第29回仙台七夕まつり賞観戦報告
2001.7.10、上山、1800m
はじめに
上山競馬に現在四つ存在するアラブ系オープン古馬(及びA1級)重賞の一つ、仙台七夕まつり賞。昨年は4月29日、一昨年は5月25日の開催で、「これで何故に"七夕まつり"やねん?」という気が、端から見てしなくもなかったのだが、今年はいかにもそれらしい時季での施行となった。
上山の古馬アラブといえば、真っ先にペルターブレーブのことが思い浮かぶのだが、彼は今季地元で1戦したのみのため出走条件を満たしておらず、よってここには不出走。代わりに同日の準メインのA級選抜戦に登録があったものの、結局ここにも姿を現さず。金沢のセイユウ記念から中15日、二度の遠征と激闘の反動は想像に難くはないところではある。
もっとも、ペルター不在の仙台七夕になろうとは、早い時点で予想されたこと。でありながらも、「アラブ北の最後の聖地の古馬重賞、やっぱり観たい。上山にも行きたいし・・・」と思っていたわけで、レース2ヶ月前のJAS航空券売出日早々に、ウルトラ割得にてチケットを押さえて備えた次第。
"アラブ北の聖地"へ
そして当日。搭乗する伊丹−山形便は8:00発。これに間に合うように大阪空港に行こうとすると、相当早く住処を出ねばならない。何と言っても昨年のかかしまつり賞の際には寝坊して飛行機に乗れなかった前科を持つワシ、寝過ごしてはならじと緊張していたのだが、無事に4時半に目覚めて出発できた。
三ノ宮まで出て、ここから6:20発の空港バスに乗車。早朝の渋滞前の神戸高速をスイスイ走って、6時45分くらいには空港に到着。余裕。
そして飛行機はテイクオフ。途中眼下に栗東トレセンや(多分)三条競馬場と思しき地形が認められたりしつつ、小1時間で山形空港に到着。飛行機の威力を思い知るひととき。
梅雨時ということで、ここ数日微妙な天候の動向だったのだが、到着した山形の天気は晴れ。まずはよしよしである。
空港から山形駅前まではバスで、運賃710円で約40分。駅前からは11時発の無料ファンバスもあるようだが、それまでには間があったので、10時20分発の路線バスで競馬場前へ。運賃は440円。
ということで首尾良く11時前には競馬場に到着。かなりの早起きをしたとはいえ、関西をその日の朝に立って、山形の競馬場の1レースの発走に間に合うところが凄い。
そして上山競馬場〜メインレースまで
馬場状態は良。かなりバサバサ。下位条件のレースでは道中あまり縦長にならず、三角手前から各馬動き出して位置取りをめまぐるしく変え、終い直線勝負、結果三分三厘好位から直線やや外を回った馬が連入の頻度が高いという、上山の良馬場ではよく見られる(と思う)パターンが多い状況。1、2、3レースと馬券を買い、当たるものの堅い配当で取り損という結果を繰り返す。天気は晴れ。しかしながらこれが盆地特有の天候か、空気があまり動かず澱んだ感じで、景色も相当霞んでいる。ほとんど無風でもあり、相当暑い。
4レース発走前あたりで、地元の山形シチーさんに捕獲してもらう。「初めまして(爆!)こんなところで何やってるんですか?」と。お約束のすっとぼけ挨拶で会話が始まる。「今日はホントに大したレースもないですから、市内でも案内しましょうか。」ということで、山形さんのクルマに乗り、一旦競馬場を出る。そして蕎麦屋(蕎麦が名物とのこと)でご馳走になり(まさに接待だ!)、市内をクルマで回っていただく。温泉街の前も通ったりして、初めてここが温泉町だということを体感できたり、競馬場以外の市内の状況を説明していただいたりして、非常に楽しゅうございましたです。
6レース前あたりで競馬場に戻って再入場。ここで地元ブルボンさんと合流。不在の間にレースは中穴傾向になっており、以降のレースで馬券を買うも、全く当たらなくなる。
9レースはアラブ系A級選抜戦。距離1700m。前述の通り、ペルターブレーブの登録があったレース。A級とはいえ上位の馬たちはメインの重賞に出るわけで、登場するのはそれには足らぬ馬たち。楠賞に遠征し、一昨日3歳重賞スズラン賞に勝った3歳筆頭馬、ホマレエリートに歯が立たないレベル。
レースはカミノイムラッド、セイフクガバナー、ブラックイーグル、ヒカミハヤブサらが先行する中、セイフクガバナーが抜け出して優勝。マルセンガバナー産駒の大柄な黒鹿毛馬。記憶にあるマルセン産駒の中で、ルックスではこれが一番父似かなと。しかし距離適性と脚質は父に似ず、短距離の逃げ馬。千五までしか良積がなく、千七では人気を背負っても勝てなかったようだが、ここで千七初勝利。
※仙台七夕まつり賞についてはここからです
そしてメインレースの仙台七夕まつり賞。出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手、負担重量。
カミノマルーエース(馬渕、56k)、タービュレンス(江川、56k)、サファリルージュ(須田、54.5k)、スーパーストロング(鈴木、55k)、グリーンセンプー(青木、55k)、マクベスフォンテン(長橋、56k)、ムーンライトブルー(佐藤、57k)、エルソパレード(宮崎、56k)、セイユーボーイ(前野、56k)、マルハチフレンド(小国、57k)
昨年は1着賞金が320万円出ていたのだが、興行不振か、今年度の上山競馬は大幅な賞金減額を断行し、今回このレースの1着賞金、110万円!昨年のほとんど2/3。恐ろしい状況。
パドックから発走まで
このあたりで夕立雲か、空がどんどん暗くなってきて、メインレースのパドック周回を迎える頃には完全な曇天。ただ観戦するだけならば陽が翳って楽なのだが、写真撮影にはちょっと光量が不足気味。さてパドック。
1番がカミノマルーエース。前回目撃した、昨年の奥の細道大賞典時は気配が抜群に良かったのだが、それに比べれば思ったより平凡で、気合いもあまり入っていない。暑さでキン○マが下がっている。「それでも何だかんだでやっぱりバリバリのオープン馬の馬格だなあ。」と山形さん。今季は5戦して2着が4回、そのうち3戦がマルハチ1着で残りがペルター1着。この二強の次位はガッチリというところ。ここも当然対抗評価。
2番がタービュレンス。これも"奥の細道"以来だが、目撃するごとに、ますます馬体が小さく見えるようになっている。馬体の張りもイマイチのような。今季は5戦3着3回4着2回、逃げているようだが連に残せていない。「タービュレンスも歳くったなあ」というのが正直な感想。鞍上は今季デビューの江川騎手。割と乗れるらしい。
3番サファリルージュ。唯1頭の牝馬。栗毛の毛艶は悪いが馬格はまあまあ。
4番スーパーストロング。胴長で伸びやかに見える馬体。まあまあか。
5番グリーンセンプー。馬体重427kは出走馬中最軽量、その数字の通り馬格は明らかに小さい。首でリズムを取って小気味良く周回。
6番マクベスフォンテン。相変わらずデカい、そして重心の低そうな馬体。特に肩から腹袋までの前半身のボリュームが凄い。その割にはトモは普通で、独特のプロポーション。毛艶は上々。「マクベスフォンテンはいつも見栄えするけど、オープンのトップだとちょっと厳しいんだよなあ。」と山形さん。
7番ムーンライトブルー。スッキリとした馬体、いい仕上げだと思う。首でリズムを刻んでの周回。カミノマルーエースが唯一2着を外した(4着)、マルハチ不出走の6月12日のA1戦を勝ち、前走も逃げ粘ってマルハチ、カミノマルーに次ぐ3着と、上昇ムードのよう。
8番エルソパレード。黒鹿毛で元々見栄えもするようだがいい馬体。首と胸前の筋肉が素晴らしい。それでいて胴はスッキリ。ちょっとトモの送りは弱いか。「この馬右目だけ三白眼で怖いんですよ。」と山形さんが説明して下さる。なるほどハッコーディオスと同じか。因みにこの馬とカミノマルーエースは同厩で、両馬の主戦宮崎騎手は今回こちらに騎乗。「実績と格ならカミノマルーエースなのに主戦がこっちに乗るとは何かある。」と睨む山形さん。
9番セイユーボーイ。パドックの大外を周回。まあまあか。
そして10番がマルハチフレンド。今季4戦全勝。遠征続きのペルターブレーブとは未対決、アオイリュウセイも姿を見せぬとあってはそれも順当か。当然ここも不動の本命。かなり大人しい。良く言えばジワッとした気合い。集中はしているようで全くキョロキョロしない。しかし馬体は平凡か。トモの筋肉をはじめ、馬体はあまり張っていない。「マルハチは特段良くは思えませんが・・・」と山形さんに振ると、曰く「まあそれでも他の馬と能力違い過ぎてるからねえ。」そりゃそうだ。
ということで、格的にはマルハチ断然次いでカミノマルーと、2頭で決まりなのだが、パドック気配で好感を抱いた馬を挙げるならば、エルソパレード、マクベスフォンテン、ムーンライトブルーとなる。
本馬場に各馬登場。ムーンライトブルーは入場口からそのまま1コーナー方向に直行。マルハチはやや遅れて登場。カミノマルーエースは存外軽いキャンター。マクベスフォンテンも軽く。エルソパレードは気合いたっぷりの強めのキャンター。マルハチはダクで。タービュレンスは丸1周じっくりダクで、最後にスタンド前へ。ゴール板前で軽くキャンターに移行。
予想。と言ってもそれまでのこともなく、ここはマルハチ−カミノマルーの本線勝負でいいだろう。今日はそれこそ銀行から預金を引き出すつもりでこの馬券を買いに来たようなもの。馬複のオッズは2.8倍見当。今回の旅費が捻出できる程度に大口勝負。おまけにマルハチ−エルソパレードを。
レースなり
いよいよ発走。距離1800m、スタート地点は2コーナー。
ゲートオープン。スーパーストロングが好発、しかし内からタービュレンスがやがて先頭に立つ。ムーンライトブルーやエルソパレード、セイユウボーイは先団、マルハチフレンドもこのあたり。一方、グリーンセンプーが出遅れ気味。しかしそれより問題はカミノマルーエース。やや遅れた発馬から二の脚がつかず、結局最後方からの競馬に。これにざわめく場内。
隊列は正面スタンド前に。先頭は単騎タービュレンス。リードは2馬身ちょっとか。2番手内スーパーストロング外ムーンライトブルー。この外直後にエルソパレード。さらに外直後セイユウボーイ。これを1馬身半ほど前に見て、内マクベスフォンテン、そしてこの外にマルハチフレンド、これは先団から好位勢の一番後ろというところ。ここからやや開いて、外に出して追走のカミノマルーエース、グリーンセンプー、殿サファリルージュと後方勢が続く。
1周目スタンド前、中団
マルハチフレンド(10番)は前から7番手
二角から向こう流し、ぼちぼちといった感じでマルハチが外から進出したげな模様。しかし本気ではないのか前が健闘しているのか、一気に上昇という感じではない。インベタでまだタービュレンスは持ちこたえ、ムーンライトブルーは2番手キープ。何とかエルソパレードを交わそうかなあ、といったところ。カミノマルーエースも押し上がってくるが、予想外の後方からの競馬、これはいかにも前が遠い。
最後の直線
インでタービュレンスは降参、抜け出すムーンライト、外からマルハチ
そして最後の直線。タービュレンスが粘るところ、残り150mあたりからムーンライトブルーが外から交わして先頭に。次第に内ラチ沿いに切れ込みながら、ゴールを目指す。ムーンライトブルーが先頭に立とうというあたりで、マルハチフレンドが大外から差し込み、先頭を窺いかけたものの、この伸びはイマイチ。一方三分三厘以降マルハチに煽られ突っつかれていたエルソパレードがもうひと伸び。インからやや外に持ち出しムーンライトブルーを追う。この抵抗に連入も怪しくなったマルハチが、やや泡食った感じで外からジリジリ。結局ムーンライトブルー、着差は1馬身半ながらも終いは比較的余裕の走りで古馬A級重賞制覇のゴール。そして2着争いは結局エルソパレードが踏ん張って先着。大本命マルハチフレンドは何と3着。4着は後方からカミノマルーエースが来たが時既に遅し。5着カミノマルーに連れて差し込んだ(らしい)マクベスフォンテン。逃げたタービュレンスは結局6着。
ムーンライトブルー、ゴールへ
かなり余裕、鞍上佐藤涼jk、カメラ目線?
ということで、堅いと思われたマルハチ−カミノマルーのペアが3着4着と揃って連対落ち。殊に不動の本命マルハチがこの肝心の重賞の舞台で2着すら獲れないという結果。結局ムーンライトブルー−エルソパレードの馬複の配当は7800円!▲と△の評価が与えられていた馬の組み合わせでこの高配当、いかにマルハチからの馬券の競馬だったかがわかる。しかしそれをあっさり裏切るマルハチフレンド。山形さんもワシも「ア痛タタタ・・・」状態。
ムーンライトブルーは綺麗な先行競馬をしたと思う。実は3歳(旧表記)7月の重賞、若草賞の勝ち馬だったりして、若い時期から上位で活躍してきた馬のようで。これを更なる躍進の契機にできるか。
エルソパレードはA1組でのキャリアが浅い割には上々の2着か。まだ4歳、先は楽しみ。しかしキン○マはなし(騙馬ね)。
それにしてもマルハチフレンド。結果だけ見ると、誰もが「マルハチフレンド、何故負ける?」と思ったのでは。これについては山形さんのマルハチ評が答えとなろうかと。曰くこんな感じ。「マルハチフレンドのスピードに敵う相手なんていないんだから、もっと積極的に前行く競馬すればいいのに、小国クンが差す競馬覚えさせようとしてるのか、どうも道中控えて好位に拘るんだよな。それで平場は勝ててるからいいけれど、大一番になると、道中好位キープして四角までじっくり押し上げて、絶好の展開と手応えで直線に向いて来るのに伸びずに勝てないっていう・・・去年の東北アラチャンとかまさにそう。今日も道中控えて、オラオラ状態で前の馬を散々可愛がっておきながら、結局取り逃がしてるもん。」。それにしても何だかなあ。これではペルター越えなどという前に、自らの地位も怪しそう。ホマレエリートも強そうだし・・・
カミノマルーエースは出負けが全て。あれがなければもう少しは格好がついたのでは。同期のムーンライトブルーに古馬A級重賞のタイトルを先に持って行かれた体裁。
マクベスフォンテンは戦前の見立て通りまだちょい足らずかなあ。タービュレンスはやっぱりちょっともうキツいのかなあ。
ムーンライトブルー、口取りを終えて
勝者ってのはよく見えるもんだねえ
表彰式の前に、勝利騎手インタビューが。勝った佐藤涼騎手は今年3年目の若手。でありながら非常に地味な容貌。インタビューのやり取りはこんな感じ。
−作戦は?
「馬のペースになるべく逆らわないつもりで。力のある馬なので。」
−初の重賞制覇ですね
「ここまで我慢して乗せてくれたことに感謝しています。」
−今後に向けて何か
「これからも迷惑かけるかもしれませんが頑張ります。日本海記念に向けて頑張ります。」
と、言葉の端々から謙虚さと場慣れしてなさが滲み出ていたインタビューであった。
帰路、そしておわりに
最終レースは騎乗のある冨樫サンを応援して、これで本日の競馬は終了。
山形駅まで山形シチーさんのクルマで送っていただく。「ホントに一日お世話になりました。サスガ高級官僚の接待は違う!」と感謝して、駅前でお別れ。
山形空港行きのバスは16:50に出てしまい、またこれに乗車して空港に到着してもフライトまで時間が空くので、17:37山形発の各停電車でさくらんぼ東根駅へ。ちょうど学校帰りの高校生で満員。さくらんぼ東根駅には18:03着。「タクシー停まってなかったらどないしよ・・・」とちょっとドキドキしていたのだが、ちゃんとタクシー乗り場に停まっており、それに乗り込み、空港へ。1300円くらいの料金で空港に到着。
そして18:50出発関空行きに搭乗。関空には20:25着。ここから関空快速で大阪まで、そして新快速と乗り継いで、無事住処に帰着。
大幅な賞金カットにも現れているように、上山競馬の運営も厳しいのだろう。しかしながらアラブ、特に上位勢を巡る状況はなかなか見どころが多い。この日の重賞の結果を振り返って、山形さんがちょっと皮肉混じりに言った「不動の本命押さえてA級重賞勝てるような実力馬が底無し沼みたいに涌いてくるんだから凄いよな、上山も・・・」という言葉がそれをよく示しているように思え、記憶に刻み込まれた次第。
というわけで、この「アラブ北の聖地」の激闘を、また観に行きたいものだにゃあ。「んなこと言わんでもどうせまた行くんだろ」って突っ込みはなしよ。
2001.7.28 記
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