全日本タマツバキ記念 第1回アラブ大賞典観戦報告
2001.5.27、福山、1800m
◆はじめに
このレース、フルネームを"全日本タマツバキ記念アラブ大賞典"という。回次が第1回と表記され、一見新設重賞のようでもあるが、以下の二つの既存の競走を継承したものであろう。
一つは名称中にも示される"タマツバキ記念"。JRAアラブ系競走廃止以後、'96年から'00年まで、西日本各場持ち回りで開催されていた西日本交流('00年は全国交流)重賞であったものが、今年から福山固定の全国交流競走の名称の一部となったということ(今年以降も"タマツバキ"の冠称の部分は持ち回りということはないわいな、念のため)。
そしてこのレースの直接の前身というべきものが、山陽杯。'96年に、兵庫と福山の交流促進の目的で創設された競走で、園田と福山でそれぞれ年に一度ずつ開催されていた。途中"タマツバキ"の冠称が付与されたりで施行条件や時期にかなり移動があったものの、福山でのそれは原則的に6月頃の開催。ところが今年度、福山にとっての相方の兵庫が、折からのアラブ系縮小策の一環として、山陽杯を降りる=廃止することになった。ここで浮いた形になった福山山陽杯が、全国交流競走へと発展的解消して誕生したのが、今回のアラブ大賞典というわけ。施行時期も福山山陽杯のそれに近い5月末、距離もそれを継承した1800m。
この新鮮さに欠ける、ベタなネーミングのため、'96年まで大井にて開催されていた、全日本アラブ大賞典を想起し、その復活か!?という印象と期待を抱くファンもいたようないなかったような・・・しかし上記の背景からも、大井のそれとは切れた別物(レースの格とか意義とかに関しては、それと比肩するものになってほしいとは切望)だということは諒解されるのではなかろうか。
ともあれ晴れて開催となったこの古馬全国交流の一戦。アラブな人々注目の、他地区出走馬発表日が4月30日。「兵庫大賞典5月1日やっちゅうに、その結果出るまで待てんのかいや・・・」と、この時点では面白くなかったのだが、発表の結果は以下の通り。
ライジングトウザイ(岩手)、ペルターブレーブ(上山)、ブラウンダンディ(名古屋)、ホーエチャンピオン(笠松)、メグミダイオー(荒尾)、兵庫=兵庫大賞典の勝ち馬、福山=クラス編成の持ちポイント上位4頭。
「兵庫大賞典の勝ち馬とは、誰が決めたか知らんけどなかなかやるやんけ」というところ。まあ中には「!?」な馬もいて「これ賞金持ってる順番に声掛けたんちゃうか?」などと邪推されたりもして。
兵庫大賞典はワシュウジョージが豪脚一閃、ハッコーディオスの他地区遠征の願いを打ち砕き、四度目の全国古馬交流戦に名乗り。地元福山はパッピーケイオー、ミスターカミサマ、ホマレスターライツのパリパリの重賞ホース3頭に上り馬ヨシユキトップという布陣で迎え撃つことに。
上記選出馬に加え、他地区補欠としてニホンカイマリノ(益田)、ハッコーディオス(兵庫)、マリンレオ(名古屋)、地元補欠でミヤノウイナーが挙げられていたが、結局1頭の回避もなく、当日を迎えることになった。
それにしてもこのメンバー、それぞれの現在の充実度にはばらつきはあるものの、実績と格から見れば凄い面子。試みに出走馬の重賞勝利数を合計したところ、その数49。その中には全国交流や東・西日本交流競走の星も相当数含まれている。
特筆すべきはこの10頭うち、'98年の北日本アラブ優駿の出走馬が5頭もいるということ。すなわちメグミ(そのレース1着)、ホーエ(2着)、ライジング(3着)、ペルター(4着)、パッピー(7着)。その後地元で天下を取ったり移籍先で躍進した馬ばかり。この時の東地区の層の厚さを思わずにはいられない。因みに同年の楠賞馬はタッカースカレー、西日本ADB馬はサンバコール、福山DB馬はアキフジクラウンなのだな、う〜ん。
◆福山へ
ということで、ファンの我々も待ちに待った大舞台。何はともあれ福山へ。「貧乏人は在来一本!」の合い言葉(?)のもと、山陽線で。ここで非っ常ぉ〜に困るのが、今春のダイヤ改正以降(だと思うが)、チボリ号の運行が行楽シーズンに限られ、この日のような通常の土、日曜には出てくれなくなったということ。仕方がないので、7:20西明石発の電車に乗り込み姫路へ。そして姫路7:59始発の三原行き各停に。姫路駅でブリセイくん、2駅目の網干でまりおちゃんと合流。乗車した各停は笠岡で快速サンライナーの通過待ち、これに乗り換え、次の駅が福山。到着時刻は10:20で結局チボリ号のそれと同じ。
数日前の天気予報は当日好天と告げていたのだが日が近づくにつれ雨が残る予報に。住処を出る頃は小降りながらも雨、先が思いやられたが、車窓の外の空模様は幸いにも好転して、福山到着時の天気は薄曇り。
◆メインレースまで
ファンバスに乗車して競馬場へ。500円の指定席を取って入場。ここでひと仕事。ハナキーくんがまた例によって『アラビアンA』を事務局宛に送ったので、それを受け取らねばならぬという。案内所でその旨伝えて無事宅配の荷物を受け取る。荷物の中身は『アラビアンA』ともう一つ、ハナキーくんのホマスタ幕。こいつを出すというのも使命なわけ。まりおちゃんが太幕を持ってきているので、一緒に張る。福山ではパドックに横断幕を出せないので、パドックに面した2階指定席の窓から吊り下げることになる。
入場時に、新幹線でひとあし早く来福したリーダー合流。案内所でやり取りしている時に声を掛けてきた御仁はこれが宇田山さん。朝一番の飛行機で広島入りとのこと。その宇田山さんを空港からクルマに乗せてきたふささんともここで。
幕出しが済んで、競馬もともかく何はともあれラーメンを食う。そしてスタンドへ。新幹線を使った園田の大西さんが既に座っている。そして全国どこにでも出没するFrom九州さまにべっぴんさん。元関西人現在は広島県民で福山常連の写真系TYO.STDさんも。
やがてもりも先生、電設の男@ともろうさん、ディープさんがトリオで現れる。電設師はわけアリで大量購入したメンズポッキーと地元銘菓"観音寺"をみんなに振る舞って下さる。3号馬さんもサスガに今日は来福。WSさんとは名古屋杯以来。環さん、開口一番「福山駅で太さん見た!」。新居に引っ越し中の地元おさるさん、大御所Okuさん、"東海の好漢"おーたさん、上山系くもぎりまるさん、"岩手原理主義"メイ後さん。関万さんは2便目の飛行機で広島空港より。善福寺さんもヌッとお出まし。観戦表明するも雨との天気予報でドタキャン宣言、しかしまりおちゃんが車中で打った携帯メールで天気を確認してやっとの事で腰を上げた、『園田・姫路競馬情報』の日浦ちゃんも間に合った。そして栃さん。「クレストルーム(クラス上の特観席です)から4コーナー見下ろしたけど、ここコーナーホントきついわ。外振られたらお終いだな。」と、この弁当箱コースを再認識された様子。
と、そうそうたるメンバーが集結。福山のゴール板前のスタンド席を陣取る。福山のスタンドはとにかく狭いので、たかだか20人程度の集団でも固まると凄い光景になる。これが他場であればそれほどのことでもないのであろうが。「ベンチ2列も占拠しとるで。近づきたくない集団やな」とOku師匠。
馬場状態は良。前日降雨があったはずだがそれほど影響をもたらさなかった模様。ここ数週かなり軽い馬場状態が続いていたようだが、今日は特段軽いとも思われない、時計もそれなりに掛かる並の馬場であるような気がする。
天気はどんどん好転して、完全に晴れに。レースの写真撮影では、またまた逆光に泣かされそう。
この日は11レース施行で1レース発走が11時と早く、また幕出しや何やで時間を費やしたため、結局パドック周回からレースを観戦できたのは3レースより。ワシ、福山では1レースから馬券を買い始められなかった日は全レース馬券をやらないので、この日はメインまでだらけモード。のっけから酎ハイ入って、昼時には焼きソバとともにもう一杯酎ハイを自主飲酒で、どーでもいい気分になってくる。
その間皆さんはメインレースの予想談義なども。「他地区馬だったらワシュウジョージが順当だろう」という声が大きい。そのココロは「この福山の小回りのコース、初体験じゃなかなか乗れないぞ。何回も来て乗ってる太が断然有利。」という内容。「だから中央騎手招待のとき、あっちの騎手が大概外に振られるわけでさ。」とおさるさん。全国交流の舞台となって、その形態の癖が改めて脚光を浴びたというところ。
スタンドに何と、メグミダイオーの馬主さん通称メグミのパパさんが現れる。荒尾セイユウ賞ではファンに口取り撮影の綱を持たせてくれた素晴らしい馬主さんなのだ。今日も気さくにファンと会話をされている。渋馬場得意の愛馬を気遣って「いや〜前の晩、『雨降れ雨降れ』って雨乞いしてたんですけど(ニコッ)結局良馬場になっちゃいましたね〜」といった旨のことを仰っていた。
※タマツバキ記念についてはここからです
ということで、いよいよメインレースの全日本タマツバキ記念アラブ大賞典。出走馬を内枠より列挙すると以下のようになる。()内は所属地区、騎手、斤量。
ペルターブレーブ(上山、冨樫、54k)、ホーエチャンピオン(笠松、安藤光、54k)、ミスターカミサマ(福山 、渡辺、55k)、パッピーケイオー(福山、藤本、54k)、ブラウンダンディ(愛知、安部、55k)、ホマレスターライツ(福山、片桐、55k)、ライジングトウザイ(岩手、晴山、54k)、ワシュウジョージ(兵庫、小牧太、55k)、ヨシユキトップ(福山、吉延、55k)、メグミダイオー(荒尾、吉井、54k)
ハンデは恐らく年齢別定、4、5歳牡馬は55kで6歳以上は54kかと。
馬体重が発表される。他地区馬については前走比が出ないので、予想紙の馬柱を見て自分で確認。ワシュウジョージが442kで-9k、イヤ〜な予感。
◆パドック、そして発走まで
そしてパドックに出走馬が姿を現す。ここでFUKUさんがやって来て、一緒にパドック確認。
1番がペルターブレーブ。青のパドックメンコ着用。辺りを睥睨気味にノッシノッシと登場。492kで-8kだがその馬体重減での不安は感じさせない。次第に気合いが入ってきて時折鶴首気味にもなる。いつもながらホント大きく見せるし胸前のボリュームは圧巻。荒尾セイユウ賞時は環ちゃんが「浅くない?」と気にしたトモの踏み込みも深くて力強い。その環ちゃんも「全然違う」と今日の気配を絶賛。ズバリ「凄い!」の一言。FUKUさんも初見ながらも惹かれたようで。
2番ホーエチャンピオン。時折鶴首になるものの、意外に大人しいという印象。それに思い描いていたより大きく見えない。というのも前回目撃した昨年の佐賀セイユウ賞時には、もっと気合いが出ていて、ムチャムチャ大きく見えた記憶があるので。とはいえ後日撮影した写真に写った姿には、異様に太い首差しと胸前は確認されたが。
3番がミスターカミサマ。今日は相当大人しいと言おうか元気がないと言おうか。馬体は仕上がっているようで栗毛の毛艶も良好だが、トモの送りがこの馬にしても浅く、どうも・・・元来がパドック気配とレースの走りとの関連性が個人的には掴みにくい馬ではあるのだが、あまりに覇気がない。
4番パッピーケイオー。馬体重500kは+7k、出走馬中最もプラス馬体重だが、これは絞った前々走と前走からこの馬の平均値に戻したわけで問題なし。馬体のフォルムからも、前2走の絞ったそれからガチッと戻した様子がわかる。太め感など皆無で馬体の張りも良い。周回気配は最近の彼らしく、以前よりはチャカつく頻度が減っている。しかし周回後半になるとお客さんの正面を通過時にドドッと走り出そうとするという、お約束の仕草が見られた。因みに頭絡がメンコの下、ローゼンと同様レースは素顔で走るのか。
5番ブラウンダンディ。休養明けぶっつけ、急仕上げの筈だが一応の仕上がりは感じられる。但し休養入り前の頃の、辺りを見下すような威圧感は感じられない。まあこれは観る側に「今回苦戦か」の先入観があるので。余談だが、この日の予想紙によると、荒尾セイユウ賞のレース時にこの馬、落鉄して蹄を負傷したとのこと。これが敗戦、休養の原因の一つだったという。
6番ホマレスターライツ。馬体重467kは移籍以来最高馬体重。それもあるからか、胴体は若干この馬にしては太めに見える。が、毛艶は最高で好仕上げだとは思う。後でFUKUさんは「ホマスタ今日が転入以来一番良く見えた。」と仰っていた。因みに今日は黒地に黄文字の「Nagase」メンコである。
7番ライジングトウザイ。初めて目撃する。体格自体が大きいのはよく判る。が、胴が緩く、ヒ腹とトモが全体の馬格の割には弱いなあという印象。「全盛時だったらなあ」という想いが。
8番がワシュウジョージ。馬体重発表時の悪い予感、的中。登場した姿はそれを上回るヤバさ。ヒ腹は完全に上がってしまってケツのボリュームも落ちている。こうなるとトモの送りもギッタンバッタンしつつ流れ気味で非常に見苦しい。そして何より、体表には汗ダーダー、ちょっと汗のかき方が尋常ではない。焦れ込みもいつも以上にキツい。
9番ヨシユキトップ。"福山第四の男"といったところ。元来大柄な馬格で見栄えも良いタイプだが、恐らく調子が良いのだろう、この中に混じっても見た目なら見劣りしない。ジンワリとした気合い乗りを見せている。
10番がメグミダイオー。馬体は仕上がっていよう。ちょっとトモの送りが浅いかな。ただ、これは個人的印象として根拠も特にないのだが、馬体がこれまで目撃してきた時ほど大きくは見えない。この日は黒のシースルーのパドックメンコを着用。この黒メンコがどうも全体の印象を変えているような・・・正直あまり似合っていない。
「とま〜れ〜」の号令がかかる。ここでペルター、立ち止まって騎乗を待つ僅かの間、2回グォ〜と立ち上がり、ちょっと狂気をちらつかせる。パッピーはサブちゃんを乗せると、俄然気合いが乗ってくる。ここでワシ、パドックを去り際、目の前を通ったペルター鞍上の冨樫騎手に「冨樫っ!」と掛け声一つ。
そして各馬本馬場に登場。まずは1枠のペルターが。パドックメンコは脱いでこの時点で素顔。例によって外ラチ沿いを厩務員さんに曳かれて。ワシュウジョージは入場の隊列を外れてとっとと登場、ゴール50m前あたりまで一直線に進んでここから真っ先にキャンター、三角の待機所に直行。パッピーは例によってダクに下ろす際に、ゴール板前でニョエ〜っと伸びをかます。
ペルターは真っ先になかなか強めのキャンターで通過。ホマスタはグッと鶴首になってダクとキャンターの中間のような走り。前脚の振り上げ方が印象的。パッピーは時間をかけて1周じっくりとダクを、そしてもう1周キャンター、最後の最後にスタンド前を再度通過。
予想タイム。軸はペルター、これは戦前から決めていたこと。今日のこれまでの好気配からその意をより強くする。ポイントは最内枠の発走から勝負所で抜けてこれるか?ということ。恐らくどこかで外に持ち出すのが狙いだろうが、それさえ叶えばあとは豪脚を信じるだけ。相手はワシュウが筆頭と思っていたところ、この酷い出来ということで、買い目を大幅に減らす。しかしそれでも切らずに買うところがワシの思い切りの悪いところ。気持ちは「2着にでも来られたらイヤやん。」なのだが。このワシュウに関しては、ここまでワシュウ有利を唱えた現場の大多数の方が、それこそ雪崩を打ってワシュウ飛ばしに買い目変更していた。ということで代わって重くみたのがパッピー。予想紙も出来最高と伝え、現に気配も文句なく、何よりワシ、この馬の実力は大きく買っているので。メグミは戦前の見立てから若干評価を下げて押さえ程度。とにかく頼みはペルター様、よしんば不発でも悔いはないと、腹を決めての勝負。
「ペルター、ムッチャええじゃないですか!」と声を掛けてきたのは戦前ペルター低評価だったディープさん。山形からの輸送と、(上山の)開幕以来まだ2戦目で、叩き良化型のこの馬にとっては苦戦と見たそうで。しかし変節してペルターを買うとのこと。(筆者とディープさんの枠順確定前の時点での予想はこちらに載っています。)栃さんは一応ホマスタ中心でペルター、メグミ、ホーエら東の馬を重視して買うようで。各御歴々の見立てを拝聴するに、意外とホーエチャンピオンが重く見られているのが驚き。予想紙でもそれなりにシルシが及んでいる。「ワシはここはホーエチャンピオン怖いと思うで。とにかく北日本アラブ(優駿)とかセイユウ賞とか凄かってんで。まだまだやれると思うよ。」というOku師匠のコメントが、ホーエを推す方々の言い分をよく表していると思う。ワシが「ここはペルターで勝負!」と師に言うと、師曰く「このレースでペルターが勝つような展開なんて絶対混戦のゴール前強襲やんか、(勝ち馬の)写真撮れやんで非常に困るで。前('99年奥の細道大賞典など)は奇跡的に撮れとったけど。」。
◆決戦〜記憶に焼き付けろ!
いよいよ決戦の時を迎える。距離千八のスタート地点は二角、ここから1周と3/4。この時薄雲が太陽を遮りちょっと曇る。「そのまま〜!」と、環ちゃんやリーダーと叫ぶも、1分もしないうちに雲が流れ去ってまた逆光の日射しが。
ゲートオープン。最内でペルターブレーブがやや立ち後れ、半馬身ほど遅れを取るが、構わずゆったり追走していく。真ん中から猛ダッシュを見せたのはパッピーケイオー、鞍上藤本サブちゃんの手綱が動いて敢然とハナを取りに行く。連れて外からヨシユキトップも前へ、パッピーの直後外にピッタリ張り付いていって2番手ゲット。ブラウンダンディなども前へ。メグミダイオーはそれほど積極的な動きは見せずヨシユキの外の先団3、4番手あたりに落ち着く。
1周目の正面スタンド前、先頭で回ってきたのはパッピー、特に掛かる素振りもズブい様子もなく、楽な手綱気配でフロントキープ。1馬身弱後方外にヨシユキ、その外1馬身後方がメグミでこれが3番手。この1馬身弱後ろの次列、内ホーエチャンピオン、中ブラウンダンディ外ホマレスターライツ。ホマスタの外目やや後ろにワシュウジョージが、そしてこのあたりの最内にペルターブレーブ、その外ミスターカミサマで、殿はライジングトウザイ。前後の間隔が相当詰まって、ほぼ一団の様相。
1周目正面スタンド前
2番手ヨシユキ3番手外メグミインホーエ、中団インにペルターが見える
レースは2周目向こう流し、一瞬ホマスタが動いたような気がしたがこれは勘違いか。そして三角手前。ここでズブくなるケースの多いパッピーなのだが、この日の走りは非常にスムーズに見える。相変わらず先頭キープで隊列を引っ張りながら3コーナーを回っていく。「ワシュウ動いた!」のお客さんの声の通り、3コーナー手前でワシュウが発進、しかし抜群の行きっぷりではなく上昇に手間取っている様子。メグミに全く行き脚がなくこの時点で後退して勝負の圏外に。ペルターは三角を前に冨樫の手綱が動く。置かれ加減に見えなくもないが、荒尾セイユウ賞時もこんな感じでその後伸びてきたので、これは豪脚点火への暖気状態と思いこんで動向を見つめる。
三分三厘、パッピー先頭2番手外にヨシユキ、インからホーエが押し上げて、外からワシュウ。一見ゴチャゴチャした馬群、ここで芦毛馬が外目外目を大きく回って、ノッシノッシと上昇してくる。三角過ぎで馬群の外に出られたのだ。そして4コーナー、「ペルター来た!」との環ちゃんとリーダーの声、遂にペルター、前列やや後方大外に出現。
最後の直線、先頭はパッピー馬場二分どころ、2番手その外ヨシユキ、そしてパッピーと内ラチの狭い間にホーエチャンピオン。写真で見るとパッピーとホーエの馬体はバチバチぶつかっている。ワシュウがこれら前3頭を追うが脚いろは鈍い。四角まで好位追走していたブラウンもホマスタも完全に遅れ、カミのエンジンには結局火は点かなかった模様。そして馬場六分どころ、来た来たペルター!こうなるとワシ、カメラ構えながらも「冨樫ぃ!死ぬ気で持ってこい!」の掛け声。
残り100mあたり
外からペルター、先頭パッピーと最内ホーエとは馬体がぶつかっている
ここからのペルターが圧巻。馬体がグンと沈んで、一完歩毎に首と馬体がグイと伸びる追い込みモード全開で、馬場を真一文字に突っ込んでくる。残り50mで完全に前3頭に追いついて、一気に交わし去り、残り30mあたりでは完全に抜け出している。最後は後続に1馬身の差をつけて、日本一のゴール。
実はワシ、残り50で内のパッピーらの粘りが気になり、一度パッピーにカメラを振ってしまったのだ。そして再度大外のペルターに向けたのがゴール前20mあたり。その刹那、目の前を灰色の固まりがまさに唸りをあげて通り過ぎていく。カメラのピントは間に合わず、写真は失敗の予感。しかしペルターの豪脚の衝撃は、ココロと記憶にしっかり焼き付いたので、まあ・・・
ゴール50m前、外からペルター、粘るパッピー、食い下がるヨシユキ
しかしこの時点でペルターはもう抜け出していたらしい
さて、2着争いは熾烈。併せ馬になるととにかく強いパッピー、最後の直線ずっと続いたホーエとヨシユキに挟まれた叩き合いを最後まで譲らず、ペルターにはやられたものの2着死守。3着は終始インベタのホーエチャンピオンがクビ差で続き、大健闘のヨシユキトップがホーエに僅かアタマ差及ばず4着。と、この2、3、4着争いもド迫力。
5着は差せずのワシュウがヨシユキから1馬身半差で入線するも、この4、5着の差は大きい。6着終いだけ追い込んだらしいミスターカミサマ、7着好位から不発のホマスタ、8着これも先団好位キープも力尽きたブラウン。9着惨敗が全く意外のメグミ。最下位はライジングトウザイ、1着から実に9秒4遅れての入線。
実はワシ、ペルターブレーブって現役競走馬のなかで現在一番好きな馬でございまして。加えて予想も的中して、「ペルターが勝った」という事実に直面して、興奮状態に陥ったです。「ペルタースゴイ〜!!」と、まりおちゃんやリーダーや環ちゃん、ブリちゃんらと気が昂揚しつつ言い合っていると、ディープさんとFUKUさんがやって来て、何故か(って実際理由は明確)三者でガッチリ握手。それにしても会心の気分。
勝者の冨樫騎手、ウィニングランすればいいのに、彼にそんな気の利いたことを求めるのが無理なのか、すんなり下馬所に引き揚げてくる。下馬所に向かってファンから「冨樫ぃ〜!(嫁さん貰え〜)」の掛け声が連呼される。一番向こうにペルターを乗りつけた冨樫jk、ファンのその声が聞こえたのか、「おー!」とばかりに拳を突き上げる(ジャンボ鶴田張り)。この時はワシも、年甲斐もなく叫ばせていただききましたです。それにしてもこの時の光景、冨樫騎手への掛け声、JRAのGIで起こるコールような、お約束的で生っちょろいもんじゃなくって、ホントに自然発生して結構感動したのですが、どうなんでしょう?
払い戻し金額、馬複7950円、枠単27,130円。この2頭の実力からして到底不似合いな高額配当であるが、これが全国交流競走の面白いところ。見込んだ馬どうしの組み合わせ、狙って獲れて、「ゴッチャンでっす。」。しかしわかっている人はわかっているもので、このレース、獲っている人、ワシの周辺には相当数。
ペルター様、いざ口取りへ
「勝ったぞ〜!」
表彰式が行われ、その後に、遂に念願の"冨樫のサインゲッチュータイム"到来。電設師は例によって単勝馬券に、まりおちゃんとワシはプリント写真にサインしていただく。「面と向かってサインなんか書いたことない」などとブツブツ言いながら、書いて下さる冨樫騎手。しかしびっくりそのサイン、単に漢字で「富樫」(←自分の苗字の漢字も正確に書けんのか?)。「何よそれ、ただの署名じゃない」と栃さんはじめ、一同これにはコけた。しかし素晴らしかったのは、この後サインを書いて引き揚げ際に冨樫騎手が「本日はご声援有り難うございました!これからも応援よろしくお願いします!」と、お客さんに御礼を言って去っていたという場面。冨樫、ちょっとカッコよかったぞ。
◆ここで総括など
勝者ペルター、内枠発走をどうこなすかが問題だったろうが、三角でワシュウら直前外目の馬が先に動いて前がばらけたところを、外に持ち出せたようだ。それにしてもこの豪脚の迫力といったら。鋭いというよりは力づくでねじ伏せるという感じで。追い込みモードに入った時の顔の写真を見ると、いつもハミをグッと噛んでいる。そして必ず進路を真一文字に駆けてきて、絶対ヨれたりしない。いつ福山に入厩したかがイマイチ不明で、前々から来ていたという説も流れたのだが、実は前週の水曜日に上山で追い切って、次の日に持って来たらしい。つまりは遥々山形から直前輸送。そうした地理的ビハインドをも克服しての戴冠。恐らく上山在籍馬が日本一になるのは、アラ・サラ含めて初めてのことでは。とにかくおめでとう、この勝利はホンマ素晴らしい!
2着パッピー。戦前「逃げさせられそうだがハナを切ったらまずかろう」と見込んでいたのだが、サブちゃんが積極的にハナを奪いに行って、道中スムーズに運んでの2着。ペルターの追い込みさえなければ完勝だったレース。FUKUさんは「好調な時に気分良くハナに立って行けたのが却って良かったんじゃないか。」と仰っていたがまさにそういうこと。とにかく道中の折り合いの良さとズブさを見せなかったことが印象的。最高の出来だったのだろう。終いはホーエ、ヨシユキとの叩き合い。ああいう形になったらいつもながらホンマに強いな。それに今回思ったのは、素顔のパッピーは確実に勝負がかりだなっていうこと。
ホーエチャンピオンは、この馬を支持した方々の見立てがほぼ正しかったことを証明する3着。個人的には正直ここまで走るとは思わなかった。2枠発走から鞍上安光が終始インで進め、最後もインベタでパッピーと叩き合い。道中一度も外に出る場面がなく、この巨漢馬にとってはちょっと窮屈なレースだったかもしれない。それにしてもやっぱり走った。う〜ん、(前)道営の怪物、いまだ侮り難し。
ヨシユキトップは実に惜しい4着。どうも裏話では陣営は勝算満々だったとか。終始パッピーの2番手死守で押し切り寸前までいったのだから大したもの。おさるさんが「最後は百戦錬磨の安光と重賞未勝利の吉延との差」と漏らしていたが、この差は大きいか。これが3着の複勝を、獲れた東海のおーたさん、獲れなかった地元福山のおさるさんの差となって結実したわけ。
ワシュウジョージは気配そのままに敗戦。またもや遠征競馬失敗。昨年秋から続いている、1戦毎に勝ち負けを繰り返すローテーション通りになった。しかしなあ、理想的な仕上がり、体調で持って来てこれじゃあ、何だかなあ。最も、あの登場気配で連入でもされたらそれこそバケモノなわけで、さすがにそこまでは至らず、今日は順当に完敗。
ミスターカミサマは6着。距離千八はこの馬にとっては短いのでは?という不安も戦前あったが、それにも増して道中動けていない。振り返ると、昨年明け4歳(旧表記)年明けから6月銀杯にかけて、下級条件から重賞まで一気に駆け上がり、それ以後夏も不休で、秋は4歳戦線から正月大賞典、荒尾、ローゼン、桜花賞と、大一番を戦いつつも、この間長い休みを取っていないわけで、ちょっと出来落ちの時期になってきたかも。
ホマレスターライツも、もう少し見せ場を作れるかと思いきや、最後の直線を迎えずして勝負の圏外に去るという。道中ただ何となく走っているような印象が今回は特に強かった。出来は良かった筈であり、であるとするとこれはもう能力の限界であるのか?このまま終わってくれるなよ。
ブラウンダンディは道中意外といい位置にいたが終いはやはり位置を落としてこの着順。立て直しての次のチャンスが楽しみ。
メグミダイオーの今回の走りと着順は全く意外。佐賀大賞典以降軽い挫石というアクシデントがあったものの、自主能検でサラに先着して、立て直しての参戦ということでそれほど臨戦過程を不安視する声が挙がらなかったのだが、結果はこの着順。発馬から道中、ハナは切らぬにしても、二位付けの番手を取りに行く積極性は欠いていた印象。それにしても三角手前で圏外に去るというのは予想外。
ライジングトウザイは致し方ないか。ブリちゃんが遠征記で「コーナーを回る度にどんどん置かれる」と表現したが、まさにそんな感じ。
レース後ナルホドと思って耳を傾けたのが栃さんの以下の総評。
「ペルター勝って、ワシュウもメグミも惨敗して、これで特定の馬が抜けているという状況にリセットがかかった感じだよね。そういうわけで次回の金沢(セイユウ記念)は、改めて各馬横一線の力関係の中行われるわけで、非常に楽しみになったよ。そうそう今日(金沢のOP戦で)イセイチ勝ったみたいだし。」
ということで、少ないアラブ古馬全国交流の舞台であるが、一戦毎に勢力関係は着実に変化している。そして約一ヶ月後には、再戦の機会、セイユウ記念がやって来る。
◆おわりに
表彰式後、横断幕を撤収して最終レースはやらず。これにて本日の競馬は終了。この後はおさるさんと電設師主催の福山駅前大オフ会。昨年のAGPの時もお世話になった、新幹線高架下の中華料理屋ヌーベルチャイナを貸し切って。飛び入りゲストもあっての、大盛り上がりのオフ会。両幹事様、いつも有り難うございます。
帰りの電車の都合で8時前に辞去。リーダー、まりおちゃん、ブリちゃんの4人で、岡山までは在来で。岡山−姫路間は、ウィークエンド回数券で新幹線利用。姫路でリーダー、まりおちゃんとはお別れ、ここから東は新快速でブリちゃんと。ということで無事帰還。アラブな人間の、長く熱い一日の終わり。
翌日撮影した写真が出来上がってくる。案の定ゴール前のペルターブレーブの写真は大失敗。ということでふと思う。
「人生たまにはいいこともある。しかし全てがうまくいくとは限らない――」
2001.6.9 記
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