第17回キングカップ観戦報告+ホマスタ福山初見参

 2001.2.24,25、福山競馬場

はじめに
この週末の福山は、日曜のキングカップは観戦予定デフォルトであったのだが、土曜日に、このキングカップよりも重要ともいえるレースが行われることに。すなわちホマレスターライツの福山転入緒戦。「どちらを観に行く?」「せっかくだから両方観とけ。」というわけで、この週末は福山観戦連闘となった次第。

2月24日(土曜日)
この日もチボリ号で、などということを土曜日からしていると、家事をする暇がないので、この日は新幹線で。朝早くに掃除と洗濯を片付けて、10時58分姫路発のこだまに乗車。岡山−姫路間を、新幹線ウィークエンド回数券を使用。この列車は11時28分に岡山に到着し、ここからは11時39分発のサンライナー。12時25分に福山着。ファンバス乗り場に向かう途中でディープさんに遭遇。彼は例によって新幹線で来福。そして日曜のキングカップは蹴ってこちら一本の観戦。「岡山あたりで雨降っててどうかと思いましたがこっちは上がっててやれやれですよ。」との言葉通り、天気予報はあまりいい予報を告げていなかったのだが、幸い雨は止んでいる。
入場して馬場を見る。前日までの雨で馬場状態は不良、加えて所々に水が浮くドロドロ馬場。しかしながらこの日、タイムが概ねムチャムチャ速く、砂が流れたな、という推測には難くない。C2の遙か下位の一二五戦で1分22秒台の前半が出ており、トドメは6RのC2の14組戦、タイム1分21秒8で、一二五のレコード。

ちょっと注目の7レース
第7R、C2、13組について、記しておきたい。
ここにはサンバコールの年子の全妹モルガンや、ペルターブレーブの全弟ジーエスダンサーなどが出ており、ちょっと面白いレース。しかし注目は、道営デビューの3歳馬、ヨシノチカラ。道営時代は9戦1勝だが、福山転入以降4戦3勝2着1回、300万以上賞金を稼いで、今回晴れて古馬編入緒戦。他地区デビュー馬ゆえに明日のキングカップには出走できないが(今回より出走規定が変更、これに関しては後述)、その出走メンバーと比しても実力的に遜色なかろう力の持ち主。馬券も断然この馬から。
そしてこのレース、距離千六、ヨシノチカラは中団待機、2周目向こう流しでインから一気に進出して三角手前で先頭に、ここから単騎独走というところ、三分三厘で前肢がガクンとつんのめり失速。つまりは故障発生。何とか外に避けレースの邪魔にはならず、4コーナーの隅までは自走していくものの、右前はブランブラン(結果右前肢繋部骨折)。「結局自分の能力以上にスピード出ちゃってコーナリングに力加わって、ってこと?やっぱり危ないな。」「ああこれで希望ある未来が一つ失われた・・・」と、ディープさん共々口にする。

メインレース前にFUKUさんが登場。馬場のことに話が及ぶと、「これ今晩砂入れるらしいけど、今は完全に砂が流れてる。無茶苦茶。」とのこと。

そしてメインレース、福山花市場賞
注目のメインレースは福山花市場賞。出走馬は以下の8頭。()内は斤量と騎手。
パッピーケイオー(56k、野田)、ミナミトライバル(52k、黒川)、イチノキングオ(53k、岡田)、エイコウライン(53k、石井)、ホマレスターライツ(55k、渡辺)、マツノホープ(54k、鋤田)、ダブルシックス(53k、岡崎)、ワールドアイ(54k、嬉)
出走対象馬のうち、アローパッションは翌週の西日本アラブ大賞典出走を控えここはパス。そしてミスターカミサマはその西日本アラブは補欠馬でありながらも、他に回避馬が出ることに望みを託し、ここは見送って滑り込み出走が叶う吉報を待つということ。

さて出走各馬がパドックに姿を現す。
とにもかくにも触れねばならぬのがホマレスターライツ。馬体重は460kで荒尾のセイユウ賞からは+7k。セイユウ賞の時は毛艶の悪さとヒ腹が上がった体型が気になったが、今日のホマスタ、毛艶は最高。暗い曇天で馬の肌が映える天気ではないのだが、ピカピカに輝いて見える。ヒ腹も戻って腹回りのラインはスッといい感じになっている。二人曳きで、鶴首になった気合い充分の気配なのだが、一面、かなりイライラしているようであり、小刻みに歩幅を刻む周回で、歩くスピードは遅い。これまでの赤メンコに代わり、黒メンコで額には黄色で「Nagase」。シャドーロールとタテガミの編み込みはこれまで通りだが、福山、那俄性哲也厩舎のホマスタということを意識したいでたちのようでもある。

ホマスタ、パドック(41KB)
ホマスタ、パドック
いい仕上がり具合だと思うのだが

パッピーケイオーは馬体重499kで久々に500kを割った馬体重。馬体の張りなどは相変わらず良い。前走に引き続いて、たまに走るくらいで、パドックは以前に比べてかなり大人しくなった。特に今回はホマスタの気配が良くも悪くも際立っているので、パッピーすらさほど目立たない。
ワールドアイの見た目が良い。仕上がりは最高かと。トモの踏み込みも良い。道悪は得意であろうし今日は願ったりの大外枠なのだが、時計勝負はキツいので、ただせさえ停滞気味の昨今、どうだろうか?
マツノホープは馬体重475kで+7kだが、数字以上に胴回りが明らかに緩い。馬もやる気無く周回の途中で数度立ち止まる。「出るんだったら真面目にやってほしいよな、全く。」と、ディープさん、FUKUさん共々口にする。

本馬場入場。ホマスタも現れる。じっくりとダクに下ろし、出走馬中最後にキャンターに。気合いのこもった走り。
パッピーもワールドもキャンターは良好。マツノホープはいつも通り正面を流さずに終了。
予想、これはホマスタとパッピーで大丈夫だろう。連複のオッズはパドック周回時は1.2倍くらいだったが、次第に上昇していき1.6倍くらいまでに。連単はホマスタ→パッピーの方が人気。これで2.4倍くらいか、裏目で4.8倍くらい。ワシ、当初はパッピーに肩入れしようと思ったのだが、パドックでの充分仕上がったホマスタを見て気が変わり、「枠連、この倍率じゃ旨味がないな。」と、ホマスタ→パッピーの連単で大口勝負。既に(馬券を)取った気になりつつ発走を待つ。

レース発走。距離は千八、2コーナーから。
ホマスタ注目のゲートは若干タイミングが合わず、半馬身弱程のやや後手踏み。大外からダブルシックスが今日は先手、ハナ。連れて内からマツノホープと1枠パッピー。
ホマスタはすかさず好位にまで難なく上々。しかし問題はパッピー、最初の三角進入手前でズルッと後退。
ということで1周目スタンド前、先頭はマツノ2番手差がなくダブル、これを見て3番手ワールドアイで、ホマスタはこの後ろ4番手。ここからやや開いて5番手にパッピー、インにミナミトライバル。ケツ2にエイコウラインで殿イチノキングオ。ホマスタもともかく、パッピーに来てもらわねば困るワシ、らしくない中団追走が気に入らず「野田ぁ!ちゃんと追わんか!」と怒鳴る。
向こう流し、どうも行きっぷりが悪いパッピーに比して、鞍上渡辺が抑えようにも抑えられずといった手応えのホマスタ、三角めがけて余裕の上昇。三角手前でダブルが売り切れ、代わって先頭は押し出されるようにマツノホープ。これを追って三分三厘、いよいよ単騎ホマスタがやって来て、勝負は最後の直線に。
ここで追い出すホマスタ、案外粘るマツノホープ。が残り100m辺りでマツノを下しホマスタ先頭、これは勝ち体勢。しかしパッピーがまだまだで、「マツノホープ粘らんでよし!頼むヤメテクレ」と思ったところ、四角辺りから押し上がってきたパッピー。しかししかし、これに引っ張られて、エイコウラインが外目一気に襲来。残り50m手前辺りからみるみる前との差が詰まり、マツノ、パッピーはおろか、ホマスタをも終いはクビ差差し切って波乱のV・・・

ゴール目前、ホマスタ「!」(37KB)
ゴール目前、ホマスタ「!?」
外からエイコウライン

ホマスタはクビ差の2着。3着パッピーはさらに1馬身遅れて。4着これも追い込んだイチノキングオ。マツノホープは結局5着。ワールドアイは見せ場なしで6着。
そしてそして、走破タイムが1分56秒5のレコード。平成2年のトヨクラバイオーのレコードを10年半ぶりにコンマ2更新。しかしながらこの極悪高速馬場、「エイコウラインがレコード駆けするようじゃ終わってるわ。」と、地元専門紙の記者さんがレース後漏らしたという・・・

エイコウラインの単勝は5050円、エイコウ→ホマスタの枠単が17960円という、大波乱の元凶は、とにもかくにもこの馬場かと。前述7レースの悲劇も間違いなくこれに帰因していようが、この馬場が各馬の走りに大きく影響している。
まずはホマスタ。渡辺騎手は道中、特に4コーナーを実に慎重に御していた印象。三分三厘から4コーナー、明らかに怖々乗っていて特に4コーナーではほとんど立ち上がってレース騎乗のフォームではない。そりゃホマスタのスピードでそのまま進入したら怖いもん、故障の危険性も高かろうし。ということで、ホマスタ自身にとっては能力発揮に相当枷のはまった、ストレスの溜まりそうな競馬。直線に向いてマツノを競り落とすべく再度追い出してこれを交わすも、後のエイコウラインの急襲には対処できず。「これじゃホマスタ気の毒」というのが個人的印象。その能力は間違いなく高く、当然福山でもトップを窺えようかと。福山の馬場への適性の判断は次走以降に持ち越したいところである。
波乱の立て役者エイコウラインは、勝負の決まった後の直線ドンケツ強襲だけが仕事の馬なので、4コーナーのコーナリングでスピードが乗るリスクが少ない馬。加えて、いつもはもっと前方に位置取るパッピーが、自身の直前で後手踏みながらも押し上がったため、これに体よく引っ張ってもらったことも有利に働いたかと。因みにこの馬、南関東デビューで9歳馬。過去の戦績を確認すると、'98年のこの花市場賞の勝ち馬だったりする。また'99年の新春賞では単勝8番人気で勝ち、枠複万馬券を演出したことも。それにしてもここで勝つか?なお父はホマレブルショワで、ホマスタとの1、2着はホマレブルショワ丼ということになる。全くどうでもいい話。
パッピーが先行できなかったこと自体、自身が連を外したのみならず、波乱に大きく影響したかと。おさるさん指摘もあったが、どうもはパッピーはドロドロの馬場が全然駄目のよう。翌日ビデオのリプレイにて注視していたところ、道中のめりどおし。1周目の三角で後退したのも、多分あそこでズルッといったようだ。

それにしても大波乱、ホマスタは敗退パッピーは連を外す・・・下馬所に引き揚げてきたとき、ホマスタの鞍上渡辺騎手が、苦笑い気味にしきりに首を傾げていたのが印象的。「こんな馬場であんな競馬じゃしゃあない」とでも言っていたかのよう。
「しかし凹むなぁ、福山でこの凹み具合、ミナミセンプウとサンワテイオーが両方飛んだ、'98年の菊花賞以来だな。ビンゴトウショウ→アサリュウキングの・・・」と、「エイコウライン、何やそれ?」状態のディープさんであった。

的中馬券の換金など当然なく、凹んでいるのでディープさん共々最終レース中に競馬場を後にする。と、入場門横の両替機(騎手の写真パネルの下)のところのモニターに映し出される最終レースの三分三厘。「こんなところにモニターあってんな。気付かへんかった。」と思いつつ覗き込むと、4コーナーで越智騎手の馬がガクッと崩れて当然越智は落馬。これに後ろからやって来て突っ込んだ石井騎手の人馬も落馬。結局この2頭とも壊れた模様。で、ディープさん共々、この日の馬場のマズさを一層実感させられ、イヤな気分になった次第。
馬券の波乱もともかく、競馬の安全性が損なわれるような馬場状態は大問題だろう。馬場保守義務の明らかなる過怠。頼むよ福山競馬(苦)・・・

2月25日(日曜日)
前日の波乱のショックが醒めやらぬ翌朝、またまた福山へ。今日はチボリ号にて。1レース前に競馬場に着き、前日のレースのリプレイを確認。
この日の天気は晴れ、しかしながらかなりの冷え込みで、寒が戻った感じ。馬場状態は朝から重。前日のコース上あちこちに見られた水溜まりは解消した模様だが、砂が入ったかどうかはどうも不明。予想紙上には「砂の補充はなし」とあるし、前日ほどではないが、概して走破時計も速い。
昨日は故障に伴う落馬が3件と、非常に後味の悪い1日だったが、この日もちょっと・・・1レースで楢崎騎手騎乗馬が本馬場入場時に放馬、結局除外。2レースでは同じく楢崎、発馬直後に落馬、これはすかさずその場で再騎乗して最下位入線ながらも競走中止は免れる。しかし端から見てプロとしてはいただけない。それ以降も決勝線通過後の落馬が2回あり、どうもうわついた雰囲気。
昼頃に、電設の男@ともろうさんが来場。「昨日のメインのリプレイ見に早く来るかと思ったらいないから、来ないかと思った。」と言うと「やあディープさんが『見る必要なし』って言ってたし、家出るのも遅れたから。」とのこと。ゴール前のスタンド席で、早速熱燗で一杯を始める師。それを見てワシも熱燗追随。「ユーノすけ氏何かワタシに洗脳されてません?」「だって師匠いっつも旨そうに呑んでんだもん。」本当は酎ハイが一番旨そうなのだが今日は寒いので熱燗ということ。
7レース終了後にNARの表彰が行われる。優秀騎手は岡田騎手、フェアプレー賞は嬉騎手。両騎手への花束のプレゼンターはそれぞれの御子息。場が和むひととき。特に嬉すぁんの息子さんのおチビちゃんは見た目ホンマ"ごんたくれ"な感じで、ちょっと笑えた。
これ以外、レースとしては特段メインまで見物もなく、あとは師と雑談しつつ時を過ごす。

さて、メインのキングカップ。
全国各地のアラブ系競走の縮小化の中、唯一アラブ系のみで施行する競馬場となった福山。ということで秋から冬にかけて、各地の有力2歳(及び明け3歳)馬が続々転入し、その層がグッと厚みを増した状況となった。これらが3歳戦線の主力の一角となって、生え抜き馬共々鎬を削ってくれれば、ダービーを経て、その先の楠賞にかなり強力な馬を送り込めるのでは?と期待が持たれたのだが・・・
問題の事件は昨年末、馬主会が「ジュニアカップ、ヤングチャンピオン、キングカップ、クイーンカップ、福山ダービーの出走馬は福山デビュー馬に限る」という趣旨の申し入れを主催者側に出し、これが通った模様(申し入れの詳細は『広島県馬主会ニュース』第34号掲載)。有力馬が揃い、3歳戦線が盛り上がろうという矢先のこの鎖国政策。個人的には大いに不満がある。福山デビュー馬には既存の出世コースが存在するが、これをオミットされた他地区転入馬にはその代替は用意されているわけではないので。路線が二分化され、双方の陽の当たり方、評価の与えられ方に差が生じるという状況は、さして多くない在籍頭数において、好ましいものとは思われない。
ということで、問題の是非はともかく、ダービーまでの3歳戦線のメイン路線は、"生え抜きチャンピオンロード"といった趣のものとなった次第。しかしながらこのキングカップ、福山ダービーを前にした前哨戦という位置付けながら、元来「ダービーに直結しない」という評価を受けてきているレースではある。

その出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手。負担重量は全馬54k。
ヤマノフィニッシュ(渡辺)、ホワイトウェーブ(鋤田)、ナルゴダイオー(片桐)、ワッショイサカエ(楢崎)、トラストサンダー(黒川)、マルフジキング(岡田)、ユノワンサイド(石井)、マルサンキラリ(岡崎)、フジナミスペシャル(嬉)、ホーエイイチバン(中川)
今年の福山生え抜き3歳馬の特徴として、補助馬に有力馬が相当数いるということが挙げられる。特にフジナミスペシャルとユノワンサイド。この2頭をはじめとした補助馬勢は1月中旬の三場交流で対戦し、フジナミ→ワンサイドの順でワンツーを決めている。したがって、今回このレース、この2頭を中心とした三場交流の再戦に、補助馬以外の馬たちがいかに絡むか、といったあたりが注目点となった。

パドックから発走まで
パドックに出走馬が登場。マイラーズカップと同様、1着賞金300万円の低額賞金重賞故か、馬名の入らぬ赤地に黄数字のゼッケン。
1番ヤマノフィニッシュ。昨年末の特別競走ジュニアカップの勝ち馬。馬体重412kの馬体重通り、幅のない華奢な馬体でヒ腹からトモにかけてがいかにも細い。入場時尻っ跳ねをするなど、気配はずっとカリカリとしている。フジナミスペシャルとは同厩で主戦も同じ渡辺騎手。その渡辺騎手が今回フジナミではなくこちらを選択したということで、注目度が高まる。「前走高森(子供にしか見えない、リーダーお気に入りの新人騎手)が乗ってC2の9組で3着ですよ。渡辺騎手だったらもっと走りますよ。」とは、前日に承ったディープさんの推奨コメント。追い込み一辺倒の脚質のようだがその爆発に期待。早熟傾向がどうも強いフィニッシュライン産駒、ここが勝負か。
2番ホワイトウェーブ。補助馬で三場交流にも出走。芦毛だが前回と同様やはり今回もピンと来るものはない。トボトボと周回。
3番ナルゴダイオー。あのマルサンダイオーの全弟。前脚でリズムを取った歩様。気配はまあまあといったところか。時折突発的にチャカチャカする。馬体重478kだが、それ以上に背が高く、腹回りのある馬体。兄が兄だけに今後に期待が掛かるが、その兄は4歳(現3歳)の今の時分は福姫交流に出掛けてピカイチやリスペクトに思いっ切りブタれて帰ってきていた頃、躍進は初夏以降ということで、まだ狙うには早いか。
4番ワッショイサカエ。名前がちょっと・・・だが。鶴首でグイグイと周回、気合いが入っている。年明け以降の戦績はやや停滞気味で苦戦必至との予想紙の見立て。
5番トラストサンダー。これは名古屋の強豪ブレーンワークの半弟。父がサチエノヒリユウからサカノタイムに変わっており、コンサバ度がより増した(?)配合。皮膚の薄そうな栗毛の馬体で落ち着いて周回。馬体はもう一絞りできるかといった感じ。筋骨隆々な兄に比しては標準的な馬格。
6番マルフジキング、これも補助馬で三場交流以来の対面。戦績的には足らずといったところだが、見た目は黒鹿毛の張りのある馬体でなかなか良い。パドックの最内を周回。
7番がユノワンサイド。ズバリこれは良く見える。487kの馬体重そのままに雄大に見せ、肌の艶も張りも文句ない。二人曳きの周回だが気合い乗りも充分。正直パドックで対面するまでは、今日も人気になろうが煮え切らぬ近況を思うにつけ、評価は落とそうと思っていたのだが、その見立てを覆す気にさせられるほどの見栄え。
8番マルサンキラリ。昨年初夏のデビュー時は3連勝した馬らしいが、半年の休養から年明けに復帰以降は全く振るっていないようで。黒鹿毛なのだがとにかく毛艶が悪い。全体に冬毛気味。モグラの毛皮ってこんな感じだったよな?と思わせるほど。気合い乗りも乏しい。
9番がフジナミスペシャル。三場交流制覇で一躍3歳戦線の中心に躍り出た。黒鹿毛の馬体は張りも艶も良好。周回を重ねるうちに次第に気合いが入ってくる。馬体重499kとなかなかの馬格でそれなりに雄大だが、体型のバランス的にちょっとトモが細いかも。渡辺騎手がヤマノフィニッシュを選択したことで、今回は鞍上は嬉騎手。先行から早め抜け出しということになると、抜けた先行馬を御すのはお得意と言われる嬉さんのこと、やはり勝利への最右翼か。
10番ホーエイイチバン。前を歩くフジナミと同じ黒鹿毛で同柄の水色青縁メンコ着用と、ちょっとフジナミと紛らわしい。のんびりと周回するが、逆に言えば覇気に乏しい。毛艶はまあまあ。
以上、パドックの見た目では、ユノワンサイドの印象が断然。フジナミも良好。活躍馬の弟2頭、ナルゴダイオーとトラストサンダーもなかなか。
本馬場入場から返し馬。ヤマノフィニッシュは返し馬もピーキーな感じ。ナルゴダイオーのブリブリのキャンターが印象的。ホワイトウェーブは三場交流の時と同様、暴走気味に四角に進入して大きく逸走。
予想。素直に買えばフジナミ−ワンサイドで問題なかろうが、個人的にどうもユノワンサイドに信頼を置きかねるわけで・・・そして気になるヤマノフィニッシュ。ということで穴気味に、フジナミからヤマノ、ナルゴ、トラストサンダーへ、ヤマノからもナルゴ、トラスト、ワンサイドへ。フジナミ−ワンサイドは押さえ程度。電設師もヤマノフィニッシュから。「ここはズバリ軸は(渡辺)博文さん。相手は3、4、5番。」「4番も?」「気合い乗り良かったから。ん?アカン、止めた。」「何で?」「騎手が・・・」といった具合で二人予想。

そしてレース
レース発走。距離は千六、スタート地点は向こう正面中程、ここから1周半。
ゲートオープン。内から黒川トラストサンダーが押して前へ、外では嬉のフジナミスペシャルも積極的に、岡崎マルサンキラリも先手主張。しかしながら三角手前では結局フジナミスペシャルが単騎ハナ。全く余裕。
正面スタンド前、先頭はフジナミスペシャル、折り合いは良好か。これから5馬身弱程度離されて2番手にマルサンキラリ、その直後インにトラストサンダー外に石井ユノワンサイド、若干掛かり気味のよう。ユノワンサイドは今日はフジナミを前に見ての競馬。この後ろに楢崎ワッショイサカエや中川ホーエイイチバン。以下ホワイトウェーブ、マルフジキングは中団、ナルゴダイオーが続いて予想通り殿はヤマノフィニッシュ。
レースは二角から向こう流しへ。このあたりから先頭フジナミスペシャルがぶっちぎりの逃げ状態になってくる。フジナミが向こう流し半ばに差し掛かろうというあたりで、後方はまだ向こう正面の取っつきを走行、というくらいの大差。既に確勝ムードとなって3、4コーナーを回ってくる。
こうなると苦しいのがユノワンサイド。このまま先団に混じって追走しても勝ち目はない状況、どうようもなくなって、といった具合に単騎集団を抜け、前のフジナミを追撃にかかる。これでワンサイド以下は勝負からは完全に圏外。あとはワンサイドがどこまでフジナミを追い詰められるかが焦点。

最後の直線半ば(37KB)
最後の直線半ば
逃げ込むフジナミ追いすがるワンサイド

とはいえ道中で稼いだ大差リードは効き目絶大。リードをキープしつつ比較的楽な手応えで最後の直線に向いたフジナミ。必死の追撃のユノワンサイド。前のフジナミが楽走で、終いはややバテた感もあり若干差は詰まったものの、追うワンサイドも三角手前からの自力脚、さすがに脚色も鈍って、結局最後まで馬体は合わず、1馬身半差でフジナミスペシャルがまんまと逃げ切り重賞連取。
2着ワンサイドの後ろは大差開いて、2秒1遅れた3着に、直線強襲のヤマノフィニッシュ、4着は中団から進出のホワイトウェーブ。5着ワッショイサカエ6着トラストサンダー7着ナルゴダイオーと、このあたりの連中は見事に期待を裏切った形。
「フジナミスペシャル、あれでよく最後まで保ったなあ。」と電設師。「まあでも追いかけたワンサイドも自力で脚使って最後脚いろ同じになっちゃってるし。」とワシ。

フジナミスペシャル押し切る(43KB)
フジナミスペシャル押し切る
この1馬身半差がなかなかに・・・


総括、そして今後の展望など
ということで結局三場交流の1、2着が今回もワンツー。波乱も何もなく馬券的にも全く平穏な結果。この2頭と3着以下の地力差は、着差にも出ているように、正直相当あると見なさねばなるまい。「もう少し太刀打ち出来るんじゃないか?」との戦前の見込みは完全に覆された。5月初旬の福山ダービーまであと2カ月、ダービーでは、今回のこのレースの面々にクイーンカップ出走の牝馬有力どころが加わろうが(この翌日がクイーンカップで結果ギャラクシアが順当勝ち、嬉騎手は2日連続の重賞制覇とのこと)、他地区デビュー馬は仲間に入れてもらえぬ状況で、余程の昇り馬が出現しない限り、この二強体制のままその時を迎えるのではなかろうか。
勝ったフジナミスペシャルは現状では抜けた存在となったよう。ここまで先行力があるとは思っていなかった。しかし逃げプロパーでもなく、スピードタイプとも思えないので、今後に向けてどうキャラを作っていくのかは注目。取り敢えずはパワー強化を期待。しばらくは古馬混合戦で揉まれて修行というところか。
2着のユノワンサイドはまたもや勝てず。前回の三場交流では逃げて二位付けのフジナミに負け、今回は控えて結局それが後手となりフジナミを取り逃がす。フジナミとの実力差というより、勝ち癖の欠如という点を強く感じる。全くもって「煮え切らない」状態。
それにしてもヤマノフィニッシュは案外だった。終い追い込んできて3着は確保したが、有力2頭が遙か前方で行った行った状態でこの競馬では勝負に全くなっていない。今後上積みがあるのか?やや疑問。トラストサンダーやナルゴダイオーは、期待を賭けて狙うには、ちと早すぎただろうか?

フジナミ、ワンサイド以下補助馬有力どころの次の目標は、姫路競馬場で3月21日に施行される、3歳補助馬の一戦、福姫交流かと。三場交流には、兵庫はとんでもないとぼけた馬を送り込んでちょっと問題ありだったが、兵庫の今年の補助馬、実はそれなりのレベルにあるようで。中でもホクセツジョージとボールドヒリュウがトップ。この2頭はクールテツオーを追いかける、2番手集団の有力どころでもあり、ホクセツジョージはテッちゃんとは未対戦ながら5戦無敗。ボールドヒリュウも、園田3才優駿2着のソレユケイチマツと互角に勝ち負けを繰り広げている実力。これらが恐らく福姫交流では福山勢を迎え撃つはず。この一戦、、楠賞を見据えた上での福山vs兵庫のレベル差を計る舞台となることは必至。ひょっとすると、"福姫から楠賞が見える"という、希有なケースになるかも・・・ともかく楽しみ

ちょっと見物の最終レース
最終レースは「春めく特別」A2クラスの一戦、距離千八。ここに岩手最後のオープン馬の1頭で年明けに福山に移籍してきたライトジュピロが登場、移籍後3戦目。ディープさんはこの馬に大注目で、前日にこの馬絡みの馬券を託された次第。ワシはお初。パドックの気配、なるほどいい馬、しかしながらまだやや緩いという感じ。
鞍上は嬉jk、本馬場入場時、嬉さん、馬から振り落とされる。
レースはそのライトジュピロ、先団でレースを進めるも、勝負所の2周目三分三厘での手応えがやや悪い、どうも息遣いも重めか、終い盛り返すも結局3着入線。先頭争いはヨシユキトップとスマノボーイ、接戦となるがヨシユキトップに凱歌。この2頭はA2で常に上位入線しており、A1が手薄になる時季ならば確実にA1入りしている馬なので、ライトジュピロの3着は現状ではまあまあか。いかがなもんでしょう?ディープさん。

ウィークエンド@福山、終わって
ということでこの日の競馬も終了。帰りがけに福山駅前で、電設師と、合流して下さったFUKUさんと茶をしばく。そして岡山まで師と車中同行。あれこれ語らう。
「師匠ってさあ、ホンマサービス精神旺盛だよね。」「確かにそうかも知れない。」「大一番にはちゃんとデータ一式プリントアウトして持ってきてくれるし、AGPの特設ページはスゴかったよねえ。」「現場で人に過去のデータとか訊かれると結構嬉しくてさ、『こんな感じ』って見せてあげたいんだよね。」などどとりとめもなく。電設師の生み出す現場の雰囲気っていうのは事実ホンマに居心地良くって、個人的には「やっぱり現場は最高!」の一つの大きな要因だったりするのだな。
ところで、車中翌日の織姫賞@足利の出走馬が気になるワシ。師のサービス精神に甘えて、モバイルでNARのHPに接続していただき、それを確認。「出る、イーシー」さてどうしようか、足利・・・
岡山駅で電設師とはお別れ。「では来週佐賀で。」と。岡山からは新幹線で姫路まで。昨日購入したウィークエンド回数券使用。そして帰宅。そしてさてさて、
「待ってろよ、イーシーキング――」

2001.3.13 記

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