第11回西日本アラブ大賞典観戦報告

 2001.3.4、佐賀、2400m

はじめに〜九州へ
1月30日の荒尾セイユウ賞から1ヶ月、またしても古馬の大一番がやってきた。すなわち佐賀の西日本アラブ大賞典。昨年はセイユウ賞の名を冠し全国交流として行われたが、今年は例年通り、兵庫以西の西日本交流として施行。
ということで、またまた九州へ。リーダー前田っちとまりおちゃんとのトリオ。昨年と同様、「博多ビジネスプラン」なる、新大阪−博多間の新幹線指定席往復(除のぞみ)プラスビジネスホテル一泊がセットで23900円の格安パックを利用。
ということで今回は前日から九州入り。リーダーは朝から北九州のローカル線乗り潰しの鉄分補給のため、ひと足先の便で。ワシとまりおちゃんは姫路を11時12分発のレーススターで博多へ。これが13時26分に博多着。
この後博多駅前の地下街で一蘭(メジャーな博多のラーメンチェーン)のラーメンをまず食べる。ここで店内に流れるラジオの天気予報が明日の天気を「雨のち雪」と告げ、「うわっめっちゃブルー」とまりおちゃん。そしてキャナルタウンや天神、福岡ドームを見物。5時半頃にリーダーと博多駅で合流し、駅前徒歩1分のビジネスホテルにチェックイン。
夕方はワシは個人行動。福岡在住の旧友に、水炊き接待を受ける。鶏肉好きのワシとしては、博多の水炊きは一度是非食してみたかったもの。期待通りの美味さで満足して前日は終了。

そして翌朝レース当日、8時にホテルのロビーに集合。チェックアウトしてまずは博多駅前の吉野屋で朝定食を食う。3人とも銀箱持参、まさに"怪しい銀箱トリオ"状態で朝の吉野屋に違和感を漂わす。8時37分の、久留米から日田彦山線に入る臨時快速「おひなまつり号」に乗車して鳥栖駅へ。このホームで合流予定だったエチゼンさん、我々がホームへと上がろうとした階段のすぐ目の前におり、いとも呆気なく発見。ということで銀箱トリオはカルテットに増殖。
定刻に列車は発車し、一路鳥栖へ。心配された天気はこの時点ではまだ薄曇りで、車窓の風景は時折日も射す。「そのまま〜」と、一同天気が保ってくれることを切望。
鳥栖駅に到着し、ここからは路線バスで競馬場に向かうことに。思うのだが、旅をしていて、見知らぬ土地のバスの路線図と時刻表ほど難解なものはない。九州北部は西鉄を中心としたバス王国。鳥栖のバス停の路線図も複雑。しかしここで心強い存在はリーダー。路線図と時刻表をスラスラ解読してくれて乗車すべきバスと時刻を判断。サスガ"スキスキリーダー"。正直リーダーがいなければかなり困った状況。バスが来るまでに間があったので、我々、バス停のベンチに銀箱4つ並べて無邪気に記念撮影。いい年こいて、ちょっと恥ずかしい。
無事にバスはやって来て、乗車。揺られること20分弱、佐賀競馬場の監視塔と煉瓦壁のスタンドが見えてくる。到着である。去年のセイユウ賞以来、丁度1年ぶりの佐賀競馬場である。

来たぞ佐賀競馬場
入場すると、昨年と同様畜産フェアとかで、景品を配っている。九州競馬のファイルがナイス。あとはウィンナーやら卵油というアヤシイ健康食品やら・・・
佐賀競馬場には手荷物預かり所がなく、場内に散在するコインロッカーがその代わり。使用後に100円玉が戻る仕組み(まりおちゃんは使用後コインが戻らず「嘘ツキ!」状態だったそうだが)。これに荷物を放り込み、まりおちゃんは持参の太幕と赤木幕をパドックに張り出す手続きに。ワシはまたまた競馬場に直送された、ハナキーくん作成の『アラビアンA』を受け取りに、入場門脇の総合案内所へ。その旨伝えると、無事に到着した小荷物が案内カウンターの係の人の卓上に。すんなり受け取ることが出来やれやれ。
そして横断幕張りの手伝い。入場した頃から空が一気にかき曇り、かなりの風が出てきた。おまけに雨ともみぞれともつかぬものがパラパラと降り出す。横断幕の装着はなかなか困難。紐で括り着けようにも、幕がはためいていうことをきかない。ちょっと難儀して何とか装着。ここで丁度1レース出走の太さんがパドック内の待機所にやって来る。まりおちゃん「フトシさ〜ん!」。すると太さん、こちらを向いて幕に気付き、ちょっとニコッ。

そしてスタンド側に出る。ゴール板前のスタンド席の上方に、まずは電設の男@ともろうさん発見。夜行バスで博多入りし、西鉄久留米経由で来場とのこと。やがて、ディープさんに地元九州さまにべっぴんさん、"大御所"Okuさん、"首領"Tienさん、高知から始発の特急南風乗車のもりも先生、と、続々登場。ここでワシは例によって『アラビアンA』配布。因みにこの御歴々、有り体に言えば「西日本アラブ系デフォルト」。
馬場を見ると、これがまたコースの幅員の半分くらいに水の浮く、超不良馬場。これを目にしてOkuさんは開口一番、「これメグミダイオー有利やろ。冬の水沢で鍛えられとるからこの程度の馬場屁でもなかろうて。」。一方同時にワシは心中(ワシュウはしんどいよな、これでまた勝負にならんかったら、負けのショックに加えて、馬がガタガタになるんちゃうか)とちょっと心配。

折角1レース前から競馬場に来たのだから馬券を買う。しかし大して真剣に予想もしない適当な買い目なので、当たらない。そして1、2レースと外した3レース、太さんの馬が人気薄なので何も考えず複勝を1点買う。
するとこのレース、単勝最低人気の太さんの馬、道中殿追走から4コーナー、ズバッとインに飛び込み、他馬をドンドンと交わして1着入線。そして結果が、馬単実に296,060円の特大配当、単勝すら7940円。因みに複勝は530円・・・太さんが勝ってこの配当、地元じゃあり得ないというびっくりネタ。しかし連単はともかく、単勝が取れないところが我ながら情けない。因みにこのレース展開とコース取り、(太さん、メインのレース運びの参考になったんじゃないか?)などとこの時は個人的に思ったりした次第。
次の4レースも懲りずに複勝馬券、高知の花本騎手騎乗の馬に1点。馬券を買って、リーダーと一緒にラーメン屋に行く。佐賀のラーメンは九州らしくコンサバな豚骨ラーメン。実に美味い。プラス100円で替え玉(麺を食べ尽くしスープだけになった器に麺と具を足してくれる、九州ラーメン独特のサービス)までしてもらい、実質2杯平らげる。尚このレース、返し馬で放馬があり、この馬を穴目で買おうとして躊躇したまま、結局切ってラーメンを食うリーダー。その馬は除外にならず発走、これが2着、そして配当が馬単5790円でリーダー死亡。そして花本の馬が3着に残り、複勝Get!と思いきや、このレース7頭立てで複勝式は2着払い。初歩的なヌカ喜び。馬券戦線はこれで一気に盛り下がり、あとはメインレースまで適当に過ごす。この間7レースに赤木騎手の騎乗が一鞍あったが結果は着外。なお、当日の場内には各地の競馬場所属の騎手の姿がチラホラと、「あ!あの顔は、この姿は。」状態であった。

※アラブ大賞典についてはここからです
そしてアラブ大賞典
準メインの8レースはサラ系オープンの天山賞なのだが、それには目もくれず、メインレースのパドック待ちをする。ディープさんは、事前には「同日に天山賞もあってこの日は見どころ多いですよ。」と言っていたのにもかかわらず、「天山賞?別にどうでもいいですよ。」と、パドック待機。アラブ原理主義者以外の何者でもない行動。

さて、メインレースの西日本アラブ大賞典。出走馬は内枠より以下の12頭。負担重量は全馬イーブンの56k。()内は姓齢、地元佐賀以外の馬については所属地区、騎手。
トチノグレイス(牡5、山下)、ワシュウジョージ(牡5、兵庫、小牧太)、サチエノグロリー(牡5、益田、城内)、ビソウミラクル(牡7、鮫島)、メグミダイオー(牡6、荒尾、吉井)、マッキーチャンプ(牡6、山口)、アローパッション(牡6、福山、吉延)、イメージアラシ(牡8、北村)、アポロスイセイ(牡4、高知、花本)、アトミックボンバー(牡6、長田)、タカライデン(牡4、兵庫、赤木)、フブキベル(牡8、川野)
ということで、1月前の、セイユウ賞の再戦になるかと思いきや、セイユウ賞から引き続いての登場は、その勝者メグミダイオーと、ワシュウジョージに佐賀のビソウミラクルと、たった3頭。「いい加減東海・北陸混ぜたれよ。」の声が大きいのも頷ける。
それにしても惜しむらくは、セイユウ賞2着、福山のミスターカミサマ。実際のところ、鞍上渡辺騎手はセイユウ賞2着の馬装を解く際、敗者の弁として、佐賀でのリベンジへ意欲満々だったそうだ。しかしながら福山の主催者サイドの遠征馬選定が、荒尾セイユウ賞へは福山大賞典1着のカミサマ、佐賀へはその2着のアローパッションと、事前に機械的になされていたようで、カミサマは補欠第1位。他馬の回避をあてにして、地元の前週の的鞍もパスして2月27日の出走馬決定日を待ったのだが、結局出走は叶わず。ということで福山代表はアローパッション1頭で、他地区のうち兵庫だけはワシュウとタカライデンの2頭出し。このあたり、送り出す福山サイドも主催する佐賀サイドも、競馬には話題においても馬の調子においても、旬ってやつがあるってことを、出走馬選定の際に考慮して戴けないものか・・・と、苦々しく思う次第。福山サイドの他地区交流への選出基準はいつも一見公平なのだが(大抵トライアル的競走を定めてその勝者や2着馬がを権利を得る)、これが逆効果であるケースも実際多い。また主催者の佐賀サイドも、フルゲート12頭のうち、他地区馬6頭地元馬6頭という割り振りを頑なに変えないし・・・

さて、佐賀競馬場のパドックからは、隣接する装鞍所の様子がかなり見える。タカライデンは早くから馬房に入って待機。外枠馬の馬房がよりパドックに近いので、11番枠のタカライデンの姿はすぐそこに見える。緑メンコでぱっと見ワシュウかと思ったアローパッションや、アポロスイセイも比較的早くから装鞍所に。メグミダイオーは素顔で馬房に入り、途中からパドックメンコを被せられる。ワシュウジョージは一番遅れて装鞍所に姿を現す。そしてギリギリまで曳き運動。途中でアポロスイセイが馬房の中で暴れ(ゴンゴン!と、馬房に馬体がブチ当たる音まで聞こえた)、なだめるべく馬房を出され曳き運動。
ここまで天気は相変わらず猫の目のように変わり、メインのパドック直前にはあられが舞ったりして。陽差しも一定しないのでフィルムの感度のチョイスが非常に難しい。ワシは最悪真っ暗の事態を考え、ISO800のズームマスターを突っ込んで臨む。

パドック、そして返し馬〜発走まで
8レースが終わり、いよいよ西日本アラブ大賞典出走の各馬が、全国の競馬場で唯一馬が右回りに周回するパドックに姿を現す。
1番トチノグレイス。岩手OBのトチノミネフジ産駒で佐賀転入直後の昨年5月、九州アラブ王冠を制した馬。馬体重443kだがそれよりは大きく見せる。馬体の張りや艶はなかなか。それはともかく、被るメンコが所属の西久保厩舎お約束の、白地に目の周りが赤い"Seven Pointed Star"、かつてフクヨシオーも着用していたド派手柄で、馬体よりもこれに意識がいってしまう。
2番がワシュウジョージ。遠征不安が先に立つ兵庫のトップ。注目のパドック気配であるわけだが、いつになく落ち着いた周回で気合いが前面にあまり出ていない。とはいえやる気がない様子でもない。馬体重は、大幅に落ち込んだ前走の荒尾から、+7kの445kに戻している。しかし見た目やや緩めではある。毛艶はそれほど良くはない。歩様はまあまあ。良くも悪くも悍性のキツさが現れる従来のワシュウとは雰囲気を異にしており、これがレースでどう出るか。ちょっと判断に困る。
3番益田のサチエノグロリー。2月23日の中津ガーネット特別勝ちから、中8日での参戦。冬毛が出てとにかく毛艶が悪い。身のこなしもゴトゴトしているし加えて顔もギスギスしていて怖いという、何だかとんでもないルックス。ある意味「凄いなぁ」という感想を抱かされる。
4番ビソウミラクル。これが馬体の張りも艶も案外良好。現状ではこの馬が佐賀筆頭だそうで、今回ホストとしてどこまで受けて立てるか、お手並み拝見ではある。が、意識するとこの馬のキャラ的に、人気薄で激走、波乱となりそうなので、無視を決め込む。
5番がメグミダイオー。前走セイユウ賞勝利で晴れて日本一に。それを受けて、今回堂々の本命、レースの中心と目されての登場。相変わらずの重厚な馬体で文句のない出来。馬体の張りも艶もケチのつけようがない。今回は距離が二四で彼の適性からして若干長いかとも思われるが、この日は得意のドロドロ馬場、現在の充実ぶりや地力からして距離不安を充分補えるのでは。
6番マッキーチャンプ。昨年末までは兵庫在籍でかの地では中堅上位だった馬。佐賀ではA1編入でここに登場。ここに入っては特に印象には残らない。
7番がアローパッション。ミスターカミサマを差し置いての福山代表。地元でのパドック周回よりは気合いが入ってややうるさい。仕上がりはまあまあだと思うが、若干胴体が重々しいような気がしないでもない。長丁場は苦にしないタイプのようで、息の長い差し脚で見せ場を作れるかどうか。
8番イメージアラシ。昨年のこのレース、勝負が決してからの差し込み4着で佐賀勢最先着。しかし近走は不振で既に8歳。この馬、鹿毛ながら馬体がかなり黒く、細身で小顔、加えて赤メンコで、ちょっと外見ホマスタに似ている。昨年のパドックでも何となくそう思った。ディープさんにそう言うと、少し笑われ、続けて「この馬宮崎産ですからねえ。まあこの歳でようやってますが。」ふむふむ。歳の割には気合い乗りは良く、パドックの大外を周回。
9番が高知のアポロスイセイ。期待の4歳逃げ馬。気合いが入り、グイグイ周回。一人で曳いているので担当の厩務員さんは抑えつけるのに大変そう。脚の踏み込みも良好。若干冬毛気味で栗毛の毛艶はあまり冴えない。光るオレンジ色というか、金色というかのメンコ。「これが陽に照らされて輝くとカッコええねん。」と、リーダーやもりも先生が口にする。
10番アトミックボンバー。ちょっと冬毛っぽい鹿毛の馬体。印象薄し。
11番が兵庫4歳タカライデン。ちょっと気合いが入った周回だが勝負掛かりの時はこれでよいのではといった具合。馬体重-3kの452kだが、輸送して減っても450k台をキープできるまで大きくなったのは個人的には好感。馬体の艶はまあまあ。地元では堅実だが斬れ脚のない先行タイプ、加えて今回は同型脚質に超強力なメグミがおり、果たしてここでどうか?正直意外性には乏しいかと。
12番フブキベル。イメージアラシ共々8歳で出走馬中最年長。見た目平凡。腹が上がっている。
ということで、パドックのぱっと見だけなら、断然はメグミ、続いてトチノグレイス、ビソウミラクル、イメージアラシあたりが好印象。タカライデンはそれなり、アポロスイセイのエキサイトぶりをどう取るかどうかは好みの問題か。ワシュウは何とも判断しかねるが、太さんを背に乗せたところ、俄然気合いが入った模様(これはリーダーのチェックの伝聞)。
アポロスイセイ(43KB)
アポロスイセイ、返し馬
逃げまくれ!
サチエノグロリー(45KB)
サチエノグロリー、返し馬
益田の意気地

そして本馬場に各馬登場。ワシュウは早々に馬場入りし、ゴール100m前あたりまで歩を進めて真っ先にキャンターに。アポロスイセイのキャンターは気合い充分で好感。タカライデンは四角近くまで歩を進め、ここから内ラチ沿いをダク。メグミは迫力のキャンターを、まる2周も敢行。

メグミダイオー(47KB)
メグミダイオー、本馬場に登場
挑戦、受けて立つ

馬券を買う。ここは堅くメグミとワシュウに厚く。連単にするほど旨味もない気がしたので、馬連で勝負。このあたり、連単で一方に乗らないところが根性無しといおうかノンポリといおうか。あとはメグミから期待のアポロとまさかのアローパッションへ。加えてワシュウ−タカライデンの兵庫丼と、ワシュウ−アローの差し差し決着馬券、これらをごく薄く。本命決着であればそれでよしの馬券。

レースなり
さて、いよいよレース発走。距離二四、4コーナーを出た直線入り口あたりがスタート地点、ここから2周と少し。
ゲートオープン。戦前の予想通り、外枠から花本アポロスイセイが好ダッシュ、やや内に切れ込みハナを奪う。これに連れて同枠外10番のアトミックボンバーが2番手、内からマッキーチャンプも前へ。この3頭が逃げ体勢で、この後ろ、内に城内サチエノグロリー、この外に吉井メグミダイオー、直後鮫ちゃんビソウミラクルでこれらが先団を形成。赤木タカライデンはこの直後で先団の後ろ。やや開いて後方インに吉延アローパッション、これを見る形で太ワシュウジョージ、このあたりは中団。そしてイメージアラシ、トチノグレイス、殿フブキベルと、地元差し馬勢が後方を占める。アポロスイセイのリードは2馬身もなく、ガンガン飛ばして離す逃げではない。「アポロ、思ったより行かないね。」と、最初の正面スタンド前を通過する馬群を見送った後で、隣のもりも先生に問う。と、「うん、まあ距離長いしその辺考えてるんじゃないかな。」とのこと。

1周目(42KB)
1周目の正面スタンド前
先頭アポロスイセイに2番手以下がぴったり

長距離戦ということで、一旦隊列が定まると馬の出入りはなくなり、大方上記の並びのまま最初の1周を消化し、馬群が2度目のホームストレッチにやって来る。
先頭は相変わらずアポロスイセイ、2馬身ほど後方外目2番手にアトミックボンバー。その2馬身弱後ろのインにやや下げたマッキーチャンプ。メグミはこの外4番手をがっちり。メグミのインにサチエノグロリー、直後にビソウミラクル。ここで隊列がやや切れて、タカライデンはここで追走、いつになく後方の位置取り。このインにアローパッションで2頭を見つつワシュウが続く。といった具合に残り1周。

1周目(38KB)
中団追走、タカライデンとアローパッション
タカライデンは定位置より随分後方

レースが動くのは昨年と同様2コーナー手前。ワシュウジョージが寄せを開始。放たれた矢のように実に軽快に押し上がる。前のタカライデンの外まで一気。ここで赤木タカライデン、タイミングが合ったのか、不意に来られて咄嗟に併せたのか、それともたまたまなのか、ワシュウに並びかけて一緒に上昇。2頭で外目外目をあれよあれよという間に進出。
これと同時に先団ではメグミが発進。ちょっと脚いろが怪しくなった先頭アポロスイセイ、これに代わって一瞬ハナを窺いかけたアトミックボンバーを外から交わして勝負に出る。ここがちょうど三角手前。と、まさにこの時、さらに外からワシュウとタカライデンがフロントに登場。インにメグミ中タカライデン外ワシュウの併走で3コーナーを回る。三強決戦か?
と思ったのも一瞬、三分三厘で程なくタカライデンがついていけずに脱落。やはり内メグミ外ワシュウの一騎打ち。併せ馬びっちりのまま4コーナーを回ってくる。そして勝負は最後の直線に。
「ここからどんな死闘が?」と思ったところ、残り150mあたりで抜け出すワシュウ。ちょっと伸びがないか?盛り返せないか?というメグミを尻目に、馬場の真ん中ストライドを伸ばすワシュウジョージ。終いは余裕、楽走気味。鞍上の太さん、スタンドのお客さんに向かってVサインのパフォーマンスつきで優勝のゴール。

ワシュウジョージ、ゴール前(40KB)
快勝ワシュウジョージ&太さんVサイン
写真は露出オーバーでトんでいる・・・

2着はワシュウから2馬身半遅れてメグミダイオー。タカライデンはさらに2馬身半遅れた3着。この後ろ4着にサチエノグロリーが先団キープで粘りきっての入線。
5着にビソウミラクル。6着追い込んだトチノグレイスでアローパッションは中団から全く不発の7着。逃げたアポロスイセイは結局8着。以下イメージアラシ、アトミックボンバー、フブキベル、マッキーチャンプの着順。
勝者のワシュウジョージと太さんがウィニングランで再度スタンド前に戻ってくる。太さん、鞍上でニコニコ顔。お客さんに向かって手まで振って、ゴール時のVサインといい、いつになく砕けた振る舞い。余程会心だったのだろう。

最終レースを前にメインレースの表彰式。悪天候を考慮してか、スタンド前の表彰台においてではなく、スタンド2階の真ん中あたりの階段前、この一角を綱で囲って表彰台に見立てたスペースにて行われる。
おねえちゃんが太騎手にインタビューをする。完全には聞き取れなかったが大意は次の通り。
「ペースは速くなると思ったので、離れぬ位置で折り合いをつけてと心がけて乗った。」
−(ワシュウジョージの)手応えはどうでしたか?
「4コーナーを回って、行くのが早過ぎるかとも思ったが、(他馬と手応えが)違っていたので・・・」
「メグミダイオーが横にいたが、脚が違っていると思った。」
「いつも遠くまでワシュウジョージの応援に駆けつけてきてくれるファンの人がいるので(これって"だんまく一味"のことだったりする?)、ここで勝てて嬉しい。」

そして表彰式が終わり、囲いの綱を抜けて関係者さんがお客さんの群れの中を退場する。ここで相当数のファンの人が太さんを囲み、祝福の言葉を掛けたり握手を求めたり。「あ〜フトシさんに握手してほしいよ〜」と、人の群れのやや後方で観ていたまりおちゃん。実はこの時、太さんの視線はズバリまりおちゃんに。「ほれ!」とばかりに、リーダーとワシとでまりおちゃんを前に促す。すると太さん、ちゃんとそれを認めて、立ち止まりこちらに体を向けて待ち構えている。そして言葉を交わしつつ握手。「うわぁむっちゃ嬉しい!」と、感激のまりおちゃん。そこでリーダーとワシ「そら太さんずっとキミの方見ててんで。」「うっそ〜!?全然気付かへんかった。」ちょっといい光景だったかな。

戦後の私見
ということで、勝者はワシュウジョージ。荒尾での敗退から1月。立て直しはどうか?とか、懲りずにまた出張するのかといった、連続遠征での走りに懐疑的な声が多数を占めた中、取り敢えずはその声をはねのける勝利。実際のところ、パドック気配や意識的に緩めたとも見える馬体など見るにつけ、これで遠征不安を完全克服と見なすのは性急ではあろうが、まずは一つ好結果を出せたということは評価に値しよう。まあ、遠征駄目駄目とはいえ、陣営もさすがに連続して同じ轍を踏むまい、といったところだろうか。
と、まずはシビアに押さえてみたが、今回のワシュウのレース振りは見事であったと思う。中団から自力で進出して前に取り付き、最後更に伸びて突き放すという、これぞワシュウの競馬というべきレースだったかと。個人的には、これまでワシュウの重賞出走は、六甲盃以外の10戦を現場観戦しているが、これまでの走りの中でも出色のものだという感想を抱く次第。
メグミダイオーは今回は残念。本来ならば二千がベストで、今回の二四は適性からして長めという不安材料はあったものの、地力と現在の充実ぶり、加えて当日の不良馬場は、それを充分補え得ると思ったのだが。ワシュウに引き離されたのが残り150m地点、荒尾のセイユウ賞からの距離延長分が250mであり、距離2200mあたりが強敵相手に守備範囲となりうるか否かの分かれ目という感じか。終いは差をつけられたものの、三分三厘から4コーナーにかけて、馬体びっちりの併せ馬のせめぎ合いでは、強さを見せてくれたと思う。異なるコース、異なる距離で、再戦を観たいという気に大いにさせられた。
3着のタカライデンは、取り敢えずは楠賞2着で兵庫4歳二冠の意地と、特待的な兵庫2頭出しの恩恵への示しを何とかつけたといったところか。結果としてワシュウ−メグミの着差と同じ分だけメグミに迫ったわけだが、真っ向勝負で負けたメグミのワシュウとの着差と、勝負所でついていけず、体勢決してから差を詰めたタカライデンのメグミとの差では、意味合いが異なろう。3コーナーで2頭に一気に突き放されたあたり、パワーと潜在能力にやはりまだまだ隔たりがあるのでは。
サチエノグロリーの4着は大健闘、素晴らしいの一言。道中終始先行集団の好位置をキープ。勝負所からは前述3頭に離されたのは致し方のないところ、それ以外の相手を封じたというのは恐れ入る。昨年のプリウスがブービー惨敗であったことを思い出すにつけ、改めてその着順の意義を感じさせられる。それに何といっても「馬は見てくれじゃないってことか」。
ビソウミラクルは生真面目な先行競馬で5着、これは地元勢最先着順で、一応佐賀筆頭の面目は保ったということか。しかしサチエノグロリーに道中同じ位置からの競馬に負けたわけで・・・
トチノグレイスは現状ではこんなとことなのか?佐賀転入初期の、センス溢れると思われた走りを観てみたいのもである。
何だかなあ・・・はアローパッションの7着。道中中団走行は指定席としても、全く勝負の大勢に関わる競馬をしていない。距離二四が長いとも思われず、結局のところ、ズバリ格負けなのか。最後のアラブ王国の代表としては、やはり適任であったとは?ということで、脳裏に浮かぶのはやはりあの馬の名と姿。カミよ・・・
アポロスイセイは沈んで8着。このアウェイの長丁場では思うような大逃げは困難だったということなのか。個人的に期待していたのでちょっと残念。中距離の地元戦での本領発揮の走りを、まずは一度観てみよう。


帰路
ということで、天候に翻弄されつつも、この日の競馬観戦、何とか終了。鳥栖駅までは園田一味の銀箱カルテットはタクシーで。他の御歴々はTienさんCarとさまにべっぴんさんCarに分乗。博多駅に出て18時58分発のレールスターで帰路。サイレンスカーに席を取ったので、大声を立てぬよう気をつけての車中。そして無事帰宅。

そろそろ次年度の重賞日程も出揃い始める。やはりタマラナイ、アラブ古馬の広域交流。全国各地の強豪の競演、その舞台を来年度も、是非!

2001.3.19 記

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