第13回農協牛乳杯観戦報告
2001.7.22、金沢、1500m
夏の金沢競馬名物、1500m重賞、農協牛乳杯。全国のアラブ系古馬重賞の中でも、数少ない短距離の一戦。
アラブ古馬重賞に短距離戦の少ない要因を考えるに、一つは長距離戦に格式を置きがちな伝統、そして小回りコースが大半を占める地方競馬において、オープン馬を短距離で本気で競わせるのは危険だという考えの根強さだろうか(例えば園田で距離千四、コース改修以前は千三での古馬オープン戦が年に2、3競走しか設けられていないのはこれに起因するとか)。まあこの風潮も、ダートグレード時代になって、サラが短距離グレードレースでガンガン走っていることを考えれば変な感じだが。
あれやこれや書いたが、この農協牛乳杯、アラブ古馬重賞最短施行距離は、距離1400mの笠松のアラブスプリンターカップに譲るものの、発走地点のバリエーションが多く、コースも比較的広い金沢コースの特性をよく生かしたレースであると思う次第。
ということで、見届けるべく金沢へ。すっかり乗り慣れた、大阪8:42発のサンダーバードにて。途中京都から同志ディープさんが乗り込んでくる。車中一緒に過ごし、11:11金沢着。ファンバスに乗り込んで、正午前には競馬場に到着。
6月24日、セイユウ記念観戦に訪れた際に設置工事中だった、コイン式のゲートが稼働開始しており、これを通って入場。
この日の金沢競馬は12レース施行。そのうち4レースまではサラ系で、5レース以降は全てアラブ系競走。手荷物預けに銀箱を託し、アラブのレースが始まる前に腹ごしらえとばかりに、ディープさんと二人して寿司屋に突撃。超ハイペースで平らげて皿の山を築くディープさん。ワシはガント、ブリトロ、アジ、バイ貝と食し、前回食い損ねたネギトロの軍艦巻きに手を出す。充分なボリュームで満足の一皿。
天気はドッカン夏晴れ。風があり湿気が少ないだけ若干ましだが、やはり暑い。馬場状態は乾き切った良。レースの傾向としては、馬に力があればインで逃げ残れるが、全体的には好位から直線ソツなく脚を伸ばした馬が馬券に絡むレースが多い。ただ後半になると、差し差し決着も見られ、金沢の平均的な傾向よりは、後方からよく届いていようかと。
5レース以降馬券を買うが、ちっとも当たらない。呆れるほど当たらない。5レースにはライジングトウザイの半弟が、6レースにはエルデンライデンの半弟が出ていたりして、血統的には面白かったりする。
※農協牛乳杯についてはここからです
ということで、馬券全敗のまま、メインレースの農協牛乳杯を迎える。出走馬は内枠より以下の通り。()内は騎手、負担重量。
ブルーホーク(殿田、54k)、イセイチフブキ(桑野、56k)、マルイシヒーロー(長嶋、54k)、ベストイチ(蔵重、54k)、ホマレドン(藤川、53k)、ダイリンフラワ(米倉、52k)、グリンエイシ(平瀬、53k)、ダブルシックス(中川、54k)、サンエスジュニア(山本登)、トライバルリーフ(渡辺、54k)、スマノオウジャー(安部、53k)
◆
パドックから発走まで
3時を過ぎても一向に和らぐことのない暑さの中、パドックに出走馬が登場。
1番ブルーホーク。大人しい周回。胸前から下腹にかけて発汗の跡が目立つ。
2番がイセイチフブキ。馬体の張りはいつも通り。大人しい周回はまあこんなものか。次第次第にじんわり気合いが乗ってくる。馬体重が505kで、前走セイユウ記念時よりも6k増えている。そのせいか、若干重々しい。この暑い時季にプラス体重。昨年のこのレースでもそうだったとはディープさんのご教授。どうも汗のかきがよくないみたい。「イセイチはここが正念場ですよ。スピードで押し切れるこの距離で格好つけられないといよいよ黄昏どきですよ。」とディープさん。同感。
3番マルイシヒーロー。パドック入場当初はこの馬にしては大人しい気配だったが、周回を重ねるにつれ、いつもの煩いマルイシになってくる。今季はあまり良積がないが、昨年のこのレースの勝者。この距離も合う。
4番ベストイチ。馬体重は前走比+3kなのだが、今日はどうも馬体が小さく見える。この馬の差しは何となく短距離で活きそうに個人的には思うのだが。
5番ホマレドン。ホーエチャンピオンの年子の半兄。半兄弟だけに両者全く似ていない。この兄はホマレブルショワ産駒らしく、若干細身で気性が荒そう。弟はいかにもホーエイヒロボーイ産駒といった馬体なので、母の名牝ハイトウザイは父の特徴をよく出すのだなと、勝手に納得。とにかく煩い周回で何度も立ち上がるほど。あまりに激しいので途中で退場。
6番がダイリンフラワ。現在の金沢3歳断然の筆頭。6月の楠賞遠征では人気を背負いながらも全く走れず最下位に終わったが、その後地元でA3、A2戦を連勝。勇躍この古馬重賞の舞台に登場。体表に発汗の跡が。毛艶はそれほど悪くはない。ギクシャクした独特なトモの送り。ガンと身の詰まった胴体。楠賞時の、かなり腹の上がったプロポーションとは格段に違う。捲りの破壊力は益々増している模様で、多くの本命評価を集めている模様。
7番グリンエイシ。兵庫のオープン牝馬が5月16日のスプリングカップ11着を最後に金沢に転入。前走A1戦が当地緒戦で3着とまずまず。スッキリとした馬体で張りは上々。太い身入りの良さそうな胴体。
8番ダブルシックス。今春まで福山所属だったが、彼の地のA1級ではちょっと頭を打った感もあり、4月15日の福山桜花賞を最後に金沢に移籍。転入以降はA1で3戦4着3着2着と上々の結果。二人曳きで押さえつけられて、大外を周回。相当の気合い乗り。500k近い大柄な馬体の張りは上々。
9番サンエスジュニア。いつもながらキビキビとした身のこなしで、馬体もいい感じなのだが、ベストイチと同様今日は小さく見える。
10番トライバルリーフ。かなり発汗している。ギクシャクしたトモの送り。右前肢の付け根に大きな瘤(脂肪の塊か?)があり、ムチャムチャ気になる。昨年の4歳(旧表記)チャンプも今季は1勝であまりピリッとしないが、短距離が良さそうなクチなので、ここは勝負か。
11番スマノオウジャー。スッキリして見えるが馬体が薄い。ここは劣勢は否めぬところ。
本馬場入場。金沢の流儀で各馬外ラチ沿いに曳かれて登場。そしてゴール前50mあたりから返し馬に。しかし今日は全馬そのまま馬場を3/4周したのみで、4コーナーポケットの待機所に直行してしまう。
パドックからスタンドに戻ったところで合流したディープさん、開口一番、「ダブルシックスいいじゃないですか。買おうかなあ。」。因みに今日の金沢、結局その他我u々と面識ある人物の来場はなかった模様。
予想。ダイリンフラワの本命に逆らう手はない。多分距離もいいだろう。そして相手だが、この距離での差しがありそうなマルイシヒーローと、同様にベストイチ。そしてやっぱり踏ん張ってほしいイセイチフブキ。イセイチが残る展開と、ダイリン以下の差し、捲り勢が届く展開は両立しそうにないのだが、ちょっと心情多分に入った、上記4頭ボックスで。中でも特注はダイリン−ベストイチの組、これを厚く。「ホンマにベストイチ買うんですか?ようやるわ。」とディープさん。
◆
レースなり
いよいよレース。距離1500mの発走地点は4コーナーのポケット。ここから1周と最後直線をゴール板まで。
ゲートオープン。中からやや外枠のグリンエイシやダブルシックス、サンエスジュニアあたりの出が良い。一方内のイセイチフブキはタイミングが合わなかったか、やや腰砕けな発馬。しかしながら行かねばどうしょうもないので、鞍上桑野に押されて前へ。ゴールまでの直線半ばあたりまでにはトップを奪取する。
ということで最初の直線スタンド前、先頭は内でイセイチフブキ、リードは3馬身くらいか。2番手外目にダブルシックス、3番手その直後外にサンエスジュニア。以下、ダブルシックスを直前に見る格好でグリンエイシと、この外に併走トライバルリーフ。このあたりのインにマルイシヒーローまずは好位。ここからやや開いて以降は後方。ベストイチ、ダイリンフラワ、スマノオウジャーがほぼ同じポジションで、最後方が内でブルーホーク。
最初の正面スタンド前
先頭内イセイチ2番手外ダブルシックスとサンエスジュニア、インの赤帽がマルイシ
そして隊列は1コーナーから2コーナーへ。二角を回ったあたりでまず動いたのがトライバルリーフ。鞍上渡辺、意識的に仕掛けた模様で、捲り気味に外から進出。向こう流し半ばにかけて前の馬をグングン抜いて、三角手前では早々に先頭に躍り出る。そしてその余勢を駆って、単騎三分三厘を回ってくる。このまま押し切ろうという算段。
ところがこの3、4コーナー中間、外からただ1頭、福山の実況風に言えば「いつの間にかの」ダイリンフラワが突如(ちょっと大袈裟か)2番手に出現。桁違いの脚で先頭のトライバルリーフに急接近。どうやらリーフの快走に気を取られているうちに、三角手前から十八番の捲り脚を炸裂させたらしい。ダイリンの後方はチ切れ、一騎打ちの予感。
しかし4コーナーから最後の直線、前のリーフに追いついたダイリン、並ぶ間もなく一気の交わして先頭に。リーフも脚が止まって抜かれたわけではなく、しっかりした末脚で走っているので、直線両者の差は思ったより開かぬものの、結局ダイリンフラワ、パワフルな走りで押し切って、3歳7月の時点で古馬重賞にV。2着は2馬身半差でトライバルリーフが粘り込む。
ダイリンフラワ、ゴールへ
口を割って舌を出しかけている
2着はトライバルリーフ
今日は格好ついたかな
そしてこの2頭の後方は・・・イセイチフブキは2頭には一気にやられたものの、残り150mあたりまでは3番手で持ちこたえていた模様。しかし終始先団をキープしたグリンエイシにサンエスジュニアが、終い直線五分どころより外を、加えて、レース中盤で好位から一旦下がって再度差し込む形になったマルイシヒーローがその外に併せ、これら3頭でインで粘るイセイチを沈めて3着争い。結局マルイシが2着リーフに遅れること2馬身半の3着。アタマ差でグリンエイシが4着。1馬身半差でサンエスジュニアが5着。
以降、6着は追い込むも遅すぎたベストイチ。7着ブルーホーク8着スマノオウジャー9着ホマレドンはいずれも後方から。イセイチは結局ブービーの10着。直線途中までグリンエイシやサンエスジュニアと争ったダブルシックスが失速して殿負け。とはいえ3着マルイシから殿ダブルシックスまでは1秒7差なので、それほど各馬の着差がバラけていないレースだったかと。
ダイリンフラワ、口取り
胴体の逞しさに御注目
◆
レース終わって
「ダイリンフラワ、ムッチャ強いやんけ!」というのがレース終わっての感想。楠賞時は距離2400mがやはり長いのか、道中ひどく掛かったが、今日の1500mは楽に追走して捲り脚炸裂。どうやらこの馬、レース距離はそれほど長くない方が良さそう。千五から二千あたりまでか。「それにしてもやっぱりこの馬、桑野のでも、埋橋のでもなく、米倉の馬だな。今のところは。」とはディープさん。惜しむらくは今秋は牝馬の全国交流競走がないということ。
「2着トライバルリーフかよ・・・何でここで来るかなぁ・・・」と、買っていないこの馬が2着に来て愚痴るワシ。「いやあこの2着は順当でしょ。元々距離短い方が合いそうやし。それに渡辺、今日乗り鞍これだけでしょ。一発狙ってきたわけで。」とディープさん。金沢初心者のワシとしては、この馬の強い走りを初めて目撃した気がする。
「しかしマルイシ、この距離この展開でトライバルリーフ差せないのはアカンやろ。」とはディープさん。せっかく前半好位につけながら中盤下がってしまうのが痛い(この悪癖は調教師のコメントとして予想紙上にも掲載)。まあ今季のイマイチな戦績からすれば上々か。しかしこれで連入してくれないことには馬券的に困る。
グリンエイシは移籍後なかなかの活躍なのでは。サンエスジュニアはまだまだ。ベストイチ、いくら何でも仕掛け遅過ぎ。見込んだ程短距離合わないのか。
そしてイセイチフブキ。終い大失速というわけではないのだが、直線に入ってから脚が伸びていないので他馬との追い比べでは勝てるべくもない。そろそろ落日が近いのか、それとも季節的なものか。昨年もそうだったが、夏場は成績が落ちる。
「わし農協牛乳杯過去5年皆勤やけど、逃げ馬連対外したの今回初めてですよ。」とディープさんが仰る。ナルホド・・・馬場状態や出走馬の脚質や力関係、それらが作用してこうなったわけかな。
メインレースの発走が4時5分と遅かったため、最終レースの本馬場入場後に行われた表彰式を撮影していたところ、もう既に4時30分を過ぎている。「これ35分のファンバス乗らないと、17時14分の雷鳥に間に合うの、厳しくなりますよ。」とのディープさんの判断で、慌てて退場し、ファンバス乗り場に向かうが、目前でバスは発車してしまう。ここでディープさん、曰く「タクシーで森本駅(これが競馬場最寄り駅、とはいえかなり離れているが)まで行って17:04の各停に乗れば、17:11に金沢着やから、雷鳥に間に合いますよ。」。ということでタクシーで森本駅へ。運賃は1300円くらい、10分強で駅に。
目論見通りに金沢にて雷鳥42号に乗車。3連休の最終日の夕方ということで、自由席はほぼ満席。二人無事に着座でき、あとは関西まで。ディープさんは京都で下車でここでお別れ。ワシは新大阪で下車してここからは新快速。今回の金沢競馬観戦も無事終了。
しかしなあ、馬券全敗、何とかならんもんかいや・・・
2001.8.4 記
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