第43回新春賞観戦報告

 2001.1.3、園田、1870m

今年の新春賞について〜序にかえて
園田正月開催、1年始めの名物重賞、新春賞。ハンデ戦ということで、有力馬、実績馬はそれなりの斤量を課されるのであるが、正月重賞=縁起ものということからか、例年重斤覚悟で有力どころが参戦してくるのが常。事実、過去10年のうち、'94年にはマルセンガバナーがハンデ60.5kで、'98年はケイエスヨシゼンが同61k、'99年にはエイランボーイが同60.5kでと、3頭が60k超の斤量でレースを制している。
さて、今年だが、王者ワシュウジョージが参戦であれば60k超のハンデを課せられるのは必至であったところ、1月30日に荒尾で開催される全日本セイユウ賞にエントリーしており、これ一本に目標を定め新春賞は回避。またその他の実績馬も、近走ぱっとしなかったり、本調子には至らずであったりということで、出走馬中、斤量60k超の馬はなし。
エイランボーイが引退し、ワシュウを欠き、ケイエスヨシゼンも不出走となると、「かくもメンツが小粒になるのか・・・」といった、辛口の感想に反駁するには、いかにも心許ない状況である。ただ、これが即、兵庫アラブ総体、殊に古馬勢の弱体化と断ずるのは早計か。休養明け間もなく、本調子には一歩手前か?といった馬もまま存在するので、そういった個々の馬のローテーションのタイミングといった面も勘案する必要はあろう。
とはいえ今回の新春賞、兵庫の古馬オープン勢の集結という、ローカルな見地からは上々だが、全国レベルの見物としては、他地区の方々が敢えて観戦するには、ちょっと食指が動きにくいか。具体的には、同日行われる福山大賞典が、前述のセイユウ賞への福山代表選出レースであり、また、昨年11月の全日本アラブグランプリを圧勝したミスターカミサマが登場とあっては、その全国的な注目度、話題性においては一歩譲らねばならぬということ。福山と同様兵庫もこの新春賞が、荒尾行きの切符の争奪レースであれば、その重みが俄然違っていたのだが、残念ながらそうではないもので・・・
そこで私事、では何故ワシが今回福山大賞典ではなく新春賞なのか?について。「あちこち遠征してても所詮"園田もん"じゃん。」という冷笑は甘んじて受けるが、「福山大賞典、距離二六むっちゃ観たい。でも、大賞典出走のメンツ、今後観る機会多かろうが新春賞のそれはなかなかないんじゃない?」という、あたかも兵庫よりも福山の方が身近になってしまったかのような、妙な状況に起因する、というのが実のところ。結局"園姫"系にも全国行脚系にもなりきれぬ、"継子のアラブオトコ"ってことか・・・

と、前置きが長くなったが、その新春賞の出走メンバー、内枠より以下の11頭。()内は負担重量と騎手。
ヒュガチカラ(51k、松本心)、ツバサキング(53k、大山)、サンバコール(55k、尾林)、スーパーチャレンジ(52k、平松)、ベストスイセイ(52k、下原)、タカライデン(55k、赤木)、トライバルサンダー(55k、田中)、ハッコーディオス(53k、岩田)、シルクスピード(54k、米田)、マノノトップガン(54k、小林)、シャインマンリー(58k、永島)
トップハンデはシャインマンリーの58kではやはり小粒か。実績は全国区級の2頭、サンバコールは実に1年半の休養を明けて3走目、かつ往年の力は望み難く、トライバルサンダーは半年の休養明け緒戦を凡走してまだ一息ということで、この斤量。なお、小牧太騎手は騎乗停止中、そうでなければ恐らくマノノトップガン騎乗であった。

競馬場へ、そして御来園の皆様
当日は正午過ぎに競馬場着。天気は晴れ、馬場状態は良。しかしながら寒い。
正月開催は一年中で園田が最も混雑する時期。パドックには幾重にも人垣が、そして馬券売場の行列はうんざりするほど。じっくりと競馬という気分にはなれず、知人を捜すのにも一苦労か。と思いきや、"浦さんオッズ板"近辺にて、その浦さんをあっけなく発見。お久しぶりの姫園くんも。程なく"リーダー"前田っちにも。この寒さの中、背中にカイロを張り付け、防寒対策万全という、用意周到しかしちょっとジジむさいリーダーであった。その後すぐに、まりおちゃん、ブリセイくん、インターロッキーくん、そして京都人さんの集団に遭遇。さらに山ちゃん、発行者の「出せませ〜ん」との"泣き"が入った『アラビアンエース』新春賞号を、意地で作成し、配っていた。それを頂く。場内で単独行動のアラブファンくんを目撃するがそっとしておく。場内にはエチゼンさんの姿も当然あり。バイクウェア姿の大西さんも現れる。
9レースのパドック周回が済んだ時点で、メインレースのパドック待ちに。ラティラーちゃんと、お姉さんの"枚方(ひらかた)の貧乏"(爆)ひらびさん、遅れて来場の、年末宇都宮でご一緒した環さんも合流。そしていよいよ新春賞出走の面々がパドックに登場。

パドック気配及び各馬の近況、そしてレースまで
1番ヒュガチカラ、姫山敗退の後、A3、A1戦を連勝で格上挑戦ながらここに出走。ただしハンデ51kは軽すぎて主戦小牧毅が乗れず、松本心平に乗り替わり。この馬自体の艶や気配は良いし、馬格は相変わらずボリュームに富む。が、あくまで格下、ここでは足りぬか。因みにブリセイくんがこの馬が好きみたいで。ワールドアイといいヒュガといい(この2頭、どことなく似ている)、キミはゴツくて不格好な馬が好みなのか?
2番ツバサキング、スマノダイドウ産駒最後の世代の1頭。このところS1平場で見どころあり、重賞初挑戦。さすがに重賞ではちょっと荷が重いか。ワシは実物はお初。キビキビとした周回で鹿毛の艶は良い。
3番がサンバコール。'99年の兵庫大賞典を最後に長期休養に入り(その間、骨折していたとの情報あり)、昨11月、実に1年半ぶりに戦列復帰。緒戦は5着前走はベストスイセイとの追い込み比べにハナ差破れてワシュウジョージ62k楽勝の3着と、ソコソコなれど、ある程度予想はしていたがやはり物足りぬ戦績。その馬体、休養前のバコールのそれは、トモはおろかハラメまで筋肉が鎧の如くびっちり付いていて、それが彼の代名詞ともいえる、豪快かつ派手な捲りを可能たらしめていたのだが、今日は案の定筋肉が相当落ちている。張りと艶はまあ有力馬のそれではあるが、大人しめの気配といい、周囲を圧倒するような雰囲気はない。今日の鞍上、ベストパートナーの平松騎手が、先約か?スーパーチャレンジに、初代パートナー田中は自厩舎のトライバルサンダーに騎乗ということで、今回は尾林騎手が初騎乗。「テン乗りの尾林」は、大黒社のオッチャンの定番フレーズでもあり、注目ではある。
4番スーパーチャレンジ。11月の白鷺賞では逃げ快走も最後の直線一気に沈没、前走スパートカップでは得意の千四戦も先手が打てず4着敗退と、S級に上がってきた当時の堅実派の印象から、お騒がせ系にキャラが変わってきている感あり。例によって黒地に赤文字「挑戦」メンコ。そして馬場外目をキビキビと周回、好馬体。このメンバー、この距離、まさに「挑戦」精神か。
5番ベストスイセイ。S級平場では確実に追い込んでくるようになった。前々走はS1平場戦を勝利、前走もワシュウの2着でサンバコールに先着。馬体の造りは前回目撃した白鷺賞の時と変わらず、首と肩が沈んだ体型だが、キビキビとした身のこなしは前回以上。ブリセイくんはその様子が気に入った模様。千七が得意距離で今日の一八七はやや長いと。バコールとの捲り比べとなるのか。
6番が前年の4歳二冠馬タカライデン。兵庫二冠だが、肝心の楠賞と、11月の全日本アラブグランプリは2着と獲り逃し、また昨夏以降の古馬オープン馬との走り(3着連発)から、実力、評価が?な状況。さて今日の馬体重、458kは前走から何と+16kで、馬体重発表時にちょっと場内が沸く。不安視の声が圧倒的。しかしながら登場したその姿、太め感はほとんどなく、その体重増加はほとんど馬格の成長分であろうかと。実際のところ、昨春シーズンの細い馬格が、秋には骨格だけはがっしりし始めてきており、今回はそれに身が入った印象。つまりは個人的には好感。鶴首になって気合いを前面に出す姿は、姫山時よりは、前走のアラブグランプリ、そして春の時点のそれに近い。お客さんの多いせいもあるか。
7番が牝馬トライバルサンダー。昨年上半期はワシュウと二強を形成、兵庫大賞典では逃げ真っ向勝負でそのワシュウを下す。その牝馬離れした強さは折り紙付き。大賞典後6月の福山山陽杯に遠征予定だったが直前に回避。その後は北海道に放牧に出され、前々開催に復帰。放牧中も乗り込み充分との噂を耳にしていたため緒戦から期待していたが、結果は8着惨敗。これが人気にどう出るか?今日の彼女、休養前がそうであったように、冬毛とも金色の刺し毛ともつかぬ毛が出ていて毛艶は一息。まあこんなものかといった感じ。ロッキーくん、初めて目にする彼女のこの毛艶が気になり、馬券から外す。さてどうか。張りはちょっと、パンパンとは言い難い。トモの踏み込みもやや弱いかと。
8番が一昨年の3歳(当時の馬齢表記)チャンプ、ハッコーディオス。4歳三冠戦線はシーズン直前にリタイヤし、その全てを棒に振ってしまったが、11月に待望の戦列復帰。その緒戦はS2戦で勝ち、デビュー以来の連勝を9に伸ばし、前走S1戦、10連勝に挑戦。逃げて手応え充分に直線を迎えるも残り100mで勝ったシルクスピード以下に一気に食われ4着、初黒星。気を取り直しての新春賞。馬体重485kだが意外と小造りでそれほどある馬格には見えない。胴、腹がコロンとした体型。以前から「この馬メイチに仕上げたことないんじゃない?もっと絞れるんじゃないか。びっちり仕上げたらペルターブレーブ(同じイムラッド産駒)みたいなビュッとした馬体になるんちゃう?」と思っているのだが、これは元来の体型で変わらないのか?パドックメンコ着用、周囲が気になるのか、首を外に向けつつ右目を剥いて、片目三白眼でキョロキョロ、どうも身のこなしが子供っぽい。
9番が、前走でハッコーディオスを負かしたシルクスピード。リッチリッチが3歳重賞市川賞とジュニアカップを連取した時の、両レースの2着。長期休養が多く素質の割に出世が遅れていたが、前走待望の古馬オープン入り。それが先に記したようにディオス以下を下しての勝利。その馬体は下級条件の頃から条件不相応な堂々たるものだったが、ここに入ってもぱっと見の良さは一、二を争うほど。520kの黒鹿毛の姿は風格満点、張りもよい。大西さんはこの馬をずっと注目し続けてきている。今日も熱視線。が、ロッキーくんは歩様が気に入らないと言う。
10番が前々走、昨年の白鷺賞を制したマノノトップガン。その実績を買われて、今日は斤量56kと出走馬中2番目に背負っている。古馬重賞馬のハンデとしては大したことはない重量だが、この馬はあまりハンデを背負った経験がない。白鷺賞時も53k、そして前走のS1平場戦も、減量騎手の鈴木が騎乗したため52k。素質馬との評判は高く、予想紙でも重いシルシを貰っているがこのあたりどうか?また、乗り替わりが多いのも特徴。今回もテン乗りの小林騎手。馬自身のレースセンスは折り紙付き、あとは鞍上がどう御すか。さてパドックの彼、例によって渡辺厩舎御用達の金ラメメンコ着用で二人曳き、いつも通りのキビキビとしたリズミカルな周回。とにかくスタンダードな鹿毛のルックスなので、馬体そのものが良好でも悪く言えば平凡、没個性。
11番がシャインマンリー。初夏から摂津盃同着優勝、タマツバキ記念ワシュウに僅差の2着惜敗までは、先手先手の道中進行と確かな最後の脚で、素晴らしい走りを見せてくれたが、白鷺賞6着以降2戦は凡走で、かつてのヒラOP馬に戻ってしまったかのような状況。白鷺賞では発馬イマイチからスーパーチャレンジに先行を許し最後伸びず、前走は逃げ、先行馬多数の中控える競馬で3着。先行主張か差しに回るか、見限るか地力信頼かがポイント。馬体は相変わらず張りのある明るい綺麗な栗毛で当然艶も良好。パドック外目を余裕の周回。ただしちょっとトモの送りが流れるような感じなのが気になる点。

予想。逃げ、先行タイプ、そうでないと良さが出ない馬が多く、どれが主導権を握り乗り切るか、また差し、追い込み勢は届くのかがポイントか。前者はサンダー、マンリー、ディオス、タカライデン、シルク、スーパーチャレンジなどであり、後者はマノノ、バコール、ベストスイセイあたり。そして実績馬と上昇馬、明け4歳馬の取捨。ワシは既存の実績馬重視で、サンバコール、トライバルサンダー、シャインマンリーを抜擢、馬連複三角買い、これに素質を見込んでハッコーディオスと、バコールとの現状の力関係を考慮してベストスイセイ、この2頭への買い目を薄くプラスし、実質5頭ボックス10点買い。とにかく人気が割れていて、馬複は軒並み四桁配当以上。点数多く買った方がよいか、と。"何となく先行"になりそうなタカライデンと、どうも見込まれ過ぎているようなマノノは切る。「あ〜それワシ本線〜」と、まりおちゃんとは見解が全く逆。そのまりおちゃんと、とっとと馬券を買う。
単勝1番人気はハッコー、以下マノノ、シルク、バコール、マンリー、サンダー、タカライデン、スーパー、ベストスイセイ、ヒュガ、ツバサの順だったらしい。

本馬場に各馬登場。ここで、実に昨年の新春賞以来のご無沙汰の、かずRさんと顔合わせ。スタンドの上の方で写真撮影するようで。バサバサに砂が乾いた馬場、馬が入場すると蹴り上げた砂が風に舞って立ちこめる。乾き具合に加え、一様に深そうな、いかにも力の要りそうなコース状態。こうなると、他馬に泣きが入る勝負所、パワーに任せて一気に捲り上がるあの馬の姿が想起される。
さて、ハッコーディオスは厩務員さんに曳かれて馬場に登場。入場するや否や、ゴール板方向に歩みを進めることなく1コーナーへ駆け出し、そのまま四角の待機所に直行してしまう。サンダーはトップバッターでキャンター。かなり強く。シルクスピードはキャンターも豪快。ベストスイセイがいいキャンター。ブリセイくんはどうもこれを狙っているよう。タカライデンはまずは丸1周ダク、そしてキャンターといういつもの流儀の返し馬。キャンター時の口向きは、アラブグランプリ時よりはましか。
ここでサンバコールがキャンターで駆けた後、下馬所へ退場。「どうした?」「故障か?」と、ちょっと騒然とする場内。暫くしてアナウンス、曰く、発走前の準備運動(=返し馬)中落鉄したので蹄鉄を打ち替えるとのこと。発走前に気付いたのは何よりか。'92年春天のマックイーンの故事が頭に浮かぶ。ちょっと打ち替えに手こずった感があったが、無事完了でバコールは再びコースに出てゲート地点へ。

レースなり
いよいよレース発走。園田一八七、2コーナーポケットからスタート。
ゲートオープン。鋭発は岩田ハッコーディオス、田中トライバルサンダーも出はよい。しかしこれらを制して、内から平松スーパーチャレンジが押されて何が何でもの構えで前へ。これを受けて岩田ディオス、手綱を抑えられ控え気味で、向こう流し半ばでスーパーがハナ。ディオスは2番手、米田シルクスピードが3番手。出はイマイチだった赤木タカライデンが馬の行く気に任せ気味に4番手に上昇。サンダーは控えてその次、ここまで後ろの位置取りは兵庫転厩以来初めて、掛かり気味。大外からすんなり出た永島シャインマンリーは無理に先行争いには加わらずこの後ろ、このイン大山ツバサキング、その後ろ中団に小林マノノトップガン。尾林サンバコール、下原ベストスイセイ、心平ヒュガチカラは戦前の予想通り後方から。

1周目(39KB)
1周目の正面スタンド前
先頭スーパーチャレンジ2番手外タカライデン内芦毛ハッコーディオス直後シルクスピード

隊列は1周目の直線に。先頭は変わらずスーパーチャレンジ、ペース落ちはほとんどないような走り。2番手内ハッコーディオス、岩田の手綱は随分引っ張り気味。外からタカライデンが馬なりで3番手に。内シルクスピードが4番手。この後ろが好位、サンダー、内ツバサ外マンリー、続いてマノノの順。サンバコールは殿、ではなく後方3番手、相変わらずクビが高くてバタバタした、ダチョウのようなフォーム。そのインヒュガチカラで最後方はベストスイセイ。「ベストスイセイ何でサンバコールの後ろやねん!全然アカンやんけ!」と、本線にベスト→バコールを大抜擢したブリセイくんが口にする。隊列は随分縦長になって1コーナーへ。
先頭はまだスーパー、タカライデンが行く気満々で2番手に。向こう流し入り口あたりでディオスが下がる、控えたようには見えず、つい二角まで抑えていた岩田の手綱が打って変わって動き始める。どうも行き脚が早くも怪しくなった模様。「ハッコーディオス、アカンがな。」の声が場内から聞こえ始める。タカライデンとシルクスピードはそれに構わず前へ。
向こう流し中程、先頭のスーパーをタカライデンが地力で追いつき潰して先頭に、これを追ってシルクスピード。好位ではサンダーが押されて前へ。それに連れてマンリーが、そしてマノノが上昇。そしてそしてサンバコール、向こう流し前半から徐々に動き出し、三角坂下から一気に前に、そしてマノノの外へ。
三分三厘、先頭はタカライデン2番手シルク、サンダーがこれに取り付く。そしてその後ろ、内からツバサ、マンリー、マノノ、バコールの併走状態をバコールが競り勝ち、脚色そのままに先団を追撃。
四角、先頭のタカライデン、余裕充分から直線を向いて赤木の右鞭一閃。2番手内シルクスピードだがこの外にサンダーが併せ、コーナリングから直線入り口、被せ気味に2番手に抜け出す。サンダーのさらに外、いよいよ前列にサンバコールが出現。「大外から来た来た!3番のサンバコ〜ル!」の、吉田アナの実況を己が入場テーマにするかの如く、前の2頭を追い込んでくる。さらにその後ろの大外、三分三厘でバコールに外から捲られたマノノが外に切り替え追撃。

残り100m(40KB)
最後の直線、残り100m
馬場真ん中外目抜け出しかけるサンバコールその内トライバルサンダー大外マノノトップガン

残り100mあたりから3頭の激しい先頭争いの様相。残り50m程までインタカライデンが粘る、これに迫る中サンダーに外バコール。ゴール前20mでバコールがグイと前に、そのまま最後の力を振り絞り、復活の重賞Vゴール。バコール鞍上の尾林騎手、最後の直線は柄にもなく騎乗フォームも崩した渾身の左鞭連打。ゴール通過後、その鞭を握りしめた左拳にグッと力を込めてガッツポーズ。
2着はトライバルサンダー、タカライデンはバコールに抜かれたあたりで脚いろ劣勢となり惜しい3着。4着大外から追い込んだマノノ。1、2、3、着の着差、全てクビ。5着インで粘ったシルクスピード、6着勝負所で後手踏みのシャインマンリー。ハッコーディオスは結局8着。

ゴール直前(45KB)
ゴール直前、外バコールvs中サンダーvs内タカライデン
接戦に断は外サンバコ〜ル!しかしピントはタカライデン・・・

直線を向いた時点で、先団がワサッと内外広がった様は圧巻。そして脚勢が一番なのがサンバコールとくれば、興奮はなおのこと。吉田アナの、サンバコールの名を呼ぶ実況もハイテンション。ワシ「よっしゃバコール来い!」の掛け声一つ、そしてカメラはバコールに。ところがその先、サンダーの脚いろもよし、そして何よりタカライデンの粘り腰が想像以上。「これひょっとすると・・・」の判断、妙に冷静な気分で、サンダー、タカライデンと、争いつつ迫る3頭に順次ピントを合わせシャッターリリース。最後はバコールで一丁上がり、と思ったところ、ウィニングショットのピントはバコールではなくタカライデン。余裕かましすぎて失敗の巻。

口取り撮影のため、優勝レイを肩に掛けたサンバコールが再度コースに姿を現す。跨る尾林騎手の表情は会心の笑顔、しかしその目は歓喜の涙か、赤くなっている。お客さんから「おめでとう!」の声が掛かると、尾林騎手、スタンドの方を向いてガッツポーズ(このシーンの写真は環さんちやラティラーちゃんちの観戦記にありますのでお任せしまっす。)。尾林騎手は'97年全日本アラブQCをフェイトスターで制して以来、3年3ヶ月ぶりの重賞勝ち。
馬券、的中。バコール→サンダーという、ビックネームの組み合わせで、馬単で実に56.9倍、馬複でも36.5倍もついた。強力な軸馬が不在で人気が割れ、混戦模様だったことが結果に如実に出た格好。

レイを纏ったサンバコール(40KB)
口取り撮影に臨むサンバコールwith"JKO"尾林騎手
人馬共々久々の重賞Get

総括など
サンバコールのこの勝利は4歳(旧表記)晩秋の、西日本アラブダービー以来、実に2年と1ヶ月ぶりのもの。全盛期のような、向こう流しで一気に捲り切る競馬はさすがにできないが、三分三厘での上がり脚は素晴らしかったぞ。「前が速い流れになったのでサンバコールに有利な展開になると思った。」と尾林騎手はレースを読んだとのこと。見事的中。これを復活の狼煙として、更なる活躍を切望。何といってもこの馬はスター、華がある。ミーハー的見地からは、この馬、豪快なレースぶりとゴツい馬体の割には顔が子供顔。鼻筋がキュッと細くて小さくて瞳が黒目がち、カワイい。
2着のトライバルサンダーはやはりサスガ。半年の休養で凡馬になるような器ではやはりなかった。今日は不慣れと思われる好位からの競馬でこの結果。より復調して休養前の爆速逃げ脚が復活となると、それはそれは恐ろしい。因みにやはりこの馬にとって冴えない毛艶は問題なし、ロッキーくん、憶えておきましょう。
3着タカライデンは実力を見直すに充分なレースだったのでは。古馬重賞でこの走りができたのは見込み以上。馬なりでスーパーチャレンジを潰して地力三角先頭。最後までよく粘った。最後は僅かながら馬体の緩さが若干影響しかかも。しかしながら「やっぱり春の馬体は貧相でしたからねえ。この450k台の馬体で今後行けるとなると期待できますよ。」と某くんが後日指摘した内容には全く同感。「ただこの馬直線ラチ頼りますね。サンダーが来たとき赤木騎手が右鞭入れて外のサンダーに併せていったのに、追われるとまたラチ沿いに行きましたから。」と、これも某くん。
4着マノノトップガンと5着シルクスピードはそれぞれ素質の一端は示したのでは。マノノはレースの流れに乗るのがあまりに巧くて、他馬の走りに合わせ過ぎたという印象を抱いたのはワシだけか。勝負所で主張して一気に動く競馬でもよいのでは。シルクスピードは前走初のS1戦勝利がフロックではなかったという証明の走りだろう。この馬に関しては無事にコンスタントに、少なくとも夏場以外は使えることが課題か。
シャインマンリーはまたもや凡走。この馬はレースの流れに合わせるよりも、自分でペースを主張したときの方が断然最後の粘りがある。先行脚質多数という相手関係もあり、永島騎手は考えて乗っているのだろうが、戦法の再考が必要かも。落ち目になる器ではないと思いたい。
それにしてもハッコーディオスは案外だった。前半は控えて手綱が突っ張って掛かり気味、道中から途端に行き脚がなくなり岩田騎手は押っつけ通し。手綱が楽に長くなる場面がほとんどなかった。どうも無理に御そうとするより馬の行く気に任せた方がよいのか?まさかもう馬が"終わっている"などということはなかろうに。
しかしながら、長距離戦でのスーパーチャレンジの走りは要注意だな。白鷺賞といい今回といい、他の先行有力馬のことなどお構いなしで、玉砕気味に千四のペースで行っちゃうのだから。ともすると、レースを壊しかねない危うさがある。どうもマンリーなどは、天敵気味に相性悪そうな気がするのだが・・・

おわりに
この日の競馬、終了。まりおちゃんたちがパドックに張り出した横断幕の撤収を手伝う。この後は新春オフ会。
ここで、福山大賞典を観に行っている、電設の男@ともろうさんにTELしてその結果を教えていただく。最後の直線、アローパッションとグリンティアラの間をブチ割って、叩き合いを制したミスターカミサマが勝ったとのこと。この結果に園田の皆さんも沸く。園田でも"福山シンパ"増殖中といった感じ。

2003年でアラブ系2歳馬の入厩は終了と発表し、今年の重賞ラインナップからさらにまたアラブ系が減少と、アラブ縮小の一途の兵庫県競馬であるが、古馬有力どころはまだまだ元気でソコソコの層の厚さをキープしていると認識できた新春賞であったと思う。次回彼らに会えるのは果たしていつか?如何せん古馬重賞が減っちゃうもので。
アラブ、サラブ問わず「いい馬はいい」という、ごくシンプルな前提に立ち帰るにつけ、「己が財産の値打ちがわからぬとは気の毒なことよのう・・・」という、苦い皮肉を最後にボソリ。ねえ・・・

2001.1.16 記

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