福山グランプリ 第15回ローゼンホーマ記念観戦報告
2004.3.14、福山、1800m
◆レースのあらまし、そして見どころなど
福山競馬、開催年度の掉尾を飾る重賞、グランプリ・ローゼンホーマ記念。個人的には、これで6年連続現地観戦することとなった。
さて今年、出走メンバー見渡した際に、まず思ったこと。すなわち、「豪華やなぁ。」。
このレース、ただのA1・オープン重賞ではなく、出走対象に主催者選考枠も有し(これが「グランプリ」たる所以)、これでオープン手前の勢いある上がり馬が登場し、好走するケースが多い。ところが今年は、出走9頭のうち(登録馬のうち、ハカタカッサイと補欠・予備馬待遇だったアヤヒカリが不出走で、フルゲート割れになった)、格下からの挑戦はフエストクインシー1頭に止まり、他は全てA1経験馬。重賞ホース(前所属地で挙げたものも含む)は実に6頭。
前週7日に佐賀西日本アラブ大賞典に遠征し、見事優勝したスイグンの姿がないのは納得のこと。それでも、現在の福山古馬オープン界において、「千八上等!」な連中が、ズラリ顔を揃えた体裁となった。ユノエージェント、ラピッドリーラン、クールフォーチュンの4歳3頭、昨晩秋やたら強い勝ち方を続けたモナクカバキチ、そして上山から昨秋移ったレビンマサ。
加えて、驚いたのがユキノホマレの出走。西日本アラブ大賞典、遠征しての2400m戦から、実に中6日での連闘となる。昨年のドリーミングの、中1週での出走ですらキツいと思ったところ、さらに厳しい強行ローテ。スイグンに惜敗したのがよほど悔しかったのか、賞金がどうしても欲しいのか、使い倒してこの後休養でもするつもりなのか、はたまたよっぽど状態良好なのか、邪推されたところだ。
◆当日の概況
現地には1時過ぎに着。天気晴れ。一進一退を繰り返す今年の春の訪れだが、この日は気温が上がって相当暖かい。風は強め。
馬場状態は良。前々週が砂が極薄の超高速馬場だったことを承け、前週の開催を前に大量の砂補充があったとのこと。これが効いているようで、今週末は砂の補充はないものの、馬場はまだまだ深い。砂は乾いてバサバサ。時計は相当掛かっている。差し・追い込みもまずまず決まるが、勝ち切ろうとするのであれば、先行競馬が無難な感じ。
◆レース模様
距離1800m。スタート地点は2コーナー。
ゲートが開く。ラピッドリーランがドンピシャの発馬決めて、そのままハナを奪取する。外ではフエストクインシーも好発でこれに続き、大外モナクカバキチも同様に先行態勢。最内ユノエージェントの出っ端は並。しかし二の脚三の脚繰り出して、3コーナーまでには2番手に上昇。若干外目のラインを選択して、ラピッドリーランの直後外に。クールフォーチュンは外目の好位、レビンマサもまずは好位から。
正面スタンド前。先頭ラピッドリーラン。その1馬身後方外目にユノエージェントがガッチリと。差のない次列、エージェントの外にモナクカバキチ、幸いにも窮屈な感じではない。同列のインにフエストクインシー、これは三角過ぎて一旦ちょっと控えて、そして内に入った感じ。フエストの直後にネーチャーフレンドがいて、この外に併走でレビンマサ。同列の大外、カバキチの真後ろにクールフォーチュンがいる。ここまでは比較的一団。この後ろ、5馬身以上切れて、ユキノホマレは単走8番手。さらに大きく離されて、殿はやっぱりリーガルジョージ。
最初の正面スタンド前、先頭ラピッドリーの外にエージェントがガッチリと
次いで外にカバキチ、そしてフォーチュン
1コーナーから2コーナー。ペースが落ち着いたか、先団の前後間隔がより縮む。それを目掛けて、ユキノホマレはちょっと間合いを詰めた。
二角周回して向こう正面に出る。程なく前の2頭、ラピッドリーランとユノエージェントが、1馬身圏内の差を維持したまま、共にペースアップ。他の先団・好位勢は、誰も2頭に付いて行けず、アッという間に隊列がチ切れた。そして3コーナー直前、ユノワンサイドが早くもラピッドリーランを交わして先頭に立つ。このまま押し切らんと。
一方、後方に目を転じると・・・触れるべきはユキノホマレ。二角周回の時点で、早くも鞍上岡崎さんの手綱が大きく動く。千八戦では距離が足りず、ちっともスパークしないと評判?の追い込みエンジンに、火を点けんと必死の体。ユキノホマレ、今日は珍しくそれが叶って、暫しのタイムラグの後、馬場大外を猛然と駆け上がり始める。これぞ炸裂の自力捲り、バック中盤の200m弱で、前の好位勢を全て呑み込んで、三角手前、単独3番手に躍り出た。
三分三厘、ラピッドリーランの踏ん張りも目立ったが、先頭ユノエージェントが、じわりじわりとこれを突き放し始める。そして迫るはユキノホマレ。3、4コーナーちょうど半ば、ラピッドリーランを捉えて2番手に。残るはユノエージェント1頭。四角を前に、確実にその差は縮まっている。が、エージェントも脚勢充分、果たして間に合うか?両者急接近のレース模様に併せ、跳ね上がる場内の喧噪と興奮。
四角回って最後の直線。ユノエージェントは馬場ど真ん中に進路を取った。そしてそのまま粘り込みを図る。ユキノホマレは大外ブン回して、エージェントのさらに外、馬場七分どころで追い込みエンジン最大出力。両者の馬体は重なって、勝負はビッチビチの叩き合いに持ち込まれた。
残り100を切って、追う側の強み、ユキノホマレがググッと前に馬体を出す。残り50から25までに、クビから半馬身は先んじたろうか。「サスガ"瀬戸内の鬼脚"!勝負あったな。」そう確信させられるシーンが現出された。のだが・・・
残り20あたり、死闘を演じるユキノホマレとユノエージェント
まだユキノがアタマ差出ているのだが・・・
残り10、内のユノエージェントが、まさかまさかの差し返し。ゴールまでの数完歩、その一刻み毎に、気色悪いほど盛り返す。残り5、勝敗の行方は首の上げ下げ。そしてここから、ドンピシャに鼻面並べて、2頭決勝線を通過した。
ゴール前10mを切って。ここからエージェントが大逆転
凄いな・・・
当然これは写真判定に。馬場内ビジョンに流れるリプレイの映像、そしてカメラのファインダー越しに留めた、ワシのリアルタイムの印象、いずれもゴール通過のタイミングで、微妙にユノエージェントの顎が上がって、先んじているような・・・
結果、ハナ差でユノエージェントに凱歌があがった。
1着 1▲ユノエージェント 牡4 56.0 嬉勝則 番園一 495-11 1人 2:00:5
2着 7◎ユキノホマレ 牡5 56.0 岡崎準 田代専 514 +4 2人 2:00:5 ハナ
3着 3△ラピッドリーラン 牝4 54.0 片桐正 那俄哲 451 -3 3人 2:02:2 8
4着 6 クールフォーチュン 牡4 56.0 鋤田誠 鋤田久 449 -2 7人 2:02:5 11/2
5着 8 フエストクインシー 牡5 56.0 野田誠 千同武 469 +4 6人 2:03:9 7
6着 4 リーガルジョージ 牡8 56.0 楢崎功 外山清 446 -6 9人 2:04:1 1
7着 2 ネーチャーフレンド 牡7 56.0 池田敏 田代専 467 -8 8人 2:04:8 3
8着 5 レビンマサ 牡5 56.0 渡辺博 渡邉貞 540 +7 5人 2:04:8 クビ
9着 9○モナクカバキチ 牡5 56.0 岡田祥 荻田恭 456-11 4人 2:04:9 1/2
- ◆出走馬へのメモ
- ユノエージェント(1着)
- 馬体重495kは近走では最軽量。値通り非常にスッキリしたフォルム。それでいながら上々の馬体張り。キビキビとした身のこなしで気合いは充分。前後肢共若干硬い捌きだが、踏み込みは力強く出ている。このパドックは好感。
- ラピッドリーランが好発して逃げてくれたお陰で、願ったりの番手位置。離されず楽々追走のポジションから、無理せず先頭に立った。今日はホントにロスないスムーズな競馬。それにしても、特筆すべきはゴール前での差し返し。地力あるのは充分認めるが、「この馬にこんな根性、あったのか。」という点で驚き。これは"同志"ディープさんやニーナさんら、現場で観戦したお知り合いの皆さん、共通の感想かと。表彰式後の勝利騎手インタビューにて、嬉騎手が語ったところでは、「最後、馬が外(のユキノホマレ)に馬体寄せていって抜く気になった。」そうだ。大したもんだ。
- ユキノホマレ(2着)
- 佐賀遠征で減った目方、4k戻して514kだが、これでも最近の彼としてはかなり軽い。普段の地元戦においては、胴体が分厚く見えるのが常だが、今日は値通りとてもスリム。されどガレた感じはせず、馬体張りも毛艶も良好。胴長ステイヤーらしい体型かと。じんわりとした身のこなしと気配だが、時折キョロッと外に頭を向けて物見、気合い乗りはちょっと散漫かも。肩の捌きは硬い。本馬場入場時に暫し膠着。
- 序盤は離れたケツ二、「やっぱり距離足りんわ。」と思ったところ、怒濤の捲り追い込みで先頭に。「久々に千八で"三段ロケットの三段目"に火が点いたなあ。でも毎回この競馬してると(カラダが)保たないだろうなあ。」とは"現地駐在"おさるさん。強行ローテを思えば、驚愕の激走である。が、よもやの逆転負け。一旦交わした馬に抜き返されるとは、ファンも岡崎さんも関係者も馬自身も、思いも寄らなかったろう。
- ラピッドリーラン(3着)
- 剛毛のような冬毛。これはこの馬の、寒い時季の個性であるからして、マイナス要因とはならない。キビキビとした身のこなしで、とにかくとても元気。踏み込みが非常に深いのもこの馬の特徴。本馬場入場では例によって即左折して待機所に直行。
- 最近ではスタートが確実に決まるようになった。逃げ脚もいい。が、強調したいのは終盤での粘り。先頭を譲ってしまった後も、容易く沈没しないし、食い下がって走り切る。このあたり、出負け癖が故に好位競馬強いられ、そこで末脚勝負した経験が生きているのでは。年長の牡馬を相手に3着。評価していい。が、ユノエージェントにはどうしても先着できないのがツラいところ。
- クールフォーチュン(4着)
- 目方は450k前後で安定してきたようだ。が、見慣れたせいもあるのか、格段に成長が認められた昨秋の頃ほど、大きくは感じられない。毛あしが若干伸びて、艶が冴えないのはマイラーズカップ時と同様。相変わらずセカセカした歩み。肩の捌きが硬そう。外目好位を維持した競馬。着順こそまずまずなれど、勝負の趨勢に絡む局面がなく、印象は薄い。これは以下の着順の馬、全てに共通することだが。
- フエストクインシー(5着)
- 6走前から3走前にかけて、B1からA3を4連勝、近2走はA2で共に7着止まりだが、ここに挑戦。黒みの強い、栃栗に近い栗毛。筋肉の張りはなかなか。時折小走りになったりと、細かい動きが目立つ。そのせいもあって、トモの踏み込みは浅く映る。前半身の動きも硬そう。序盤は積極的な先行競馬、そして好位維持で掲示盤入り。自身の現級からすれば、この相手に混じって、充分好走したのでは。
- リーガルジョージ(6着)
- 最近ではA1とA2を行き来する生活の、追い込み平オープン馬。毛艶、実入り、張り、全て良好。じんわりした雰囲気で、歩様もスムーズ。格や近況はともかくとして、パドック気配は最高。「リーガルジョージ、エエやん。」とは、皮肉混じりにせよ、ディープさんですら言及したほど。レースはいつも通りの、後方追走から終い追い上げ。
- ネーチャーフレンド(7着)
- 昨年のこのレース、格上挑戦から2着してオープンへの足掛かりを築いた。あれから1年、何だかんだで1度もA1を陥落していないのは立派。実入りいいガッチリ体型。毛艶はまずまず。骨量豊かで常時割と見映えするクチ。「気になる。」とは"リーダー"前田っちやまりおさんニーナさんの評。されど、この馬にしては気配大人しめで覇気はイマイチ。昨年前半の頃には、かなり劣るような。レースは終始好位インで、結局そのまま。重賞になると、このパターンでの敗退が多い。
- レビンマサ(8着)
- 「上山からの転入以来、どうも精細を欠き続けていたが、ようやく良化してきた。」とは予想紙が伝えるところ。しかしながら馬体重はさらに増えて540k、これは過去最高値。馬体張りと毛艶はまずまずで、さほど雰囲気は悪くない。が、やっぱりフォルムは太い。「要らん!太過ぎ。」とディープさんはバッサリ。踏み込みは浅く、周回気配は大人しい。が、返し馬では一転、口を割って天を仰いでバタバタと。これはいつものこと。好位追走から終い全く伸びず。走らないなあ・・・
- モナクカバキチ(9着)
- 前々走マイラーズカップ5着、前走花市場賞8着と、昨秋の強さが嘘のような連敗惨敗。人気も下がった。「これが狙い!」とばかり、事前予想では○評価。その実物、胴の実入りはまずまずなれど、腰やケツなど後半身が寂しく、フォルム総体の力感はイマイチ。煩いところを見せがちなこの馬としては、意外にもじんわりと、覇気無いほどの気配である。正直印象よろしくないが、初志貫徹で対抗扱いのまま馬券購入。被されずに済もう大外枠発走も好材料と思い。が、レースでは、前半こそ好位置キープしたものの、終盤全く見せ場無し。それにしてもドベとはなあ。「カバキチの季節は、もう完全に終わっとる。」と、リーダーがバッサリ。
◆おしまい
昨年の、「ドリーミング、執念の重賞獲り」に続き、今年の"ローゼン"も、興奮・白熱の好レースとなった。このクオリティならば、北の大地におわしますローゼンホーマも、きっと満足してくれることでしょう。
そして最後に、本音。
「今回ばかりは、ユキノホマレに勝たせてあげたかったよな・・・」
2004.3.21 記
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