2001年度、ビーナス賞観戦報告

 2001.8.5、福山、1600m 但し重賞ではなく特別競走

福山年に一度の牝馬No.1決定戦、ビーナス賞。重賞競走ではなく、当初は観戦記書くつもりはなかったのだが、ディープさんの「わしにとってはビーナス賞は重賞も同然」というコトバが決め手になって、観戦記記そうと思った次第。

今年度の福山、第6、7回開催(7/14〜8/6)は、初の試み、薄暮レースで開催。発走を通常より2時間遅らせ、メインと最終競走が、涼しくなろう夕暮れ時になるように変更するというもの。具体的には第1レース発走が13時15分、第11レース発走が18時30分。この薄暮レースを体験するというのも、今回の福山観戦の大きな目的。

ということで福山へ。青春18きっぷ利用で在来線にて。西明石11:38新快速→姫路11:57、乗換12:07発→笠岡でサンライナーに乗換→福山14:22着。駅前から14時半発のファンバスに乗り込み競馬場には3時前に到着。これで第4レースの発走が終わったくらいの時間。

天気は晴れ。この年の猛暑はどこに行っても一緒。500円の特観席『わくわくルーム』はとうに満席売り切れ。
馬場状態は良。砂が入ったらしく、若干力の要る馬場とのこと。逃げ馬の連入率が高そう。
場内には、現地駐在おさるさん、電設の男@ともろうさん、エチゼンさん、ふささんの姿が。皆さん既にラーメンはやっつけて、かき氷でクールダウン中。そして珍しく、山ちゃんがお連れさんと来福。クルマでやって来た模様。やや遅れてディープさんが。そして地元FUKUさんも。

※ビーナス賞についてはここからです。
さてビーナス賞。冒頭にも記したが、福山競馬唯一の、牝馬限定の古馬競走。現在稼働している牝馬の格付け上位10頭、上はA級バリバリ馬から下はB級下位しかし好調馬まで、ズラリ動員という、単純かつ豪華な出走馬選定。 昨年まではこのレースが、秋に園田で行われるアラブクイーンカップへの、福山代表決定戦でもあったのだが、今年から全国交流アラブクイーンカップは消滅してしまい、その意義は失せた。「この後に繋がらないのが残念。」とは、電設師もディープさんもおさるさんも口にすること。

というわけで出走馬は以下の通り。()内は騎手、馬齢。
ムサシボウナナ(石井、6歳)、アサノクーペ(久保河内、6歳)、グリンティアラ(片桐5歳)、タイコーリンダ(野田、6歳)、イクノシンプウ(岡崎、4歳)、アレクシア(藤本、4歳)、コピエ(岡田、5歳)、コウエイキュート(楢崎、5歳)、ドリーミング(渡辺、5歳)、イクノブライト(鋤田、5歳)
ハンデは馬齢重量。6歳のムサシボウナナとアサノクーペ、タイコーリンダは53kでそれ以外は54k。

時刻は5時半を回ったあたり、ようやく陽も傾いて涼しくなったかなというところで、パドックに出走馬が登場。
1番ムサシボウナナ。昨年の同レースの勝者で、遠征したアラブクイーンカップでは健闘の3着。以後不調時もあったがA級で活躍。前走はA2戦をモナクマリンの2着。いかにもビーナス狙いの仕上がり過程か。スッキリした馬体で良好な毛艶もこの馬本来のもの。
2番アサノクーペ。ここ1年半以上A級を張っているが、A1に入ると家賃が高いという、2組3組の常連。ちょっと近走は不振。伸びやかな馬体の作り。
3番グリンティアラ。園田所属の昨年、アラブクイーンカップをクインラマとの同着優勝。その直後福山に転じ、福山大賞典は僅差3着。この次走大本命でマイラーズCに臨むところ、直前で取り消し(鼻出血らしい)、以降半年休養。久々の前走は5着。格付けではこの馬が最上位。さて気配、踏み込みの強さが出色。馬体の艶も張りも良く、出来は良さそう。リアルタイムでは気にならなかったが、写真で見直すと、ちょっとヒ腹から腰が意外に細い。「グリンティアラも良いですね。」と言うと、ディープさん「福山大賞典の時はもっと良かったですよ。神々しく見えたくらいね。それに比べたら今日は並。」とのこと。
4番タイコーリンダ。4歳(旧表記)初夏に高崎より転じ、勝ち星を連ねて秋の4歳牝特は2着。昨春からA級暮らしだが、近3走は全て殿負けと不振。ずっと舌を出しての周回。肩から腹メまでに比べてヒ腹より後ろが弱く見える体型。
5番イクノシンプウ。昨年のクイーンカップ馬、そしてアラブ王冠と4歳牝特は2着。素質と地力は同世代の牝馬のうちでも全国一だと思うのだが、休みが多く、軌道に乗れないのがもどかしい。現在はB級上位格付け。昨年12月のアラブ王冠以来目にする彼女、終始小走りで煩い周回。暑さよりエキサイトに起因するのでは?という発汗が目立つ。馬体重420kはアラブ王冠時より10k以上軽く、心身共に成長度に疑問符。
6番アレクシア。昨年の福山ダービー馬。しかし以降未勝利。まさに「ダービー勝ってしまった馬」状態。それでも現在はB1格付け。相変わらず首が高く、煩い周回。それでも歩様は良い方か。「しっかしアレクシアも進歩しないなぁ。」とワシが言うと、ディープさんは「どうでもいい。」といった感じ。
7番コピエ。一昨年のダービー3着で銀杯勝ち馬。「この世代福山最強はコピエ」と、かつてから評価は高かった馬。途中1年以上の長期休養があり、昨秋B級から再出発。初夏以降調子を上げて、前走遂にA1入り(4着)。ワシ、この馬をメインレースで意識して目撃するのは、今日が初めて。活気ある周回。重心低そうなスタイルで肌の張りや艶も良好。イメージよりも馬体の身入りが良い馬なんだな、というのが第一印象。「コピエが絶好に見えますよ。」とディープさん。「三場交流ん時にはピカイチにはともかくリスペクトにも負けて、信じれんかった。」とのこと。
8番コウエイキュート。昨年6月まで兵庫所属で、以降福山に。転入直後は2勝したようだが、近走は不振。ずっとB級暮らし。これは見た目にも平凡。445kの馬体重の割には、もっと小柄に見える。
9番ドリーミング。6月までは上山所属、彼の地でのクラスはバリバリのA級。先月15日が転入緒戦で、B1戦を2着アレクシアに1秒5差をつけて圧勝。「上山の現5歳世代はレベル高いですよ。マルハチにカミノマルーエース、ムーンライトブルーにマクベスフォンテン、そしてこの馬。この馬3歳(旧表記)の頃から重賞一線級ですからね、(前走)このクラスじゃあれくらい走っても当然でしょう。」とディープさん。鹿毛というものの、馬体は黒光り。良く引き締まった姿。伸びやかな胴体の作り。
10番イクノブライト。今年はじめからB級だが、それ以前のC1時代も長いという中堅馬。B1の経験はない。明るい栗毛の馬体。
グリンティアラ、パドック(49KB)
「アタシがティアラ!」
ちょっとヒ腹から後ろが細い?
コピエ、パドック(43KB)
「アタシがコピエ!」
これは好馬体!

予想。ここは実績上位のティアラとコピエを信用して。ドリーミングは非常に気になるが、ティアラとコピエを本線にすると、他馬に手を伸ばせば、的中したとしても元金割れを起こしかねないので切る。連単のオッズは、どちらをアタマにしてもあまり妙味がない。「これは馬複やろ。」とFUKUさん。締め切り数分前まではコピエ→ティアラの方が人気。「ティアラが抜け出してソラ使ったところをコピエが差すってか。」というところか。「グリンティアラだけは買わん!」とは電設師。ティアラ支持はディープさん。やはり不気味なのはドリーミング。

レース発走。距離1600m。スタート地点は向こう正面半ば。
スタートと同時に先行脚質勢が先手を争いつつ前へ。こうした中、一旦楢崎コウエイキュートがハナに立つも、三角手前では外から鋤田イクノブライトが先頭を奪う。
ということで隊列は正面スタンド前に。先頭ブライト、2、3馬身開いて2番手コウエイ。この後ろはさらに開いて、3番手に渡辺ドリーミング。この直後内石井ムサシボウナナ、外岡崎イクノシンプウ。これを見て片桐グリンティアラ、直後岡田コピエと、格付け上位2頭は好位。この後ろは内久保河内アサノクーペ、外野田タイコーリンダ、殿サブちゃんアレクシア。
イクノブライト逃げ快走も、二角でドリーミングが発進。みるみる前に迫り、程なく前2頭、イクノブライトとコウエイキュートを捉え、向こう流し半ば過ぎには先頭に躍り出る。このあたり、先団付けの2頭、内からナナと外からシンプウが仕掛けてドリーミングを追う。が、一方グリンティアラとコピエは行きっぷりが目につかず、圏外の予感。それらを尻目に、とにもかくにもドリーミング。三分三厘以降は、ブッチギって単騎快走。
最後の直線、余裕しゃくしゃくドリーミング、最後は渡辺騎手、後ろを振り返りつつのVゴール。2着とは6馬身差、タイム1分45秒8はこの馬場を考えれば速い!
後方の2着争い。ナナがインベタで粘るも、外からイクノシンプウが早々に交わしてこれが2着。遅ればせながらグリンティアラ、直線を向いて外から差し込む。これがどうにかこうにかナナを交わして3着、しかし前とは6馬身差。ナナは3/4馬身差の4着。コピエは四角以降全く振るわなかったようで7着。後ろから仕掛けたアサノクーペ(5着)やアレクシア(6着)にも交わされ負けている。

ドリーミング(39KB)
「悪いけど、勝つのはワタシ!」
ドリーミング、楽勝のゴール前

「ドリーミング、強え〜!」「サスガ上山A級の実力。」と、ドリーミングの圧勝には皆さん一様に脱帽といったところ。地力ありそうとは戦前予想できたが、ここに入ってこれほど一方的な勝利になろうとは、その様を見せつけられると言葉もない。それにしても鞍上渡辺騎手は旬の馬、勝ち頃の素質馬を確実に勝たせるなあ。「これだけ走ったら金杯出てくるやろ。それで結構人気するねんで、で、(中略)な!」と、FUKUさんやディープさん。
イクノシンプウはここで2着か。素質は大いに認めているだけに走られても納得。しかしあのパドック気配では手が出せない。久しく実物を目にしていなかっただけに個人的にはきつかった。これだけの走りをコンスタントに出来れば余裕でA級入りなのだがなあ。電設師はバッチリ当ててご満悦。「う〜ん、ビーナス賞は毎年予期せぬ馬が2着に来るなぁ。」とはおさるさん。
グリンティアラの3着は物足りない。まだまだ爆発力不足。この敗退で金杯出走は苦しくなったか。ムサシボウナナの4着はレースの流れ的にも彼女の近況的にも順当か。コピエはどうこう言いようもない。こんなもんじゃあないだろう。


そして最終レース。ここの本命は、昨年4歳(旧表記)世代の有力馬だったヤマノダイオー。伸び悩み気味だが押し出されるようにA3入りしてしまった今回。藤本サブちゃんを初めて鞍上に迎え、差し競馬をするも、先に仕掛けたエルホルクを捉えきれず、2着敗退。
「ワタリエリート(アキフジクラウンの全妹、この日の8Rで勝利)にドリーミング、この"今日は上山OBデー"っていうムードをもってしても勝てないっていうのがいかにもヤマノダイオーだよな。」と、FUKUさんがバッサリ。一同納得。

ということで薄暮レースのこの日の競馬も終了。おさるさんは愛妻サービスで笠岡の花火大会見物へ。ふささんはマイカーで帰路。エチゼンさんは山ちゃんのクルマに同乗して帰阪。電設師とディープさんとワシはFUKUさんのクルマにて福山駅まで送っていただく。ディープさんと電設師は新幹線乗車ということで駅でお別れ。ワシは在来、19:16発→20:13岡山、乗換20:24発→姫路21:44、乗換21:45→西明石22:17着と、無事帰着。


最後に、アラブの牝馬の全国交流競走について。アラブ生産、アラブ競馬を巡る状況がこのようなものになってしまっては、「優秀なアラブ繁殖牝馬を選定する・・・」などという主旨は虚ろに響くが、それでも全国アラブ競馬施行各地には、今もなお相当数の有力牝馬が存在するわけで、牝馬の、それも古馬混合の全国交流競走が消滅してしまったのは何とも残念。思い浮かぶまま、ざっと挙げれば、現道営のイケノエメラルド、上山3歳最強ホマレエリート、新潟の美形斬れ脚ラブリーハート、名古屋のヘイセイチェッカー、金沢の捲り娘ダイリンフラワ、兵庫のトライバルサンダー、益田のイッテンヨカイチにニホンカイマリノ、荒尾の熟女シルバーハヤカゼ・・・そして今回の福山ビーナス賞の出走馬たち。これらの面々で繰り広げる全国交流、エエと思うよ、絶対。
この、恵まれたとは言い難い時代に奮闘する彼女たちに、エールを込めて、そして真夏の瀬戸内、オンナの熱い闘いの、その証の一つとして、この観戦記を――

2001.8.14 記

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