第45回白鷺賞観戦報告

 2001.11.14、姫路、2000m

はじめに〜メインレースまで
秋の姫路恒例の古馬重賞、白鷺賞。園田金盃が12月開催でなくなった今となっては、これが兵庫での1年最後のアラブ系古馬重賞である。
同日、名古屋では、3歳重賞帝冠賞も開催され、ここに、元園田所属にして、ワシの"ココロの○×馬"(まだ引っ張るか!)ボールドヒリュウが出走。これも観戦したかったところなのだが、仕事の都合で水曜日は遠征できず、結局今回は白鷺賞観戦ということに。因みに帝冠賞は、ボールドヒリュウが人気に応えて勝利したようで(重賞初勝利!)、これは嬉しい結果となった。

ということで、職場を脱出して午後から姫路に。姫路の駅前商店街でちょっと買い物をして、お城の前のバス停から路線バスに乗車する。すると、声を掛ける御仁が。これが何とリーダー前田っち。「何でこんなところから乗車してるねん?」と仰るので、かくかくしかじかと説明。なお、このバスには、サンテレビ競馬中継の司会を務める、吉本の芸人、高山知浩くんも乗車していた。公共交通機関で大阪から姫路に出勤というところが、いかにも吉本の若手芸人らしい。

競馬場に到着。まずは、"ひめけい現場主義者"のまりおちゃんと、姫山菊花賞に続き、またもや鳥取から参戦のニーナちゃんに合流する。スタンドで雑談などしていると、ここに、九州の全国行脚人、さまにべっぴんさんが登場。「何で来てるの〜?」と一同びっくり。「別に理由もなく単に白鷺賞観に来た。今年はまだ兵庫に来てないし。」とのこと。それにしてもさまにさん、「わしがここに居っても当然」といわんばかりの、何食わぬ表情で出没するところが可笑しい。サスガ"神出鬼没"。
天気は晴れ、しかしながら次第に雲が多くなってくる。風もあり、とにかく寒い。この秋一番の冷え込みに間違いない。スタンド(北向き)に腰掛けているとどんどん凍えてくる。
馬場状態は良。砂が深いようには見えないが、それほどタイムは出ていない。

※白鷺賞についてはここからです
さて、メインレースの白鷺賞。出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手、負担重量。
エイランヒット(木村、53k)、ツバサキング(大山、53k)、スマイルフォーユー(谷川、54k)、リジョウガバナー(川越、53k)、ジョージレディー(松浦政、52k)、シューティング(赤木、53k)、ハッコーディオス(岩田、59k)、サンバコール(田中、58k)、ワシュウジョージ(小牧太、62k)、ニシノリュウジン(松平、53k)
斤量は賞金別定。背負い頭であるワシュウジョージのハンデ62kは、現在兵庫の競馬で課され得る最高重量。

パドック、そして返し馬〜発走まで
パドックの時間となり、各馬お客さんの前に登場する。
1番エイランヒット。半年の休養明けからこれが3走目。この馬にしては毛艶がイマイチ。トモの送りも硬い。
2番ツバサキング。近5走で掲示板に載ったことが一度もなく、ちょっと頭打ち気味。歩くスピードが遅く、前との間隔が開く。毛艶と見た目はこの馬の常で良好。
3番スマイルフォーユー。前走ハッコーディオス取り消しで出走メンツがスカスカになったS1戦を、単勝7番人気で勝利。タカライデンを二回り大きくしたニセモノのようなルックス。少し馬体に締まりがないような気もするが見栄えはする。
4番リジョウガバナー。昨年の姫山菊花賞時は上昇馬だったが、今ではすっかりヒラオープンの差し馬。444kの馬体重以上に腹周りが重く映る体型。気っぷよく周回。
5番ジョージレディー。福山からの転入直後の夏場は好成績だっが、近走はソコソコ。これが実力かとも思う。パドックの最内を周回。歩様は良好。毛艶はまあまあだが、馬体重396kと馬格がないので、押し出し感はない。
6番シューティング。前走姫山菊花賞、二強対決の図式を崩しての2着からここに臨む、唯一の3歳馬。青鹿毛の毛艶は見栄えがするが、前走時に比べて腹周りが相当緩い。今日はスリムな印象が全くない。
7番ハッコーディオス。前走を疝痛で出走取り消し、今回はいわば病み上がりの出走。この馬にしては大人しい、というか覇気のない周回。馬体重は前走比-17kの467k。480k超のディオスは確かに太い感じなのだが、それでもこの馬体重減は心配。腹周りだけポコッとしていて、トモのボリュームが失せている。リーダーも「こりゃアカンやろ。全然ちっちゃく見えるわ。」と評価。
8番サンバコール。前走は5ヶ月の休養明け緒戦、最後方から捲るもアドミラルを捕り逃しての2着。得手とも思えぬ短距離千五戦でもあり、久々でもあるので、ここからの前進は見込めよう。毛艶は良好。筋肉の付きもかつてほどではないにせよ、現状としてはまあまあ。歩みも力強い。首の付く角度が元来高いのだが、体高もあり、その馬体の大きさが今日は非常に目立つ。
9番がワシュウジョージ。サラブレッド相手に圧勝した、園田金盃以来の実戦である。例によって二人曳きだが焦れ込みなく、いい具合に気合いが出ている。遠征時のワシュウしか観たことないさまにさん、曰く「焦れ込んでないワシュウジョージって初めて観た。」。そりゃそうだ。馬体の艶と張りは文句ない。「ワシュウってあんな歩き方やったっけ?」とリーダーが疑問に思った、前後肢とも、特に肩の出の硬さも、実はこの馬の常。歩幅が大きいのは好感。気が散った感じの周回でどうも気になった、昨年の白鷺賞時とは全く異っている。好調を維持していると見て取れた。
10番ニシノリュウジン。前走は4ヶ月の休養明けで6着。善戦牝馬も常時S1ではキツい。毛艶はソコソコだがちょっと腹周りが太めか。それにトモが弱い。昨年の姫山菊花賞を2着した頃の、スリムながらも均整のとれた馬体ではない。

本馬場入場から返し馬に。ワシュウジョージは彼の流儀で、入場口からゴール板前まで一直線に入場して、そこから一気に駆け出す。ハッコーディオスは最後に登場。登場するやいなやそのまま1コーナー方向に直行。サンバコールは1周じっくりダクに下ろされて、軽めのキャンターでもう1周。

予想。ワシュウジョージの軸は動かし難いところ。ハンデ62kも背負い慣れたもの。見るからに調子も良さそうで、最悪でも2着は外すまい。問題は相手。実績と格からしても、重賞ホースであるハッコーディオスかサンバコールかというところなのだが・・・ハッコーディオスは病み上がりで、なおかつこのパッとしない出来であり、買う気が起こらない。サンバコールは捲りのスターであり、今でも人気者だが、この脚質にはあまり信用が置けない。この馬、捲っている時の脚は強烈だが、ひとしきり捲り切った後の伸びはそれほどでもない、つまりゴール板まで伸び続ける追い込み脚ではない。従って今日の場合、よしんばワシュウを捲って先に先頭に立ったとしても、ワシュウに再度差される可能性が高そう。場内でオヤジが「これ今日の人気2頭、どっちも追い込み脚質やろ。ホンマアテにならんレースやで。」とワシに話しかけてきたが、実はこれには全く同感。
ということで、ワシは今回は完全なヒモ穴モード、姫山菊花賞2着のシューティングを抜擢。これとワシュウとの馬単ウラオモテ。

レース発走前に、"まりちー"コンビの一方、競馬場では久しぶりのちーちゃん、そして岩田騎手の御両親と合流する。

レースなり
さていよいよ発走。姫路2000mのスタート地点は2コーナーを回って向こう正面に入って少しのところ。
ゲートオープン。リジョウガバナーとエイランヒットがアオり気味になる。サンバコールにテンの行き脚がないのはいつものこと。ワシュウジョージは並の発馬からじっくり下げる。そして先手を奪うのはやはりハッコーディオス。なかなかの出から一気にハナへ。内のスマイルフォーユーが押されてこれに続き、大外からニシノリュウジンが、中枠からジョージレディーも続いて先行する。この後ろ、ツバサキングはやや掛かり気味。エイランヒットは三角までにこの直後内、6番手まで上昇。シューティングが続き、ワシュウジョージはこの後ろ、単騎8番手。
正面スタンド前、先頭はハッコーディオス。鞍上岩田騎手の持つ手綱はなかなかに余裕があり、折り合いは良好。この1馬身後方、直後に2番手ニシノリュウジンが続き、さらに1馬身後方、インベタでスマイルフォーユー、同位置の大外にジョージレディー。2馬身下がって内エイランヒット、外ツバサキングで、この1馬身半後方にシューティング。先頭のディオスからここまでは等間隔の隊列。見た目にもペースはスローで、いかにもディオスが溜め逃げに持ち込んでいるといった感じ。この隊列から3、4馬身離れて、ワシュウジョージはじっくり単走。この後ろ、ケツ2はサンバコールで殿はリジョウガバナー、いずれも単騎でぽつんぽつんと追走。

1周目(42KB)
1周目の正面スタンド前
先頭ハッコーディオス、2番手外ニシノリュウジン、内3番手スマイルフォーユー

1コーナーから2コーナーにかけて、先団の前後間隔がギュッと詰まる。スマイルフォーユーは抑え気味だが、ニシノリュウジンはディオスの外にビッタリ食い付き、ジョージレディーは掛かり気味にこれを追う。差し一辺倒のイメージが強いエイランヒットだが、今日は早め、先団をキープ。
そして2周目の向こう流し。2コーナーを回って、先に動いたのはワシュウジョージ。サンバコールを待たずして、先団の外目に進出する。向こう正面の半ばまでには、5番手くらいまでに押し上がる。ワシュウジョージにや遅れて、サンバコールも腰を上げる。鞍上田中のアクションが大きくなると、ドドドッ!と前に。お馴染みの捲りモード、隊列の大外を行く。
追い上げるワシュウ、バコールに対し、逃げるハッコーディオスは絶妙の走りを繰り広げる。差を詰めるワシュウに呼応するが如く、小出しに小出しに仕掛けて、その都度2、3馬身くらいリードを稼ぐ。レースの主導権をワシュウジョージに渡さない。そうこうしているうちに、ワシュウ鞍上太さんの手綱が早くも動いてくる。その結果、3コーナー手前でワシュウは先行勢を交わし去って、ここで2番手に。そしてこの大外に、鞍上田中の鞭連打に促されたサンバコールが一気に寄せる。
こうなると三分三厘では三強対決。先頭内ハッコーディオス、2番手中ワシュウジョージ、3番手外サンバコール。各馬の間隔が半馬身まで接近する。気合いを入れる小刻みな手綱捌きはあれど、手応え余裕のディオス、それに比してワシュウを駆る太さんのアクションは相当大きい。そしてサンバコールは・・・危惧的中、ここまでで脚を使い切った模様で、伸びが止まる。ということで、四角進入ではサンバコールが脱落して、内ハッコーディオス、外ワシュウジョージの一騎打ちに。バコールが外で伸びない一方で、内をスマイルフォーユーが掬って、中を好位からエイランヒットが抜けんとしている。

ディオスvsワシュウ(34KB)
残り30mくらい、ディオスvsワシュウ
逃げるディオス、追うワシュウ

最後の直線。先頭二騎は馬体が重なっての接戦。しかしハッコーディオスが踏ん張り、ワシュウを決して自分の前に出さない。鞍上岩田は二本鞭で左右からディオスを叱咤。太さんは左鞭右手綱でワシュウを必死で動かす。それなりに加速していると思われたワシュウジョージ。「ワシュウが差すやろ。」と、ゴール板前で楽観していたワシであったが、2頭がゴールに近づくにつれ、ディオスの脚が衰えず、ワシュウがディオスを抜けないことが判ってくる。「何!?ディオス残っとるがや!」と判断した時は既に遅し。ずっとワシュウ狙いだったカメラ、ピントをディオスに振り直したその刹那、ファインダー像の中、ハッコーディオスの白い馬体が、ワシュウの馬体の内で、クビ差先にゴールを駆け抜けていた。

ハッコーディオス(38KB)
ハッコーディオス、逃げ切る
ワシュウジョージに一太刀浴びせる大きな勝利

前とは離れた3着争いは、エイランヒットが差して3着、2着ワシュウとは5馬身差。4着はインベタで粘ったスマイルフォーユー、3着からは半馬身差。サンバコールは結局5着。6着差したシューティング。4、5、6着それぞれの着差はいずれもクビ。

振り返って
ハッコーディオスは単勝3番人気だったようだが、その単勝配当は1090円。「いくら何でも配当つき過ぎやろ。」状態である。アタマ鉄板と思われたワシュウジョージの2着敗退により、馬単は1890円と、これも高配当。
「うへ〜!完璧ディオスにやられた!」と、完全敗北のリーダーとワシ。その一方で、ハッコーディオスの単勝までも、ズバリ的中させた岩田パパ。「ディオス、あのパドックでよく買えましたねぇ。」と訊くと、お父さん曰く、「そやったやろ。でもな、騎乗命令掛かって康誠乗せたら途端にピシッとしてん。それ観て『こらイケる』思ってん。」「そうだったんですか。うわワシら騎乗命令んところパドックで観てないもんなあ!」という、ことの真相。
それにしても今日のハッコーディオスの逃げ、といおうか岩田騎手の逃げはお見事!道中まんまとスローペースに持ち込んで脚を溜め、2周目向こう正面では数度に分けて小刻みに加速して、後ろをその都度ちょっと離す。そして終いまでキッチリワシュウジョージの追撃を封じ込んだ。彼本来の持ち味が生きる短距離戦で見せる、圧倒的スピードと迫力には欠けたが、適距離よりは明らかに長めのレースで、ケレン味を感じさせる幻惑的逃げ。走りの幅を感じさせるものだったかと。2周目三分三厘での絶好の手応えが何とも印象的だった。
因みにディオスにとって、これが一昨年、旧3歳時の市川賞以来、約2年ぶりの重賞勝ち。意外にもまだ重賞2勝目。この2重賞を含めて、姫路はこれで5戦全勝。ひょっとして巧者?
ワシュウジョージは正直なところ、アレレ?な2着。「道中の位置取りが後ろ過ぎる。」という、ファンのレース後の声があったようだが、後方からの差し競馬は、馬が好調で自信がある時の太さんのワシュウ騎乗法であるからして、これに問題はないと思う。ただ若干サンバコールの早め捲りが気になって、仕掛けのタイミングが微妙に狂ったかも知れぬ。それにしても2周目三分三厘で、楽走の岩田ディオスに比して、太さんの手綱が激しく動いたのは意外。それでも最後クビ差まで追い詰める(まあ取り逃がしたわけだが)のは、最強馬として最低限の走り。ふてぶてしく強いのに、たまにポコッと負けてくれるあたり、まだ愛嬌があるということか。一強1頭勝ちっ放しだったらオモロないし。しかしながら昨年の白鷺賞も追い込み届かず2着。ディオスとは反対に、ワシュウはちょっと姫路が一息か。ストレッチが長い分、仕掛けが難しいのか?
エイランヒットはいつになく前々での器用な競馬、最後は好位からの差しで3着。二強との着差と地力差は言うまでもないが、この馬にとってはまずまずの着順、そしていい競馬だったと思う。スマイルフォーユーは前走1着がまぐれではなく、地力アップもしくは絶好調の結果であったと証明する4着かと。ディオスを別にすれば、前に行った馬の中では最も粘っている。
サンバコールは終わってみれば「やっぱり」の結果。捲り切ったら「はいそれまでよ」状態。しかし今日のサンバコールの捲りは、全盛時を彷彿とさせるド派手なそれであったと思う。楠賞、三角で捲り切って先頭に並びかけて、そこから3頭に再度抜かれて4着という、あの時がちょっと思い出された。

おわりに
競馬場を後にする。この時、岩田パパママが、我々一同を食事に誘って下さるので、お言葉に甘えてご馳走になることにする。競馬場南側の、洋食屋に連れていっていただく。男性陣はヒレカツ定食を食す。このヒレカツがまた、べらぼうな厚さの凄い代物で、また抜群に美味しくて、すっかり堪能してしまった次第。ゴチソウサマデシタ。そして散会。

とまあ、今日のところはハッコーディオス、アンド、岩田騎手、それに岩田御両親に乾杯!ということで。そしてワシの馬券は完敗・・・(←座布団全部持ってけ!)

2001.12.8 記

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