全日本セイユウ賞第10回アラブ大賞典観戦報告
2000.3.5、佐賀、2400m
「― ホマスタ敗れる ―」
記すのも辛いフレーズだが、ここから始めねばならなくなろうとは・・・(暫し絶句)
佐賀3月名物、西日本アラブ大賞典、今年は昨年まで東日本交流であった「セイユウ賞」の名を冠し、全国交流として施行とあいなった次第。昨年末以来、全国の(一部の)アラブ主義者、地方競馬主義者の見守る中(その間ちょっとした曲折などあったりして)、出走馬が決定し、当日を迎えることになった。(ここまでの経過はこちらを参照)
上山のペルターブレーブ、園田ケイエスヨシゼン、九州フクヨシオーの出走がないのはかえすがえすも残念だが、それを差し引いても、全国各地区の蒼々たる面々が佐賀に集結した。アラブ主義者の血が騒ぐ。
ワシのお目当て、そりゃ言わずもがなのホマレスターライツ、その戴冠の姿を見届けるということ。そして益田ニホンカイプリウス、期待半分、心配半分、もう保護者の心境。未だ見ぬホーエチャンピオンの姿も見物。(ここで地元兵庫のワシュウジョージの名が挙がらぬというあたり、既に園田の裏切り者)
「他地区に出向かぬ園田組」と一部で囁かれるワシを含めた園田勢だが、今回は、前田さん、環さん(環さんの観戦記はこちら) 、そしてワシの3人で九州上陸。新大阪−博多間ひかり往復+ビジネスホテル一泊がセットで23900円の激安パック。(情報提供の環さんにSpecial Thanks!!)
てなわけで前日午前中に九州入り、荒尾に足を延ばし土曜日は荒尾競馬。天気予報が雨だったので致し方ないが、あたかも我々の後をついてくるが如く行く先々で雨が降り出すのにはさすがに閉口。因みにワシ、雨超苦手人間、さながらモンテプリンスかステイブルラインか。よって荒尾は雨中での観戦。収支はトントン。向こう場面の背後に見えるはずの海が靄って全く姿を見せなかったのが少し残念。
博多の夜は前日オフ会参加。このあたりはワシの筆では僭越なので割愛。楽しかったわん。
明けて日曜日、いよいよレース当日。博多から鳥栖まで臨時快速。鳥栖駅からは路線バス(運賃片道280円)で一路競馬場。「佐賀競馬友の会バス」なる送迎バスもあるらしい(往復300円、往路下車時に一括払い)が、時刻云々で適当な方を選択ということ。既に昨晩のオフ会の皆様とほぼ合流状態。
佐賀競馬場に到着してまず圧巻は駐車場の広大さ。無料で1万台収容らしい。マイカーを基本に据えたアクセスということが一目瞭然。1R前だったがかなりの入りと見受けられた。
予想紙を購入して入場。ゲートはコイン式(福山や笠松にあるタイプね)。予想紙は520円。
カメラ派が多数いるということもあり、ゴール前の一角に皆さん陣取る。やがてこのエリアに当日九州入り御歴歴も含めその手の方々が集い、一種凄い様相を呈することとなる。
メインレースは第9R、まだまだ先は長いのだが、セイユウ賞、ホマスタのことが気になってあまり馬券検討に熱が入らない。むちゃむちゃだらけて時を過ごす。
昼前頃の馬のいないお客さんの去ったパドックでハナキオーさんとばったり。当日入りで今到着とのこと。取り出したるはホマスタの横断幕!
↑こんな感じ。むちゃむちゃカッコイイ!!なんでも夜なべして手縫いで拵えたそうな。もう愛だね。敬意を表しつつパドックの柵に結び付けるのを手伝う。
当日の馬場状態は不良。しかしながらコース上には一見全く水など浮いておらず、重程度に見受けられる。ただし、この佐賀競馬場のダート、かなり赤茶色っぽく(恐らく山砂か)、そして相当深そう、見た目より含水力がかなり高いのだろう。どうやらインコースがかなり渋そうだ(これがレース結果の決定的要因の一つとなるので注意)。
天候の方は、日が射したり曇ったりの一進一退を繰り返しつつ、しかし次第に暗くなってくる。気温もそれに連動して暑く(暖かくじゃないです)なったり肌寒くなったり・・・
8Rのパドック周回が終わった時点から、次のセイユウ賞の周回に備え、パドック待ちに入る。右隣はハナキオーさん、その隣は栃さん、宇田山さん。
※お急ぎの方はここからお読み下さい
そしていよいよパドックに各馬登場。枠順、馬体重、気配(あくまでワシの私見)は以下の通り。
- 1枠1番、ワシュウジョージ(園田)、449k、-7
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予想していた通りやはり遠征でマイナス体重、多少腹が上がっているか。発汗の跡も若干目立つ。気配自体は地元でのパドックと同様の、鶴首で闘志を表に出した姿で文句はない。少なくとも西日本ADBとは比較にならない。
- 2枠2番、イケノエメラルド(名古屋)、408k、-14
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出走馬中最も馬体重を落としているが、それより気になるのはその毛艶。前々走(1/2現場で確認)、前走も(2/2byおーたさん)冬毛かなり出ていて毛艶悪かったが(それでも勝利したが)、解消された気配なし。
- 3枠2番、3番、ホマレスターライツ(宇都宮)、454k、-2
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贔屓目でなしに、ホンマ非の打ち所のない素晴らしい仕上げ。黒鹿毛の馬体は景色が映らんばかりにビカビカ。腹周りもすっきり。そして鶴首、目を剥いて小走りに周回、いずれも好調のサイン。おまけに今日は左トモのレガースもとれている。これで負けるわけがない。
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と、ここまで有力3頭、いずれも内の単枠に入る。おまけにホマスタ、赤ゼッケンの3枠(佐賀は重賞でもゼッケンの色が枠色)。枠順作為的に決定したとしか思えない(な〜んて)。
 ホマレスターライツ、パドック 怪物だ・・・ |
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 ワシュウジョージ、本馬場入場 太を背に |
- 4枠4番、サンディゴトット(佐賀)、448k、+-0
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かなり深めのブリンカー装着。毛艶はいいのでは。
- 5枠5番、イメージアラシ(佐賀)、445k、+1
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出走馬中唯一の佐賀生え抜き。最年長8歳。しかし見た目は悪くない。かなり色の濃い鹿毛、スマート、赤覆面、ちょっとホマスタっぽい。
- 5枠6番、チュウオーロッサ(高知)、493k、+5
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遅れてパドックに登場、ひどいイレ込みで合点、やがて馬ッ気大興奮。騎手の騎乗もままならず再び装鞍所に退場。
- 6枠7番、アキフジクラウン(福山)、502k、-7
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輸送を見越して心持ち太めに仕上げたとのこと。そして502kは正月に大賞典を制した時と同体重。ビンゴ!の仕上げ。毛艶よし。ただしトモの踏み込みはさほど強くない。両トモにバンテージ、この大柄な体格で秋以降走り続けてきた疲れが足元にきていないかがやや心配。
- 6枠8番、ホーエチャンピオン(北海道)、522k、-4
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初めて目にする道営最強馬。デカいということもあり、凄い威圧感。成る程道営最強の名に恥じぬ馬体。兵庫風に例えると、タッカースカレーのデカさに、エイランボーイの風格を付与した鹿毛って感じか(何のこっちゃ)。足元レガース多し。
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このように6枠は、全国区級のホーエイヒロボーイ産駒2頭が呉越同舟。両頭とも、腹周りのぼってり感はいかにも強いところのホーエイヒロボーイ産駒らしい。
 ホーエチャンピオン、パドック でかい・・・ |
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 アキフジクラウン、返し馬 鞍上岡田 |
- 7枠9番、マルタカフレンズ(笠松)、512k、-6
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いつもながら牝馬と思えぬでっかい馬格。かなり色の濃い鹿毛。思った以上に気配は良い。
- 7枠10番、シナノイーグル(佐賀)、524k、-1
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栗毛のシナノリンボー産駒、プリウスと同じ。毛艶はこちらの方が良い。なかなかの胴回り。
- 8枠11番、スマノハピネス(佐賀)、463k、-1
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これも栗毛。皮膚が薄そう。メンコ2枚重ねで登場し、パドック周回中に1枚脱ぐという
芸の細かさ。どうでもいいけど・・・
- 8枠12番、ニホンカイプリウス(益田)、491k、+11
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問題の愛馬。出走馬中馬体重増最大。この数字自体は益田の前々走、そしてその前の日本海特別時の数字に戻したわけなのでさほど気にならないのだが、毛艶は全く平凡、踏み込み普通。
とにかくホマスタが凄まじいばかりの仕上げ。それもともかく佐賀勢の仕上がりの良さが印象的。プリウスは良く見せないなあ・・・
ということで馬券、ホマスタの単勝一本!といきたいところだが、オッズが壊れるとイヤなので、ホマスタがアタマの枠単(佐賀は馬単なし)を、ホーエイヒロボーイ2騎の6枠とプリウスの8枠(自称保護者の"夢"やね)、そしてしぶしぶ本命馬券のワシュウ1枠へ、この3点流し、保険に同じ買い目の枠連を(ちょっと潔くないな)。タテ目、そんなん要らぬ!
いよいよレース発走を迎える。G板前でカメラを構えて待つ。隣はハナキオーさん、曰く
「チュウオーロッサが気になるなあ」「なんで?」「あのパドックでしょ、レース壊さなきゃいいけど」ふむふむ・・・
※以下のレース模様、記憶と写真とNARのDBの結果を頼りに書いています。ディレクTVで中継ご覧の方からすれば、内容に誤りがあるやもしれせん。ご了承ください。
1周目スタンド前
3番手マルタカ(9番)、4番手アキフジ(緑帽7番)、その後に内からホマスタ(赤帽3番)、チュウオーロッサ(6番)、ホーエチャンピオン(緑帽8番)、この後方にワシュウ(白帽)
佐賀の二四は四角直線入り口あたり、ここからぐるっと2周。
スタート!ハナに立ったのはスマノハピネス、因みに彼のメンコは白地に目の回り赤い"Seven Pointed Star"、つまりフクヨシオーと同じ柄、昨年のフクヨシオーよろしく、逃げの手に。
2番手はイケノエメラルド、先行するか斬れ脚を生かして好位に付くかの去就が気になったが結局前へ。気性が勝ったタイプだけにこうなるか。
3番手に戦前逃げると予想されたマルタカフレンズ。
逃げ馬とはいえスピード型とは思われないので致し方ないのか。
4番手アキフジクラウン、差し馬と見込んだ予想紙の展開予想が多かったがワシ的にはこの位置は思った通り。
以上4頭がぽつんぽつんと単走し、その後ろは馬群、一団。外にホーエチャンピオン、中にチュウオーロッサ、ホマスタはよりによってインコース。
ホマスタを見るようにその後ろにワシュウジョージ、1枠発走なのに太さんは既にホマスタより馬を外目に出している。
馬群の若干後方外目にプリウス、本来ならもう少し前が取りたいところか。
基本的に以上の並びで1周目をこなし、2周目に入っていく。ホマスタの位置取りがやはりイン、そして理想の位置より後方のような気がしてならない。ワシュウをかなり意識しているか。
2周目二角を越え向こう流しにさしかかったとき、レースが激烈に動き出す。単走4番手からアキフジが一見強引にスパート、さすがに苦しくなって後退し始めた前の馬を一気に交わして三角を待たずに先頭に。これで後方各馬にまずアドバンテージを稼ぐ。
ホマスタ、アキフジから仕掛けを2テンポは遅れをとる。スパートするもイン追走が仇となり先行各馬の間を割る手間の分だけさらにロス。
一方ワシュウ、アキフジにはタイミング的に遅れたものの、馬群の外目を一気に上がり、この間に内のホマスタより前に出ることに。
三・四角では完全にアキフジ、ワシュウ、ホマスタ3頭の決戦に。コーナリング時にワシュウとホマスタはアキフジとの差を詰めてきて、最後の直線勝負となるのか?
と思いきや、直線を向いて、アキフジが再びスタミナにモノを言わせて2頭を突き放す。遅れまいとワシュウは2番手からアキフジの外へ、ホマスタ、アキフジの真後ろの位置からスパートしようにも、ワシュウが先にアキフジの外に持ち出したため、やむなくアキフジのインへ。前述の通り馬場は内が渋い、苦しいホマスタ。
結局アキフジのストライドの力強さは衰えることなく1着、日本一のゴール。2着はワシュウ。この間4馬身差。まさに完封勝ち。勝ちタイム2分41秒9は昨年のケイエスヨシゼンのレコードを2秒縮める新記録。二角からのロングスパートでの自力駆けのタイムだから脱帽という他はない。
そして、ホマスタが負ける――3着。
以下の着順、4着イメージアラシ、ホマスタからは大差ながら佐賀勢で掲示板確保。5着チュウオーロッサ、あの馬ッ気大暴れでしっかり入着。ホーエチャンピオンもプリウスも掲示板に挙がらず。
後日着順確認、ホーエ7着、プリウスはブービー11着、べべは逃げバテスマノハピネスだからほとんど道中ついていけずの完敗。瀬戸内賞の悪夢再びか、しかしさすがにこれが現時点での彼の実力なのだろう。(涙)
最後の直線、観戦しているワシらはもう大変、ハナキオーさんと「ホマスタ〜!差せ!差せ!」と、カメラ構えているのに絶叫。その願いも空しく届かないホマスタに、ワシ挙げ句の果てには「頼む〜!ワシュウだけは抜いてくれ!!」と、およそ兵庫の人間とは思えぬ叫び。完全に園田の裏切り者。太さん、ご免なさい。レース後しばし虚脱感。
しかしながらアキフジの勝利後、From福山のおさるさんが皆さんから握手の祝福を受けていた(ワシも含めて)のはちょっとよかった。GIゴール後の鞍上で勝利騎手に握手するライバルの気持ちが少しわかった(ホンマか!?)。
佐賀では優勝馬の口取り撮影、他地区の馬だと馬場に出してやってくれないらしい(不良馬場時も×)。したがって優勝レイ姿の写真はGetできず。
アキフジクラウン、ゴールへまっしぐら
気を取り直して総括。アキフジの先行4番手からの二角スパート、これは見事の一言に尽きる。スタミナ充分だが決め手勝負は避けたいアキフジが自分のレースに完全に持ち込んだといえる。表彰式での岡田jk、インタビュー、「園田の山陽杯では不本意なレースをしてしまったので今日は何とかしたいと思っていた。」(筆者意訳)言葉通りの騎乗。そして、「向こう正面で馬が自分で上がっていってくれた。」とのこと。確かに山陽杯では三分三厘のコーナリングで後れをとっていたが(これは福山の、コーナーでスピードが出せないコース形態に要因があろうかと思われるのだが)、それを教訓にした早仕掛けねじ伏せ、まさに「己を識り敵を制す」を地でいったということか。
2着のワシュウ、スタート直後すぐに外に馬を導いた太さんはさすが。道中中団は定位置なれど、二四のレースで前を行くアキフジにあれだけ一気に動かれたら、さすがの捲り差し一気も辛い。太さんはきっちり乗ったと思うし、持ち味は出せたと思う。冷たくしてゴメンね。
ホマスタ・・・道中内を回り通しだったことが全てか、と。正さん、ワシュウをちょっと意識しすぎたかなあ、位置取りが後ろ気味だったしスパートが遅い。アキフジのやったことホントはしなきゃいけなかったのだが、それは勝負の綾。しっかし悔しい。
レース後、Okuさんが「でもこの1.2.3着、何回かやったらその度着順変わるで」と言っていたのには納得。今回はアキフジが自分の領分、長距離戦で能力をフルに発揮したということ。兵庫勢はこの先度々アキフジとは対戦があるはず。
ところで次の全国交流って実のところいつなのよ、来年荒尾のセイユウ賞?園田のタマツバキ?― ホマスタの捲土重来、その日を待つ日々が始まる ―
そしてそこに現れるはずなのは、兵庫、いや日本アラブの頂点、そう、エイランボーイ(←御意見無用)。
2000.3.7 記
★環さんの「セイユウ賞観戦記」
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