第1回全日本アラブグランプリ観戦報告、
というよりほとんど日記
2000.11.26、福山、2250m
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はじめに
兵庫以西の4歳馬による交流競走であった西日本アラブダービー。これが今年から全国交流競走となるというニュースが流れたのは、夏の頃だったろうか。その名も全日本アラブグランプリと改め、カウントも第1回にリセットされることとなった。これによって、東海・北陸以東、殊に東日本の、アラブ系競走の縮小が進み、活躍の場が激減しつつある地区の4歳有力馬にも、晴れ舞台が用意されることになった。「昨年のレースのメンツがあまりにショボかったから全国交流にしたんじゃない?」という、ちょっと意地悪な憶測も挙がったが、とまれ、全国的なアラブ斜陽のこの時代、大舞台が設けられたのは歓迎すべきこと。ただ「4歳全国交流新設されたから、これで楠賞止められる」という(兵庫の主催者の)判断だけは、勘弁して欲しい。
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チボリツアー
というわけで、4歳晩秋の大一番、是非とも現地観戦を!ということで、福山に出掛けた次第。
この大レースに際し、タカライデンを送り込む、園田のファンの皆さんも大挙福山行きを表明。そこでそれらの方々のうちの幾人かで、姫路−福山間の快速チボリ号乗車ツアーを組むことに。当然引率者は我らが"リーダー"前田っち。
姫路までの各停列車に西明石駅から乗り込むと、同じ車両に、ツアー参加のラティラー姉妹の姿が。遙々大阪の東の彼方より意を決しての在来鉄旅。エチゼンさんも同じ列車。
姫路駅に着くと、ホームには既にリーダー、まりおちゃん、ちーちゃんの姫路在住トリオが待っている。合流してチボリ号を待つ。ちーちゃんは福山初参戦、まりおちゃんは二度目。チボリ号は我々が乗ってきた各停が発車した後、同じホームに入線する。入線と同時にドドッと乗車し、座席をキープ、とは言うものの、乗客はそれほどおらず、余裕。
チボリツアー参加予定メンバーのうち、"園田系のホープ"ブリセイくんが現れない。「遅刻したら置いていく、それがチボリの掟」などと言っていると、ブリセイくん、無愛想に到着。なんでも阪急春日野道駅から三ノ宮間の電車に乗り遅れ、徒歩20分かかる距離を走って三ノ宮に行って、ギリギリ姫路行きの各停に間に合ったとのこと。のっけから疲労困憊。
ということで参加者が揃い、電車は姫路駅を出発。約2時間の旅。みんなで楽しく過ごせば、それほど長くは感じられない。
事件は新倉敷駅停車時。この日はジャパンカップ観戦と思われていた京都人さんがおもむろに登場。「え〜〜!」と、我々から挙がる叫声。京都人さん、ドッキリ大成功といったろころで満足気の笑み。その姿、ディナーショーの演歌歌手のようだと思ったのはワシだけか。実はワシ、事前に京都人さんからは、JCor福山は五分五分、福山行きならサンライズで倉敷まで、と聞いていたので、倉敷駅のホームでは、ちょっと気になっていたわけで。完全に裏をかかれてしまったということ。思わず「ま〜イ・ヤ・ラ・シ・イ〜」
何だかんだでチボリ号は定刻通りに福山着。ここでリーダー、早速帰路の旅券を段取り、金券ショップ、回数券、乗り継ぎetc.の、鉄ワザフル活用、さっすがリーダー!
競馬場までのファンバスに乗り込み、一路競馬場に。このファンバスには、高知のもりも先生も同乗。そして競馬場到着。
希望者の分の指定席券をまとめ買いし、入場。まりおちゃんちーちゃんは早速、赤木横断幕装着の段取りに。福山はパドックが狭く横断幕を出すことが好ましくないということで、パドックに面した(その向かい側に位置する)2階の指定席の、窓の外にぶら下げることに。というわけで福山に赤木幕出現。
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『アラビアンA』受け取りの顛末
ここでワシにはひと仕事が。実は北海道在住のハナキーくんが、タマツバキ記念に続き、今回もお手製予想紙『アラビアンA』を作成したのだ。しかしハナキーくんは都合でこの日来福はならず、配布するのはワシの役目となる。が、その『アラビアンA』、出来上がったのが前々日の金曜日、ワシのところに送るのではレースに間に合わず、苦肉の策で、競馬場の事務局に送ることに。それを引き取るのがワシの使命。ということで、その旨を総合案内所で伝えると、あまり要領を得ぬまま、取り敢えず事務局(旧特観席の建物の5階)に案内される。ワシの姿がカメラの銀箱持参ということもあり、報道関係者だと勘違いしたらしい。事務局で説明するものの、どうも連絡がうまくいっていないよう。「大きめの封筒で朝10時着なんですが」と言うが、「そんな荷物あったか?」てな感じ。ところが「電話で北海道の云々」と言うと、合点が行ったようで、その荷物の置き場所を確認してくれる。よく見ると、封筒が既に開封されてしまっていて、それで見つからなかった模様。「これ、これです!」ということで何とか受け取ることができた。余談だが、事務局の人、これをお客さんにドバっと配るつもりだったみたいで・・・しかしレースが始まりつつあり、持て余していたところだったようだ。
とにもかくにも何とか肝心のブツを手にでき、ようやく福山競馬、観戦の1日をスタートさせることができたのだった。そしてワシはこの日、新聞配りのオッサンと化したわけ。
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前日のメインレースのVTR
1レースパドック周回開始前の場内モニターに、前日のレースのVTRが流される。注目はメインレース、JA松永市農協杯紅葉賞、A2級2250m戦。ここに兵庫よりともに転入2戦目で、前走同一レースを1着2着だった、アローパッションとグリンティアラが出走。そのレース、ティアラは好位より四角先頭、直線独走で押し切らんとするところ、前走同様後方よりのアローパッションが、ゴール寸前ティアラを差し切り転厩後2連勝。次開催のA1入りは確実か。大賞典が見えてきたぞ。ティアラはやはりソラを使う癖が抜けぬよう。
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御来福の皆様、そしてメインレースまで
さて、ゴール板前のベンチのあたりに行くと、既に皆さんが集結している。今回のアラブグランプリの、盛り上げ特設ページを作成された、"香川県競馬組合代表"電設の男@ともろうさん(オフ会web幹事!)、京都発全国行脚のディープさん、"九州の首領"Tienさんと"神出鬼没"さまにべっぴんさんのFrom九州お二方、重鎮のお一人江戸平多さん。園田系事情通あいねすさうざーさんは大阪から車にて来福。奈良在住のとうまさんも。やや遅れて、福山現地駐在、そしてオフ会幹事のおさるさんに大御所Okuさん、関西在住益田応援家のDaisukeさん、Daisukeさんと共に現れたのは、今回AGPに出走する、モナクマリンとイッテンヨカイチの生産者でネットにも時折顔を出されるルパンさん。正午頃にようやく、最近馬券絶好調で羽振りのいい"THE"アラブファンくんが登場、そして京都から環さん、今日は新幹線にて来福。遙々関東から勝島競人さん、そして今日はメダリリストヒザワ見届け人"東海の好漢"おーたさん。
といった塩梅に大集合なのであった(以上、祝電披露のようになりましたが・・・)。
この日の天気はばっちり晴れ。11月の終わりにしてはかなり暖かい、いやはっきり言って暑い。セーターが邪魔。馬場状態は良。極端に軽いということはなさそうな砂の深さ。
『アラビアンA』受け取りに時間を費やし、2レースまで馬券を買えなかったため、競馬のリズムに乗り遅れ、結局勝負はメインのAGPと最終のA1戦のみに絞り、ダラダラ過ごすことにする。ところが馬券戦線は大荒れ、軒並み高配当で、枠単11万馬券まで飛び出す始末。"やらず"で正解か。
適当なところで、お楽しみの一つ、尾道ラーメンを食べに、まりおちゃんちーちゃんと売場へ。ちーちゃんは初体験のこのラーメン。初のお味の感想はなかり良好のようで。ワシは既に尾道ラーメン中毒だからして・・・
写真撮影のことを考えると、少しは曇ってくれると有り難いのだが、午後になってもちっともその気配はない。この間、環さんとラティラー姉妹が、地元のFMラジオ中継の7レース予想コーナーに生出演。某くん、「大阪から?熱心なファンが他にもおるねんな」と思ってラジオを聴いていたところ、その出演現場を目撃して「何や出てるやん!」と、ゴール前で弾ける。
※全日本アラブグランプリについてはここからです
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晴れ舞台、全日本アラブグランプリ
さて、メインレースの全日本アラブグランプリ。出走馬は内枠より以下の10頭。()内は所属地区、騎手。
ヤマノダイオー(福山、嬉)、ミスターカミサマ(福山、渡辺)、モナクマリン(福山、岡田)、デイオウルフ(宇都宮、平澤)、イッテンヨカイチ(益田、沖野)、シュメイヒーロー(佐賀、真島)、メダリストヒザワ(名古屋、吉田)、タカライデン(園田、赤木)、ハヤテサンダー(金沢、山中)、チーチーキング(高知、倉兼) 斤量は紅一点ヨカイチの53k以外は全て定量55k。
メイン前8レースの発走前、アラブグランプリの出走馬が装鞍所に入る。カミサマとヤマノダイオーは早々に隣どうしの馬房に、大人しく。タカライデンとハヤテサンダーも。マリンは遅れて。デイオウルフはやって来るとすぐに広場を回り始める。この輪にシュメイ、ヨカイチ、チーチーが加わる。
馬体重発表、特に目立つのはチーチーの+11kと、メダリストヒザワの-17k。秋以降馬体重が増え続けているミスターカミサマは、ここまでスカッとした感じに欠けているので、絞って減らしてくるかとも思ったが484kで+2k、これでどうか?と数字を見た時点での個人的感想。
パドック待ちをしていると、ここでFUKUさんと、福山競馬万歳さんがいらっしゃる。「チーチーの+11kって、輸送で減るだろうと思って緩めに仕上げて持ってきたら馬が動じなかったってやつですよね。」「そうそう」「んでもって好走はこの次の地元戦っていう、まさに"遠征競馬2走目の法則"(おさるさんなどが主唱)ですね。」「うんうん」といった感じでFUKUさんと語らう。
そしてパドックに出走馬が登場。まりおちゃん、ずっとパドック待ちをしていたにもかかわらず、カメラのセッティングをコロッと忘れ、馬が出てきてからあたふた慌て出す。
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パドック、そして返し馬〜発走まで
1番ヤマノダイオー。前走出走予定だった鞆の浦賞をフレグモーネで取り消しして使えず、病み上がりの出走。ゆったりとした周回で次第に活気を帯びてくる。見た目自体は見劣りがない。が、おさるさんは発走前に「もうヤマノダイオー歩様ガタガタだもんなあ。駄目だわ。」と仰っていた。
2番に注目ミスターカミサマ。馬体の張りと艶は良い。栗毛の皮膚は薄く、トモの筋肉の割れがよくわかる。これで活気づいてキビキビと周回してくれれば個人的に文句なしなのだが、どうもおっとりしている。トモの踏み込みも9月戦と鞆の浦よりはまあましといったところ。おさるさん共々、そして予想紙も唱える「カミサマ銀杯MAX説」を覆す程の出来には至らない。予想紙は九分までは持ち直した模様と書くが、これでどうか。地力は信頼するに足ろうが。
3番モナクマリン。馬体重が+8kで420kになった。ガサがない馬体、この数字が成長分なら言うことない。前走の鞆の浦での周回同様、引き続き気配は良好か。艶、張り、筋肉、相変わらずgood。あとは二二五の長距離戦。快速逃げがどこまで保つかだけ。主戦岡崎騎手が負傷欠場で今日は岡田騎手に乗り替わり。岡田騎手が劣るとは言えないが、御しやすい馬では決してないと思われ、これがどう影響するか。
と、地元3頭、内枠に集中。作為的とも言えるほど。これより外の枠は、全て他地区馬。
4番宇都宮のデイオウルフ。馬体の見た目はかなりのもの。前走地元のとちぎアラブ王冠のパドックに比して、チャカチャカしたうるさい仕草が目に付く。「デイオウルフ首が高いなあ。」と、隣で環さんが仰るが、それはその通り。元々の体型がそうでもあるし、身のこなしもそう見せる。
5番益田より参戦イッテンヨカイチ、唯一の牝馬。ちょっと辺りをキョロキョロと気にしているような、ソワソワした印象。馬体重410kとガサがないのは元々の体型。横から見るとその細さがわかるが後ろ姿は意外にそれほど小さくは見えない。
6番佐賀のシュメイヒーロー。馬体重493kでこれが出走馬中最高馬体重だが、馬体的には他に比して格段に大きく見えるわけでもない。しかしながらその姿、鹿毛の皮膚は薄そうで、艶と張りの良さが目立つ。ゆったりとしたいい周回。そういった点において、周回する面々のうちで特に目を惹く。
7番名古屋のメダリストヒザワ。ちょっとうるさいかなあといった印象。かなり明るい色の栗毛の肌で、タテガミがパツキン、尾花栗毛。そのパツキンのタテガミが切り揃えられているのがやけに印象的。どっしりしている腹袋に比してトモのボリュームが平凡か。
8番に園田のタカライデン。兵庫二冠馬が、楠賞でコウザンハヤヒデの前に取り逃がした全日本のタイトルを、今度こそ手に入れるべく参戦。仕上げは完璧か。古馬オープン編入の初夏以降パドック気配が落ち着いたのだが、この日は春の重賞時のように、気合いを前面に表している。時折鶴首になり、目がトぶ。輸送の影響が多少あるのか。
9番金沢のハヤテサンダー。マーキュリサンダーの全弟、しかし地元では4歳No.3といったところらしい。二人曳きだが歩くスピードが遅い。ポテッとした体型で、トライバルセンプー産駒、そして兄のような垢抜けした感じはあまりない。
10番が高知4歳二冠馬チーチーキング。馬体重+11kだが、重め感は全くなく、非常に良い仕上がりに見えた。顔つきも細面でなかなか精悍、紫メンコがよく似合っている。
といったところで、パドック気配だけならかなり目移り。個人的に好印象の馬を敢えて挙げるとすれば、チーチー、シュメイ、マリン、タカライデンか。
そして本馬場入場。モナクマリンは例によって入場早々いの一番に駆け出し、待機所に直行。他の各馬は概ね整然と登場し、返し馬に。タカライデンとチーチーが最後にダクに下ろす。
ヤマノダイオー、カミサマ、ヨカイチ、デイオウルフ、シュメイ、ヒザワ、ハヤテサンダーと、続々と、そしてあまりに整然と、キャンターで通過。タカライデンはこの後内ラチ沿いをダクとも軽めのキャンターともつかぬ走法で。鞍上赤木騎手が両手綱を思いっきり抑えていて、タカライデン自身はあまり口向きがよろしくない。これはあまり良い兆候ではない。最後にチーチーがキビキビとした走りで通過。
紅"一点"、イッテンヨカイチ、返し馬へ
二度目の福山コース
手前メダリストヒザワ向こうシュメイヒーロー
ようこそ福山へ
発走までの間、皆さんとあれこれ語らう。おさるさんが「タカライデンってあんなんでした?」と問うので「どういう意味でですか?」と問い返す。曰く「やああんなにゴツい馬だったっけ?」(おさるさんは楠賞でタカライデン見たことあり)そこでワシ「いやああれね、夏越して凄くガッチリしたみたいよ、姫山の時見てホンマそう思ったわ。」「ほお、結構好みなタイプになってるよ。」ふむふむ。これに絡んでおーたさん曰く「ああいうチャカチャカする馬なの?」「春はああでしたね、夏以降地元では大人しくなってましたけど。」と返答。
あいねすさんはメダリストヒザワが気になると。ワシと異なる見解。某くんはシュメイヒーローの名を挙げる。万歳さんは「ねえ、やっぱりタカライデンが強いでしょう?」と仰っていたっけ。おさるさんとワシのココロはカミサマ、しかしお互い、「でもなあ、やっぱりカミサマ銀杯MAX説なんだよなあ・・・」と、悩ましい心境。とまれ、こうした、お初の馬に期待と関心を寄せていろいろ話せて盛り上がれるのは全国交流ならでわ、とても楽しく、ワクワクできる時間。
予想、アタマはカミサマ。これは当初から決めていたこと。相手筆頭はタカライデン。プラス、チーチー、デイオウルフ。デイオウルフは足らぬかなと次第に思えてきたのが、情けで少々押さえ。本来ならばカミサマ−タカライデンでドン!と勝負したかったのだが、カミサマの「う〜ん?」の出来、それに比して同じ差し馬チーチーの気配が絶好に思われたので、初志を曲げ、チーチー−タカライデンのタテ目をそれなりに買ってしまう。
『福山エース』のシルシは全て本命カミサマ対抗タカライデン。『アラビアンA』ではネット系の皆さんの支持が多かったマリンは乗り替わりと長丁場が敬遠されてかシルシが想像以上に薄い。単勝一番人気は結局タカライデンで次いでカミサマ。連単の売れ方もタカライデンアタマがカミサマアタマより僅かに多い模様。
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そして決戦の時
いよいよスタート。福山二二五、4コーナーより発馬でコースを丸2周、ホームストレッチを三度通過の長丁場。
場内に重賞のファンファーレが鳴り渡る。「重賞のファンファーレ聞いて、久々に緊張してきた。」とおさるさん。空模様は晴れのまま、秋も深まり西に低く傾いた太陽が、向こう正面真向かいから光を投げかける。完全な逆光。写真撮影ムチャムチャキツい。
ゲートオープン。デイオウルフがアオり気味に左にヨレて発馬。そして予想通り、ポンと先手はモナクマリン。3枠から若干馬場外目に。続いてデイオウルフが発馬イマイチも無理から前へ、並んでシュメイヒーロー、外からタカライデンも前列に。連れてハヤテサンダーも。ということで最初のホームストレッチ、先頭マリン、まずはじっくり気味に。この次列、内デイオ中シュメイ外タカライデン、さらにその外直後ハヤテサンダー。この直後インにヤマノダイオー。チーチーとカミサマは予想通りの後ろからじっくり。
発馬後150mの先団、何故かみんなカメラ目線
先頭マリン次列内デイオ中シュメイ外タカライデン
1周目の道中、向こう流しあたりからモナクマリンが本領発揮で後続を引き離し始める。長丁場何するものかは、悔いを残さぬ自分の競馬を敢行か。先行勢は引き続きこの後ろ。
そして二度目の正面スタンド前、5馬身以上は後続を離し、先頭はマリンの単騎逃げ。鞍上岡田との折り合いは大丈夫。2番手は内デイオ外シュメイの併走ランデヴー走行。昨年タマツバキの、モンゴルムーンとフクヨシオーが思い出される。これからさらに間が開いて、以降は馬群、一団。この集団のフロントが、内タカライデン外ハヤテサンダーの併走。その後ろインにヤマノダイオー。メダリストヒザワ、イッテンヨカイチと続き、後詰めに内カミサマ外チーチー。カミサマは前走道中3番手から四角先頭の競馬をしたらしいが、今日は本来の後方待機に徹する模様。残り1周、この位置から勝てるのか、期待と不安がココロを満たす。
タカライデン&ハヤテサンダー
二度目の直線、馬群の前列併走
二度目の直線、殿内カミサマ外チーチー
ここから届くのか?
レースのカギは2周目1コーナー、殿内のカミサマが、早くもここで発進。インを突いてスパート。(レース後の万歳さんの回顧に曰く、カミサマ鞍上渡辺騎手、一角の進入で鞭を抜く、そして直後、目の前のインコースがガラッと開いてそこを駆け上がったとのこと。)前の集団を抜き去り進出。
2コーナーを迎えるか迎えないうちに、2番手内のデイオウルフが早々に失速、このあたり、タカライデンも仕掛け始める。
そして向こう流し、踏み出した(競輪的表現?)タカライデン、しかしその時直後には既に加速のついたカミサマの影。タカライデンからすればカミサマより先に仕掛けてリードを稼いでおきたかったところ、ところがカミサマの発進が見込み以上に早かったか、一気に取り付かれた格好。先頭マリンはまだ脚を残した様子でリードを保ちながら3コーナーを回る。そしてバックストレッチを丸々使ってチーチーキングが捲り上がる。
向こう流しを一気に駆け上がったカミサマ、当面の目標タカライデンを3コーナーで早くも捉える。斬れ脚勝負ではタカライデンはひとたまりもなく、ここでタカライデンvsカミサマの争いは決着。カミサマにとって、勝利への最後の相手は逃げマリン。果たして捕まえられるのか?ドキドキしながら見つめる三分三厘、渋太いマリン、しかしカミサマ迫る迫る、四角手前遂に追い付き、そして抜き去り先頭に、あとは目指すは栄光のゴールだけ。
最後の直線、先頭カミサマ、スピードは全く衰えず、次第次第に独走状態。お客さんから起こる「カミサマ!」「渡辺!」の声。かく申すワシも、カメラ構えつつ三分三厘から「カミサマ!」連呼。被った黒メンコの額「Mr神様」の金文字刺繍を西陽に輝かせながら、最後は鞍上渡辺余裕の手綱で4歳日本一のゴール!
神様直線独走
逆光キツ過ぎ・・・
この後方、モナクマリンがバテずに最後まで抵抗、これをじりじりと追い詰めるタカライデン、残り100mあたりで何とか交わし2番手に。そしてここに馬場真ん中、チーチーが単騎追い込んでくる。粘るタカライデン迫るチーチー。あいねすさんあたりから「赤木い!」の声が。隣の電設師は「倉兼!」この争い、最後はタカライデンが1馬身振り切って2着。1着入線カミサマはその4馬身前。3着チーチー。4着最後まで頑張ったモナクマリンが2馬身差で。5着後方から差し込んだイッテンヨカイチが掲示板圏内入り。
以下6着シュメイヒーロー、7着ヤマノダイオー、8着メダリストヒザワ、9着ハヤテサンダー、最下位はデイオウルフ。ハヤテとデイオは共に前とは大差の大敗。デイオウルフに至っては、先頭カミサマが残り100mの地点で、まだ4コーナーに辿り着いていないという逆噴射状態。
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勝者のレース後
カミサマ、ゴール後コースを1周して、スタンド前にウィニングランにやってくる。渡辺騎手は特に派手なアクションもなく、またカミサマも平然とした走りで、却って「大したもんだい」と思わせた。お客さんは一様に、感心して迎えていた感じ。
レース後の口取り撮影、福山の流儀で、スタンドのお客さんからは正面には見えない下馬所と、その前のコース上で行われる。関係者さんが綱を取っての記念撮影が終わった後、お客さんの誰かが「こっちに見せて下さい」と言ったところ、何と渡辺騎手と担当の厩務員さん、スタンド前にカミサマを持ってきて、こっちを向いてくれたのである。これは実は福山の口取りでは異例中の異例。大喜びでカメラのシャッターを切るカメラ持参の皆さん。しかしワシ、この直前でフィルムが終わり、痛恨の撮り逃し。アラブグランプリの赤ゼッケンと、臙脂色に金文字のレイがマッチし、そしてメンコの金文字が映え、素晴らしい被写体であったと記しておきましょう(この時の写真、複数のサイトで公開されていますので、そちらをご覧下さい。例えばまりおちゃんのサイト『
けいばーす
』の「渡辺INウィナーズサークル」など。エエで〜!)。
ウィニングランは平静を装った風にキメた渡辺騎手、表彰式で勝負服を脱いでお客さんにプレゼントする大サービス。やっぱり嬉しかったのですね。表彰式後にサインを頂こうと思ったのだが最終レースに騎乗があるためこれは叶わず、電設師共々、残念(ワシら二人、"サインちょ"マニア、『Dr.スランプ』のピーすけかいな?)。
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さらなる見物、最終レース
この日の最終レースが駄目を押すかのようにこれまた見物。古馬A1戦、つまりは古馬オープン最上級戦。距離は千八。パッピーケイオー、ワールドアイ、モナクダイキチ、マルサンダイオーといった、バリバリのオープン馬が登場。正月の大賞典を控え、徐々に臨戦態勢を整える、その過程の一戦。
本来であれば、前走菊花賞を制したパッピーで鉄板なのだが、最良のパートナー藤本サブちゃんが病気欠場のため、吉延騎手に乗り替わり。パッピー、ムチャムチャ乗りにくい馬なので、これは大幅なマイナス要因。それでも予想紙はパッピー本命気味だが、ワシはウハウハでパッピーを切って、狙い目の、アタマダイキチ相手ワールドアイの一点勝負に出る。
ところがところがそのレース、マルサンダイオーが、アラブグランプリを勝利した渡辺騎手を初めて鞍上に迎え、久々に逃げの手を打ってスイスイ。パッピーもワールドも終始イマイチでマルサン(リーダー曰くマルダイ)楽勝ムードの最後の直線。「マルサンダイオーこれで負けたらヌルいで。」との、Okuさん十八番のフレーズが飛び出す中、快勝。2着は捲ったモナクダイキチが、直線だけで最後方から追い込んだエイコウラインをどうにかしのいでの入線。渡辺騎手、サスガリーディング。そしてマルダイ、5歳の今年概ね低調だったが、ちょうど1年前はアラブダービーでワシュウジョージと叩き合っての2着。その1年前を思い出したのか?
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競馬の後のことなど
時間は4時半、太陽が向こう正面の向こうの稜線にまさに沈まんとする中、本日の競馬、終了。
この後福山駅前の小洒落た中華料理店で、宴会。恐らく参加人数、福山オフ会史上、最高。幹事のおさるさん、ともろうさん、お疲れさまでした、そして有り難うございました。
8時過ぎに辞去し、帰路はチボリツアー一行で、福山−岡山間在来(ただし切符は回数券、これはリーダーの才覚、サスガ!)、岡山−姫路間は新幹線(ウィークエンド回数券使用、この時乗車しようとした列車から、福山から乗車したともろうさんが降りてきて一同びっくり)、そして姫路以東は新快速、というワザの利いた乗り継ぎ。「いいレースだったねえ」「いいオフ会だったねえ」という感動の余韻を抱えての道中であった。
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おわりに〜総括など
勝ったミスターカミサマ、素晴らしい競馬だった。秋緒戦と鞆の浦、ともに逃げ馬を捕らえ切れず2着に敗れていたため、ここは好位から競馬をするのか、いつもの後方待機策を取るのか注目されたが、渡辺騎手は馬の能力を信じての騎乗。それにしても勝負に出たのが2周目1コーナー、残り900mを一気に駆けたのだから、そのロングスパートは凄い。捲り上がっていくときの軽快さとスピード感は、似たような脚質のサンバコールやワシュウジョージともひと味違う。銀杯での捲り圧勝ぶりを目にして以来、その能力とスター性に惚れ込んで、おさるさん共々「この馬は強い」と事ある毎に主張してきたので、ワシ的にもこの勝利は格別。「ミナミセンプウの再来」などと大風呂敷を広げたこともあったが、その称号に恥じぬようになってきたのでは。今後古馬オープンで、福山戦線を牽引していくことが期待される。と、その前に、12月17日の重賞アラブ王冠。4歳三冠に関してはまだ無冠の彼、最後の一冠奪取を、そして距離千八で、好敵手モナクマリンと再度勝負。
2着タカライデン。2周目2コーナー過ぎから仕掛けるというのは、人気を背負いなおかつ地力のある先行馬の乗り方としてはセオリー通りで何ら問題ないのだが、今回は如何せんカミサマに見込み以上に早く仕掛けられたのが誤算。理想とすればカミサマが寄せてくるまでにリードを稼いでおきたかったところが、仕掛けた時点で既に加速したカミサマが直後というのは厳しい。「タカライデン、カミサマ来てから仕掛けたら勝てんわ。」と、レース後環さんが指摘されたがまさにその通り。一気の脚力のなさに泣いた形。終いはチーチーを振り切っての2着はまあ地力の一端。ただ今後の地元古馬一線級との闘いにおいて、今以上にパワーか斬れを身につけないと、ワシュウやヨシゼンといった、超強力な差し馬勢と互角に渡り合うのは難しかろう。このあたり、考えさせられる2着だった。
3着チーチーキング、その捲りと直線の差し脚には目を見張った。カミサマ同様途中までは最後方だったが、向こう流しから最後の直線、勝負を盛り上げてくれたと思う。「あそこまで来たら2着になってくれよぉ」と、もりも先生やともろうさんは言いたいところでしょうか。惜しい3着だった。
モナクマリンは4着だったが、個人的には大健闘だと思う。この馬明らかに本質は短距離馬のはず。二二五の道中かなりのスピードで逃げて、最後までタレずによく持ちこたえた。乗り替わり岡田騎手も、馬と喧嘩することなく無難に乗っていたような。「これで千八の目途が完全に立った。」とおさるさんが仰っていたが、全く同感。次走はアラブ王冠。距離千八、カミサマとの対決、再逆転を狙う、その先にあるのは二冠馬の称号。
それにしても最下位大敗のデイオウルフには参った。レベル差なのか、輸送が駄目だったのか、敗因はいかようにも挙げられようが、着差的に情けない。もっと情けないのは彼を連下評価にし少なからず推奨したワシ自身。宴会時に思わず「ホンマ張り○て馬やなあ」の暴言が口をつく。
とまあ、まさに「神様降臨、AGP」でありました。
"神の手"は大山倍達とデットーリ、
『神の火』は高村薫、
そして・・・
"神の脚"はミスターカミサマ――
2000.12.1 記
2000.12.4 修正
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追記:
この全日本アラブグランプリに際し、電設の男@ともろうさんが、大変素晴らしい盛り上げ特設ページ『魅力、発見!農林水産大臣賞典・第一回全日本アラブグランプリ』を開設して下さいました。ここに協賛サイトバナーを掲げ、改めてその労を讃えさせていただきたいと思います。
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(c)電設の男@ともろうさん
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