第21回福山マイラーズカップ観戦報告
2001.1.14、福山、1600m
◆福山マイラーズカップの施行時期に関して
福山マイラーズカップ、前回開催されたのは、一昨年'99年の7月、つまり昨年は開催されておらず、実に1年と7ヶ月ぶり。これは、'99年に山陽杯をタマツバキ記念として、10月に福山で開催したところに原因がある。つまり、初夏の福山山陽杯→初秋にタマツバキで、初秋の園田山陽杯→翌2000年2月に、この時期の福山マイラーズカップを初夏(7月)に移動して、福山山陽杯と入れ替え、という、福山と園田をまたいだ、ややこしい施行時期の入れ替えが'99年度にあったというわけ。福山の開催カレンダーは年度区切り、'99年度のマイラーズは変則的に7月、今年度のそれは通常通り2月に、という次第。
◆レースまで
というわけで、この久々のマイラーズカップの観戦に、福山へ。例によってチボリ号。年明け以降寒さが厳しく、今年これまで2度の福山観戦は、小雪舞う極寒と、冷たい雨の日であったのだが、この日は比較的寒さも緩んだ、まずまずの好天。
とは言うものの、競馬場に到着すると、寒さ逃れのお客さんが多いせいか、既に指定席は満席。仕方なく一般席での観戦。この日は翌日月曜日が振替休日、土曜日も休みとすれば3連休の中日とあって、朝からかなりのお客さんの入り。スタンド内外に人が溢れる。
1レースから馬券を買い続けるも、さっぱり当たらず、イヤになり始めてきた4レース頃、ディープさんが来場、遅れて電設の男@ともろうさんも。そして福山競馬万歳さん。
当日の馬場状態は土曜日に引き続いて重。砂が水を含んで締まった馬場ではあるが、砂の補充があったらしく、深い模様。それもともかく、どうも粘りが出てきているようで、思いの外時計は速くない。加えて、「昨日は逃げ馬全然駄目だったのに今日は逃げ馬残ってるよねえ、1日でこんなに状況変わるとは。」と万歳さんが仰っていた通り、前日と状況が一変している模様。
◆今年のマイラーズカップ、その展望
さて、この福山マイラーズカップ、出走対象がA1。つまりは、つい一ヶ月半前に2600mの大賞典を戦った、長距離への適性を身につけた馬たちが、打って変わって千六を走るという状況。裏を返せば、マイルに適性がぴったりといった馬がこの中にはあまりおらず、そういった馬たちはA1より下位の条件に埋もれているということ。
「モナクマリンでA3だもんな。出れたら鉄板なんだろうけど・・・(註:モナクマリンはアラブ王冠以降お休み中の模様)」「A1じゃなくてせめて"A1下選抜"くらいにして欲しいところ。」「A級セレクトってやつね。」「それウマいねえ。」「いやあここに書いてあるから・・・」と『ハロン』の今月号中、名古屋記念のところを指さす電設師。
ということで出走メンバー、内枠より以下の9頭。()内は負担重量と騎手。
ダブルシックス(53k、岡崎)、ムサシボウナナ(53k、岡田)、マツノホープ(54k、渡辺)、イチノキングオ(51k、久保河内)、ワールドアイ(54k、嬉)、ミナミトライバル(51k、黒川)、アローパッション(52k、吉延)、エイコウライン(53k、石井)、パッピーケイオー(55k、野田)
ムサシボウナナが紅一点。同じ牝馬のグリンティアラが、出走すれば本命ズラリだったところ、追い切り後に不安発生(『福山エース』より)で直前リタイヤ。ミスターカミサマは1月30日の、荒尾でのセイユウ賞から日が浅く出走はなし。モナクダイキチも大賞典以降出走なし。と、その様相は、冬のベストマイラー決定戦というよりは、前開催のA1戦、1月20日のレディオBINGO賞の再戦、ズバリこれである。
レディオBINGO賞については現地で観戦しており、そのダイジェストをスピハナ掲示板に書き込んでいたので、参考までに以下転載。
◆エフエムふくやまレディオBINGO賞(A1、1800m)
馬場状態は稍重、冷たい雨の中でのレースに。
外枠勢の出がよく、6番久保河内マルサンダイオーがハナを主張、4番テン乗り野田パッピーケイオーも積極的に、マルダイにビッタリで楽には行かせない。
1周目直線先頭マルダイ2番手差がなくパッピー、3番手1枠より渡辺マツノホープ、連れて外5番岡田ムサシボウナナ、この直後8番大外嬉ワールドアイ、ここまでが好位で、後方は7番越智エイコウライン、2番吉延アローパッション堂々本命、3番柳井ミナミトライバルの3頭。
2周目向こう正面半ば手前、アローが徐々に仕掛け始めて進出開始。先団では三角手前でマルダイ止まり押し出されるようにパッピーが先頭。連れてマツノも前へ。忍び寄るアロー。
最後の直線、フロントパッピーに外からマツノ、アローは四角で内に突っ込み、パッピーをインから掬う。残り50m、アローが差して抜け出るがさらに30m前、一旦鈍ったパッピーの脚が再点火、グッと伸びてアローを差し返してクビ差のV。
2着アロー、3着「やっぱり」(ルパンさんゴメンナサイ)のマツノ、4着ちゃっかり追い込む9歳馬エイコウライン、5着何となくのワールドアイ、6着沈没マルダイ。
アローの連軸は堅いと思ったが、野田騎手テン乗りのパッピー、サブちゃんじゃないパッピーはどうも買いにくい。
今日のパッピー、パドックは大人しい方。暴れたのも後半だけ、却って元気がないように見えた。
アローは園田時代より馬体も雰囲気もノビノビしている印象。マツノは何となく馬体がまだ立派か。
マルダイ、久々の素顔での出走(大賞典は不明だが)、これを買って勝負馬券に抜擢したが、思い返せば腹回りがぼってりしすぎ。
ワールドアイはまあこんな感じ、ただし今日は二人曳きではなかった。
要は、パッピーケイオーvsアローパッションの再戦。これにマツノホープ、ワールドアイらのA1常連が付き合うという、見慣れた風景が展開されようといった競走である。
因みにアローパッションは、3月4日の西日本アラブ大賞典(佐賀競馬場)へ福山代表として参戦することが決まっており、要は福山大賞典の1着馬(ミスターカミサマ)は荒尾のセイユウ賞へ、2着馬は佐賀の大賞典への切符が渡されたということのようだ。佐賀へもセイユウ賞と同様カミサマに是非行って欲しいところ。この観戦記執筆時点ではカミサマは予備登録馬つまりは補欠扱いで、福山サイドはカミサマの出走が叶うように佐賀に働きかけているらしいが、出否は不明。こういった経緯もあり、「グリンティアラは福山大賞典で見ていい馬だと思ったが、アローパッションは認めん!」と、ディープさんがムキになる。曰く「ここで圧勝して堂々と佐賀に行ってくれるか、惨敗して恥ずかしくなって取り止めるかなら納得いくが、辛勝や惜敗だったら許せん。」。
◆パドック、そして返し馬〜発走まで
さて、パドックに出走馬が登場。このマイラーズカップ、新春賞と共に、1着賞金300万円と、福山の重賞のうちでは最も賞金が安い。であるからか、この日のゼッケン、レース名と馬名は入っていない、赤地に黄字の小さめなもの。
1番ダブルシックス。先月21日のA2重賞、新春賞の2着でここは予備馬扱いだったところ、回避馬が出て出走。馬体重506kは出走馬中最大。やはり大型馬でかなり体高がある。出来は普通、トモの踏み込みはやや浅いか。
2番ムサシボウナナ。これまで目撃した時の彼女は綺麗な栗毛の肌だったのだが、今日は冬毛が出ており、見栄えが1頭断然悪い。
3番がマツノホープ。ナナと同じ栗毛ながら、こちらは皮膚の薄さがよく分かる素晴らしい毛艶。パドックの大外をぐいぐい周回し、やる気はいつも以上に見受けられた。歩様も気になるところは見いだされない。
4番イチノキングオ。昨秋まで兵庫所属で、転入後A3からA2を4つ勝ってA1入り。間隔が前と開いての周回。それなりにはよかろうかと。馬体重434kは出走馬中最小。それもあってかこの中に入っては小さく見える。
5番がワールドアイ。前走と同様二人曳きではない。毛艶も張りもよくし仕上がっていると思う。ボリューム満点で雄大。10月以降不振(というか元来の実力に戻ったのか)であとは力関係次第か。
6番ミナミトライバル。7月末以来の休養明け叩き2戦目。トモの送りがバキバキしているような。
7番が注目のアローパッション。皮膚の薄さがよく分かる鹿毛の馬体。仕上がっていよう。ゆったりと周回。ちょっと背タレで胴の長い馬体。兵庫時代、これほど伸びやかで落ち着いた馬だという印象はないのだが。
8番エイコウライン。いつもと変わらぬであろう外見。メンコ+シャドーロール+舌括り+引き返しと、拘束馬装のオンパレードも常の姿。
そして9番がパッピーケイオー。ピッカピカの毛艶で、鹿毛の肌の背や腰には銭形模様が浮き出ている。仕上がりは最高だろう。時折ググッと気合いが入るが、最近のパッピーは以前ほどはパドックで暴れない=走らない様な気がする。ここはカミサマ不在とティアラの回避で、幸運にも巡ってきた本命戦。実績では当然出走馬中最上位、更なる重賞のタイトル奪取のチャンス到来。
といった具合で、冬場であるにもかかわらず、ムサシボウナナ以外の各馬の毛艶はかなり良好で、どの馬も仕上げに文句はないといった感じ。個人的には、若干の大人しさに目をつぶれば絶好なのはパッピー。アローパッションも勿論問題なし。通常時より上に見えるマツノホープあたりが特筆に値しようかと。
そして本馬場入場。エイコウラインが鞍上石井騎手に促されて、入場するや否や1コーナーへ。ダブルシックスは4コーナーまで駆けて引き返し、正面まで来ない。マツノホープも同様。パッピーも今日は返し馬はパス、野田騎手の作戦か。
「しかしワールドアイ、太っといな〜(太目というのではなく、体型が太いというニュアンス)!」と、半ば呆れる電設師。「師匠、どうです?」と師に訊くと、「ワタシは今日は"煮え切らないオトコ"から行く。」とのこと。ディープさんも「ワシもマツノホープ買いますよ。」とのこと。たしかにパドック気配は最高。が、「でも本馬場入場でゴール板前通った時、横から見たらちょっと腹回り緩かった気がしましたよ。」とワシが言うと「えっ、ホンマですか?」。何と言っても"煮え切らないオトコ"、些細なことが勝負に気になる。「まあちょっと信用できないけど、ワシも今日はマツノは押さえよ。あとお楽しみでワールドアイ。」とワシ、それを承けてディープさん「まだワールドアイなんて言ってるんですか。もう終わってるでしょう。ピアドハンターと同じ路線ですよ。」と一蹴。「ワタシの夢はイチノキングオ、51kの久保河内、どうです?」と万歳さん。「ワタシもそれ買いますよ。アローパッションなんか死んでも買いませんけど。」と、今日のディープさん、かなり意固地。「んなイチノキングオだってアローと同じで兵庫OBじゃない。何たってイチノキングオは姫路でまりおが"インチキキングオ"と読み間違えた馬ですからねえ。」と意味不明にやり返すワシ。「1頭騎手の騎乗時に暴れてたけど、大丈夫?」と万歳さん。「それパッピーでしょ。いつものことやから問題ないない。」と、返す一同。
ということで予想談義に花が咲く発走前。ワシは素直にパッピーーアローの本命サイドを本線に、両頭へマツノとワールドから薄く。応援するのはパッピー。「馬券買うの大変だわ、凄い行列。ホントに今日はお客さん入ってるわ。」と電設師が戻ってくる。
◆レースなり
レース発走。福山の千六は向こう正面中程がスタート地点。ここから1周半。賞金が安くとも、鳴るのはいつもの重賞と同じファンファーレ。
ゲートオープン。大外のパッピーが好発、そして鞍上野田にシゴかれて先団を死守せんと前へ前へ。内からは岡田ムサシボウナナがスッとハナへ。渡辺マツノホープもその間で前へついていこうとする。最内岡崎ダブルシックスは逃げるとも予想されたがハナには立てず。
隊列は正面スタンド前へ。先頭はナナ、これを2馬身弱前に見て2番手パッピー。この時点でも野田はパッピーを叱咤、手綱が動き加減。この1馬身強後方、パッピーの直後にマツノホープ、いつになく掛かり気味、マツノの外に嬉ワールドアイ取り敢えず馬群の外には出られた模様。マツノの内はインベタでダブルシックス。この4頭はほぼ横一線。4頭の直後次列のインがイチノキングオ外ミナミトライバルで、ここまではほぼ一団。アローパッションとエイコウラインは例によって後方待機。
1周目正面スタンド前
先頭ナナ、2番手パッピー
レースは一、二角、そして向こう流しへ。アローパッションはまだ動かない。そして三角手前、ご苦労さん気味のナナを制して、シバかれつつパッピーが早くも先頭に。鞍上野田騎手、とにかく押せ押せ状態、先頭に立ったら後は粘り込むだけ、来るなら来いといったところ。合わせて内からマツノホープも上昇を図るが、道中掛かった影響か、どうも行きっぷりがよろしくない。それを尻目にパッピー、グイグイとを3、4コーナーを回ってくる。好位外からはイチノキングオが忍び寄り、そしてそしてアローパッション、三分三厘一気に仕掛けて外から上昇。前列に登場。
最後の直線、残り70m
粘る内パッピー(桃帽)迫るアロー(橙帽)
最後の直線、内からマツノ、パッピー、ワールド、アロー、イチノの並びだが、マツノとワールドは伸びず圏外。イチノもアローに一気に来られてついていくのがやっと。ということで勝負はやはりパッピーvsアロー。馬場の二分どころ力走パッピー、ど真ん中を追い込むアロー。残り100mから50mあたりで、内外離れながらもアローがパッピーを追い詰め、並んだか?と思ったところ、ここからがパッピーの真骨頂、もうひと腰グイグイと伸び、アローを抜かせない。最後はアローも脚が売り切れたか、パッピーが3/4馬身差でゴール。
3着はアローから1馬身差でイチノキングオ、4着エイコウラインが追い込んで前とは1馬身差。5着ワールドアイ、マツノホープは6着に沈む。
パッピーケイオー、アローパッションの追撃を振り切りV
「絶対抜かさんけ」
パッピーケイオーはこれで昨年のローゼンホーマ記念、桜花賞菊花賞に続き、重賞4勝目。今年度重賞3勝ということに。長距離得意のイメージがかなり濃くなってきていたが、地力上位、この相手なら強い。とにかくズブいクセに道中掛かったりタレたりと、非常に乗りづらかろう馬なのだが、野田騎手は有無をいわさず道中始終叱咤し通しという強硬手段で勝利をゲット。追う方も追う方、シバかれないと走らぬ方も走らぬ方であるが、シバかれ通しで千六走り切る、パッピーのパワーには参る。因みにこの馬、マイル戦これまで12戦7勝2着3回3着2回という、らしくない戦績を残している。条件馬時代の話だが。
アローパッションは前走から続けて、パッピーを追い詰めて勝ち切れずの2着。そしてこれでA1昇格後、4連続2着。追い込み競馬で確かにロングスパートは素晴らしいのだが、特にパッピーに連敗のこの2戦は、最後に脚が鈍ってしまう競馬になっている。脚色に大差のない競り合いにはパッピーは滅法強いクチなので、これに勝とうとするのであれば一気にケリをつける脚勢が必要かと。しかし重賞奪取の惜しいチャンスを逃した。ここで勝てるパッピーと勝てぬアロー、この差は大きい。それはそうと、このような惜敗で、ディープさんや電設師、ムッチャ苦々しげ。「ホントにこれで佐賀行くんか?」毒がドロドロと・・・
イチノキングオはまんまと?3着。「あ〜4コーナーでは夢見たけどな〜!」と、万歳さんが惜しがったが、ディープさんは「3着だったら惨敗でも何でも同じですよ。」とバッサリ。
エイコウラインの、勝負が決まってからのドンケツ強襲は芸だな。ワールドアイは「何となく」の好位流れ込みの5着。沈没はせぬものの、伸びるパワーがないところがツラい。
やってくれましたマツノホープ、6着沈没。この馬にしても、今日は重賞奪取の絶好機だったろうに。とにかく道中の折り合いの悪さが目についた。「ホント、ルパンさんには毎度毎度申し訳ないけど、この"煮え切らないオトコ"だけは全くなあ・・・」と、電設師の恨み言は何だか既にお約束状態。
◆レース終わって
表彰式までの間、スタンド前で、万歳さんのデジカメ画像を見せてもらい、レースの道中進行を確認。そして「それにしても表彰式、なかなか始まらんな。」と訝しみつつ、振り返る。と、ここで肝心なプロセスを落としていたことに気付く。「うわっ!口取り撮影あるの忘れとるがや!」ギリギリ間に合ってやれやれ。「荒尾(のセイユウ賞)じゃないから馬場に馬なんか出ませんよ。」と、ディープさんと電設師に突っ込まれてしまう間抜けなワシ。
パッピーケイオー、口取り終わって
「よしよし・・・」
最終レース、他の方々は、益田から福山に出張騎乗に来ている御神本騎手から勝負して応援するも敢えなく敗退。ということで1日の競馬が終了。
この後、電設師とディープさん、ワシの3人、"福山オフ会発祥の地"('99年10月タマツバキ記念)福山駅前の養老の瀧で一杯。楽しく呑んでお開きが8時半前。新幹線で帰路の巻。
◆追記
全国他地区の強豪の転入が相次ぐ福山古馬事情。レース明けの週、そのピークとなる一件が。『福山エース』のHP、転入馬一覧の項、遂にあの馬の名・・・怪物、瀬戸内降臨。
ということで、このマイラーズカップ、福山古馬オープン模様、新局面の前夜と言えるやも知れぬ。そして激闘譜は繰られる――
2001.2.19 記
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