セイユウ記念 第14回アラブグランプリ観戦報告
2001.6.24、金沢、2100m
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はじめに
先月27日のタマツバキ記念から僅か1ヶ月、つまり中3週、あの興奮が醒めやらぬうちに、またしてもアラブ古馬全国交流競走を迎えることとなった。今回は金沢競馬場にて、その名はセイユウ記念アラブグランプリ。金沢七大重賞競走の一つ、アラブグランプリの日程を黒百合賞と入れ替え、セイユウ記念の名を冠して施行するもの。
それにしても、タマツバキとセイユウ、1年に二度だけのアラブ古馬全国交流を、1ヶ月の間に集中させてしまうこの日程の拙さ。地区間レベルの日程調整をもっと適切にできなかったものかと、不満が大きい。ビックイベント二つが集中しては何とも勿体ないという、観戦するファンとしての想いはともかくとして、今年度のこの先残りの9ヶ月に、有力古馬が所属地区を越えて実力を測る機会が存在しないというのは、年度最強馬を正確に見極める上でも非常によろしくなかろう。加えて、これだけ両レースの日程が詰まっては、まさに前回の再戦といった感じで、メンバー的にも地元馬を除けばほとんど変化がなく、その他の馬の入る余地がないわけで、やはりこの状況は問題。その出走馬の側にとっても、短い期間にタフなレースを続けることになる。加えて、地元戦をパスして遠征してくることで、地元重賞に出るに足る出走回数を満たせないなど、ホームでの競走に支障を来す状況に直面する危険性を抱えた馬もいるようで、その負担は測り知れない。
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金沢へ〜往路
と、のっけから問題点ばかり列挙してしまったが、注目の大一番であることには変わりはないので、現地観戦するべく金沢へ。
しかしこの季節、問題なのは天気。「全くこんな時季に設定してからに・・・」という不安的中。前日から当日にかけて、梅雨前線が日本列島を北上して横切るらしく、この通過時には当然雨という予報。「いつ金沢に前線がかかるか、そしていつ過ぎ去るか」がポイント。
明石では前夜から雨模様、そして翌朝、目が覚めると外は雨。前線が通過し切っていないよう。やれやれという気分で、仕方なく折り畳み傘をさして駅に向かう。そして西明石から新快速で大阪へ。
8:42発のサンダーバードに乗車するべく11番ホームに。乗車位置を捜してキョロキョロしているところを、一足先に大阪に来ていたリーダー前田っちに拾ってもらう。程なくホームに列車が入線し、無事に自由席車に座席を確保。
定刻に列車は出発。途中京都駅で、ディープさんが隣の車両に乗り込んでくるのが見えたので、捕獲して以後金沢まで車中3人旅。窓の外では雨が降り続いている。何だか梅雨前線の裾が北上するのに併せているかのよう。
そして11:11に金沢到着。下車すると金沢は小雨。これが止んでくれるかどうか。例によってキオスクで予想紙『競馬カナザワ』と缶酎ハイ、それに『中日スポーツ』を買い込み、ファンバス乗り場へ。ここで同じサンダーバードに乗車していたという、御本人曰く「最近アラブが面白い」WSさん、やはり同じサンダーバードでの勝島競人さん、10:54金沢着の特急しらさぎにてお越しの"東海の好漢"おーたさんらと合流。やって来たファンバスに乗り込んで一路競馬場に。クルマの流れはすこぶる順調で、ストレスなく競馬場着。
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メインレースまで
到着した金沢競馬場、入場口をコイン式ゲートにするようで工事をしている。雨はもう止むかなぁといった状況。
まずは荷物を預けるべく手荷物預所に。またここが案内所も兼ねており、ここにハナキーくんが『アラビアンA』を送った模様。ということでそれを受け取る。そしてゴール板前のスタンドへ。既に"大御所"Okuさんや、一足早いサンダーバードを使った環さん、金沢在住のきたくんらが陣取っている。
この時発走した、福山の藤本騎手も登場した3レースを見届けてから、環ちゃん、ディープさん、リーダーと連れだって、お約束の寿司を食いに行く。その途中スタンド内で、前夜香川を発って早朝神戸に上陸し、一足先のサンダーバードで来場していた、電設の男@ともろうさんとばったり。この電設師も合流して都合5人で寿司屋の暖簾をくぐる。そして奥からカウンターをズラリ占拠。ワシはまずはサワラから。隣の環ちゃんはのっけから目前にあったトロに手を伸ばす。次に環ちゃんとガントを頼むと、ワシの皿には腹身のトロが二カン。「あ〜あ、それちょっと重いよね。」と環ちゃん。「まあエエわ。」と気にせず食うワシ。その後、アジ、バイ貝、赤貝と食し、トロで〆。と、満腹になったところで、目前に山盛りにネタが乗ったネギトロの軍艦巻きが。「何で今頃出すねん。ムッチャ美味そうやんか。あ〜もう食われへん・・・」と環ちゃんと愚痴る。そのネギトロ軍艦には未練を残しつつも、満足して店を出る。「今日は赤身が抜群。トロみたいやったな。」とここで環ちゃん。「も〜主宰何でそれを早く言わないの全く・・・」と、心の中で呟くワシであった。
スタンドに戻ると、何やかんやでやっぱりお越しのさまにべっぴんさんが。そして江戸平多さん、くもぎりまるさんと山形シチーさんの上山コンビ、やがて、栃さん、関万さん、宇田山さん、"にわか関東人"もりも先生、yamachanさん、メイ後さん、ふささんの御一行が到着。
山形さんの到着早々、ディープさんとワシ、「どうしてタマツバキ来なかったんですかぁ!一番現場でペルター観なきゃいけない人がいないんだからもう・・・」と。山形さん曰く、「だって次の金沢が勝負だと思ってたら福山で勝っちゃうんだもん・・・」。「さて、ペルター今回はどうでしょう。」と問うと、あまり景気のいいトーンではなく、「う〜ん馬体重次第じゃないですか?それにあの騎手が全国交流連取出来るとも思えないし。」とのお答え。
やがて、"メグミのパパさん"ことメグミダイオーの馬主さんがスタンドにいらっしゃる。そしてメイ後さんや環ちゃんと談笑されていく。この日のパパさんは水色のスーツという出で立ちで見た目にもとても涼しげ。ホントにいつも気品溢れるパパさん。
馬場状態は当然不良。走路に水が浮き、まさに雨馬場。好位からの馬が三分三厘で仕掛けて逃げ馬を捉えようとすると、終いは差した方が先に止まるという競馬が多いような、というのがこの日のレース傾向。後方からの追い込みはやはり決まらない。
それが午後になってメインレースが近づくにつれ、天気の方はどんどん回復して時折陽が射すまでになる。それに連れて、馬場の方もやや水が退いて、状態不良は変わらぬものの、幾分かは良化の兆し。
※セイユウ記念アラブグランプリについてはここからです
そうこうしているうちに、メインレースの時間が近づいてくる。この日は北関東ダービーの場間場外発売を行うため、自場のメイン、すなわちセイユウ記念の発走時刻が15時10分に早まっている。
さて、メインレースのセイユウ記念アラブグランプリ。出走メンバーは内枠より以下の11頭。()内は所属地区、騎手、斤量。ハンデは恐らく年齢別定、4、5歳牡馬は56kで6歳以上は55kかと。
ベストイチ(金沢、蔵重、56k)、ブルーホーク(金沢、殿田、55k)、トライバルリーフ(金沢、渡辺、56k)、サンエスジュニア(金沢、中川、56k)、マリンレオ(愛知、山田、56k)、ホーエチャンピオン(笠松、川原、55k)、パッピーケイオー(福山、藤本、55k)、ワシュウジョージ(兵庫、小牧太、56k)、ペルターブレーブ(上山、冨樫、55k)、メグミダイオー(荒尾、吉井、55k)、イセイチフブキ(金沢、平瀬、55k)
しっかしこの枠順、内から4頭は地元馬でその外に他地区馬6頭ズラッと並べて大外にイセイチって・・・
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パドック、そして返し馬〜発走まで
8レースも終わり、いよいよメインレースの出走馬達がパドックに登場する。この頃になると空模様は完全に晴れ。湿った空気が熱せられて、かなり暑くなっている。
1番ベストイチ。やや重く見えるルックスは前回目撃した黒百合賞の時と変わらず。若干トモが堅いが出来は良さそう。末脚は地元馬では随一。
2番ブルーホーク。8歳馬で歳も歳ゆえ仕方ないが覇気のある周回ではない。馬体はまあまあ。
3番トライバルリーフ。毛艶の見栄えの悪いのはいつものこと。活気の無さもこんなものか。昨年の金沢4歳(旧表記)筆頭もここでは劣勢の感否めず。
4番サンエスジュニア。気合い、毛艶共に良好。若干鶴首気味に頭をグッと下げて、二人曳きでグイグイ周回。充実度では、同じ地元4歳馬のトライバルリーフよりも上か。先行粘り腰で挑戦。
5番マリンレオ。実物を目にするのは今回が初。概して大人しい周回だが時折活気づく。毛艶はまあまあ。均整の取れた馬体。裂蹄持ちらしくコンスタントに使えないのが辛いが、昨秋のシルバー争覇で、当時無敵のブラウンダンディを負かした程の実力馬。現在9連勝中、2着敗戦を挟んでその前も6連勝、過去1年間で一度しか負けていない。能力の底が割れていない、まさに"東海の秘密兵器"。
6番ホーエチャンピオン。実際馬体重は前走から-9kなのだが、ワシのイメージの中でのこの馬の馬体が良過ぎるからか、どうも身の詰まりが落ちているような印象。それにトモのボリューム感も弱いか(と現場では思うのだが、撮った写真の姿はそんなに悪くもなく立派な馬体なのだな)。前走のタマツバキでは健在ぶりを見せつける3着。ここも期待が集まるところではあるが・・・
7番がパッピーケイオー。輸送の影響が出たか、最近の彼のパドック周回に比して、かなりチャカチャカと細かい動きが目立つ。が、これはある程度予想されたこと。時折若干走る。どうせなら地元でのように、ズドドッと大きくぶっ飛んでほしいところだが。やや発汗。鞍上藤本サブちゃんの服色に合わせたメンコ着用。しかし頭絡はメンコの下、今回もレースは素顔で走るか。前走地元のタマツバキが仕上げのピークで、今回は厳しそうと伝えられるが、それを比類なき勝負根性でカバーできるか。それより問題はこの不良馬場、泥田馬場はこの馬最大の弱点。
8番ワシュウジョージ。馬体重は450kと、大きく減った前走タマツバキから+8kで適正値に戻した。その馬体重プラスが窺われる作りではある。が、今回も前走時と同様発汗がきつい。気配はやや煩いがワシにはギリギリ活気と受け取れるレベル。ただし集中しているとは言い難い。とにかく常に遠征不安がついて回る馬であり、パドック気配は当日の出来の指標であるので過たず吟味したいところ。個人的には、あまり誉められた状態ではないが「まあこれならば」という感じ、少なくとも前走時よりはましかと。発汗にしても、今日は蒸し暑さ故か、他にもそれが目につく馬がいるわけで、唯1頭汗ダーダーだった前走とは状況が異なろう。
9番がペルターブレーブ。馬体重は前走比-2kの490kでおさまったが、馬体自体に前走時のような押し出し感がない。全体的に馬体が確実に細くなっており、胸前やトモのボリュームも失せている。トモの踏み込みも浅い。身のこなしも細かい動きがこれまで以上に目立ち、ちょっと散漫。全国交流連取へ、ワシ個人の期待は大きいのだが、不安の方が先に立ってくる。比較的広くて直線も長いこの金沢のコース、彼の末脚がより活きる舞台であるとは思うのだが・・・
10番メグミダイオー。前走のイマイチピンと来なかった出来に比して、今日の姿は非常に目を惹くもの。馬体の張りはパンパン、毛艶も良好。歩みも力強い。少し発汗しているか。早めの当地入厩、輸送時に帯同馬もつける念の入れようで、遠征競馬の克服と、1月荒尾セイユウ賞以来再びの全国制覇を狙う。この不良馬場は望むところか。
大外11番がイセイチフブキ。馬体の張り、毛艶、ルックス全体はいつもながら良いのだが、今日はトモの踏み込みがやや弱いか。それに個人的にはもうちょっと良い意味で活気ある周回を期待したのだが、どうもおっとりし過ぎているような・・・今季は地元筆頭をエステイヒーローに譲った形で、まだまだ昨秋から年末にかけてのとんでもなく強いイセイチではないようで残念。加えて、この馬暑さに弱いらしく調子落ちの線が濃そう。
ホーエチャンピオン、パドック入場時
写真だといい馬体に見える
イセイチフブキ、パドック入場時
このプロポーションは彼ならでは
ということで、パドック気配で好感を抱いたのは、メグミ、マリンレオ、サンエスジュニアあたり。パッピーはこの感じならば気合いで何とか走れそうかなというところか。ワシュウはまあこんなもんと納得。心配なのはペルター。案外だったのはイセイチ。ホーエはワシには掴めないというのが正直な感想。
本馬場入場から返し馬。ワシュウジョージはササーとゴール前50mあたりまで駆けて行ってここからキャンター、そのまま待機所へ。マリンレオは軽快に。ホーエチャンピオンやペルターブレーブはやや強めに。ベストイチはやる気溢れる返し馬。メグミはかなり強め、ブリブリのキャンター。パッピーは地元でサブちゃんを乗せた時のリラックスした返し馬とは打って変わって、かなり行きたがってのキャンター。これを鞍上サブちゃんが手綱を突っ張って抑え加減。
ペルターブレーブ、返し馬
今日も観たいぞ!その豪脚
パッピーケイオー、返し馬
アラブ王国の誇りを闘志に
「マリンレオっていい馬だねえ。」と山形さん。上山の生んだ名馬レオグリングリンの産駒ということもあるからか、マリンレオに注目の模様。「ペルターはやっぱり馬体細い?」とワシが問うと、「馬体より歩様が。踏み込み全然浅いでしょう。特に左トモなんか全くあがってないし。そりゃ応援するけどちょっと苦しい。」とのこと。
で、予想。初志貫徹でペルターから。相手は好感を抱いたメグミを筆頭に、この渋馬場もプラスと考えて。あとはワシュウ、ホーエ。パッピーは馬場状態に不安は残るが根性を買って。因みにワシとディープさんの事前予想は
こちら
。「ワシュウジョージはなあ・・・パドック悪くても去年の佐賀(セイユウ賞)の時みたいに走るときは走るからなあ。一概に駄目って言えないところが困る。」と、過去の経験からワシュウに注意を払う関万さん。確かに佐賀セイユウ賞のワシュウは微妙なところ。
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そして決戦の時
いよいよレース発走。距離2100m。ゲートは2コーナーのポケット、ここから1周と3/4。
ゲートオープン。目についたのはパッピーの鋭発。鞍上藤本サブちゃんに叱咤されつつ積極的に前に。そして大外からイセイチフブキ、加速して大方の予想通り程なくハナへ。やがてメグミダイオーも前へ、これがパッピーを制してイセイチを追う。ここでパッピーは向こう流しから三角にかけてやや控え加減。
そして隊列はホームストレッチに。先頭イセイチ、後続には5馬身程の差をつけて、まずは彼らしい単騎逃げ。開いた2番手は、内サンエスジュニア外メグミダイオーの併走。ここから3馬身弱後方にパッピーが、鞍上との呼吸はOK。この直後、インにトライバルリーフ中マリンレオ外ワシュウジョージの併走、直後にホーエチャンピオンでこのあたりまで好位。ワシュウは太さんに若干手綱を抑えられ加減か。ホーエの1馬身半程後方にペルターブレーブ、その後ろは内ベストイチ外ブルーホークでこれが隊列の殿。
1コーナーから2コーナーにかけて、金沢の2頭、サンエスジュニアとトライバルリーフが内からスルスルと順位を上げて、それぞれ2番手3番手に。
そしてレースが動き出すのは二角過ぎ。先団から好位を順次映し出したビジョンの映像がパッピーを捉えたまさにその時、サブちゃんが一気に仕掛ける。これに抜群の反応を示したパッピー、ガッとハミを噛んで猛然と前に突進。(ここで電設師「藤本ぉ!行けぇ!!」と声援一発かましたところ「んな馬要らん!」と隣のオッサンが合わせたらしい。う〜ん、生々しいエピソードだ。)。これを承けてか、直後のワシュウもスッと前へ。上昇するパッピーの外にスルスルと取り付いていく。そしてそしてマリンレオ、パッピーとワシュウの仕掛けから数テンポ置いてGo。少し先を行く内パッピー外ワシュウの真ん中めがけて一気に押し上がる。これら3頭の上昇に、サンエスやトライバルはおろか、メグミも持ちこたえられずここで万事休す。単騎逃げのイセイチも三角を手前に早々に捕まり、ここから先はパッピー以下好位から駆け上がった馬の競馬に。
三分三厘、これら3頭めがけて、外からのっしのっしとホーエチャンピオンが寄せてくる。しかしペルターは向こう流しで上昇できなかった模様、前を捉えるには手遅れの予感。
そして4コーナー、内でパッピーが力走、外に併走ワシュウ、直線を向くあたりでは、パッピーを交わそうかといった状態でコーナリング。2頭の間のマリンレオはここでキツくなったかひと呼吸置いたか、一旦2頭から少し遅れる。そしてこれらの大外にホーエが急接近。
残り30m手前くらい
苦しくなった外ホーエ、パッピーとワシュウの間に突っ込むマリンレオのフォームに御注目
最後の直線、先頭は僅かにワシュウ、しかしパッピーも必死に食らい付き、ワシュウを逃がさない。大外でホーエがジリジリと差を詰めてくる。そしてマリンレオもまだ圏内。内外4頭ズラリの凄まじい叩き合いは、最後まで予断は許さぬ状況。
残り20mあたり、3頭の死闘
角度のせいもあるが、まだ勝負の行方が読めぬ接戦
残り50mあたりで最初に脚が鈍ったのがホーエ、ここで脱落。一時は3/4馬身程は抜け出したであろうワシュウも、パッピーの食い下がりに遭ってクビ差くらいまで再度詰め寄られている。と、残り30mでマリンレオが最後のひと脚を繰り出して、パッピーとワシュウの間に馬体をねじ込んで抜け出さんとする。首を突き出した勝負への執念を感じさせるフォーム。内パッピー中マリンレオ外ワシュウ、ビッチリ叩き合ったままゴール板になだれ込む。さあどうだ!?
ゴール板前、そしてこうなる
僅かに外ワシュウが抜ける、ピントはパッピーだったりする
マリンレオもパッピーも最後まで首をよく使った素晴らしい駆けっぷりだったが、推進力の強さで馬体を先に入線させたワシュウが結局1着。アタマ差で2着マリンレオ、そこからクビ差で3着パッピー。走破タイム2分15秒5は既存のそれを1秒5更新するレコードタイム。
以下、ホーエチャンピオンは1馬身半遅れた4着。ペルターブレーブは最後自力で追い上げるも5馬身差の5着。ここから大差2秒開いて、6着は終い追い込んだベストイチ。7着メグミダイオーまたもや着外敗退。8着トライバルリーフ9着サンエスジュニア、地元4歳2頭はここ。イセイチフブキは10着、ブルーホークが11着。
いいレース、いい叩き合いだったと思う。「うぅわぁ〜凄いレースだったねえ。」と、もりも先生も仰っていた。間違いない。だがその割には、レースが終わった時、ワシのココロを支配したのはその興奮ではなく、何とも妙な、一種虚ろな感覚。これは何だ?応援していたペルター様が負けた、馬券は外れた、それらへの感情もある。が、それがイコールこの虚ろな感覚の正体でもない――
レース後、北関東ダービーの発売締め切り前に口取り撮影と表彰式が行われた。表彰式の際、インタビューに答える太さん。大意は以下の感じ。
−ゴール前接戦となったが4コーナーでは既に先頭だったのでは?
「後ろの馬が怖かったので、出来るだけ後ろを待って仕掛けたつもり。」
−マリンレオが来ていましたがわかりましたか?
「ゴール手前でわかった。」
−ワシュウジョージの手応えはどうでしたか?
「直線に入ってから一瞬手応えが鈍ったが、後ろの馬が伸びてきたところでよく辛抱してくれた。」
太さんのワシュウジョージに騎乗しての勝利コメントは、かなり後方から差し届かせたり、ゴール前際どく差し切ったレースでも、勝利への確信があったという旨になるのが常なのだが、どうも今回はそうではない。それだけキツかったレースだということか。
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各馬の走りを復習する
勝者のワシュウジョージ。勝つときは豪脚一閃で、大差であろうと僅差であろうと誰の目にも明らかな勝ち方をするこの馬が、これほど苦しんで勝利を掴んだことはないのでは。2周目二角からの地力スパートという、この馬本来の走りはしているわけで、ここは僅差に追い詰めたライバルを誉めるべきか。これでワシュウは今年、西日本交流の佐賀のアラブ大賞典、地元の兵庫大賞典に続き、早くも重賞3勝目、そして今年待望の全国交流制覇。遠征に弱いだの何だかんだ言われるが、それでも一応の結果は出しているとも。ただ、昨秋以来の一走毎に勝利と敗戦を繰り返すあたり、「負けない」という信頼性、ひいては貫禄や風格の欠如は否めぬところか。もっとも、全国交流で常勝という馬が存在するのも困ったものだが。
それにしても驚愕に値する2着のマリンレオの走り。素質馬であるとは承知していたが、ここまで走るとは。パッピーとワシュウ、歴戦の強豪の二角スパートに向こう流しでスッと反応してついていき、一旦脚勢を落としながらも終いにもうひと脚繰り出せるという、こんな競馬が出来る馬などそうはおるまい。他の有力馬が大一番続きで、疲れも蓄積していよう状態に比して、満を持しての出走という有利さは仮にあったとしても、この馬、凄い。問題は今後か。「ここまで走るとこの先無様な競馬できないぞぉ。」と後日FUKUさん(場間場外発売を実施した福山で観戦)が言及したが、まさにそういうこと。
惜しい3着のパッピー。個人的にはこのレースの主役はこの馬だと思っている。2周目二角で猛然と動き出した様は観ていてシビれた!これ以降のレースの厳しい流れを作ったのはまさにパッピー。そして普通の強い馬なら四角でワシュウに並ばれた時点で一気に交わされそれで終了であろうところ(そうやって先行馬を自力で潰すのがワシュウの常套手段)、食らい付いてワシュウを抜け出させない、まさに根性走法の真骨頂。「でもどうせなら抜かれるなよ」と思えなくもないが、ピークを越えた状態、不得手の泥馬場、見込み以上に走ったのは確か。「今日のパッピーはアラブ王国の代表として恥ずかしくない競馬をしたと思うよ。」というのはディープさんや電設師との共通見解。
ホーエチャンピオンが2周目3、4コーナーで大外をブンッ!と回ったきたときには「おお!これが道営の怪物の本性か!」と目を見張ったが、結果は追い上げて先に止まるというもの。戦前距離は二千までがベストと見られていたのが、まさにその通りに結果で出た感じか。残り50mがキツかった模様。前走タマツバキから着順を一つ落としたが、今回の方が彼らしい豪快な競馬だったと思う。
ペルターブレーブはこの流れでは致し方ないか。パッピーらが向こう流しで一気に加速した時点でソコソコ寄せられなかったのが決定的。今回の明らかな調子落ちに見えたペルターではそれを望むのは酷か。それでも何とかこの馬なりに追い込んで掲示板を確保したあたり、全国交流ウィナーの意地か。しかし残念無念。
6着ベストイチでこれが地元馬最先着。まあ最後追い込むのは判っていたことなので、地元先行馬が通用しなければそうなろうとは納得。
メグミダイオーの7着は全く意外。状態も良さそうで加えて得意の渋馬場。適距離より100m長いとはいえ、2周目三角まで保たず、タイム的にも負け過ぎ。調子を落としているのか?これ以降は(移籍するのでなければ)荒尾の地元戦、シャインマンリーが腕を憮して待っているぞ!ここが踏ん張りどころでは?
イセイチは単騎逃げが叶いながらブービー。これもメグミと同様三角まで保たなかった。早めにパッピー以下に来られたというのもあろうが、全然持ちこたえていない。やはり調子今一つか。
レースの後に、Oku師匠が「だれか馬券獲った人間おるんか?」と訊くと、僅かにリーダーがかすった程度。そこで師匠曰く、「全く、79倍や271倍(タマツバキの馬複と枠単)は獲れて15.9倍(今回の馬単)は獲れやんて、何ちゅう集団や。」確かに・・・
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帰路、そしておわりに
最終レースの発走を待たずに本日は撤収。皆さんでファンバスに乗り込み金沢駅へ。いつもならばこの復路のバスは渋滞に捕まり時間がかかるのだが、この日は相当スイスイと走って見込みより早く金沢駅に着。
あまりに早く着いたので、皆さん乗車予定の電車の時刻にはやや間が空いた模様。それぞれ適当に時間を潰したりして、バラバラと自然に散会。電設師、リーダー、環ちゃんとディープさんにワシの西行き5人は、一緒に17:14金沢始発の特急雷鳥の自由席に乗り込む。座席は余裕で確保で、あとは大阪までのんびりと。皆さん缶ビールを買い込んで、車中で呷りつつ。ディープさんと環ちゃんは京都で下車。残る3人は新大阪で。リーダーとワシは新快速で、それにしても電設師にとってはここからが長い。ホンマご苦労様です。というわけで、本日も無事終了。
と、ここでレース直後に味わった虚ろな気分について改めて考える。そしてふと思う。つまりは、年度に唯二度の古馬全国交流がこれで終わるという、名残惜しさに似た情に拠るのだな、と。祭りの後の一抹の寂しさは世の常。しかし祭りの時はまた巡ってくる。アラブのそれもまた然り。きっとまた巡ってくる。その日まで――アラブ現場主義は続く、多分・・・
2001.7.17 記
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