第26回アラブ大賞典観戦報告

 2001.10.14、金沢、1700m

ハナシのツカミは"大賞典"
「大賞典」って、偉そうなニュアンスのある言葉だな、と思う。これがレース名に付くだけで、そのレースの格式と重みを勝手に感じてしまうのはワシだけか。実際、中にはその地の基幹レースであるものも、相当数あるのも事実。例えば福山大賞典や奥の細道大賞典、兵庫大賞典・・・
金沢競馬において、「大賞典」と付く競走は三つ。白山大賞典は、サラのダート統一グレードGIIIでもあり、彼の地を代表するレースといえよう。が、アラブ系重賞中、唯一の大賞典であるところのアラブ大賞典は、「大賞典」を名乗るものの、3歳限定重賞である(残る一つ、サラブレッド大賞典も3歳重賞)。
金沢のアラブ重賞は、古馬に関しては数も豊富で体系も整っておるのだが、それに比して3歳路線というのはちょっと貧弱。今回のアラブ大賞典が、実は金沢唯一のアラブ系3歳限定重賞なのである。というわけで、「3歳唯一の」という点では値打ちがあろう(?)が、「大賞典とくればこれは大一番!」という偏見に立つと、ちょっとそれとは傾向を異にする競走である。そういえば益田大賞典も、3歳限定重賞である。つまりは、「大賞典」と一口にいっても、その実際はまちまちであるということだろう。

現地へ〜メインレースまで
この、金沢唯一のアラブ3歳重賞を観戦に金沢へ。別に「唯一」であるからというのが動機ではない。これついては、"同志"ディープさんとの事前のやり取りに遡る。「師匠、アラブ大賞典どうするよ?勝つ馬(これについては以下お読みいただければ自然と知れます)決まってるやん。」とワシ。これにディープさんが答えて曰く、「わしは行きますよ。勝つ馬が勝つべくして勝つレースを見届けるのも悪くないし。それに全日本アラブグランプリへの予習もあるし。」「ふーん。まあそうだな。」というわけで、ワシも腰をあげた次第。
金沢へは、例によって8時42分大阪発の特急サンダーバードにて。ホームにはいつになくかなりの客が、それも団体客が多い。「自由席に座れるんやろか。」と気になったが、無事着座出来て出発。車中でボケッとしていると、京都から乗車のディープさんが合流して、以降同行ということになる。
11:11に金沢着。キオスクで『競馬カナザワ』を買って、ファンバス乗り場へ。金沢の天気は清々しい秋晴れ。気温も涼しく快適。バスに乗って12時ちょっと前に競馬場着。

手荷物預所に銀箱を預け、まずは寿司屋に。アジ、ガント、赤身、バイ貝2皿を平らげる。ここの寿司はいつ来て食べても旨い。今年は5、6、7、9、10月それぞれ一度ずつと、5月以降ほぼ毎月コンスタントに金沢には足を運べており、おかげでこの寿司を口にする機会もソコソコ。「寿司が目当ての金沢行きでしょ?」という突っ込みは、外れでもなかったりする。

満足してコース側へ。ゴール前のスタンドに上がると、既に"大御所"Okuさんがいらしている。ちょうど食事の最中。「今日はこれまで全部逃げ決着。人気薄が残って中荒れ気味。」とのこと。馬場状態は重との発表。ところが中盤戦以降になると、馬場外目を通って好位からの馬が届く展開に移行してくる。相変わらず重馬場発表のままだが、明らかに急速に乾いてきている。馬場慣らしのハローかけが通ると、馬場表面からは軽く砂が立ち上がる程。

暫くして、栃さんと宇田山さんが現れる。お二人とも、ムーンライトえちごを使い、上越線経由で金沢入りしたとのこと。「ダイリンフラワって観たことなかったからさ。」と宇田山さん。我々の姿を認めて「来てるのは西日本アラブ系デフォルトの面々ですな。」と栃さん。

※アラブ大賞典についてはここからです
さて、メインレースのアラブ大賞典。出走馬は内枠より以下の7頭。()内は騎手、負担重量。
ロックウイット(桑野、54k)、ダイリンフラワ(米倉、55k)、サクセスフレンド(中川、55k)、タマノセンプー(端、54k)、ホーエイスキ(古性、54k)、ユキノキング(54k、吉原)、モトケンホマレ(蔵重、54k)
主役は何と言ってもダイリンフラワ。農協牛乳杯と中京スポーツ賞、古馬重賞を既に二つ勝ち、3歳限定戦のここはまさに、確勝のレース。フルゲート12頭のところ、僅か7頭立てになった原因としては、このダイリンフラワの存在というのが大きかろう。とにかくこの先の全日本アラブグランプリに向けて、その走りを確かめようというのが観戦のツボ。

パドックから発走まで
秋の日射しが眩しい中、パドックに各馬が登場する。
1番ロックウイット。気が悪いのか、鼻先を括られている。首を下げて二人曳き。スッキリとした馬体。時折立ち止まる。前2走、B級選抜戦とA3戦を連勝中。
2番がダイリンフラワ。振り上げてビッタンビッタンと送るトモの歩様は相変わらず。馬体はスッキリと。毛艶はかなり良い。最近のダイリンフラワは馬っぷりが非常に上がっており、冴えない見た目と言われた2歳時の状況とは一変している。「ダイリンフラワは楠賞で観てるけど、その時の印象全然ないな。」と栃さんが言うので、「あの時はかなりギスギスしてたけど、全く参考外と思っていいと思うよ。」と応えるワシ。
3番サクセスフレンド。笠松から秋口に転入し、A2戦を連勝して前走はA1入り。スピード逃げ馬。首でリズムを取って、キビキビとした周回。馬体の艶は良いが、少し張りは緩い感じ。ややトモの送りが硬いか。「この馬あれで461kあるねんな。ぱっと見『何てガサのない馬なんや!』って思ったけど。」とOkuさん。そう言われると確かに馬体が薄いかなあ。
4番タマノセンプー。ちょっと煩めだが活気はある。パドックの大外を周回。馬体の張りは良好。前走はB3戦を勝利。7頭のうちこれが最もクラスが下位。
5番ホーエイスキ。二人曳きで鶴首気味。486kの馬体重ながらも、ワシの目にはやや細く見える体格。A2からA3あたりが適鞍。
6番ユキノキング。首が高い周回の姿。馬体の艶と張りはまあまあ。トモの送りが硬い。前2走はA2戦で連続5着。
7番モトケンホマレ。チョウヨープリンスが夏初めに呆気なく脱落し、サクセスフレンドが転入してくる2月弱の間、3歳2番手に押し出された馬。前々走のA2戦で転入2戦目のサクセスフレンドに2着敗退し、A1へは先を越されて2番手を明け渡した格好だが、ダイリンフラワを追う有力な1頭であることに変わりはない。因みにダイリンフラワとは同一厩舎。時折ちょっと暴れるが、しかし概ねのんびりとした周回。実入りのいい馬体。栗毛の艶もまあまあ。「モトケンホマレはいいね。」と栃さん。「そう、いかにもレオグリングリン産駒の牝馬らしい、どっしりとしたプロポーションでしょ。」とワシ。
ダイリンフラワ(52KB)
ダイリンフラワ!
見た目も垢抜けて、イイオンナになったでしょ?
モトケンホマレ(56KB)
モトケンホマレ!
ラメでシースルーの赤メンコがオシャレ?

本馬場入場。金沢競馬場はコースがスタンドに対し東向き。10月も半ばになると、メインレースの頃には陽も西に傾き、スタンドの影がホームストレッチの幅いっぱいに伸びる。
ダイリンフラワは曳き綱を放されるとぶっ飛んで駆け出していく。サクセスフレンドは、はやる気合いをなだめられつつ、ダクで返し馬に。そしてキャンターでもう1周。モトケンホマレはゆったりと駆け出す。ホーエイスキが1周キャンター。

予想。ダイリンフラワの優位は動かぬところ。問題は相手だけ。サクセスフレンドとモトケンホマレを比べれば、やはりサクセスフレンドを上位と見たい。ダイリン−サクセスの連複では1.2〜1.3倍見当と、これでは低オッズ過ぎてハナシにならないので、ここはダイリン→サクセスの連単勝負。これとて2倍を切りそうなオッズ。ダイリンフラワの斤量55kは、今回初体験でサクセスと同斤、この点がちょっとポイントだが、「問題無し」と判断した。あとはオマケ程度にダイリン→モトケンの連単も。

レースなり
レース発走。1700mのゲートは3コーナーのポケット。ここから1周と1/3くらい。
ゲートが開いて、まずは先手を奪うのは大方の予想通り3番サクセスフレンド。これをめがけて、外からユキノキングとその内ホーエイスキも前に。ダイリンフラワはまずまずの発馬から今回は中団待機。
ということで正面スタンド前。先頭はサクセスフレンド。希望通りの単騎先頭となろうところ、ゴール前50mあたりから、ユキノキングがぐーんと前に出て、外からサクセスフレンドに並びかけていく。サクセスフレンドも暫し譲るまいと抵抗したようで、ここでちょっと緊張感が走る。が、ゴール板前あたりから、超大型新人吉原騎手に御されて、ユキノキングがサクセスフレンドを交わしてこれがハナに。サクセスフレンドは2番手に。この2頭からかなり差が開いて、3番手外にホーエイスキ内にモトケンホマレ、ダイリンフラワはここからさらに遅れた5番手。ロックウイット、そして最後方タマノセンプーと続く。
ゴール板通過後から1コーナーにかけて、先頭に立ったユキノキングが、玉砕気味にガンガン飛ばす。これで2番手となったサクセスフレンドの単騎での走り。2コーナーあたりでは、ユキノ−サクセス−好位以下、この各々の間隔がさらに開いた縦長の展開になる。ダイリンフラワは5番手、そして殿タマノセンプーが、可哀想なくらい置き去りにされている。
しかし向こう流し半ばから三角手前にかけて、この前後の間隔がグンと詰まってくる。前ではユキノキングがギブアップ気味で、サクセスフレンドがこれを交わして再度先頭を奪い返し、そしてそして、例によってダイリンフラワが発進。ヒタヒタと寄せる。
そして三分三厘から4コーナー、単騎先頭に立ち後続を引き離しにかかったサクセスフレンドめがけて、ダイリンフラワがただ1頭取りついてくる。彼女の十八番、跳ねるような捲り脚、4コーナーではついにサクセスフレンドの外に馬体が合い、さあここから交わして!という体勢に持ち込む。
ところが今回は勝手が違う。並びかけておきながら、ダイリンフラワ、サクセスフレンドの前に出ることが出来ない。四角を回って直線を向くあたりまでは、馬体を併せて抜け出しが叶おう状況だったものの、サクセスフレンドの脚も衰えず、直線を向いて、逆にダイリンフラワを突き放しにかかる。「距離伸びていいことなかろう」という戦前の評価をあざ笑うかのように、さらに二の脚を繰り出し、終いは内ラチ沿いを独走、完封のVゴール。これから5馬身遅れてダイリンフラワ、まさかの同級生対決敗退。これから2馬身半遅れて、終い追いすがったモトケンホマレが3着。4着ロックウイット、5着離れた殿からタマノセンプー、6着ホーエイスキ、最下位は玉砕ユキノキング。

サクセスフレンド(41KB)
しかし勝つのはサクセスフレンド!
独走のゴール前

レース終わって
大本線馬券が裏目でガクッとくるワシ。それにしても、ここでダイリンフラワが負けるというのが信じられぬ。イセイチフブキも、ホーエチャンピオンをも屠ったダイリンフラワが、3歳馬どうしのレースで負けるとは。「終わってみると『やっぱり』って感じだよなあ。このレース、アイカンセンプーも大本命でトんだりしてるしなあ。」とOku師匠。まあ、牝馬の難しいところなのかも知れぬ。
「それにしても、サクセスフレンドがよう走ったでしょ。千七のレースで最後直線突き放すなんて思いもしなかった。絶対残り200が長いと思ったのに。」とディープさん。「しかし前半吉原の馬にハナ叩かれて2番手からのレースになって、よくペース崩しませんでしたね。」とワシ。「でもこれ勝っちゃって、福山どうするよ?2250mなんて走れるなんて思えやんのですけど。」「そりゃそうでしょ、いかにもナイスフレンド産駒ですもん。でも数少ない例外になり得る可能性はちょっとありますね。」「うん、例外候補やな。」と、サクセスフレンドのキャラ評価。
そして話題は今後の見通しに及ぶ。「サクセスフレンドはともかく、ダイリンフラワは福山どうなるんやろ?来てくれないと盛り上がりに欠けるし、こっちの方がサクセスフレンドより長距離適性あるの明白やん。」「しかし全日本AGP(11/23)出るとなると、日程的に地元の石川テレビ杯(11/11)と北國アラブチャンピオン(12/9)出られませんからね。この二つ、1着賞金それぞれ450万円と800万円で、両方勝てば1250万円、AGPの1着賞金1200万円越えますからね。"名より実"って考えだとどうなるか。輸送のこともあるし。」「"併せ業一本!"ってやつだね。」と一同であれこれ。

帰路〜終わりに
最終レース直前に競馬場を退場。栃さんと宇田山さんは地元のお知り合いの人のクルマで駅までとのことで、ここでお別れ。Oku、ディープ両師匠とワシはファンバスで駅まで。Oku師匠は翌日月曜日から1週間、関東で仕事の研修だそうで、この晩夜行急行能登にて東京行きとのこと。列車の時刻まで時間潰し。このままではあまりに荷物が重い(カメラ機材、競馬遠征機材一式+研修の荷物)ということで、栃さんとワシ、師匠の競馬荷物の一部を分担して預かることに(後日回収予定)、ワシは師のトレードマーク、二段脚立を託される栄誉に浴する。「おっ、脚立担いだユーノすけ氏の姿も貴重で見ものやわ。」と、横で妙な感想を漏らすディープさん。
駅のコンコース脇にあるコンビニでアルコールを買い込み、ここでOkuさんとはお別れ。ホームで駅弁、利家御膳(『JTB時刻表』7月号で紹介されて、以降ずっと気になっていたのだ。金沢の大名料理を再現した品々がおかずに並ぶ、ちょっと品のいい和風弁当、1000円なり。)を買って、17:14金沢始発の特急雷鳥に乗車。関西へ。
利家御膳目玉の一品、鴨の治部煮(ワシ、鴨って大好物!)を味わいながら、ふと思う。「なに満足げに鴨なんか食ってんだろ。今日も馬券外してからに、金沢競馬の"カモ"はワシやがな・・・」と、お後はよろしくないようで・・・謝謝、再見!(←やけっぱち)

2001.10.27 記

兵庫発アラブ現場主義ホームに戻る