第21回銀蹄賞観戦報告 〜 三条競馬場初訪問記

 2001.6.3、三条、1700m

はじめに〜三条競馬、新潟県競馬、そしてかの地のアラブ事情の私的概括
興行的に相当ヤバいと言われている新潟県競馬。新潟と三条の二場を開催場として持つが、JRAと共同使用の新潟に比して、三条はよりローカル色が強いかと。昨年1年間は、JRAが新潟競馬場の改装に着手し、その間開催しないことを承けて、つまりJRA開催時に県競馬が新潟を明け渡す必要がないことから、県競馬は全て新潟にて開催。前述の通りの興業不振、開催日削減と相まって「これこのまま二度と三条で競馬やらないんとちゃうか?」という危惧がファンの間にあったのは事実。どうなることかと動向を見守っていたところ、発表された今年度の日程、三条開催あり。
今年度新潟の開催日程で気になったのはアラブ系重賞競走の存続。2歳馬の入厩は一昨年で終了し、一般戦ではサラとの混合が始まっており、アラブ縮小、廃止が着実に進んでいる。現在でもそれなりに名の知れた馬を擁するだけに「今年重賞あるん?」と心配していたのだが、辛うじて二つ残った模様。そのいずれも三条開催。
とうわけで、この、いつまで競馬が存続するかわからぬ、なおかつ未踏の地のアラブ系重賞に、足を運ぶチャンスが生まれた次第。こうなると、先々の境遇や命もわからぬ我が身、「行けるものには行けるうちに」の発想から、今回6月3日の銀蹄賞観戦、スケジュールの中に組み入れることになった。

往路は夜行列車の旅
その交通手段、往復ともに飛行機を利用すれば楽ちんなのだが、航空券は特割で購入しても高価なので、旅費節約と時間の有効利用のため、往路は夜行急行きたぐににて。夜の10時前に家を出て、11時前に大阪に。乗り込む列車は23:26始発なのだが11時過ぎにはホームに入線してくるので、速攻乗車ということに。夜行急行とはいうものの、出費を抑えるため寝台車になど乗らず、普通の自由席に。事前には「きたぐにの自由席は空き空き」と入れ知恵されていたのだが、この日はかなりの乗車率で、対面クロスシートのボックスを一人で占拠することなどとても出来ぬ状況。
当初は梅田で一杯などと考えていたのだがその暇もなく、またキオスクが既に閉まっており、アルコールを買い込むことも叶わず、ノンアルコールでの長い車中泊となる。やがて、前週の福山タマツバキで儲けて旅費が捻出できた、電設の男@ともろうさんが乗車してくる。当日は夕方まで仕事でそれから香川を発ってここまで辿り着いたということ。お若いからか、彼は実にタフ。関西在住のワシからすればまだまだ旅の始まりだが、師にとってはここまで既に相当の距離を経てきているわけだ。
定刻に列車は発車。途中京都駅で、やはりタマツバキにて旅費を捻出したディープさんが乗り込んでくる。これで今回の旅の面子が揃った。
1時過ぎまで3人で喋った後、お二人は別の車両に移られてお休みタイムに(後で聞いたところ、お二人は3時過ぎ、金沢着のあたりまで会話していたとのこと)。しかしながらシートがリクライニングしないので(この車両、組み立てると寝台になる仕組みになっていてその構造上こうなっているのだ)寝心地は非常に悪く、なかなか眠りに落ちない。金沢での下車客が異様に多い。このあたりでほんの僅かの間うとうととしたのだが、4時頃になると早くも車窓の景色が明るくなってきて、「何だよもう朝じゃん」といった具合で、眠気が完全に挫かれる。
途中朝飯を食おうと、長岡に途中下車。20分ばかり駅前をうろつくものの、ミスドが二件あるだけでまともな店が全くなく、無駄足に終わる。改めて各停に乗車し、東三条をめざす。東三条で弥彦線に乗り換え。停車していた弥彦線の車両がローカル線には不似合いなほど長い。8両くらい繋いでいたのでは?そして弥彦線で2駅目、燕三条駅に到着、時刻は8時47分。
降り立った三条の地の天気は晴れ。梅雨入り目前の時期にしては上出来。比較的カラッとした空気で心地良いが、暑い一日を予感させる。ここから競馬場へは徒歩で。途中幹線道路沿いのマクドで朝食。暫く時間を潰す。そして10時過ぎに競馬場の前に。

初体験、三条競馬場
競馬場前のさして広くない道路にはファンバスが乗り付け、続々とお客さんが来場して盛況のように見える。が、「あの客の大半は安田記念買うだけの客ですよ。これだけの人間は県競馬買ってくれたら経営もだいぶましなんでしょうが。」とディープさん。三条にはJRAの場外が併設されているのだ。地方競馬場にJRAの売場を設けることが、地方競馬の活性化には必ずしも直結しないという現実の典型が、まさにここ三条であり、のっけからそれを痛感させられた次第。
「これが入場門か?」と疑いたくなるような存在感の希薄なそれを通って入場すると、目前が走路。「しかしここはコースのどの辺りやねん?」と一瞬認識できない。見回すと、右斜めすぐ前方にゴール板が、そして右手のかなり向こうにスタンドが。しかしどうもそれぞれのレイアウト、位置関係が歪んでいるというか何というか、非常に妙な感覚。この三条競馬場、スタンドがコースに対し平行に位置しておらず、1コーナー寄りの方が4コーナー寄りに比べコースから離れる角度で建っている。加えて先の入場門が、コースに正対していない。だからこのような感覚に襲われるのだな。
場内でまずは予想紙を買う。昨年までは二紙あったのだが、一方がなくなって現在は一紙のみ。『スポーツと競馬』なる、赤地白抜きロゴの新聞。「新潟スポーツ」(発行所の名前)の呼称の方が通りがいいらしい。

この日の三条、御歴々が大集結。関万さんと宇田山さんは朝一番に乗り込んで開門ダッシュで特観席無料入場サービスをGetとか。大御所Oku師匠にメイ後さん。WSさん、そして九州さまにべっぴんさん、現在"臨時東京人"のもりも先生、くもぎりまるさん。江戸平多さんに昨年の東北アラチャン以来お久しぶりのきくたけさん。その大半が前週の福山タマツバキにお越しになって、懐の暖まった方々。

馬場状態は良でかなりバサバサ。しかし猛烈に深そうという感じでもない。コースの幅員がムチャムチャ狭く、加えて馬場の外ラチがお客さん側に直接面している(間に溝や通路などがない)ので、馬場とスタンドとの間に公道のある益田よりも狭い感じがする。
三条コースといえば「前の止まらぬ逃げ馬天国」が通説のようだが、この日のレースを見た限りでは、三角3、4番手から終い差し込んで連入というケースも見られ、イメージするほどどうしようもなく逃げ馬有利というわけでもないような感想。「今日は外目が伸びる馬場か。」とはOku師匠の弁。
かつては"内馬場に畑の広がる競馬場"として名を馳せたというその内馬場だが、今では耕作されることもなくなったようで、最後まで畑だった一角がその名残を残すのみで、それ以外の敷地には雑草が生い茂っている。

この日のレースのうち、アラブ系競走は1レースとお目当ての銀蹄賞の二つのみ。また、銀蹄賞は12レース施行のうちの第10レースで、準メイン相当。メインをサラのOP特別に譲っている。
というわけで、1レースが終わるとどーでもいい時間が長く続くので、飲食モードに突入。酎ハイ飲んで唐揚げ食って豚汁食って、屋台で出店している"もち豚"の串焼き食って、もう一杯酎ハイ。豚汁は名物らしいが、ワシがこの時食ったそれは、豚汁というよりは具だくさんの味噌汁に豚肉も入っていますぅといった代物で、個人的には悪くはないなと。豚串はというと、名物と謳うだけのことはあり肉は柔らかく味も良好でジューシー、しかし焼きが若干甘いのが惜しい。500円は高いな、300円が妥当。以上のようにひたすら飲んで食い続けたのが目立ったらしく、「何やまだ食うんかいや」とOku師匠、「また飲んでるよあのあのヒゲのおっさん」と皆さんからも言われる始末。駄目押しは1時に先着330名(だったっけ)に無料配布されたコロッケ。皆さんと列の先頭に並んでGet。これも旨かった。ひとしきり飲食した後は、休憩所のような小屋のベンチに避難して昼寝。前夜車中であまり取れなかった睡眠の分、ここで休む。この間皆さんは来賓席に上がってコーヒーを飲まれていたそうで。

※銀蹄賞についてはここからです。
ようやくお目当ての銀蹄賞の時間が近づいてきた。出走馬は内枠より以下の通り。()は姓・齢。
エルシドテキサス(牡7)、ラブリーハート(牝5)、ストロングゲイル(牡5)、ハネダエンペラー(牡6)、ストロングシャウト(牡4)、ボス(牡5)、スノーミューズ(牝5)、ラブリーマーク(牡10)、ローレルタイタン(牡8)、テクノトライバル(牡4)
昨秋4歳(旧表記)にして新潟平成カップを勝ちこの地のトップに立ったものの、その後休養入りで音沙汰無しのトゥルーマスターを除けば、有力どころが概ね出揃った好メンバーであるらしい。ワシはこのうちラブリーハートとスノーミューズを東北アラチャンで目撃しただけで、その他の馬については今回全てお初。

パドックからレース発走まで
前レースの発走直前からパドック周回を開始するのがここの流儀らしい。パドックとスタンドとがやたら離れていて、この間に屋根などない。「真夏なんかちょっと往復したらバテバテになってパドック見ようなんて気たちまちなくなりますよ。」とディープさん。
ともあれ銀蹄賞出走馬がパドックに姿を現す。どうもチャカチャカとした馬が多い。
1番エルシドテキサス。煩い馬が多い中、これが一番大人しい。というよりモッサリしている。今季好調で上昇ムードらしい。
2番がラブリーハート。若干ヒ腹が上がった感じだが元来の体型かも。良い意味で活気がありキビキビと周回。トモの踏み込みも良好。ただ何となく鹿毛の毛色が薄いような。実績馬だが昨夏をピークにやや勢い落ちの昨今、ここでどうか。差し馬でありながら三条は得意らしい。「ラブリーハート、期待してなかったけど思ったより全然良いから買ってしまった。」とディープさん。ワシにとっては、昨年の東北アラチャンで目撃してかなり好感を抱いた馬であり、それ以降気になっている馬。今回も"Lovelyラブリーハート"と、密かに独り勝手に盛り上がっている(アホ)。
3番がストロングゲイル。これが現在新潟の実質的トップとのこと。「取り敢えず見て下さいよ。結構いい馬ですよ。パドックでいつも泡吹いて暴れてますけど。」とディープさんに事前に聞かされていた。父ホマレブルショワで黒鹿毛、気性激しいとはいかにもという感じ。確かに相当煩いパドック気配。終始鶴首になって闘志を前面に出している。馬体は想像したより実が詰まった感じでスリムではない。
4番ハネダエンペラー。パドックでの印象はまあまあとしか。昨年末大晦日の重賞銀嶺賞の勝ち馬だが、それで天下を取ったわけではないらしい。
5番ストロングシャウト。ストロングゲイルの年子の半弟。父がナイスフレンドに変わっている。兄と同じ黒鹿毛で同じ紫ラメのメンコ、それもあってか、半兄弟ながらもそっくり。この弟、兄にも増してパドックが煩い。
6番ボスはキン○マが周回中ずっと下がっていてよろしくはない。
7番スノーミューズは重心の低い姿。艶、張りはまあまあか。
8番ラブリーマークは当年10歳、かつての有力馬。まあ歳なりにか。トモの送りはゴトゴトした感じに見える。
9番ローレルタイタンはB級格付けながらも近走好調でここに挑戦。これがまたずっと煩く、暴れてパドック内側の植え込みまで蹴散らす。ちょっとトモが流れる歩様。
10番テクノトライバル、有り体に言えばフツーの鹿毛馬だな。まあまあ。
ストロングゲイル、パドック(47KB)
ストロングゲイル、パドック
後ろの紫メンコの馬が半弟ストロングシャウト
ラブリーハート(34KB)
"Lovely"ラブリーハート
期待したのだが・・・牝馬(オンナ)は難しい
本馬場入場。パドックは1コーナー手前のコースに面しているので、外ラチを横切るだけで走路。誘導馬は第1回平安ステークス2着のあのオーディン(らしい)。しかしこの地の本馬場入場、せっかく誘導馬がいるにも拘わらず、整列など全くせずコース一杯に広がって一団で登場というのが流儀らしい。ラブリーハートは真っ先に返し馬でやって来る。小気味よいキャンター。ハネダエンペラーやボスは強め。ストロングゲイルもなかなかのキャンター。ストロングシャウトは入場時も頸を上げてロデオのよう。返し馬でもそのまま、何とも酷い気性。

予想。アタマはストロングゲイルで全く問題ないかなと。相手筆頭はラブリーハートで。有力と見られたローレルタイタンはパドックでの暴れぶりから消す。あとは洒落でゲイル−シャウトのそっくり兄弟馬券。

そしてレースなり
レース発走。距離1700m、スタート地点は2コーナーを回った向こう流し入り口。ここから1周と3/4。
ゲートオープン。外からテクノトライバルとローレルタイタンあたりが前へ。激烈な先行争いは特に見られず、三分三厘では隊列も定まる。そして1周目の正面スタンド前、先頭は大外枠からテクノトライバル内ラチ沿いを、これを1馬身半ほど前に見てローレルタイタンが2番手。さらに2馬身後方にラブリーハート、意外な前付けの3番手。この2、3馬身後ろ、好位インにストロングゲイル外ハネダエンペラーが併走。その次列は内エルシドテキサス外ボス。最後列は内ストロングシャウト中スノーミューズ外ラブリーマークが横並び。

1周目(32KB)
1周目の直線
左から2番手ローレルタイタン3番手ラブリーハート、好位内ストロングゲイル

隊列は1、2コーナーから向こう正面へ。レースが動くのはここから。向こう流し半ば手前でストロングゲイルが4番手あたりから前へ一気。他馬とは桁違いの脚勢で駆け上がり三角手前ではもう先頭に。同じ頃テクノトライバルは後退気味でローレルタイタンは位置をキープ、ラブリーハートも3番手のまま。
最後の直線、3、4コーナーでは一旦脚を溜める余裕を見せたストロングゲイルが馬場三分どころをグングン抜け出す。独走となって最後は後続に3馬身差をつけ余裕のVゴール。

ストロングゲイル(48KB)
ストロングゲイル、ゴールへ
実力段違い

問題は2着争い。外目をラブリーハートが差し込むが、インでローレルタイタンが頑強に抵抗。ラブリーハートの脚も思ったほど斬れず、結局クビ差ローレルが粘ってこれが2着でラブリーハートは3着。4着にラブリーハートのさらに外から迫ったエルシドテキサスが1/2馬身差で続く。5着ボスだがこれは8馬身後方。
以下6着スノーミューズ7着ハネダエンペラー8着ストロングシャウト9着テクノトライバルと比較的差がなく続き、ラブリーマークが8馬身遅れた最下位だった模様。

ローレルが粘りハート届かずで馬券は外れ。ディープさんもワシもパドック気配で買い目を誤ったということ。「何だよローレルタイタンパドックで散々暴れといて・・・ラブリーハートも折角買ってやったのに・・・」とは両者共通の恨み言。
レース後1コーナーあたりで勝ち馬の記念撮影。優勝のレイはないようだが1着賞金100万円であるからして、まあ贅沢は申しません。

それにしても勝ったストロングゲイル、豪快な競馬を見せてくれたわけだが、ここではちょっと力が抜けすぎているかなというのが正直な印象。昨年までならば東北アラブチャンピオンという、他地区馬にチャレンジする機会が存在したのだが、それがないのは残念。なかなかいい馬だとは思うし、あまり垢抜けしないが野武士タイプで結構カッコいいと思う。
2着ローレルタイタンは終始2番手で持ちこたえた体裁。このあたりがいかにも三条コースといった感じか。とはいえ当日の人気や予想紙のシルシからは順当な結果。
ラブリーハート・・・終いもっと斬れ脚が見られると思ったのだが案外。やっぱり現状ではここまでなのか。なかなかだなあ。

珍しくサラネタ
11レースはサラのオープン、晩春特別。サラのレースは大して興味もないしよくわからぬのだが、ここで1頭注目だったのは、新潟所属のダート統一グレード戦線の雄、エビスヤマト。ワシでも知っている(爆)。どんな馬か気になってパドックで見たところ、これが何とも華奢な、悪く言えば貧相な馬で、牝馬と見紛うほど。そしてレース、先行有利の三条でありながらも道中ドンケツ追走のスタイルを変えず、三角手前から追い込むも当然届かず3着という、何とも頑固な競馬を見せて、お客さんの罵声を浴びていた。

帰路
ぼちぼち競馬場にお別れの時間。途中燕から北陸道を走って新潟駅前に行く路線バスが、競馬場前のバス停にも停車するらしいのでこれに乗車。こんなマイナーな交通手段にまでチェックが入るディープさんは凄い。16:47(だったかな)競馬場前発で、新潟駅前には6時ちょっと前に到着。運賃710円。
新潟駅前で、燕三条から新幹線を使って新潟まで出た、さまにべっぴんさんとバッタリ。駅前から新潟空港へのバスが出た直後だったので、電設師、ディープさん、ワシ共々、4人でタクシーに乗ることに。20分弱で空港に。料金は2400円くらい。
さまにさんは19:30発の福岡便で、我々3人は19:00発の伊丹便。出発ロビーでさまにさんとはお別れ。搭乗の際、滑走路の向こうに見えた沈む夕陽が印象的だった。機内では3人席がバラバラなので、搭乗口で散会の挨拶ということに。
定刻よりやや遅れて飛行機はテイクオフ。ものの1時間弱で伊丹に到着。往路の鉄旅を考えれば、注射のようにあっちゅう間の時間。空港から大阪駅まではシャトルバスで。阪神高速をスイスイ走って所要見込時間より大幅に早く大阪駅に。ここからはJRの新快速。9時半頃に帰着。まるまる1日費やした三条巡礼、これにて無事終了の巻。

思った以上に居心地の良かった三条競馬場、しかしながら再度彼の地を訪れる機会はあるのか?

2001.6.14 記

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