第27回金杯観戦報告
2001.8.15、福山、1600m
◆はじめに〜福山へ
福山盆開催の重賞大一番、金杯。ファン投票で出走馬が選定されることがこのレースの特徴ではあるが、夏の時季、有力馬の何頭かは休養中で、オールスター総出演には至らない。むしろ注目は、7月以降の夏競馬3開催、施行距離は千六までという状況(これを"灼熱のマイル戦線"と個人的には呼ぶのだが)の総決算であるという点。マイル巧者と夏の上がり馬の激戦が、観戦のポイントか。
今年はこの金杯と園田の摂津盃が同日。ケイエスヨシゼンの動向次第で、どちらを観戦するかは究極の選択となったところだが、周知の通りヨシゼンは先月末のサマーカップにて引退。引退式も年末ということで、摂津盃への登場はなし。斤量62kのワシュウジョージvs59kのハッコーディオスの一騎打ち、6頭立ての少頭数レースとなり、ワシ的には「面白そうなのは断然金杯!」ということで、福山行き。
夏の福山はとにかく暑い。加えて、空調の効いた特観席は、盆開催では開門と同時に売り切れ、席を取ることはまず不可能。よって、1レース早々に競馬場に行っても、暑い思いをする時間が長くなるだけ。
というわけで、今回はやや遅めに住処を出る。西明石10:38発新快速→姫路10:59着、乗換、11:04発三原行き各停→岡山12:26着、乗換、12:38発快速サンライナー→福山13:22着。
三原行きの電車に乗った場合、いつもならば笠岡まで行ってサンライナーに乗り換える(ここで快速が各停を追い越すので)のだが、この日の三原行き、満員。加えて乗車した車の空調の効きが悪く、堪らず岡山で脱出した次第。
ファンバスは終わっているので、福山駅からは路線バス。折良くバス停に競馬場の前を通る数少ない便が停まっており、これに乗車して競馬場に。
◆そして競馬場〜メインレースまで
天気、晴れ。逃げ場、なし。馬場状態は良。砂は適度に入っている模様。
入場して撮影許可証を貰った直後、リーダー前田っちに遭遇。汗びっしょりのリーダー。ラーメン食った直後とのこと。
リーダー、開口一番「今日は逃げ馬全部飛んで残せてないらしいで。」。暑くてコース前になどおれないので、休憩所の中で涼みながら、7、8、9レースと動向を見つめる。すると・・・
まずは7レース。人気の岡崎騎乗マルサンヴィラーゴ(あの"狂気の女傑"マルシンヴィラーゴの仔です)、距離千六は初体験、しかも先行馬、先手を奪うと思われたところ、岡崎jk、手綱を引っ張り中団待機、二角から徐々に進出し、直線きっちり差し切って1着。
8レースも岡崎鞍上のミカワオイデン、他の人気馬石井ムサシボウトップや岡田モナクトトロが先に仕掛けた後から、これも二角過ぎに発進で差し切り勝ち。さらに9レースもまたまた岡崎、追い込み脚質チャームで、これまた差し切りV。
というように、以上3レース、全て岡崎騎手が、それこそ判でついたような二角発進終いキッチリの勝利。これで確かに、先に仕掛けた先行馬が残せないという状況。逃げが残らない馬場ということは確認できたわけだが、それより何より岡崎マジック。「う〜わムッチャふざけとるやんけ!」と思わずリーダー。「これ岡崎金杯モナクマリンでどうするよ?」「まさかマリンで捲るってか?」「いくら何でもそれは無茶やろ。」などと。
場内で"地元駐在"おさるさん、地元FUKUさん、そしてメインレース前にWSさんとご挨拶。
※金杯についてはここからです
さてメインレースの金杯。出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手。
セブンアトム(片桐)、エイコウライン(野田)、モナクマリン(岡崎)、フジキタイトル(嬉)、ホマレスターライツ(渡辺)、イムラッドシンゲキ(藤本)、ドリーミング(岡田)、シュメイヒーロー(石井)、ヨシユキトップ(吉延)、アローパッション(鋤田)
斤量は牝馬のドリーミングが55k、それ以外の牡馬は一律57k。
ファン投票の結果はこの通り。マリン、ホマスタ、ヨシユキ、エイコウライン、パッションまでが順に得票上位5頭。それ以外の5頭は主催者推薦での出走。
◆パドック、そして返し馬〜発走まで
パドックに出走馬が登場する。
1番セブンアトム。前開催のA1戦、福山てんまや賞を勝って連闘でここに登場。馬体の張り、艶は良好。トモの送りはやや堅いか。昨秋の中堅クラスをコツコツと出世していた頃とは、馬体の実入りが格段に違う。以前は若干あった華奢な感じが微塵もない。
2番エイコウライン。今夏が9歳の夏となる。その歳の割には出来は上々か。シャドーロールに引き返し、ゴテゴテの馬装も相変わらず。周回の歩みが遅いのか、前との間隔が開く。
3番がモナクマリン。『福山エース』が付けたあだ名が"音速の貴公子"。地元のお客さんも心得たもので、ファン投票第1位。これが休養明け3戦目。前走は前々開催のA2戦を逃げ切って、ここに登場。完調なれば不動の本命のところ、中間の歩様に不安が出たようで、時計が出せず、状態不透明なままでの出走。しかし馬体の艶、筋肉の張りは前々走の復帰緒戦よりは格段に良化している。トモの送りはやはり浅く、堅いか。「まあでも万全の体調じゃなくって、時計出せなかったっていうからそう思えるわけで、必ずしも悪い出来でもないよ。」とはFUKUさん。
4番フジキタイトル。前走前開催のA2戦3着。大人しく周回。鹿毛の体表からはあまり発汗してはいない。A1クラスバリバリのオープン馬の中に入ると苦戦必至か。
5番がホマレスターライツ。5月のタマツバキ記念以後も休養入りせず、コンスタントに出走し、意外にも夏競馬突入。しかしハンデ5k差とはいえヨシユキトップに連敗。とはいえ馬体の仕上がりは文句ない。適度に発汗して黒光りする馬体の張りは上々。今日はトモの送りも大丈夫。若干肩の出が堅いかなあというところ。「やっぱり一番雰囲気あるのはホマスタだと思うよ。」とはFUKUさん。「ただレースぶりがねえ。大抵自力で押し上がって先頭に立ちながらも、結局他馬に差されるっていう。」とワシ。「そうそう、それでスパートしてからも、一気にっていうんじゃなくて、何かモチャモチャしてるんだよな。」「かといって今さらセコい競馬出来ないところがツラいですね。」などと語らう。
6番イムラッドシンゲキ。前走前開催のA2戦、明らかに先行有利な状況(byおさるさん)で、藤本サブちゃんに御せられ、後方から捲り差してユノワンサイドを下して1着。この舞台に滑り込んだ。口を割って舌を出して、煩く周回。まあこれはこの馬のキャラなので気にはならない。歩様も含めて身のこなしが柔らかく、好感。「イムラッドシンゲキ良く見えますよ。」とワシ。FUKUさん曰く「うん、体調良さそうだよね。」。
7番がドリーミング。紅一点。前走ビーナス賞の圧勝ぶりは記憶に新しい。それを承けての主催者推薦での登場。「ビーナス賞の時くらい走れれば好勝負必至」とは大方の見方。今回は鞍上が渡辺騎手から岡田騎手に変わって、これがどうかが一つのポイントか。馬体は前走から引き続き良好。伸びやかな周回。トモの踏み込みも良く、スムーズ。
8番シュメイヒーロー。前走はてんまや賞をアトムの3着。これでA1昇級後は連続3着と、それなりに通用している。上昇馬の1頭でマイルも合うクチ、勝ち負けはともかく、出走してくれて何より。周回で目を惹くのは重心の低さ。頭から尻まで、背中が地面と水平になっている。馬体は良好。ちょっとトモが堅い。
9番ヨシユキトップ。3走前と前々走はホマスタに連勝。前走はてんまや賞でセブンアトムに敗れたが、それでも2着。いまや押しも押されぬA1クラス中心の1頭。馬体の感じは良い意味で平行線。元来が堂々とした好馬体なので、文句は全くない。力強い歩み。ちょっと肩が堅いか。
10番アローパッション。好調だったのは年明けから冬のうちまでで、3月の佐賀遠征から帰って以降は振るわず。この間唯一の勝ち星は5月28日のA1A2戦、つまりタマツバキ記念の開催の裏オープン。馬体はまあまあだが平凡。トモの踏み込みが弱い。今回は剛腕鋤田騎手が初騎乗。
ということで、パドック気配で個人的に好感を抱いたのは、ドリーミング、イムラッドシンゲキ、ヨシユキトップの順。
本馬場入場から返し馬。エイコウラインは入場早々1コーナー方向へ駆け出して待機所に直行。モナクマリンはスタンド前から返し馬に入り、例によってこれもそのまま待機所に。セブンアトムは強めのキャンター。ドリーミングやイムラッドシンゲキ、シュメイヒーローは比較的軽く。ホマスタはいつも通りに鶴首になって前脚を高く振り上げてのダク。「セブンアトムが抜群に良く見えるなあ。」とはおさるさん。
モナクマリン、本馬場に登場
さあ行こう"音速の貴公子"
予想。モナクマリンが並以上の出来ならば、スピード能力の違いでアタマ鉄板のところ、今回はそうではないという点、また逃げ切りの決まらぬ今日のレース傾向によって、やや難解なレースとなっている。それでも本線馬券は、マリンから、セブンアトムとドリーミング。マリンは道中どれだけ離して逃げることができ、最後の直線にリードを稼いでやってこれるかが鍵かと。セブンアトムは、前を捕り逃す、もしくは後ろから差される可能性は多分にあろうが、いずれの展開でも渋太く2着はもちこたえそう。悲願の重賞制覇にも期待して。ドリーミングは前走が前走だけに取り敢えずは押さえる。加えて、スケベ馬券として、差し馬のパッションとシンゲキから人気どころに軽く流す。ことにシンゲキはおさるさんも御推奨。藤本サブちゃんとの相性も良さそう。ホマスタは前記の通りの最近勝ち切れないレースぶりと、マイルの忙しい競馬はプラスにはなるまいと見込み、軽視。ヨシユキトップもホマスタとの斤量差を考えるに、今回はイーブンである点、また人馬共に感じられる勝負弱さを考慮し、ヒモの押さえまで。
◆レース〜瀬戸内、激闘マイル総決算2001夏
いよいよレース。距離は勿論1600m。向こう正面半ばからのスタート。
ゲートオープン。モナクマリンも先手を狙うが、好発は1番枠のセブンアトム。これがインから果敢に前に。そしてモナクマリン。アトムの外に並びかけていく。ここでアトムが素直に譲らず、3コーナーを回るあたりまで併走。
しかしこの後はモナクマリン、独壇場の高速巡航モードに。グングン加速してアトムを振り切り、単騎正面スタンド前に向かってくる。アトムは控え、ここに後続が追いついて先行集団におさまる。
ということで正面スタンド前、先頭はモナクマリン。後ろに10馬身以上は差をつけての走り。小気味よいピッチ走法。そして2番手以下の集団。このアタマはセブンアトム、掛かってはいない。その外1馬身ほどの直後に早くもホマレスターライツ、今日は先行策。ホマスタの真後ろにシュメイヒーロー、このインにドリーミング。これを2馬身くらい前に見て、ヨシユキトップが追走。ここまでが先行、好位集団。以下フジキタイトル、エイコウライン、イムラッドシンゲキと続き、殿がアローパッション。
1周目スタンド前、2番手先団
集団のアタマはセブンアトム、直後外にホマスタ、インの向こうにドリーミング
1、2コーナーから向こう正面、引き続きモナクマリンが大差をつけて先頭を行く流れから、レースが動くのは3コーナー手前。ここでセブンアトムとホマスタが動く。後ろが加速したからか、脚を溜めたからか、または脚が鈍ったからか、先頭マリンのリードがみるみるなくなる。三分三厘、マリンのリードは3馬身くらい。「あ〜これマリン残せない・・・」と独りごつ間に、アトムとホマスタが迫ってくる。そしてそして、来たのはドリーミング!向こう流しでじわじわと前に取り付いて、アトム、ホマスタのインに。四角手前で左右に挟まれ、ちょっと窮屈になってピンチとも思われたが、それも何のその。伸びあぐねるアトム、ひと脚でケリをつけられないホマスタを横目に、密集を破って抜け出してくる。
そして最後の直線、内ラチ沿いを走る、もうリードのなくなったモナクマリンを並ぶ間もなく交わして先頭に。最後まで確かな脚取りで、上山から転入以来3連勝での、重賞制覇のVゴール。2着とは3馬身差だが、着差以上の完勝、強い!「うぉ〜ドリーミングぅ!」と、その強さにゴール前、ファンから喚声があがる。
ドリーミング、完勝のゴール
抜け出し独走Vなのに写真ブレてる・・・
この後ろ、ドリーミングに一気に交わされ、ちょっと面食らった体裁のホマスタ。四角出口で外にヨレながら必死に追走。三分三厘では上昇のタイミングがちょっと遅れたヨシユキトップが差し込みホマスタを追う。結局ホマスタが2着死守。2着とは1馬身半差、逃げたマリンをクビ差交わしてヨシユキが3着。4着マリン、最後は岡崎騎手も無理には追っていない感じ。5着は勝負所から伸びなかったセブンアトム。
6着シュメイ、7着フジキ、8着パッション、9着シンゲキ、10着エイコウライン。人気薄の差し馬勢はその人気通り、通じず尽く着外敗退。ワシのスケベ馬券、全滅。ホマスタ2着で本線馬券もハズレ。
表彰式を前に、勝ったドリーミングと関係者さんの口取り撮影が下馬所前で行われる。撮影後、厩務員さんが気を利かせて、ゴール板前でカメラを構える我々の前に、優勝レイを纏ったドリーミングを引っ張ってきてくれる。「厩務員さん、ありがとう。」であった。
ドリーミング、レイを纏って
厩務員さん、ありがとう
それにしても、恐れ入りました、ドリーミング。ビーナス賞とちょうど同じあたりから仕掛け、同じような伸び脚での完勝。テン乗り岡田騎手もソツなく乗りこなした印象。昨年のトモシロヒットもそうだったが、夏競馬は充実度と勢いがモノを言う感ありありといったところ。加えて、「夏は牝馬」の格言か。前日も新潟では新潟アラブ大賞典を、牝馬ラブリーハートが大本命ストロングゲイルを破って勝ったそうで。この後福山は1ヶ月の休催、夏休みとなり、馬がリフレッシュ。別の見方をすれば一息入って緩むことになるが、秋競馬以降、これまでの勢いを持続してやっていけるかが課題であろう。
ホマスタは戦前見込んだ通りの競馬ぶり。やっぱり自力で勝負賭けて、後ろからやられている。それでも2着はまあ実力馬としての最低限の意地か。
ヨシユキトップは何とか複勝圏入り。本当はドリーミングのやった競馬をしなければならないところだが、ちょっと勝負の賭け時を逃したか。
モナクマリンは致し方ないなという感じの4着。重賞の舞台、役者もそれなりに揃ったとあっては、マリンのスピードをもってしても、完調でなければ勝つことはできないということ。「まあそれでもこのくらいの馬場でよかったぞ。締まった高速馬場で能力フルに発揮したら壊れかねないもんな。」とFUKUさん。確かに。脚元の不安が払拭されることを切に願う。しかし年に2回の古馬のマイル重賞。取っておきたかったところだよな。
セブンアトムはなあ、どうして大舞台だと好走できないのだろう。「所詮その程度」とは全然思わないのだがなあ。因みにワシ、この馬と馬券の相性、ムッチャ悪い。
◆おわりに
最終レースも終わり、リーダーと一緒に帰路。「また秋競馬で。」と、おさるさん、FUKUさんとお別れ。WSさんは今日は広島泊で、明日は益田の日本海特別に向かう模様。
17:03福山発の各停で岡山まで。17:59発姫路行きの各停に乗り換え。盆のこの時季、車内は満員。結局姫路まで立ったまま。姫路でリーダーとはお別れ。新快速に乗り換えようとしたところ、この先で踏切事故がありダイヤが乱れ、30分足止めを食らうも、何とか帰宅。
明日は上山、日本海記念を観戦予定。彼の地のOGの重賞勝ち、その朗報を携え、いざ、北へ――
2001.8.28 記
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