追いかける。
 四角周回、キジョージャンボがグレンゼスターを捉えて交わし、いよいよ先頭に立つ。グレンゼスターもアタマ差からクビ差の圏内で頑強に抵抗したが、それも残り100まで。終いはキジョージャンボ、1馬身半抜け出して、古馬重賞連取のVゴール。

キジョージャンボvsグレンゼスター(39KB)
残り50くらい、キジョージャンボがグレンゼスターを置き去る
グレンゼスターの健闘が光った

 2着グレンゼスターが粘って。セトノランボーはグレンゼスターに迫るもクビ差3着。最後の最後で追い込んだゴールドランプがボールドヒリュウを抜いて4着入線。

キジョージャンボ(40KB)
キジョージャンボ、古馬重賞連取のVゴール
ブリブリの好馬体が判る

  1着 7◎キジョージャンボ  牡4 57.0 丸野勝 井上正 520 -2 1人 2:04:5
  2着 5○グレンゼスター   牡6 57.0 吉田稔 宮本仁 478 -6 2人 2:04:8 11/2
  3着 8×セトノランボー   牡7 57.0 宇都英 伊藤定 526  0 5人 2:04:9 クビ
  4着 3×ゴールドランプ   牡7 57.0 兒島真 恣c隆 508  0 4人 2:05:5 3
  5着 10△ボールドヒリュウ  牡6 57.0 戸部尚 錦見勇 470 +2 3人 2:05:7 1
  6着 6 セイフクガバナー  牡7 57.0 小山信 新山廣 512 -4 8人 2:06:7 5
  7着 4 スマノリーフ    牝6 55.0 宮下瞳 岩田克 434 -4 10人 2:06:7 アタマ
  8着 11 トガミアスリート  牡6 57.0 深見明 藤ケ人 496 +2 7人 2:06:8 1/2
  9着 2 トキノメイユウ   牡9 57.0 福重正 安部弘 464 +6 11人 2:07:5 3
  10着 12 キビノテイセン   牡7 57.0 安部幸 伊藤己 460 -3 9人 2:07:5 アタマ
  11着 1 アインナッチー   牝7 55.0 平田貴 伊藤己 464 +2 6人 2:07:9 2
  12着 9 ゴールドランチ   牝6 55.0 岡部誠 恣c隆 438 -2 12人 2:10:0 大差
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
キジョージャンボ(1着)
パドックに最後に登場するのはこの馬の常。雄大な馬体で毛艶もいい。気合いも入っている。本馬場へは最後に遅れて登場、ゴール板前まで厩務員さんに曳かれて、そこから駆け出す。
今日は好位からの競馬、終盤グレンゼスターの抵抗に遭ったが、結局は完勝。戦前の期待に見事応えるパフォーマンスだったと思う。なお、鞍上丸野騎手、レース後コースを丸1周してウィニングラン、スタンドに鞭を投げ入れた。
グレンゼスター(2着)
首の付く角度が高いのが目に付く体型。パンパンの実入りで、黒鹿毛の馬体が光る。レース中盤からの積極的な競馬が目立ち、これが好走に繋がったと言えよう。が、元来が「いい脚を持続できない差し・追い込み馬」のようで、やはり早めに動いたからか、終いは一杯になってしまった。シルバー争覇3着に続いてのこの着順、力を付けていようし、好調でもあるのだろう。
セトノランボー(3着)
皮膚が薄く、馬体張りも毛艶もやっぱりいい、栗毛が黄金色に輝く。但し歩様は硬く脚の出はイマイチ。今日はレース下手なこの馬としてはスムーズな好位競馬で、久々に彼らしい推進力効いたフォームの駆けりだったと思う。
ゴールドランプ(4着)
首の高い周回。トモの送りがカチカチなのはこの馬の常か。それにしても後半身のボリュームがない。先行馬の筈なのだが、シルバー争覇と同様今回も後方からの競馬。揉まれるのを避けてか、殿を単走でロスの多い競馬。それでも掛かるという、ホンマにレース下手。まあ、よく4着まで追い上げたとは思うが。因みにこれが現役最後のレースとなった模様。
ボールドヒリュウ(5着)
いつもながらに見た目は良好、栗毛も輝く。今日は久々に戸部騎手鞍上、積極的に2番手競馬を敢行したものの、やっぱり終いまで脚が保たなかった。この馬もまあ、行くと保たず、控えれば引っ掛かるという、レース下手だよなあ。
セイフクガバナー(6着)
ドッシリと太い胴回り。シルバー争覇時よりは毛艶は良好だと思った。上山時代は先行馬だった筈なのだが、名古屋移籍後のここ2戦は全て先行叶わず。今日も出負けで差し競馬。
スマノリーフ(7着)
うつむいて大人しく、覇気無く周回。シルバー争覇時と同様に冬毛、牝馬なので致し方ないか。小柄で華奢な感じはビソウサウス産駒らしいといえばらしい。レースはインで中団ママ。
トガミアスリート(8着)
毛あしが長く冬毛気味。馬体は太く、やや緩めか。差し一手のキャラのところ、今日は意表をつく逃げ2番手競馬、サスガに残り400までだったが、見せ場充分の好走だろう。
トキノメイユウ(9着)
真っ白芦毛。胴回りは重い。大股でじんわり周回している。元々は逃げ馬なのだが衰えが目立ち、先行するだけのスピードがない。今回も速かったのは出っ端だけ。
キビノテイセン(10着)
名牝キタノテイセンの仔、あのカミガモライデンやトーエイテイセンらの半弟。今回金沢から再転入の緒戦。金沢時代はA3クラスあたり。張り、艶もよく、筋肉の付きが目立つ。ルックスも気性も鋭そうなのはフィニッシュライン産駒らしさか。先行するも終盤後退してしまった。
アインナッチー(11着)
キビキビと歩いてはいるが冬毛ボーボー。冬場になるだいたいこんな感じだったと記憶している。中団から後方ママ。
ゴールドランチ(12着)
一緒に出走しているゴールドランプの年子の半妹。父がタカサゴスピードからタイヨウペガサスに変わっている。どちらも渋い。貧相な馬体。首高く、時折厩務員さんに頭を預けている。単騎逃げ敢行するも、中盤で一杯になってしまった。
キジョージャンボ、ウィニングラン(34KB)
キジョージャンボ、ウィニングラン
丸野騎手、鞭をスタンドに投げ込む

後記〜文字通り「後に記す」
 キジョージャンボにとって、この2004年(4歳時)は、最高の1年だったと言えよう。今回はその緒戦であり、名古屋アラブ界における「キジョージャンボ絶対時代」の幕開けでもあったわけだ。更にこの秋にはサラ系競走に挑戦を開始。成果はその4戦目、この年最終出走となる重賞ゴールド争覇にて、見事結実する事となる――
 なお、キジョージャンボの父はサラのパークリージェント、2着馬グレンゼスターの父は同じくサラのナグルスキー、いずれもダートの強豪を多く輩出した種牡馬である。なのでこの父馬の取り合わせ、アラブのレースのクセに、ちょっと昔のサラ重賞みたいだよな。

2007.8.4 記

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