2001年度、瀬戸内賞観戦報告

 2001.6.10、福山、1600m

はじめに
中央補助馬が3歳初夏に迎える晴れ舞台、瀬戸内賞。全国各地の有力中央補助馬が福山に集い覇を争う一戦。まあ中央補助馬の有力どころの在籍地自体にそれほどバリエーションはないので、全国津々浦々というわけにはいかぬが、地元福山をはじめ、金沢、兵庫、益田、高知、荒尾と、これまでの瀬戸内賞以上に多くの地区からの参戦を見ることとなった。
前週6日に園田では、3歳春の全国チャンプを決める一戦、楠賞全日本アラブ優駿があったわけだが、瀬戸内賞出走馬のうちの相当数も、各々の所属地区の3歳トップクラス。ということで、このレース、さながら"隠れアラブ優駿"といった趣のレースとなり、アラブな人間の関心も高まった次第。

福山へ
てなわけで観戦するべく福山へ。いつもならば福山へは第1レースに間に合うべく朝一番に家を出るところなのだが、前夜自主飲酒でちょっと飲み過ぎて早起きできず、結局姫路10:04発三原行きの各停に乗車しての西行きということに。笠岡で快速サンライナーに乗り換え福山着は12:25。駅前のカメラ屋でフィルムを購入、ここで新幹線で福山入りのディープさんと合流。二人でファンバスに乗り込んで競馬場へ。

メインレースまで
ゴール前のスタンドには既に電設の男@ともろうさんがいらしている。開口一番、「誰も来なくて一人だけだと時間が長いよぉ・・・もう暑いし・・・」
師の言葉通り、この日の天候、梅雨入りしたにもかかわらず、薄曇りから次第に晴れという好天気、ただし実に暑い。馬場状態は良。週末にかけて降雨がなかったようで、かなり乾いている。それなりに砂の深さはあるようで軽い馬場ではない。
「う〜体調悪ぅ〜」と、相当しんどそうな顔色の大御所Okuさんがやって来る。暫くすると地元駐在おさるさんが顔だけ出してすぐにお帰りになる。地元FUKUさんはいつもよりは早めにご来場。例によってメインレースの時間まで皆さんスタンドで談笑。

※瀬戸内賞についてはここからです。
さてメインレースの瀬戸内賞、出走馬は内枠より以下の通り。()内は所属地区と騎手。
プレシャスボーイ(高知、花本)、アイペイント(福山、越智)、シビノマルス(荒尾、吉留)、ムサシボウトップ(福山、山田)、エルパシオン(兵庫、小牧太)、ヤマトニセン(益田、御神本)、チョウヨープリンス(金沢、蔵重)、ホマレスカイヤー(福山、岡崎)、サンアイスペシャル(福山、吉延)
斤量は牝馬アイペイントが53kでその他は54k。

パドックからレース発走まで
パドックに出走馬が姿を現す。ここで福山競馬万歳さんが登場。ローゼンホーマ以来でしたっけ?
以下コメントは、はじめに他地区馬から。
1番プレシャスボーイ。昨年末の3歳(旧表記)重賞、銀の鞍賞の勝ち馬で、高知3歳三冠競走の一つ目マンペイ記念では惜しい2着と、高知現3歳世代トップの1頭。これはなかなか良い馬だというのが第一印象。踏み込みはやや堅いが深くしっかり。
7番チョウヨープリンス。ここまで15戦して僅か3勝だが2着は9回。現在金沢のこの世代には、圧倒的な捲りの脚力を誇る牝馬ダイリンフラワが君臨しており、これには及ばぬものの2番手を堅守というところ。入場したはじめのうちは落ち着いていたが次第に活気が出てくる。骨量豊かに見えるガッチリとした体格。トモの送りはやや堅いか。
3番シビノマルス。「ドングリの背比べ」状態と言われる今年の荒尾3歳世代にあって、トップ集団の一角を占める1頭。昨年末の重賞ヤングチャンピオンの勝ち馬だが「あれは馬の力というより有馬(騎乗)で勝ったようなもんやろ。」というのがOkuさんやディープさんの評価。一言でいえば無骨な馬体。若干煩いか。ハミ吊り着用。安物のレースのカーテンのような透け透けパドックメンコがダサい。
6番ヤマトニセンは益田勢の筆頭ということでもなさそう。鞍上が御神本騎手ということで、馬より騎手の方に注目しがち。厩務員さんに頭を預けて周回する姿が目立つ。
5番兵庫のエルパシオン。14戦2勝。T1(3歳オープン)で走ったのは1度だけ、T2でも勝てていないという馬。出走馬のうちでこれが一番チャカチャカしている。終始小走り気味に周回。
そして迎え撃つ地元馬だが、ここは正直言って9番のサンアイスペシャル1頭が頼みの綱といった感じ。デビューは昨秋とやや遅いが、非凡なスピードで順調に出世。騙馬なのでキングカップはオミットされるも(オ○マ差別、ではなくて騙馬は牡馬より定量が1k軽い点が問題になったよう)、福山ダービーでは晴れて1番人気に支持され本命を背負う。しかしユノワンサイドの2着敗退。明るい栗毛の皮膚の薄そうな馬体。なかなか垢抜けた馬だという印象。落ち着いて周回している。ここは鞍上吉延騎手共々、重賞初制覇への再びのチャンス、本命ズラリ。
これ以外の地元勢は正直苦戦は否めぬか。まだ古馬編入前、3歳限定クラスを卒業できない面々ばかり。2番アイペイントは落ち着いているが毛艶はそれほどでもない。4番ムサシボウトップも大人しい、そして平凡。馬体が小さく見える。8番ホマレスカイヤーも平凡。
といった感じで、好感を抱いた馬としては、プレシャスボーイ、サンアイスペシャル、シビノマルス、チョウヨープリンスあたり、この順で。「プレシャスボーイいい馬ですね。」という声は結構あったかな、と。チョウヨープリンスは黒百合賞の日の準メインで目撃して以来だが、この馬、見ようによってはどうもモッサリ型。

サンアイスペシャル(38KB)
サンアイスペシャル、返し馬
栗毛、好馬体には間違いない

予想。サンアイスペシャルの連軸は堅かろう。ダービーの千八から今回は千六へと、レース距離が短くなる点も有利かと。ピークはダービーだったそうだが、ここはスピードの絶対値で乗り切ることを期待して。ここからプレシャス、チョウヨー、シビノへ。そしてプレシャス−シビノのタテ目を。サンアイ−プレシャスと、サンアイ−シビノの組み合わせが、どの券種でもほとんど同じオッズだったのが印象的。兵庫の馬が福山に登場する時の常で、今回のエルパシオンも例に漏れず、兵庫の馬という理由のみで人気を集めている。が、「こんなん来ん来ん。」と、ウハウハ状態で馬券から外す。

そしてレース
レース発走。距離1600m、向こう正面半ばがゲート地点、ここから1周半。
ゲートオープン。大方の予想通り、9番枠からサンアイスペシャルが先頭を狙うが、発馬直後はこれを楽には行かすまじと、内からムサシボウトップやアイペイントが食らい付いていく。太エルパシオンも先団。一方プレシャスボーイの出は今一歩で、チョウヨープリンスは痛恨の出負け。
一度目の3コーナーの進入あたりまでで、サンアイが後ろを振り切って単騎ハナに。そして正面スタンド前へ。

1周目(32KB)
1周目の直線
先頭サンアイスペシャル2番手外ムサシボウトップ

先頭はサンアイスペシャル、リードは3、4馬身くらいか。2番手馬場外目ムサシボウトップ、僅かに遅れて内アイペイント。エルパシオンはムサシボウを直前に見る先団4番手。ここからやや開いて、中団に内プレシャスボーイ、1馬身弱下がっての外にシビノマルスが併走気味。ヤマトニセン、ホマレスカイヤーと続き、殿はいまだにチョウヨープリンス。

プレシャスボーイ&シビノマルス(33KB)
中団追走遠征二騎
内プレシャスボーイ、外シビノマルス

勝負が動き出すのは2周目三角を越えたあたりから。先頭快走のサンアイ、2番手ムサシボウトップが食い下がるところ、太エルパシオンが発進。外からじわじわと脚を伸ばして、4コーナーあたりで2番手に上がってくる。花本プレシャスも三角手前で内から上昇。三分三厘では外を回って前に迫る。ここでその脚いろを見て、電設師とワシ「花本ぉ!」と一声。
そして最後の直線。馬場二、三分どころを先頭で回った吉延サンアイスペシャルが逃げ切ろうとするところ、外からジリジリとエルパシオンが追い詰める。後ろでプレシャスボーイが四角で外から最内に切れ込んでに再びインへ。逃げるサンアイ、しかし残り50mで馬体を併せたエルパシオン、そのまま伸びて残り30mあたりでこれを交わして先頭に。結局1馬身の差をつけて、優勝のゴール。インではプレシャスボーイが最後よく差を詰めたが、結局クビ差で3着。この後ろはチ切れて、9馬身差の4着にシビノマルス、5着に三角から追いかけたらしいチョウヨープリンス。

エルパシオン、ゴール(39KB)
そして勝つのはエルパシオン
太さんの好騎乗の賜物

メインレースを振り返る
勝者エルパシオン――正直これには参った。福山の世代トップスリーに入る馬が、兵庫のオープンも張れない馬に負けるというのは・・・「これが兵庫のレベルの高さ」などと誇る向きもあるやも知れぬが、そんなもんじゃございません。無理から馬を誉めるのであれば、太さんのリードに素直に従った、その能力はあった、というところだろうか。発馬ですかさず3、4番手。三角で徐々に進出、不利なく四角射程圏内、余裕を持って終い差し切る、という、福山マイルのまさに教科書的な手綱捌き、ズバリ、「小牧太のレース」というところ。「兵庫の人間としては、当然ここは獲ってるんやろな?」と、意地悪くワシに訊くOku師匠ら。「んなもん獲ってるわけないでしょが。どうせ獲ったら獲ったで文句言うんでしょ。」と言い返すと「言うまでもないやろ。」とやり返される。全く・・・
それにしてもサンアイスペシャルはここでも勝てぬか・・・またしても鞍上吉延騎手の重賞初勝利はお預け。これで今年、吉延騎手は重賞2着が四度目。何となく勝負弱いぞ。
プレシャスボーイは惜しかった。三角からよく追い上げているが、結局道中の位置取りの差が出てしまった格好。しかしながら力はあるということは充分示すことが出来たのではないか。
シビノマルスも道中の位置取りが仇になったか。中盤に意外に動けていなかった感じも。しかしこの馬とこのレースから測るに、この世代の荒尾のレベルと福山のそれとは、どうしようもないほどかけ離れたものではなかろうかと。
チョウヨープリンスは出負けが全て。いくらソコソコ自在脚があるとはいえ基本は先行脚質、元来がジリなので、これでは巻き返せるはずもなく、見せ場ない完敗。ディープさんガックシ。ついこの前のダイリンフラワの楠賞といい、昨秋の園田タマツバキでのイセイチフブキといい、どうも金沢勢は遠征で結果が出せないなぁ。しかしこの馬はホンマにモッサリしている。

後で帰りのファンバスの中で万歳さんと振り返る。「やっぱり福山のマイル戦、それも良馬場だったら、発馬して先手取るのが定石。少なくとも3コーナーまでには先団には位置したいよね。サンアイの逃げはともかく、地元2頭が次列を何が何でも取りにいって、結局高知の馬と荒尾の馬はその後になっちゃったでしょ。あれが惜しいよね。」「その一方で好位置すかさず取ったのが太さんってわけですね。しかしサンアイ、終い捕まるんだったら悔いなくもっと思い切って逃げられなかったですかね?」「やっぱそれすると、最後まで保つかどうかもあるから怖いでしょう。」「プレシャス惜しかったけどな、コース取り妙だったけど。」「"イン−アウト−イン"みたいにね。日頃走ってるコースじゃないところが難しいかな。」てな感じ。

これも注目の最終レース
ちょっと拍子抜けのメインレースの後、最終レースはA2戦、しゃくなげ特別。距離1800m。A1組では家賃が高い馬や、このあたりで頭打ちになりそうな馬が多い一戦となったが、注目はシュメイヒーロー。昨秋の全日本アラブグランプリに佐賀代表としてやって来てこれは6着。今春に福山に転入してB1からのスタート。以降4連勝で、ついにA1目前にまで上がってきた。
メインレースの発走あたりで遠雷が鳴り始め、表彰式の頃にはパラパラながらも、大粒の雨が落ち始める。「やばいなあ・・・」と思ったところ、何とか最終レースはカメラを構えることが出来る程度の降りで済んでくれた。
そのレース、シュメイは渡辺騎手を鞍上に、スタートからヒュン!とダッシュ。これで後続とのリードを稼ぎ、道中はそれをキープする余裕の走り。終いはそのリードを維持したまま、しっかりとした足どりでの逃げ切り勝ち。これで次走でのA1入りは確実か。
もうすぐ夏開催。夏場の福山では、オープンのレースは全てマイルという戦線が金杯まで続く。この闘い模様の中に彼が加わることは必至。夏のシュメイに要注目、である。

競馬終わって〜おわりに
これで今日の競馬は終了。幸いにも夕立は降り損なったといった感じ。Oku師匠とはここでお別れで、FUKUさん、万歳さん、ディープさん、電設師、そしてワシの5人は駅前で焼き肉鍋宴会。「こんなん、全日本の時の前日オフの面子にいつも会ってるユーノすけ氏が追加になっただけやから真新しくも何ともない。」と、皆さん仰っていたが、つまりは気の置けない"福山な人間"どうしで飲み食いしたわけで、とっても楽しかったわん。

今後極々稀な状況を除いて、"中央補助馬"という括りでの競走はなかろう。そこにおいて、今日集った面々が、各々のホームで今後も健闘してくれることを願って、この観戦記はお終い。
おっと追記、それにしてもエルパシオン、瀬戸内賞勝っちゃたはいいが、1着賞金500万円。地元三冠の一つ目フクパーク記念でも1着賞金が450万円であるからして、破格の賞金をGetして一躍金持ちになったしまった次第。つまりはこの後一気にクラスが上がるわけで、「今後大丈夫か?」と、老婆心ながらも実に心配。

2001.7.3 記

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